転生者が歩む新たな人生
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第43話 修学旅行-3日目-その3
前書き
書けました。
さて、小太郎にボコにされたネギが本山に連れ込まれ1時間程経った。
治療符や治癒呪文によりネギの傷も癒えたようで、ネギや桜咲、神楽坂といった親書届け組と、宮崎、朝倉などの追加組と同様に大広間に案内される。
巫女さんが部屋の片隅で雅楽を奏で、組織の詠春派と見なされる連中とごく一部の中立派---神鳴流の人などを含む---が横に座る中、正面上座に向かってネギ達が座る。
オレはもちろん、神鳴流の人達の中に紛れるけどね。
で、隠蔽に特化したサーチャーを幾つかこの大広間に飛ばす。さっきのネギと小太郎の戦いとは違い結界の中でも距離が遠いと言うこともないので、今回は映像だけではなく音声も拾えるサーチャーだ。
………。
当然今回の一部始終をこの場にいない関係者に流すためなんだけどね!
☆ ★ ☆
関西呪術協会の長である詠春殿が上座にある階段から降りて来る。
「お待たせしました。ようこそ明日菜君、このかのクラスメイトの皆さん。そして、あー、ネギ君」
ネギは教師見習いなのでどう呼ぶか詠春殿も困ったようだ。
正面に座っていたネギが挨拶もせずに緊張した面持ちで、肩に使い魔であるカモを乗せつつ、親書を取りだし近づいていく。
「あ、あの。長さんこれを………。東の長麻帆良学園学園長近衛近衛門から西の長への親書です。お受け取りください」
いや、ネギよ。近衛門は関東魔法協会の理事ではあるけれど、長じゃないぞ。見ろ。オレの周りの半数はあきれた目で見てるぞ。
「確かに承りました、ネギ君。大変だったようですね」
………。おーい、詠春殿。ネギの間違いはスルーですか?
まぁ、とりあえず、詠春殿が親書を確認するので、こっそり親書の内容をサーチャーで確認する。
旅館で確認はしているが、万が一内容が違うかも知れないしね。
もちろん、内容は変わらず、その1枚目は「下もおさえれんとは何事じゃ。しっかりせい、婿殿!!」とディフォルメされた学園長が「ぷんすか」と怒っているイラスト付きだ。
身内間ならともかく、組織の長と長の間でやりとりされる書簡ではなく、本来なら「ふざけるな」と破き捨てるぐらいの態度を取らないといけないレベルで愚弄されている内容だ。
そして内容が内容なのでこの書簡に対する態度が詠春殿、否、関西呪術協会の先を決めることになるだろう。
そう木乃香にも、事前に親書の内容がわかった時点で伝えてある。
果たして詠春殿はどうするのか?
「いいでしょう。東の長の意を汲み、私達も東西の仲違いの解消に尽力するとお伝えください。任務ご苦労!! ネギ・スプリングフィールド君!!」
「ハイ!!」
ガタガタッ。
詠春殿の返事と共にオレの周りに座っていた人は一斉に席を立つ。そして何も語らず大広間から出て行く。
残ったのは詠春派の人らだけだ。
その意味がわかったのだろう。ネギの周りに生徒達が集まる中で、唯一木乃香だけがうつむいて座ったままだ。
そう、この時点で詠春殿を頂点とする関西呪術協会は終わったと言える。
詠春さんがネギ一行に向かって「歓迎の宴をする」とか言っているが、早ければ今日の零時必着で傘下団体からの脱退届が届くだろう。
少なくとも中部魔術協会と神鳴流からは確実に届く。
それに前後するカタチで強硬派の襲撃があるかも知れない。
今回の親書の件はそれほどの内容だ。
何にしろ他はともかく、綾瀬と早乙女は一般人だ。さっさと旅館に連れ帰らねば。
………。
ダメだ、こいつら。
話してみても日本語が通じん。
なんで、旅館に戻るという団体行動が取れないんだ?
ネギはどうでもいいさ。元々修学旅行の随員から外されたんだから。
なのになんで木乃香が「修学旅行中なんやからはよ、旅館に戻ろう」って言ってるのに戻ろうとしないんだ?
