八条学園怪異譚
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第四十八話 薔薇園その十一
「というかもっと言えば妖精と妖怪の区分もね」
「あまり、ですよね」
「実は」
「そう、殆どないというかないと思って構わないから」
「その辺りわかってきました、私達も」
「最近」
「でしょ?妖怪さん達と一緒にいるとね」
自然とだ、そうしたことがわかってくるというのだ。
「そうした区分が大したものじゃないってわかるのよ」
「それで妖怪さん達と人間もですね」
「その区分も」
「そんな垣根何でもないのよ」
茉莉也は二人にあっさりとした感じで述べていく。
「というか神人和楽ともいうしね」
「神人和楽!?」
茉莉也の今の言葉にはだ、二人は思わず目を丸くさせた。そのうえでその言葉の意味を茉莉也にすぐに問うた。
「あの、その言葉って」
「どういう意味ですか?」
「ああ、まず神様と妖怪さん達の区分から話すわね」
そこからだというのだ、今茉莉也が話すのは。
「妖怪さん達と神様達の区分もこれがかなり曖昧なものでね」
「日本でも他の国でもですか」
「そうよ、ケルトでは神様の成れの果てみたいなのが妖精なのよ」
茉莉也は聖花の問いにこう返した、
「日本でも神様が何時の間にか妖怪さんになってるってことがね」
「あるんですか」
「そうなんですね」
「そうよ、天狗さんなんかそうでしょ」
茉莉也の神社にもいる彼等だ。
「妖怪だけれど敬われてたりするでしょ」
「確かに。言われてみると」
「神通力もありますね」
「そうよ、一緒なのよ」
こう話すのだった、二人に。
「だから妖怪さんと妖精さんの区分もなくて」
「妖怪さんと神様もですか」
「区分がないんですね」
「それでね」
このことからだ、さらに話す茉莉也だった。
「神人和楽って言葉はね」
「はい、その言葉はどういう意味ですか?」
「はじめて聞いた言葉ですけれど」
「元々は天理教の言葉よ」
八条学園の中にも教会があるこの宗教の言葉だというのだ、天保九年十月二十六日にはじまった宗教である。
「あの宗教の神様と人間が共にいてこの世の暮らしを楽しむという意味だと考えればいいわ」
「神様と人がですか」
「一緒にですか」
「あの宗教の教えは陽気暮らしっていうけれど神様が人がそれを見て楽しむっていう考えなのよ」
「それで神人和楽ですか」
「そういう意味ですか」
「そうよ、そういう意味の言葉よ」
茉莉也は二人に砕いて話し二人も茉莉也のその説明に頷く。
そうしてだ、二人は茉莉也の言葉を聞いてこうお互いで話した。
「何か神様と人間の垣根もなくて」
「それじゃあ妖怪さん達と人間もですね」
「そんなに変わらないですね」
「そうですよね」
「つまりは」
「そうよ、要するにあれよ」
茉莉也は二人に話す、こうしたことについては流石に確かである。
「妖怪さん達でも人間でもね、人の心があるかどうかよ」
「人の心ですか」
「それが大事なんですね」
「そうよ、人間でもね」
「生物学にそうでも」
「人間の心がないと」
「それでもう人間でなくなるわ」
そうなっては、というのだ。
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