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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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第13次超機人計画

 
前書き
「日常」ってギャグマンガあるじゃん?
あれにさ、シャーペンの、芯が出る方を間違えて親指でノックしようとしてぶっ刺さるっていうのがあるのよ。
あんなの普通おきねーよ。起こしたらそいつとんだお間抜けさんだよ。

そう、つまり俺はとんでもないお間抜けさんだったんだよ(笑) 

 
人と人ならざる者の時が交わる逢魔が時。沈みかけの太陽が人のために張られた天幕を引きずって裏方に引っ込むその空の色の何と不気味なことか。しかし夜というものは否応なしに必ず人の前に姿を現す。
全てを融かしてしまいそうな夜の闇に、融けることの出来ない3つの人影が降り立った。



「転送完了・・・っと。フェイトの残滓は一直線に海岸沿いに向かってるが、ここはその最短コースとちょうど重なる位置だ。あと一分もすれば姿を現すぞ」
「うん・・・バルディッシュ、準備はいい?」
『問題ありません』

必要な情報をつらつらと喋った俺はフェイトの方を横目で見る。緊張はしているようだが臆してはいないみたいだ。本人なりに伝えたいことを頭の中で纏めるにはちょいと時間が少ないが、戦いという場がきっと言いたい言葉を紡ぎ出してくれるだろう。

「そういえばアタシの影っていないのかね?」
「さぁな。そも、殺された未来っつーのも結構曖昧だからな。原作と違う動きや考えを持ってるやつは他にもいるだろうに実際に姿を現した奴はその一握りだ。多分大した違いの無い連中は怨念を持ってないか意志が弱くて淘汰されたんだろ」
「・・・ねぇ、アンタ本当に今回の事件の原因とか出所を把握してないのかい?」

アルフが問う。確かに俺くらいの情報網を持ってる奴は居ないだろうし、大雑把な概要くらいは把握しているが・・・肝心なところは分かっていない。

例えばなのはGODでの闇の欠片たちはその記憶を蒐集したリンカーコアから、体は『永遠結晶エグザミア』から取り込んだエネルギーで実体を得ていると考えられる。システムとして体を為したマテリアルズと違って欠片たちが簡単に消えてしまうは、エグザミアからの直通バイパスが存在していなかったが故のガス欠なのだろう。無論それが意志の力で多少伸び縮みはしただろうが。

だからあの残滓たちが実態を得るのにも大本が存在するはずなのだ。例えあの残留思念の塊が強大な力を持っていたとして、それでもこの世に形を得るには何かしらの力を介在しなければうまくいかないだろう。

「大本を絞り込みはしたんだが肝心の答えが出ない。一人ひとりしらみつぶしに回ってちゃ日が暮れるし・・・」
「そんだけの力を持ってながら肝心なところで役立たずかい・・・」
「ひ、ひでぇ!?」

ひどい、ひどいわアルフ!前世ではしがない大学生だった俺がここまで頑張ってるのにそんな心ない言葉浴びせられるとは思わなかったわ!そもそも俺は金田一少年みたいな推理力は無いんだから見つからなくたって無理はないじゃないの!
余りにもショックだったので霊力で虚空に「の」の字をいっぱい書いて気を紛らわすことにした。

「え、何それ楽しそう!ちょっとやり方教えてよ!!」
「人を役立たず呼ばわりするような子には教えてやんないもんねー!」
「良いじゃんけちー!」
「あーなんかそんなこと言われると教えてやろっかなと思ってたのに気失せたわ~」
「うわコイツめんどくさっ!!」

なお、その間フェイトは既に自分の残滓と戦闘を開始していた。
それでいいのか主人公その一、それでいいのか使い魔。



 = = =



フェイトは頭のどこかで理解している。彼女(ざんし)の進む迷宮にゴールは存在しない。
この世界で自分とプレシアが正しく親子の関係に到れたのは、起こりえない奇跡とやらが起こってしまった結果に他ならない。故に彼女にはそのゴールに辿り着くことが出来ない。

