悲しきアウトサイダー
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3部分:第三章
第三章
「それこそ朝までな」
「そりゃ明日の仕事につかえるだろうが」
「まあそうだけれどな」
「どうしても飲むっていうんならな」
「この後か朝に酒を抜け」
仲間達に言われた。酒が残っていて流石に仕事にはならない。俺でもそれはわかっていたしこの時は本気でこの後か朝にでもサウナなり走るなりして酒を抜くつもりだった。ところが急に。それをする必要もなくなった。
「ここだったんだ、やっぱり」
「んっ!?」
女の声で顔をあげるとそこにいたのは。何とあいつだった。白いワンピースのお嬢様そのままの格好のあいつが。よりによってこれ以上はないって位場違いなこの場所に顔を出してきていた。俺はあいつの姿を見て。酔いが一気に醒めた。もう酒どころじゃなかった。
「何で御前がここに」
「探したの」
こう言ってきた。静かに。
「まさかとは思ったけれど」
「飲む場所は色々あるけれどな」
「けれどここが一番のお気に入りって言ってたじゃない」
「それでここに来たのか」
「話、聞いたわ」
今度はこう言うのだった。俺と兄貴との話なのがわかる。
「御免なさい、兄さんって」
「気にしちゃいないさ」
ここで言った言葉は嘘だった。
「全然な。だから忘れろよ」
「嘘、忘れられる筈ないじゃない」
「・・・・・・まあ座れよ」
ずっと立ったままだったのを見て声をかけた。とりあえず座らせてからそれからまた話をしたかった。俺なりに気を使った。すると仲間達が席を一つ用意してくれた。
「これでいいかな」
「すいません」
「礼ならいいってことよ」
仲間達は笑って彼女に応えた。
「そんなのはな。まあ話しなって」
「俺達は俺達で飲んでるからよ」
「気を使ってくれてるのか?」
「いや、別に」
笑ってそれは否定する奴等だった。
「ただ席がたまたまあっただけさ」
「気にするなよ」
「気にするなか」
「ほら、だから話しとけって」
「俺達は勝手にやるからさ」
「悪いな」
その心を受けることにした。その間に彼女は俺の向かいに用意されたその席に座ってきた。白いワンピースが何処までも眩しかった。
「兄さん、かなり酷いこと言ったらしいわね」
「別に」
今は飲まずに応えた。
「そんなことないさ。ちょっと世間話しただけさ」
「嘘、兄さん言ってたわ」
今の言葉はすぐに駄目だしされた。やっぱり嘘は通じなかった。
「あんな奴と付き合うなって。そこまで」
「へっ、全部御存知のつもりか?」
「言ったわ、そんな人じゃないって」
俺のことだ。
「けれど、全然」
「聞かねえってんだろ。どうせよ」
「ええ、もう。何があってもって感じで」
「どうせよ。俺はどうしようもねえワルさ」
昔はそうだった。七人で好き勝手やってきた。そんな俺を今更よく思う奴なんているとは思っちゃいない。けれどこいつに出会って変わって会社もはじめて。マジでやってきたつもりだったけれどそれは変わっちゃいなかった。所詮俺はアウトサイダーだったってわけだ。
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