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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百二十六話:女の子たちの朝

 朝、目を覚ますと。

『あ、ドーラちゃん起きた!おはよう、ドーラちゃん!』

 わくわくとしたモモの顔が目の前にあって、目を開けると同時に声をかけられました。

「……おはよう、モモ。……起きてたんだ。ちゃんと、眠れた?」
『うん!ぐっすり眠れたよ!嬉しくって、早く目が覚めちゃったの!それでドーラちゃんが起きるの、待ってたんだ!』
「そっか。それなら、良かった。起こしてくれて良かったのに」

 ゴロゴロと喉を鳴らし続けるモモを撫でながら、答えます。

『ううん!ドーラちゃん疲れてたから、ゆっくり休ませてあげたかったし。元気になってくれたほうが、いっぱい遊べるもんね!』
「そっか。そうだね、ありがとう。今日は、いっぱい遊ぼうね」
『うん!』
「……ヘンリーたちは?モモが起きた時は、いた?」
『うん。ヘンリーさんが起きたときに、あたしも起きたんだ。ヘンリーさんは、いつも早起きなんだね!』
「そうだね」

 そろそろ強さで追い抜かれそうな現在、私もうかうかしていられないわけですが。

 しかし全員で朝の経験値稼ぎに出るくらいなら、もうその分だけ出発を早めればいいのであって。
 ここまで見て見ぬフリで来た以上、今さら何かを言い出すのも、言い辛いんだよなあ。

 ……まだしばらくは、様子見でいいか。

 それよりも。

「……ヘンリー、どんな感じだった?ちゃんと眠れてたみたいだった?」
『うん、元気そうだったよ。なんで?』

 そうか、ちゃんと眠れたのか。
 気合いでなんとかなったのか。
 伊達に耐性を身に付けたわけでは無かったか。

「ううん、それならいいの。それより、着替えちゃうね」
『うん!ピエールさん、ドーラちゃん着替えるってー!』
「承知致しました」

 扉に向かって呼びかけるモモに、扉の向こうからピエールの返答があります。

 ……モモもいるんだから、別に部屋の中にいてもいい気がするが。
 しかしモモがいなくたって別にいいと私は思ってるわけだし、そこはピエールのこだわりなんだろうから、言っても仕方ないか。

 その件にも特に触れないことにしてベッドから立ち上がり、何気無く隣のベッドに目をやると。
 見覚えのある枕に、漂うブドウの香り。

 ……安眠枕か。

 そうか、ヘンリーはこれを使ったのか。
 やはり、気合いだけではどうにもならなかったのか。
 なんか申し訳なかったが、これがあるなら今後は私がラリホーをかけなきゃとかそこは心配しなくてもいいのか。

 納得しながら安眠枕を手に取り、ブドウの香りが消えないか少々心配しながらも試しにキレイキレイして、香りはしっかり保たれていることを確認してからしまい込んで。


 昨日選んだ服に着替えて、身嗜みを整えます。

 あまり手の込んだ髪形にするのもどうかと思うがいつも通りというのも何なので、活発に見えそうなデザインのワンピースに合わせて、髪はポニーテールにして。


『わー!ドーラちゃん、やっぱり可愛い!さっきまではお姫様みたいだったけど、今度は元気な街の女の子って感じ!』
「ありがとう。変なところ、無いかな?」
『大丈夫!どこから見ても可愛いよ!』
「ありがとう。モモも……あ、そうだ!」

 荷物から、ビアンカちゃんのリボンを取り出します。

『……それ。ビアンカちゃんの』
「うん。お揃いでもらったリボン。モモに、結んであげるね」
『……ううん。それは、ドーラちゃんの分だもん。あたしのは、千切れて、遺跡に置いてきちゃったもん……』

