ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
従姉
紺野 木綿季は、小日向 蓮の母方の弟の子供、すなわち従姉になる。小さい頃に両親が亡くなり、年がかなり離れていて、もう社会人の兄がよく家にいなかったから、僕はいつも独りぼっちだった。
そんな時、木綿季はよく兄と二人暮らしをしていた、おんぼろアパートに来て、身の回りのことを大抵してくれた。まぁ、料理だけが絶望的に下手だったので、晩ごはんだけは僕が作っていたのだが。
そんな木綿季が目の前にいる。僕、レンは半笑いで驚くというアレな表情で、固まってしまった。
「蓮、ホントに蓮なの?」
木綿季の戸惑ったような声にようやく気がついた。そして、何が目の前にあるか、全て把握した。
「……………っ!!」
そして、レンは木綿季の、現実世界と変わりない華奢な右手首を掴んだ。驚いた顔をした木綿季に構わず、レンは荒れ狂う人垣を縫って足早に歩き出した。
どうやら集団の外側付近にいたらしく、すぐに人の輪を抜ける。そして、広場から放射状に広がる路地の一本に飛び込んだ。
「………木綿季ねーちゃん、何でここにいるの?」
絞り出した声は小さく掠れていた。
「………いや、あの、蓮がこのゲーム、やるって言ってたから。一緒にやろうかなって……………」
奥歯をギリッと噛み締める。
──僕の、せいか──
そう思いながら、レンは最大限真剣な声で言った。
「………木綿季ねーちゃん、よく聞いて。僕はすぐにこの街を出て、次の村に向かう。」
いつものんびりとしている僕が真剣な声を出したからか、ぴくっと木綿季の肩が震える。
それを少し痛ましい思いで見ながら、レンは押し殺した声で続ける。
「あの赤ローブの言葉が全部本当なら、これからこの世界で生き残っていくためには、ひたすら自分を強化しないといけないんだ。木綿季ねーちゃんも分かってると思うけど、MMORPGっていうのはプレイヤー間のリソースの奪い合いなんだよ。システムが供給する限られたお金とアイテムと経験値を、より多く獲得した人だけが強くなれる。…………この【始まりの街】周辺のフィールドは、同じことを考える人達に狩りつくされて、すぐにリソースがなくなる。モンスターの再湧出をひたすら探し回ることになる。今のうちに次の村を拠点にしたほうがいい」
木綿季はレンの長ったらしい台詞を、身動きせずに聞き終えた。
そして数秒後、僅かに怯えが含まれた声を発した。
「ね、ねぇ。蓮、さっきのって………」
「どうするの?」
レンはその声を低い声で遮った。
木綿季は何かを言いかけたが、言葉を呑み込み、いつもの明るい、無邪気な笑顔を浮かべた。
「…………分かった。よろしくね。蓮」
そう言って、ふと何かを思い出したように、右手の指を二本揃えて真下に振り、メインメニューウィンドウを開き、何かを操作した。
そして、レンの目の前に鈴のサウンドエフェクトとともにウィンドウが開く。
そこには───
『Yuukiからフレンド申請がなされました。承認しますか?』
迷わずイエスボタンを押す。
そして、レンを意地悪く言う。
「えぇー、木綿季ねーちゃん、本名そのまんまキャラネームにしたの?」
それを聞き、木綿季、ユウキは唇を尖らせて返してきた。
「それ蓮が言う?」
そうして笑い合いながら─レンは苦笑だったが─ 二人は握手をした。
「よろしくね。ユウキねーちゃん」
「こちらこそよろしくね。レンホウ」
「あっ、レンって呼んでねー」
────二〇二二年十一月六日、ゲーム開始────
─────────────────────────────────
───── 面白い ─────
そこは、真っ白な空間だった。
その空間に無限と言える数のウィンドウが浮かんでいた。
そんなウィンドウの群れの中心に一人の男がいた。
その男は真っ黒なタキシードを着ていた。
その男の目の前には、二つのウィンドウが浮かんでいる。
一つには、悪趣味なバンダナを巻いた友人と別れる少年が、もう一つには、知り合いと思われる少女と握手をしている幼い少年が映し出されている。
─────真に面白い。あやつがここまでやるとは思ってな
かったが、それにすぐさま対応し、行動するとは─────
そこで、男は背後を振り向いた。
そこには、二人の幼い少女が浮かんでいた。
どちらの目も閉じられて、眠っているように見える。
─────さてさて、姫の器に合う者なのだろうかな?─────
