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万華鏡

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第四十七話 運動会が終わってその十一

「あの、北の方の独裁国家の」
「ああ、いつも揉めごと起こしてるあの人攫い国家か」
「そう、あの国の前の将軍様だけれど」
「不細工だったな」
 酒が入っているので思いきり言う、それでこう言ったのである。
「急に死んだな」
「そうよね、その将軍様が裸で集団で襲って来たらどうかな」
「そんなの誰も見たくないな」
 父は娘の問いに即答した。
「夢でも見たくないな」
「やっぱり」
「あんな顔は何処かのインチキ宗教の教祖の顔と同じ位な」
 見たくないというのだ。
「絶対にな」
「普通そうよね」
「あんなが集団で裸か」
「それで周りから襲い掛かって来るの」
「心臓の弱い人間ならそれだけでショック死するな」
「刺激が強過ぎて」
「あやめ池のそれがベニテングダケなら」
 かなり悪質な中毒症を引き起こす、毒キノコは昔の漫画の様に笑って終わるものではないのだ。救いようのないものもある。
「それは河豚だな」
「死ぬっていうのね」
「ああ、それも何人もな」
 河豚の毒は一匹で二十人は殺せる、そこまで強いのだ。
「それ位酷いな」
「じゃあしない方がいいわね」
「間違ってもな」
 父もこう言うのだった、先代将軍様の団体については。
「想像するだけで吐き気がする」
「ううん、じゃあ奈良県のマスコットは」
「あれも駄目だな」
 こちらについても即答だった。
「気持ち悪いにも程がある」
「そうよね、どうしても」
「まあ考えるだけでもよくない」
 精神衛生的にというのだ。
「そこまで行くと一目見たら死ぬまで忘れられないからな」
「じゃあ普通がいいわね」
「本当に死ぬ人が出そうだからな」
 所謂ショック死である。
「そこまではな」
「やり過ぎないっていうのね」
「何でもやり過ぎるとな」
 よくない、父は娘に言う。
「特に心臓に負担がかかることはよくない」
「ううん、それじゃあね」
「普通がいいんだ」
 あくまでだというのだ。
「普通の怖さでな」
「わかったわ、それじゃあね」
「そんな下手な妖怪よりインパクトがあるのはな」
 先代将軍なり奈良県のマスコットなりはというのだ。
「止めるべきだな」
「そうよね、それにしても奈良県って」
「もうあやめ池も奈良ドリームランドもない」
 父はこのことは寂しい顔で少し俯いて述べた。
「何もない」
「寂しいわね」
「しかしあのマスコットはいるな」
「それっていいことなの?」
「ネットで奈良県の人の意見を聞いてみればいい」
 そこにもう答えが出ているというのだ。
「あまりというか全くな」
「評判悪いのね」
「あんな気持ち悪いマスコットはいないからな」
 ゆるキャラらしいがとてもゆるキャラには見えない、はじめて見た瞬間に奈良県民達はこれ以上はないまでに嘆き悲しんだ。 
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