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ハイスクールG×D 黄金に導かれし龍

作者:ユキアン
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第22話

双葉がギャスパーを連れて何処かへ消えてから既に一週間が過ぎ、三大勢力による会談当日までやってきてしまった。
この一週間の間に部長のお兄さんで魔王ルシファーであるサーゼクス様からは今日の会談にギャスパーが現れなければ、はぐれ認定がされる事を伝えられ、双葉が居そうな場所の考え、聖域であると思ったのだが、それが何処にあるのかが分からなかった。知っていそうなミルたん達に連絡を取ったのだが、しばらくの間聖域には誰も立ち寄れない事になっていた。何でもギャスパーの停止世界の邪眼のコントロールに集中したいそうだ。双葉がそう言うのなら問題無いだろうという事でオレは結構普通に過ごしてるんだけど、部長がずっとイライラしていて部室の空気がかなり重い。仕方なくあちこちに連れ回して遊んだりして紛らわせてみた。たまにオレを見る部長の目が怪しい感じもしたけど気のせいだよな?
それから天使のミカエル様からは龍殺しの剣であるアスカロンを頂いた。何でも今回の和平の為に各勢力が互いに色々な物を譲渡し合っているそうだ。悪魔側からは木場が『天覇の聖魔剣』で造った剣を送ったそうだ。まあ、聖闘士は武器を使わないという決まりがあるので部長に渡して、収納用の魔法陣には代わりに鋼鉄聖衣を入れてある。これでかなり持ち運びが楽になった。

そして、会談の時間になり双葉とギャスパーを除いたメンバーで会談が行われる部屋に向かう。

「失礼します」

部屋の中にはサーゼクス様とグレイフィアさん、それからまともな格好をしたセラフォルー様にまともな格好をしたアザゼルさんと気配から分かる白龍皇の男、ミカエルさんと隣にもう一人天使の人が居た。

「妹とその眷属だ。先日のコカビエル襲撃で彼女達が活躍してくれた」

「おいおいサーゼクス、嘘はよろしくないな。確かに襲撃の際に活動していたのは確かだろうが、真の立役者は別だろう?」

「別に賞讃はいらない。平和と愛が守れるならそれでな」

アザゼルさんの言葉に答える様に異次元の穴が開き、黄金聖衣を纏った双葉と、デザインは異なるがオレと同じ鋼鉄聖衣を纏い、目を小宇宙の込められた布で覆ったギャスパー、そして白銀聖衣を纏った仮面を付けた少女が現れる。

「聖闘士の教皇、双子座(ジェミニ)の双葉だ。こちらはギャスパー、聖闘士見習いのハーフヴァンパイア。そして私以外に二人しか居ない正式な聖闘士、彫刻室座の千草だ。聖闘士の掟として女性は仮面で素顔を隠す必要がある。無礼ではあると思うが許して欲しい」

「双葉、貴方いまま「部長、ストップ!!」んむぅー、むぅむぅ!!」

双葉に詰め寄ろうとした部長を羽交い締めにしながら口を塞ぐ。今双葉は教皇を名乗って現れたって言うことは駒王学園の生徒でも、オレの仮の使い魔でも無く、聖闘士の教皇としてこの場に居るという事だ。言ってしまえば魔王様達と同格としてこの場に居るのだ。それを耳打ちして何とか抑えてもらう。

「全員が揃った所で、会談の前提条件を一つ。ここに居る者は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

『神の不在』か。オレにはあんまり関係ないんだけどな。

「では、それを認知しているとして話を進める」

そして会談が始まり30分が経過した。先程から専門用語が多過ぎてあまり理解出来なかったが、とりあえず聖書に記された神が死んだ事でその神が残したシステムに色々とバグが生じ、アーシアの様に掬われない者が現れたりしている事だけは分かった。