例え彼女がどれだけ必死にジュエルシードを集めようと、今のこの世界には彼女がそれを渡すべき存在すらいない。けれども彼女はそれを分かっていて、それでも止めることが出来ない。

それはある種の呪縛と言える。

親子という関係から思考が離れられない。偽りの記憶と分かっていてもそれを偽物だと思えない。仮に偽物でも、自分の想いに嘘は無いと・・・そう思いたいだけ。

「お母さんが私を捨てるわけがないんだ」

でも、果たしてこの自分自身に私の言葉は届くのだろうか。
さっきからずっと、壊れたボイスレコーダーみたいに場と関係の無い事ばかりを呟いてる。

「だからきっとお母さんはああして私が捨てられたと思い込ませるために・・・」

フォトンランサーが次々に私を襲う。狙いは正確だが、捌けないほどでもない。
冷静に直撃コースのものだけ撃ち落として後は躱した。

「なら、いまから全部のジュエルシードを集めれば、また笑って迎えに来てくれるから・・・」

シャインからある程度、この私がどんな私かは聞いている。
お母さんから拒絶されたときに、私の心の中で死んでしまった私だって。

「そうすればお母さんとアルフとリニスと・・・」

ソニックムーブで先回りされる。死角を突いてきたが、自分も使う魔法なので対応は間に合った。
デバイスがサイスフォームに変形。近接戦闘を仕掛けてきた。

「あれ?アルフはどこ?リニスはいつ、何所に行ったんだっけ」

光彩を失った双眸が私の瞳を覗き込む。これは―――まるで、底なし沼か虚数空間。
目はこちらを見ている。戦闘も考えて行っている。でも心は見えないどこかを見据えている。

「そんな事よりジュエルシードだ」

これは本当に私なの?これが本当に私なの?シャインが居なかったら私もこうなってたの?
お母さんがあのままだったら、こうなっていたのかもしれない。
―――怖い。同時に可哀想だとも思う。

「ジュエルシード、全部集めれば喜んでくれるよね」

魔力刃にブレを感じた。アークセイバーを放つ兆候だ。
先手を打って新魔法「エレクトロショック」を掌から放つ。
魔力を電気に変換して直に相手に打ち込むため、初手の早さは圧倒的だ。

「いっぱいいい子いい子してくれるよ。そしたら昔みたいに優しくして・・・」

それほど威力のある技ではなかったが、それでも彼女はよろめくだけで吹き飛ばされはしなかった。
それどころか息一つ乱さない。ゾッとした。あれは人間と言えるのだろうか。
何か、自分が別の生き物に変わる瞬間を垣間見たような錯覚を覚えた。

「何で今のお母さんは怖いんだろう?」

お母さんが私にひどい事をしてたのは、自分の間違いを認められなかったからだって言ってた。
アリシアは帰ってこないという現実を、しかし私が中途半端に埋めてしまったから。
でもその私を作ったのも自分自身で、考えること自体が辛かったって。

「そうだ、きっとみんなお母さんの邪魔をするから・・・お母さんの邪魔をするんなら私の敵だ」

彼女は私とは違う。でも確かに私だ。
彼女のお母さんは私のお母さんだ。でも、お母さんは彼女のお母さんとは違うだろう。
私たちはきっと同じ存在なのに、どうして枝分かれしなきゃいけなかったんだろう。

「苦しくなんかないし、哀しくもない。傷だってへっちゃらだ」

プラズマランサーが次々に私を追いかけて放たれる。追尾性が厄介だ。
サンダーレイジを利用して魔力刃を爆発させて相殺した。彼女は動揺一つ見せない。

「私がいい子になれば、お母さんもきっともう酷いことしないから・・・」

それでは駄目だ。マイナスにプラスをかけてもマイナスにしかならない。
それを認めないと、彼女はずっとこのまま存在しないものを追い続けてしまう。

「ううん、お母さんは酷くない。私が悪いんだ」

でも何と言えばいい?幸せな私が、不幸せな彼女に。いや私自身に何といえば通じるの?
分からない、分からないよお母さん。お母さんはお母さんの残滓になんて言ったの?