 モモが、しゅんとして俯きます。

 ……そうか、千切れちゃったのか。
 私のケープも焼け焦げて落としてきてしまったんだから、モモのリボンだって、そうなっててもおかしくなかったよね。

 俯くモモを、優しく撫でます。

「……私のために、頑張って戦ってくれたもんね。だから焼けて、切れちゃったんだね」
『……』

 黙り込むモモの首に腕を回し、抱き付くようにしながらさらに撫でます。

「ありがとう。ごめんね、私のために。大事な、思い出のリボンだったのに」
『……ううん。思い出よりも、本当に大事なのはドーラちゃんだもん。ドーラちゃんが生きてて、あたしが役に立てて、よかったから。だから、いいの』
「そっか。そうだね、私もそう。思い出よりも、今ここにいるモモが、大事」
『ドーラちゃん……』

 擦り寄ってくるモモを受け止めて、また撫でます。

「これは大事なリボンだけど、しまい込んでるだけの物だったから。ビアンカちゃんにもらって、モモとお揃いで。二つあったのが、一緒に頑張って戦ったから、一つになっちゃって。一つになったことも含めて、モモとの大事な思い出だから」
『……』
「リボンが一つになって、またモモに会えて。これをモモに使ってもらえたら、また私たちの思い出が増えるから。もっと大事な、思い出のリボンになるから」
『…………そっか。リボンは減っちゃったけど、思い出は、増えるんだ』

 俯いていたモモが、顔を上げます。

「うん。だから、モモに使って欲しいんだけど。結んでもいいかな?」
『……うん!あたし、使いたい!ドーラちゃんに、結んでほしい!ドーラちゃんとの思い出、増やしたい!』
「そっか!じゃあ、結ぶね!……どこがいいかな?」

 元気になったモモをまた一撫でしてから離し、少し距離を取って眺めます。

 ベビパンだった時は、首輪みたいに首に結んでたけど。
 結び目を正面にしたり背中側にしたり、横に少しずらしてみたりというちょっとしたお洒落も、毎日してたんですが。
 さすがに今は首には回らないし、さてどこがいいか。

「タテガミか、尻尾か……。タテガミも尻尾も、位置の選択肢が色々……」
『あ、あたし!ドーラちゃんとお揃いがいい!ドーラちゃんの髪と、お揃いみたいにしたい!』
「そっか。それじゃ、タテガミだね。……この辺がいいかな?」


 モモが最高に可愛く見える位置取りを厳密に検証して、しっかりと梳かして毛並みを整えた後に、ほどけないようにしっかりと、可愛らしい形にリボンを結んで。


「これでよし!……うん!モモ、可愛い!」
『ありがとう、ドーラちゃん!』
「ピエール、お待たせ!もういいよ!」


 気合いを入れて時間をかけすぎたのか、ピエールを呼び入れたところで他のみんなも部屋に入ってきました。


 朝練帰りの三人にキレイキレイをかけて、待たせたことを謝ります。

「みんな、戻ってたんだ。ごめんね、待たせて」
「いーよ!女の子の支度は、時間がかかるって言うもんな!そんなに待ってねーし!」
「ピキー!」
「ふむ。ドーラ様もモモ殿も、今朝はまた一段と愛らしくあられますな」
『でしょー!ありがとう、ピエールさん!』
「あ、ピエール!なにぬけがけしてんだよ!カタブツのくせに、こんなときばっかー!」
「コドランよ。拙者に何か申す前に、言うことがあるのではござらぬか」
「あっ!そっか、そーだな!ドーラちゃんもモモちゃんも、すげーかわいーよ!」
「ピキー!」
『コドランくん、スラリンくんも、ありがとう!』
「みんな、ありがとう」

 モモに続いて私も三人にお礼を言って、少し離れて見ていたヘンリーに近寄ります。

「ヘンリー。……大丈夫そうだね」

 モモの言った通り、元気そうというか。
 むしろいつもよりすっきりした顔をしている、ような気もしないでも無い。

「……ああ。まあな」

 こちらを見る目は、若干気まずそうではありますが。
 赤くなるとか目を逸らすとかは無いので、昨日の今日で考えれば全く問題ないと言っていいでしょう。

「……そういうのも、似合うな。その、髪も。可愛いよ」
「ありがとう」

 胸元とか足とか、男装にしろどっち付かずにしろ、故意に見えないようにしてある普段と比べればかなり露出度高めであるにも関わらず、全身を眺めても挙動不審になることもありません。

 完全にもう、大丈夫なようですね!