詠春さんは詠春さんで「私が身代わりをたてておきましょう」とか言って、符術を使って身代わりを作る気だし。秘匿って言葉の意味がわかっているんだろうか?
まぁ、元々綾瀬ら元図書館組3人は図書館島閉鎖の件で恨まれてるっぽいしな。
とにかく面倒だが学園長に連絡して、「学園長公認で友人宅に世話になることになった」と言質を取り、旅行中の責任者である新田先生に学園長から連絡してもらった。もちろん符による身代わりなんかは断った。
これで一般人の2人に何かあっても学園長と詠春さんに責任を取らせる。
ネギを含む他の6人は自己責任だ。神楽坂、朝倉、宮崎は既にネギの従者または関係者という立場だし、木乃香と桜咲はこの時点で関西呪術協会の関係者だからな。
もっとも木乃香はオレの従者なので何かあったら助けに来るつもりだが。本山の結界があろうと木乃香のデバイス「タケミカヅチ」とオレのデバイス「スサノオ」にラインを繋いでおけば一瞬で転移できるしな。
☆ ★ ☆
さっさと本山を出て、旅館に戻る。
ネギと明日菜らが学園長公認で木乃香の実家に泊まると伝えると、雪広らがぎゃぁぎゃぁうるさかったがどうにか静かにさせる。
なお、瀬流彦先生ら魔法先生にもネギが親書を届けたことは話しておいた。
「これで東西和平がなる」
とか喜んでいたので、
「だからこそ、不平不満分子の強硬派がここを襲撃するかも知れませんね」
と釘を刺しておいた。せっかくあと2日で修学旅行も終わるのにここで油断されてミスされてもつまらんからね。
当然エヴァや茶々丸、春日、龍宮、長瀬、古ら魔法関係者や警戒要員にも伝えた。旅館を中心に守るだけなら充分な布陣だな、エヴァが動かないとしても。
☆ ★ ☆
さて、人数のせいか幾分常よりも騒がしくなかった食事も終わり、まったりしていると木乃香から念話が入る。
「暁くん、お父さまが! みんなも!!」
予想通りというか、本山が襲撃されたらしい。
ネギと桜咲とも離れ、木乃香は明日菜と2人きりらしい。
とにかく分身符で分身を作り、分身にこちらはまかせ、木乃香のタケミカヅチとのラインを頼りに転移する。
転移先は何故かお風呂場で、以前会ったフェイトとかいう少年に素っ裸の神楽坂がハリセンで殴りかかる所だった。
そして、なんかお風呂場の水の触手に捕まった。
とりあえず、木乃香はフェイトの使い魔らしき悪魔に運ばれていったので、もう一度転移で追う。
と、外に転移したと思ったら、木乃香の攻撃---リニス直伝のサンダースマッシャーか?---で使い魔が還っていった。
うん、まぁそうだよね。
木乃香が本気を出せばフェイトはともかくその使い魔ぐらいは瞬殺だわな。一応、周りに人がいたので魔法は伏せていたのか。
と、そんなことを考えながら木乃香と合流する。
浴衣なのかな、ともかく動きにくそうなのでデバイスを通してバリアジャケットを着てもらう。木乃香のバリアジャケットは麻帆良の制服をちょっとアレンジした感じだ。
木乃香を落ち着かせるためにも詳しい事情を聞くと、予想通りというか、本山の結界を過信してフェイトに襲撃を喰らい詠春さんをはじめ、軒並み石化させられたようだ。
まぁ、本山には詠春派の人しか残っていなかっただろうし、戦力的には本来の10分の1もなかったろうしな。
そんなんで過信すんなよ、て話しだが。
とかそんなことを2人で話していると、
「君もいたのか」
とフェイトがやって来る。どうやら木乃香が倒した使い魔の痕跡を辿ってきたらしい。
木乃香を後ろに庇い、スサノオ---日本刀形態---を構える。多分木乃香もタケミカヅチ---手袋形態(なのはStsのキャロのブーストデバイスのようなカタチ)---で構えているだろう。
「おかしいな。西の姫は魔法を使えないと聞いていたんだが………。まぁいい。暁君と言ったね。以前の話しは君の言ったとおり、君の魔力は始祖の魔力足り得ない。なので君には正直もう興味はない。ここで西の姫を渡してくれるなら見逃すが、どうだい?」