そう言った男の口元に笑みが浮かんだ。
─────────────────────────────────
デスゲーム。
明確な定義のある言葉ではない。《肉体的リスクの存在する競技》ということなら、格闘技やロッククライミング、モータースポーツなどまでが含まれてしまう。それら危険なスポーツとデスゲームを分ける条件は、恐らくたったひとつだけだろう。
ペナルティとしての死が、ルール上に明言されていること。偶発的事故の結果としてではない。プレイヤーのミスや敗北、ルール違反の罰として、強制的な死を与える。つまり殺す。
その前提に立てば、この世界初となるVRMMORPG《ソードアート・オンライン》は、今や紛う事なきデスゲームと化した。ゲームの開発者にして支配者である茅場晶彦自身が、ほんの二十分前に、疑いようのない明確さで宣言したからだ。
HP(ヒットポイント)がゼロになる───つまり《敗北》すれば殺す。あるいはナーヴギアを外す───つまり《ルール違反》をしても殺す、と。
現実感はない。あるはずもない。頭の中では、今も無数の疑念が渦巻いている。
解らない。理性では理解できない。
しかし、同時に本能では悟っている。
──茅場晶彦の言ったことは全て真実だ──
そう信じたがゆえに、ユウキ──紺野 木綿季は、いま懸命に走っている。
広大な草原の真ん中を、二人で。
この世界で初めてできた友人とともに。
浮遊城アインクラッドは、百に及ぶ階層が薄く積み重なって構成されている。下部ほど層が大きく上部に行くほど小さくなるため、城全体としては円錐形だ。最大となる第一層の直径は、実に十キロメートルにも及ぶ。主街区、つまり 第一層最大の都市である【始まりの街】は、層の南端に直径一キロの半円を描いて広がる。
街の周囲には高い城壁が築かれ、モンスターが侵入することは一切ない。また、街の内部は《犯罪禁止コード》に保護され、プレイヤーのリアルな生命残量たるHPは一ドットたりとも減らない。言い換えれば、【始まりの街】に留まってさえいれば安全、絶対に死なない、ということだ。
しかしレンは、茅場晶彦のチュートリアルが終了したほぼその瞬間に、街を出ると決断していた。
理由は幾つかある。《コード》の永続に自信が持てなかったこと。必ず生まれるであろうプレイヤー間の不和や不信を忌避したかったこと。そして、骨の髄まで染みついたMMOゲーマーとしての、レベルアップへの執着。
もちろん、自分の剣で百にも及ぶボスモンスターを斬り倒し、このゲームをクリアしてやろうなどという勇者願望を持っていないと言えば嘘になる。そして、自分と同じようなことを考える者は少なからず──最低でも千人以上はいるはずだ。彼らはいずれ、単独にせよ街を出て、周辺の弱いモンスターを狩り、経験値を稼ぎ始めるだろう。レベルを上げ、装備を更新し、強くなっていく。
そこで二つ目のセオリー。
デスゲームでは、プレイヤーの敵はルールや罠、モンスターだけとは限らない。同じプレイヤーも敵となり得る。
このSAOは、街の外すなわち《圏外》ではPK(プレイヤーキル)有りだ。と言っても、殺すまではしないだろうが──それは本当の殺人になってしまうのだから──、武器で脅してアイテムを奪い取るくらいのことをする人間が一人も出てこないとは、残念ながら確信できない。敵になる可能性のある誰かが、自分より圧倒的に高いステータスを備えているという状況を想像しただけで、リアルな危惧と恐怖が口中を苦くする。
以上の理由から──。
【始まりの街】に留まり、安全と引き替えに己の強化を放棄するという選択肢は、レンには有り得なかったのだ。
そしてレベルアップを目指すなら、ぼんやり立ち止まっている時間はない。街周辺の比較的安全な草原フィールドは、同じく《動くと決めた者たち》ですぐにいっぱいになってしまうだろう。SAOのモンスター湧出は、エリアごとに一定時間で何匹までと決められている。最初の獲物が狩り尽くされた後は、次のPOPを探して血眼になり、時として他人と奪い合わねばならなくなるはずだ。
それを回避し、高効率のレベリングを図るなら、《比較的安全》の先──《少し危険》なエリアを目指す必要がある。
もちろん、初めてプレイする、右も左も解らないゲームの中ならそれは自殺行為だ。だが、今のレンにそれを構っている暇はない。