「さて、そろそろオレ達以外に世界に影響を与えそうな奴らに意見を聞こうか。まずは白龍皇、ヴァーリ、お前は世界をどうする?」

「俺は強い奴と戦えれば良い」

コカビエルみたいな戦闘狂か。めんどうな。

「だろうな。赤龍帝、お前はどうする」

「愛する者と平和に暮らす。それを邪魔するなら誰が相手でも戦うだけです。たとえそれが魔王様達であろうと堕天使の総督であろうと天使であろうと、聖闘士であろうと」

オレの意思は変わらないさ。ただそれだけだ。

「ほ~う、それは宣戦布告か?」

「邪魔をするなら」

「良い啖呵だ。おもしろい。最後、双子座の双葉」

「我々聖闘士は地上の愛と平和の為に戦っている。個人間での私闘ならともかく、戦争があるのならそれに介入するまでだ」

「つまりは冥界での戦争には関与しないと?」

「そう捉えてもらっても構わない。ただ、少しでも地上に飛び火しそうなら話は変わってくる」

「なるほど。それが聖闘士の総意か。なら、個人では何か無いのか?」

「何も起こらないのならワインを作って平凡に暮らすさ。戦いは嫌いだからな」

「個人でも争いを求めずか。なr」

嫌な予感がして小宇宙を全開まで燃やす。双葉達も同じタイミングで小宇宙を燃やしていた。そして時間の停まった世界にオレは居た。動けないのは朱乃さんに小猫ちゃん、レイナーレとゼノヴィアか。

「双葉の言っていた奴らか」

「そのようだな」

双葉がギャスパーと千草を連れてこちらにやって来た。

「これって停止世界の邪眼だよな?」

「ああ、だがギャスパーの物ではない。見ての通り目を覆っているからな。停止世界の邪眼はそれだけで封じる事の出来る物だ。気になるのはこの範囲の広さだ。新校舎全体をカバーしている。それも敵味方を識別した上でだ。なんらかのブーストを得ているのは間違いないな」

話を聞きながら、先日ミカエルさんに施してもらった収納の魔法陣から鋼鉄聖衣を取り出して装着していく。

「そうなんだ。それにしても千草、小宇宙に目覚めたんだな」

「ああ、アザゼルから贈られて来た聖衣の中に千草に合う物があってな。それから急に目覚めた。彫刻室座、聖衣の修理を手助けしてくれる聖衣だ」

「それよりも双葉、貴方私の下僕を連れ回して」

「ああ、忘れていた。これを返しておこう」

そう言って双葉が紅い僧侶の駒を部長に投げ渡す。

「これ、私が使った異変の駒じゃない!?」

「あの、それが原因で、僕の停止世界の邪眼の力が強まってコントロールが難しくなったって。だから普通に扱える様になるまでは返しておけって」

「おいおい、転生悪魔を元に戻すとかどれだけチートなんだよ」

アザゼルさんが頭をかきながらやってくる。

「で、どうするよ?そっちのハーフじゃない奴が原因なのは分かってるが」

「しばらくは待機していれば良い。アザゼルも分かるんじゃないのか?ここまで用意周到な準備をしているんだ。この次は」

「まあ、堂々と宣戦布告だろうな。誰が来る事やら?」

「まとめて吹き飛ばすという案もあるのだがな。ギャスパーが出来れば停止世界の邪眼を持っている者に会いたいというのでな。無理矢理利用されているのならそれを助けてあげたいと」

「ふ~ん、相手が何処に居るかも分からないのにか?」

「分かるさ。全ては小宇宙が教えてくれる。そして場所さえ分かれば私に飛べない場所など無い」

「分かった。ヴァーリ、お前はさっきも言った通り、囮だ。白龍皇が出て来たとなれば、連中も黙ってみていられないだろうからな」

「俺がここに居る事は、あっちも想定済みじゃないのか?」

「それでもお前が出る事に意味があるんだよ。時間を稼げ、倒しちまっても問題無い」

「了解」

ヴァーリが窓へと近づいていき、白い翼が展開され、そして小さく呟く

「禁手化」

『Vanishaing Dragon Balance Breaker!!』

音声が響き、白いオーラがヴァーリを包む。そして白いオーラの中から白い輝きを持つ鎧を身に纏ったヴァーリが現れる。
あれが赤龍帝のライバルである白龍皇の力か。オレよりも上の存在。アレに勝たなければ、オレに未来は無い。