「私いい子にするよ。ジュエルシードを全部集めるよ。アルフと一緒に・・・アルフは何所?」

あ、アルフがシャインと何か言い争ってる。喧嘩は駄目だよ、アルフ。
シャインも何でいじわるするかなぁ。

「私悪い子だから、アルフも愛想を尽かせてどこかに行っちゃったのかなぁ」

そういえば、私ってお母さんと喧嘩したことない。前はいつも顔色を伺ってた。
でも、言わなくちゃ理解できないことがあるのは私も母さんも知ってる。
だからきっとこれからの人生では、喧嘩することもあるのかもしれない。

「リニスもきっと、同じことを思ってどこかへ行っちゃったんだ」

それって私が悪い子なのかなぁ?案外、普通の事なんじゃないのかな?
なのはちゃんだって「秘密の特訓」って言ってたし。
隠し事は悪い事って言うけど、隠し事の内容にもよるんじゃないかな?

「私のせいでお母さんは寂しいのかな」

空から小さな雷が無数に降ってきた。サンダーフォールを仕込んでいたみたいだ。
考え事が多かったせいで一撃当たりそうになったが、バルディッシュがプロテクションで逸らしてくれた。

「なら私がお母さんの寂しさを埋めてあげなきゃ・・・」

ねぇ、貴方(わたし)。そのジュエルシード集め、本当にやらなきゃダメかな?

「だって私は」

ちょっと、心の中でもいいから異議を唱えてみない?

「お母さんの胎から生まれた子供だもん」

そう言うの、どうでもいいよ。本当に家族だったらこんな所で遠慮なんてしなくていいよ。

「アリシアなんてしらない」

左腕をバインドで固定された。続いて足も。
煩わしかったから広域破壊魔法「サンダークラッシュ」で弾き飛ばした。

「お母さんの子供は、フェイト・テスタロッサ一人しかいないから」

もう、お母さんが大事なのはわかるけど、他にも大事なことあるでしょ?

「アリシアなんて子はいない」

だからさ、ちょっとでいいから―――

「私は愛されてるから」

・・・―――





「人の話をぉ、聞けぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!」

「・・・えっ?あ―――」

ずばしゅぅぅぅぅぅぅぅんッッ!!!

戦いながら説明するのが面倒になって、ありったけの魔力を込めたザンバーで彼女を下に叩き落とした。

「―――ふう!やっぱり言葉だけじゃ変わらない事ってあるよね!」



 = = =



「おおう、強烈だね」
「そうそう、難しく考えることなんて無かったんだよ。先ずはぶっ飛ばす!話はそれから、ってね!」

また一つ成長したようでお兄ちゃんは嬉しいですよ。
魔導師は魔力と魔力のぶつかり合いで会話するのです。俺、魔法使えねーけど。

「あん?何寝ぼけたこと言ってるんだい、さっきから虚空に落書きしかしてなかったくせに!」
「いーじゃん落書き!楽しいもん!」

俺が小中学生の頃には教科書やノートに落書きたちがダンシングフィーバーしてたんだぜ!?辞書に下らねーパラパラ漫画描き込んで友達に見せて盛り上がったりさぁ!あぁ!?どうでもいいとは何だコラ!俺達の青春を馬鹿にするやつは許さねーぞオラァ!!


「おーい、時空管理局のクルト・ルナエッジ上等空士だ・・・・・・って、聞いてねえなコイツら」

俺とアルフの果てしなく低レベルな論争は、その後まもなく時間の無駄を感じたクルト君の魔法が炸裂するまで続いた。

余談だが、俺の障壁とアルフの障壁を一発で吹き飛ばしてみせたクルト君は結構おかしいと思う。
 
 

 
後書き
今回も少しばかり長くなっちまった。

クルト君は非常に珍しい魔力変換資質を持ってます。その名も”衝撃”。その関係で彼は防御破りや大質量の物体の破砕に関してはべらぼうに強いです。対人戦も相当強いのですがバトルスタイルの性質上ベルカ式近接戦魔導師とは相性が悪いです。(負けるとは一言も言ってない)・・・十傑集の人とは関係ないよ? 
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