「もちろん、断る。」
「まぁ、そうだろうね」
そう言うや否や瞬動を使いフェイトが飛び込んで来る。が、まぁ、余裕で裁ける範囲だ。拳や蹴りをスサノオで受け、隙を見て斬りかかる。
しばらくの間接近戦でやり合うが埒があかん。攻撃をくらいはしないが、こちらも当てることができない。
お互い様子見感がバリバリだ。
少し離れてフェイトが呪文を交えて攻撃してきても、余裕で対応できるし、ぶっちゃけ危なくなっても木乃香の防御呪文がある分こちらは余裕があったりする。
「2対1だからこっちの負けはないぜ」
と、ちょっと挑発してみる。
「そのようだね」
うん、これで帰ってくれると良いなぁ。
「なら、こっちの数を増やそうか」
そう言ってフェイトは使い魔らしき悪魔を10体以上同時召喚する。
もちろん、召喚中は隙ができるので斬りかかる。強力な魔法障壁があるので一気に大ダメージとはいかないがそこそこのダメージを与えてやった。
口の中を切ったのか、制服? の袖で口をぬぐいつつフェイトが告げる。
「やってくれたね。だがこれで14対2だ。やれ」
どうやら13体の悪魔を召喚していたらしい。一斉に羽根を広げこちらに向かってくる。
「「フォトンランサー。ファイア」」
しかし、甘い。甘すぎる。
フェイトの召喚中に既に準備は終わっていたんだろう、木乃香の周囲の幾つもの宙に浮いたマジックスフィアから電撃の槍が撃ち出される。
しゅーうーりょーう。
まぁ、あの程度なら木乃香に寄れば瞬殺である。
さすがに木乃香の攻撃魔法に驚いたのか、唖然としているので、直ぐに斬りかかる。
と、肩口から左腕を斬り落としたがそれだけだ。
肩から血が出るでも無し、あまりダメージは見受けられない。
「これはまいった。意外に手間取るな」
余裕を崩さずほざくフェイトにいっそう警戒心を持ち、スサノオを構えて対峙する。
「待てー!」
ネギが神楽坂と杖に乗って飛んで来る。桜咲も虚空瞬動で跳んでついてきている。
「【石の息吹】」
ネギと神楽坂が颯爽と杖から降りたところをフェイトの石化呪文が襲う。
あーあ。
どうもまったく警戒してなかったらしい。
録にレジストもできずにネギが石化する。
神楽坂は服だけ石化した。
「ネギーっ!?」
「ネギせんせぇ!」
「ネギ君っ?」
神楽坂、桜咲、木乃香が叫ぶ。
「まだまだだね」
そう言い残してフェイトはネギに気を取られた木乃香の脇に転移し、腹パン一発、木乃香を気絶させて右腕だけで木乃香を担ぎ、宙へと跳ぶ。
「お嬢さまー!」
桜咲が刀を抜いて宙に浮くフェイトに斬りかかるがあっさり躱される。
どうやら転移に割り込まれるのを嫌い、虚空瞬動で距離を取ってから転移するつもりらしい。
バックステップをするように大きく跳んで距離を取る。
まっ、無駄だけどね。
「召喚。暁の従者、近衛木乃香!!」
木乃香とは仮契約をしているので、ある程度の距離なら召喚できるから。
目を白黒してフェイトとこちらを交互に見ている桜咲。
「桜咲、木乃香の護衛を!」
「わ、わかりました」
とりあえず、気絶している木乃香は桜咲に託して、その前に改めてスサノオを構えてフェイトと対峙する。
「ハハハハハッ。仮契約とはね。これはまいった。仕方ない次善の策に移るとしよう」
そう言ってフェイトの姿が消える。
直ぐに「円」を使って近くに転移したらわかるように対処する。
が、フェイトが転移したのは石化したネギの所だった。
それからはことは一瞬で終わり、慌てて裸でハリセンを構えた神楽坂を張りとばし、石化したネギを持ってフェイトは転移していった。
あれ?
どうしよう………。
後書き
とりあえずフェイトとの第2戦。
後衛に強力な木乃香がいるので余裕の戦いでした。
そして木乃香の代わりにネギが攫われました。
暁はどうすればいいんでしょう?
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