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久遠の神話

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第五十八話 大刀その八

「そういう人だな」
「まああれだけれどね」
 高橋がまた話してきた。
「ギリシアで戦いについて書された本を見つけたらしいけれどね」
「それを読んででしたよね」
 上城もその話は聞いている。
「戦いのこともご存知なんですよね」
「そうだ」
 工藤は上城のその言葉に頷いて返す。
「そう言われている」
「ですよね」
「しかしだ」
「しかし?」
「それにしても知り過ぎているな」
「戦いのことをですか」
「しかも話していないものもあるかも知れない」
 こうも言う工藤だった。
「あの娘はな」
「そうですか?」
「話していることが全てとは限らない」
 工藤が話す現実はその通りのことだった。
「人は隠すことも出来る」
「銀月さんもですか?」
 上城は工藤のその話を聞いていぶかしむ顔になってこう返した。
「あの人はそんな」
「隠す様な人じゃないか」
「とてもいい人ですか」
「それだ。君は隠すことを悪だと思っているか」
「そこが違うんですか」
「ケースによるが隠しておくべき話もある」
 工藤はまた現実を言った。
「話す人間にとっていいか、相手にとっていいか」
「それもケースですか」
「話の内容と話す相手による」
 ケースといっても様々な意味があった。
「それ次第だ」
「隠すこともいいことですか」
「むしろ隠さないとならない場合もある」
「隠蔽にはならないんですか」
「隠蔽か」
「よく言われてますけれど、マスコミで」
「ダブルスタンダードだな」
 工藤はマスコミがよく言う隠蔽という言葉については顔を曇らせてそのうえでシニカルな口調になってこう述べた。
「マスコミは自分達にとって都合のいい話は出せと言う」
「それで都合の悪い話は」
「隠そうとする、自分達の不祥事等はな」
「だからなんですか」
「マスコミの言うことはダブルスタンダードだ」
 彼等の隠蔽への批判はだというのだ。
「報道をする権利もあればしない権利もある」
「それをすれば大変なことになりますね」
「その通りだ」
 まさにそうなるというのだ。
「だからマスコミは腐敗している」
「そういえばネットでよく」
「マスコミへの批判があるな」
「はい、よく見ます」
「人は隠す」
 そしてだというのだ。
「マスコミもまた然りだ。そしてだ」
「この場合は悪い意味で、ですよね」
「隠すことだ」
「隠すことについても善悪があるんですね」
「あの娘の場合は。若しそうならば」
「いい意味であって欲しいですね」
 上城は心から願って述べた。
「是非共」
「俺もそう思う」
「俺もだよ」
 高橋もそうであって欲しいと述べる。 
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