【始まりの街】の北西ゲートを出て、広い草原をそのまま突っ切り、深い森の中の迷路じみた小道を抜けた先に、【ホルンカ】という名の村がある。小さいがちゃんと《圏内》で、宿屋と武器屋、道具屋があり、充分に狩りの拠点に使える。
ホルンカの村を拠点に、今日中にできるだけレベルアップする。いま、時刻は午後六時十五分。周囲の草原は、アインクラッド外周から差し込む夕日で金色に染まり、彼方に見えてきた森は宵闇に薄青く沈んでいる。
あそこで日付が変わるまでひたすら狩りを続ければ、村が他のプレイヤーで埋まる頃には次の拠点へ移動できるだけのステータスと装備を得られるだろう。
「…………利己的もいいとこだな…………………」
全力で走りながら、レンは街を出て初めて、そう口に出して呟いた。
傍らで同じく全力で走るユウキが疑念の視線を向けてくるが、気づかないふりをした。
それと同時に、少し先の草むらに、青イノシシが一匹POPした。非攻撃的モンスターなので草原を抜けるまで全部無視するつもりだったが、衝動のままに初期装備の簡素な短剣を腰のところにぶら下がっている
鞘から抜き放つ。そのまま単発ソードスキル《バレント》を発動させる。
同時にユウキも腰のところにさしていた直剣を抜き放ち、臨戦態勢をとる。
ターゲットされたことに反応し、イノシシはレンとユウキを交互に睨むと、右の前足で激しく地面を掻いた。
突進攻撃のモーション。ここで怯み、スキルを停めると逆に大ダメージを喰らってしまう。自分への苛立ちと冷静さの入り交じった気持ちでレンはモンスターを凝視し、弱点である首の後ろを照準しつつ技を放った。
短い刀身が仄かな緑色に発光し、鋭い効果音とともに仮想体が半ば勝手に動く。ソードスキル特有のシステムアシストが、斬撃モーションを強力に補正しているのだ。動きのモーメントに逆らわないように注意しながら、蹴り足と右腕を意図的に加速し、技に威力を上乗せする。
レベル1のステータスと初期装備のスペックはもちろん貧弱極まりないがが、威力をブーストした《バレント》が弱点にクリティカルで命中すれば、一撃で青イノシシ──正式名『フレンジーボア』のHPをぎりぎり削りきれる。
そこでユウキがイノシシのたてがみ部分に単発ソードスキル《スラント》を叩き込むと、全長一メートル二十センチほどの野獣は後方に大きく弾き飛ばされた。
「ギイイィィィィッ!」
悲鳴を上げつつ地面にバウンドし、空中で不自然に停止する。バシャアッ!と激しいサウンドおよびライト・エフェクト。イノシシは、青い光の中、幾千ものポリゴン片となって爆散する。
加算される経験値、ドロップした素材アイテム名の表示には目もくれず、それどころか足さえ止めずにレンとユウキは漂うエフェクト光をそのまま突っ切った。爽快感は欠片もなかった。
ダガーを腰の鞘に勢いよく滑り込ませ、ようやく近づいてきた暗い森に向かって、敏捷力ステータスの許す限りの速度で走り続けた。
後書き
なべさん「さぁ!始まりました。そーどあーとがき☆おんらいん!」
レン「本当にソレ続けるんだ。」
なべさん「さて、今回は前回ただキーを打つのが疲れたという理由だけで説明してなかったユウキをどうして出したのかということを言っていきたいと思います」
レン「あれってそんな下らない理由で溜められたの?」
なべさん「えー、まずユウキはですねぇ──」(この後、延々とユウキについて語るが、省略)
レン「ふぁーあ、腹減ってきたな。ピザでも食うか」
数十分後
なべさん「──だからさぁ、ユウキはね──」
ピンポーン
ピザ屋「ピザ、お届けにあがりましたー」
レン「あ、はいはーい」
バサッ(読みかけの漫画を置く音)
ガチャッ
ピザ屋「はい、2400円になります」
レン「はいはい」
なべさん「──ユウキのどこがいいって──」
ピザ屋「はい、ちょうどお預かりしました。またのご利用をー」
レン「はいはーい。うはっ!いいにおい」
なべさん「ってこら待てぃ!何を食っている。そして何故その手に俺の財布が握られている!!」
レン「まぁまぁ、ピザ食うか?」
なべさん「お、おう。ってこれ、納豆とヨーグルトのトッピングじゃねーか!!」
レン「旨いよ?」
なべさん「食うか!!そして、金返せぇぇぇぇぇ!!!」
レン「えー、というわけでキャラ、感想、どしどし送ってきてくださいねー。それではー」
なべさん「こんの糞ガキぃぃぃぃ!!!逃げんなぁぁぁぁぁ!!!!」
─To be continued─
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