「モモも。それ、あのリボンだよな?ドーラとお揃いにしたんだな」
『あ、わかる!?さすがヘンリーさんだね!そうなの、ビアンカちゃんのリボンで、ドーラちゃんとお揃いなの!いーでしょー!』

 ……モモのこれが、ポニーテールだと気付くとは!
 やっぱりコイツやれば出来るイケメンなんじゃないか、何故それを、他の人間の女性にやらないのか!

「え?おそろい?……そっか、そっかー。うん、おいらもそーじゃないかと思ってたー!」
『もー、コドランくん。調子いいー』
「あ、やっぱムリ?だよなー。でもかわいーよ、ほんとにドーラちゃんと姉妹って感じじゃん!」
「ピキー!」
『ほんと!?嬉しい!』

 姉妹か。

 うん、モモは私の妹的存在なわけで。
 家族なわけで。

 もしも仮に、百万が一ヘンリーが私のことを好きだと、そういう意味で好きなんだと仮定したら、私の家族の好感度も積極的に上げていくはずなんであって。

 まさかこれも、攻略の一環……。
 いやむしろ、私とのセットだから気付いたとか……。

『ドーラちゃん、聞いたー?あたしたち、姉妹みたいだってー!』

 ……ハッ!

 今、何を考えていた!

「う、うん!聞いてたよ!実際にそんなようなものなんだから、当然だけどね!」
『そっかー!うん、そうだよねー!』

 別にアレだ、特に好きとかそんなんじゃなくても、いつも一緒にいる相手なんだから細かいことに気が付いても何も不思議は無いっていうか?
 なんでもそんな風に考えるのは良くないと思うんだ。
 主に私の精神安定上。

 そうだ、別に普通だ。
 普通のことだった。

 私たちへの対応が普通で、他の人間女性に冷たすぎるだけだった。

「それじゃ、とりあえずメシにするか。行こうぜ」
「うん……って、え?」

 さも当たり前のように、肩を抱かれましたが。

「あの、ヘンリー」
「危ないだろ、そんな格好で。一人で歩かせたら」
「いや、だけど。宿の中の、食堂に行くくらいで」
「危ない。この宿は特に、男の客が多いし。女に飢えてるヤツも多いし、それでいて男慣れしてる踊り子を見慣れてるし。絶対に、危ない」
「いや、それならモモと」
「田舎の村じゃないんだから、モンスター使いくらい知ってるだろ。話しかける口実にされるのがオチだ」
「……」

 確かに。

 モンスター使いを知ってる普通の人なら、町中をモンスターがおとなしく歩いてるのを見れば、そうだってわかるだろうし。
 無暗に人を襲わせるわけが無いことも、ちょっとナンパされたくらいのことでけしかけるわけにいかないことも、当然わかるだろうし。
 外見は全く強そうに見えない私が一人で歩くよりは、見て強いとわかるボディーガードが付いてる分、マシではあるが。
 男のヘンリーといるよりは、ペット的存在に見えるだろうモモといるほうが、男性からしたら声がかけやすい、かもしれない。

 ……ほんとにそうか?

「いいから、行こうぜ。早く出て、モモと観光するんだろ」
『ドーラちゃん、行こ行こ!早く、ごはん食べよ!』
「……うん。そうだね、行こうか」

 なんか納得できるような、できないような気がするんですけれども。
 早く出かけたいのはそうだし、一人じゃ危なそうなのは、確かにそんな気がするし。

 ……まあ、いいか。
 別にいつものことだし、逆らうほどのことでも。

 いつものことだし、別に攻略とかそんなんじゃ、きっとないし。

 うん、大丈夫、大丈夫。

 …………大丈夫!!


 と、自分に散々言い聞かせながら、ヘンリーに肩を抱かれ反対側からモモに擦り寄られ、両脇をガッチリ固められて食堂に向かう私なのでした。 
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