“死なない”では無く“死ねない”男
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話数その10 入らない
支取達に晋が、自分の事が知られたその翌日。
女子達のけたたましい叫び声と共に、誰かが晋へと近づき声をかけた。
「……灰原晋君、で合っているかい?」
「……んぁ?」
何時も通りの表情で晋が顔を上げると、そこには金髪で優しそうな顔をしたイケメンがいた。周りの者達は彼に――男子は怨恨のまなざし、女子は羨望のまなざし―――を向けていた。
こんな奴知り合いに居たか? と、思い出そうとした晋だが、すぐに昨日支取が言っていた事を思い出す。が、その事を踏まえると彼はおかしかった。
「……あんた、支取会長の使いって事は生徒会メンバーだろ…? …なんでバッジ付けてない?」
「その事を含めて、これから行った場所で話すよ」
「……ってことは、これからお前についていかにゃならん……と」
「うん、まぁそうなるかな」
「……そうか」
そう言って晋は立ち上がる。そして、イケメン男子生徒が彼を誘導するかのように先に立って歩き始めた。
そうして新校舎を出た時……ふと、イケメン男子生徒は後ろを振り向いてみる、すると――――
「い、いない!?」
晋の姿はなかった、それはもう物の見事に消え失せていた。イケメン男子生徒が周りを見渡してみると、晋はもう既に校門へ向かっている。
おそらく、晋は彼の後ろをついては行かず、端から校門に向かっていったのだろう。 というか話しかけられたその時点で、付いて行く気など更々なかったに違いない。
イケメン男子生徒は慌てて晋の後を追い、少し強引に彼を引きとめる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 灰原晋君!」
「……何だっての……」
あからさまに(元からそう言う顔なので、あからさまか如何かは分からないが)ダルそうな顔で首を少し捻って、晋はイケメン男子生徒を見る。
「たとえ今日断ったとしても人を変えて毎日来るし、その内強硬手段に出るかもしれない、なら今話を受けた方が後々よくないかい?」
「………」
晋はたっぷり、本当にたっぷり時間を取って考えた後、嫌そうな顔で答えた。
「……はいはい、わかりやしたよ……」
「ありがとう」
渋々イケメン男子生徒について行く晋。……普通なら一部の女子達が何やら騒いでいた、何て事になるのだが晋の不気味さからか、そんな話をする女子生徒はいなかった。どうやら、妄想もできないほど怖がられているらしい。
だが、そんな事など少しも気にせず、晋は猫背のまま歩くのだった。
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旧校舎に入ったイケメン男子生徒は、『オカルト研究部』と書かれたプレートのあるドアの前で立ち止まり、ノックをした。
「部長、会長。彼を連れてきました」
「……入って頂戴」
「分かりました」
そういってドアを開け、中に入っていったイケメン男子生徒に続く形で晋も入る。
「……う~っす、くぁぁ……」
礼一つせず、敬意も払わず、挙句の果てには部屋の中の人を見ず欠伸をしながら入っていく……人として最悪な入り方である。尤も最終的に自分が決めたとはいえ、晋は嫌々此処に来たのだからそういう反応なのかもしれない……とはいえ限度があるし、元からではないかと言う事も拭えないが。
「……何だよこいつ」
その余りの態度に、黒髪の男子生徒は文句を言う。それが聞こえたのかどうかは分からないが、晋は特に何の反応もせず、置いてあった一人用のソファーにドカッとも、トサッとも違う曖昧な感じで座り込んだ。 そして、徐に話し始める。
「……んで、なんで生徒会じゃない奴が俺を迎えに来たんだ?」
「それを言う前に、まずあなたの事を教えてほしいのだけれど?」
そう晋へと問いかけたのは、同席していたグレモリーであった。見ると、彼女の下僕らしき人物達も見える。
晋は、こいつら見た事あるな~……と思いだそうとし、そしてある事を口にした。
「あ~……思い出した。お前、あん時の無駄乳じゃねか…」
「む、無駄乳っ!?」
いきなりトンデモない呼び方で呼ばれたグレモリーは、顔を赤くして立ち上がる。何故か傍に居る黒髪の男子生徒も。
「何なのよその呼び方は!?」
「そうだ、部長のおっぱいは無駄なんかじゃない!! むしろ、思考の一品……嫌! もはや偉大なる宝物と言っても過言じゃない!!」
「……赤ん坊に乳与えるだけの器官なんだから、でかくたって無駄なだけだろうが……あと黒髪、お前の言ってる事は意味不明だ……わりと本気で」
「なんだとぉ!?」
「……そこらへんにしておいてくださいリアス、兵藤君、本題はそこじゃないでしょう? 晋君も、配慮にかける言葉を口にしないでください」
空気的に再現のない言い合いに発展しそうな事を悟ったのか、支取が双方―――というかグレモリーと眷属の男子を落ち着かせ、話を本題へと持ち込む。
「灰原晋君、私達から聞きたい事は二つです……一つ、貴方は何者なのか。二つ、貴方の目的は何なのか」
「前者、駒王学園二年生。後者、静かに過ごす事」
支取の発言から数秒の間すら置かず、晋は答える。グレモリーは、その答えに反論した。
「あなた……ふざけているの?」
「……大真面目だ。……前者の答えが足りないって言うなら“不死身”も付け加えるけどな……」
「信じられないわ、そして信用ならない」
「……あら、そ…」
適等な晋の返事に、部屋に居た者達は不快な表情を隠さない。そんな空気の中、晋は立ち上がってドアの方へと歩を進める。どうやら帰る気らしい。
「……支取会長……昨日も言ったがよ、アレ以上に答えられる事なんかホントに何も無いし、ましてや目的なんざ持っちゃいない。……ま、あんたらは納得いかいだろうがよ……それじゃ」
そういってドアの取っ手を回した晋は、おかしなことに気付いた。 幾ら回しても、ガチャガチャと音が鳴るだけで、開く気配がない。
「……んあ? あかねぇぞ……?」
「悪いですが、危険因子を逃がす訳にはいきません」
「洗いざらい吐いてもらうわよ」
晋が後ろを向くと、そこには殺気だったグレモリー達と支取達が、何時でも戦えるようにと構えていた。しかし、晋が見たのは数秒だけで、すぐさまドアへと顔をもどす。……まるで、グレモリー達等眼中にないと言わんばかりに。
「てめぇ! 俺達を馬鹿にして―――」
男子生徒のその言葉を遮るかのように、晋の居た地点で爆発が起きる。その爆発は、壁ごとドアを壊し、吹き抜け状態にしてしまった。
「!! しまった!?」
昨晩の事を覚えている支取達が慌てて駆け寄るも、既に晋の姿はなく、あるのは筋肉や内臓の残骸のみだった。そして、爆発の中心部と思われる場所にメモ書きが置いてあり、それにはこう書いてあった。
『あんたらが何度俺を訪ねて吐かせようとしても、出せる答えは変わらねぇ。そしてもう一つ、本当に静かに暮らさせろ、目的はそれ一つだ。納得いかないなら毎日でも来ればいい、くどい様だが俺が出せる答えは変わらねぇよ―――――
――――俺は本当に何も知らねぇし、自分が何なのか知る気もない』
後書き
ヒロインは決めるべきでしょうか? (晋の容姿と性格、能力的に彼女が出来そうもないですが)
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