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八条学園怪異譚

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第四十八話 薔薇園その十二

「いるでしょ、サイコ殺人鬼とか」
「ああ、何かちらって聞きます」
「猟奇殺人とかですよね」
 二人は茉莉也の言葉にそうした輩、シリアルキラーだのそういった連中のことを思い出した。二人もその話を聞いているのだ。
「バラバラ殺人とかですよね」
「それも何人にもする」
「そんなのもいるのよ」
 茉莉也もだ、流石にそうした存在については顔を顰めさせて言う。
「世の中にはね」
「ううん、そういう奴は人の心がですか」
「ないんですね」
「それはもう化物よ」
 妖怪ではない、そうした存在だというのだ。
「妖怪さんはそういうことはしないから」
「いい妖怪さん達はそうですね」
「この学園位いる様な人達は」
「そう、大事なのは心よ」
 あくまでだ、そこが肝心だというのだ。
「だから二人共いいわね」
「心を見るんですね」
「その相手の」
「そうよ、まあ私はね」
 真面目な話はここで終わりだった、そして。
 二人の身体を抱き寄せたままだったがそのそれぞれの胸を両手で掴んで触ってだ、にんまりとして言うのだった。
「うんうん、二人共いい胸してるわね」
「あの、そこでなんですか?」
「そのお話ですか?」
 二人はその茉莉也に困った顔で返した。
「あの、ちょっと」
「それはないんじゃ」
「何よ、こうしたら悪いの?」
「いつもこうして胸触りますけれど」
「お尻も脚も」
 二人は困った顔のまま茉莉也に返す。
「最近お酒飲まなくてもですけれど」
「セクハラしてきますよね」
「スキンシップだからいいじゃない」
 女同士のそれは、というのだ。
「そうでしょ」
「別にそうは思わないですから」
「そうしたことは」
「やれやれね、まあ今回は相手がもう一人いるから」
 茉莉也は二人から離れてだこうも言った。
「いいわよ」
「その妖精さんですか」
「お花の」
「植物園にもいたでしょ」
「あっ、そういえば」
「いました」
「あの人よ」
 まさにその精だというのだ。
「あの人は元々ここにいるのよ」
「そうだったんですか、ここがあの人のお家だったんですね」
「いるところだったんですね」
「そうよ」
 まさにここが、というのだ。
「あの人のいる場所なのよ。お家は園芸部の部室だけれどね」
 それでも大抵はここにいるというのだ。
「それでだけれど」
「はい、それで何処ですか?」
「その人は何処におられるんですか?」
「ここよ」
 この言葉と共にだった、早速。
 緑の丈の長い薄い生地の服に薔薇色の艶やかな腰までの髪とそれと同じ色の瞳の美女が出て来た、顔立ちはギリシア彫刻の様だ。
 その美女が出て来てだ、二人に手で挨拶をしてきた。
「お久し振り」
「はい、お久し振り」
「お元気そうね」
「ええ、相変わらずよ」
 にこりと笑ってだ、薔薇の精霊は二人に答えた。 
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