少年と女神の物語
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第十五話
あの後、林姉を強制連行してから席に座らせ、全員で食事をとり、学校に向かった。
林姉は大学生になったため、それ以外の十一人でそろっての形だ。
余談だが、林姉が卒業した際に学校の非公認依林ファンクラブのメンバーが全員三日間学校を休むという大事件や、当時の三年生の中にいた林姉のファンが林姉と同じ大学に行こうと努力し、例年よりも城楠学園の有名校への進学率が高くなったりした。恐るべし、林姉・・・
「そして、巨大なファンクラブが消えたことによって新たなファンクラブが二個三個と・・・」
「どうしました、武双?」
独り言をつぶやいていたら、アテが心配そうな声をかけてきた。
俺は、その首に俺が作ったネックレスが下がっているのを目で確認しながら答える。
「ううん、ちょっとね。今後生徒会の仕事とかが今まで以上に忙しくなりそうだな、と・・・」
まあ、こうして周りにいる姉や妹を見れば、ファンクラブを作ろうとする気持ちは分かるんだがな・・・生徒会に厄介ごとを持ち込まないでくれ・・・
只でさえ、家族が作った厄介ごともあるんだから・・・
「世界を怯えさせるカンピオーネが、何情けないこと言ってんのよ」
「そうは言うがな、氷柱。俺がカンピオーネだってことを知ってる人はまだ少ないんだし、日本には家族以外いないんだから、普通に過ごしてもいいと思わないか?」
「武双お兄様は既に遺跡をぶっ壊したりしてるし、無理だと思うよ」
「それに、同属との戦いでもかなりの被害を出しているからな。合計被害総額はいくらだ?」
「あれは、双方に責任があるから半額で良いだろ。・・・いや、何にもよくないか・・・」
うん、問題だらけだ。
それに、これからも何回もあるんだろうな・・・憂鬱だ。
ちなみに、家族を守るために大暴れしたりもしたが、アレについては俺たち家族は一切悪いと思っていない。
組織を一つ潰したりそこの幹部クラスを皆殺しにしたりもしたが、それは向こうが悪いだけなのだ。
「真面目だね~。ところで、ソウ兄はまた暴れる予定?」
「ああ・・・あれか・・・まあ、そのつもりではいるよ」
「それについては何も言う気はないけど、武双君?今回は自分の存在が公になる覚悟がないと駄目よ?」
「だよな~。あの騎士もいることだし、アテナの件を覗き見した感じでも、アイーシャのように行くとは思えないし」
アイーシャの時は楽だったな・・・俺を含め、カンピオーネは皆、あの感じを標準装備すべきだろ・・・。うん、無理だな。
「ムーにいちゃ、怪我には気をつけてね?」
「桜ちゃん、お兄ちゃんが同属の人と暴れるなら、それは無理だと思うな!」
「心配してくれてありがとうな、桜。後、ビアンカは無邪気な顔ではっきりというのを止めてくれ・・・」
普通に、妹から人外扱いされているようで傷つく・・・
ええ、確かに俺は人外ですよ?でも、傷つくものなのです・・・
「あ、じゃあその騎士の人は私達で抑えようか?」
「調べの提案に賛成デス!あれを使えば私達にも出来マス!」
「あー・・・じゃあ、よろしく頼んだ」
そんな感じで会話をしていたら、学校に着いた。
物陰とかから俺に対して恨みがましい視線が向かってくるが・・・生徒会権限で全員に罰を与えてやろうか・・・一応、立ち入り禁止のところにもいるし、問題ないよな?
◇◆◇◆◇
「おはよー」
「「「チェストォ!」」」
「またかよ」
あの後、立ち入り禁止エリアにいた連中に軽く注意をして教室に向かい、ドアを開けると同時にクラスの三馬鹿が突っ込んできた。
とりあえず、いつものようにドアを閉め、そこに激突させてから再度開く。
「相変わらず学習しないね・・・このドアが壊れたら始末書書かせるからな?」
「横暴だ!原因はオマエにあるというのに!」
「そうだ!毎日毎日あんな綺麗どころに囲まれて登校しやがって!」
「よって、この行為は正当なものである!」
「うん、全然正当じゃないからな?むしろ俺被害者だからな?そして、姉弟(兄妹)と一緒に登校する事のどこがおかしいんだ?」
まあ、この三人のこの行動についてはかなり前から繰り返されてきたことだ。
個人的には愛すべきバカだと思うのだが、クラスの女子から挟めた目で見られている。
だって、その綺麗どころのうち二人がいる教室であんなことを大声で言うんだぞ?中々いない面白いやつらだと思うんだが。
「くそ・・・今までならともかく、エリカさんが転校してきたことで護堂があの状態になった以上、もう我慢の限界だ!」
「知らねえよ・・・ってか、今日もか・・・」
俺は呆れながら窓側の教室の角を見る。
そこには、困ったようにしている一人の男子、草薙護堂と、その少年にいちゃついている金髪の美少女、エリカ・ブランデッリ。今、二つの意味合いで俺に頭痛を与えている二人組みだ。
「はあ・・・まあいいや。エリカは何回言っても無駄みたいだし。最初にあんな宣言をするくらいだし」
「確かに、アレは驚かされましたね・・・」
「うん。でも、一瞬クラスの空気が固まったのは面白かった」
気がつけば、思い出しているのか軽く苦笑しているアテと、淡々と語りながらも楽しそうにしているマリーがいた。
まあ、中々聞けるもんじゃないしな、『婚約者宣言』なんて。
「ところで・・・明日は予定通りに?」
「ああ、朝にも言ってたけど、予定通りで行くよ」
「じゃあ、私は話してたところにいれば?」
「そこで待っててくれ。上手く何とかするから」
「頑張れ、武双お兄様にアテお姉様」
さて、あの二人がちゃんと、二人のかばんの中に『投函』の術で忍ばせた『決闘状』を読んでくれるといいんだけど。
そうしないと・・・明日の予定が丸ごと狂っちゃうし。
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