「では、私達は停止世界の邪眼持ちの方に行きます。処理が終わり次第、こちらに戻って来ます。ギャスパー、千草、行きますよ」

「「はい!!」」

「アナザー・ディメンション!!」

おなじみになった技で何処かへと跳んでいく双葉達を見送る。それと同時に転移の魔法陣が浮かび上がる。オレは部長達を守れる位置に移動して構える。






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「っ!?何故此所が!?」

双葉さんに連れられて跳んだ先には不気味なローブを着た魔法使い達と、泣いている赤ちゃんが居た。まさか、産まれたばかりの!?

「赤子に無理矢理神器を使わせているのか」

「それがどうした。私達の役に立つのだ。むしろ喜んで差し出すべきだろうが」

なんて自分勝手な意見なのだろう。僕の怒りに比例する様に小宇宙が大きくなっていく。

「それでその子が死ぬのは理解しているのだな」

「当たり前だろうが。だからこそ、移植の準備も整えている。死んでしまってはまた誰かの元に行ってしまうからな。そんな勿体ないこと出来ないからな」

そんなことさせない。僕の様にあの子にも幸せになれる権利がある。だから、僕が助けてあげるんだ。双葉さんが僕を救ってくれた様に僕が。
今まで、自分の意志で外した事の無い目を覆う布を取り外し、停止世界の邪眼を発動させる。暴走を恐れるな。自分の力を、小宇宙の力を信じるんだ。
止まっている世界が更に強力な力によって止まる。僕の視界に映る全てが止まる。停止世界の邪眼を持っている赤ちゃんも止まり、それによって止まっていた世界が動き出す。ヴァンパイアの力を使って、一匹のコウモリに全体を見させた状態で赤ちゃんを抱きかかえる。そして僕が巻いていた布をその赤ちゃんに巻いてあげる。これで大丈夫なはずだ。

「双葉さん、僕、僕、やれました!!」

「ええ、良く出来ましたよギャスパー。もう貴方が停止世界の邪眼を暴走させる事は無いでしょう。貴方はもう一人前です」

「はい!!」

「では戻りまsy、っ!?イッセー!?」

「何ですか!?この莫大な小宇宙は!?」

あの場に居た僕達以外に小宇宙を発していた人の小宇宙が膨れ上がったと思ったら急に半分に減って、それ以上の小宇宙を発する人が現れた。

「くっ、ギャスパー、ここで、今度は誰だ!?」

目の前の空間が歪み、黒くてかわいいゴスロリを着た女の子が現れる。ただ、その身体から放たれる膨大な力に押される。

「我、オーフィス。お前、仲間になれ」

オーフィス!?それって無限の龍神じゃあ!?なんでこんな所に。

「ギャスパー、千草、貴方達を跳ばします。向こうは任せましたよ!!」

気づいた時には先程の会談の部屋に跳ばされていた。双葉さんの小宇宙は感じられなくなりましたが、グラウンドの方ではまだ戦闘が起こっているみたいです。

「千草さん、この子をお願いします。僕は部長達の所に行きます」

「分かりました。頑張って下さいね」

赤ちゃんを千草さんに預け、小宇宙を燃やして走り出す。





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「「「「「イッセー(先輩)(君)!?」」」」」

「ぐぅ、ヴァ、ヴァーリ、お前」

部長を守る為に良いのを一発貰って鋼鉄聖衣が砕け散ったのはこの際置いておいても良い。オレの小宇宙が半減したのもそれが白龍皇の力だとドライグに聞いていたからそれも良い。だが、何故オレから奪った分以上の小宇宙を発しているのかが分からない。まさか、オレの小宇宙を吸収したことで知覚出来る様になったのが原因で小宇宙に目覚めたのか!?

「これが小宇宙の力。すごい、すごいぞ!!この力ならどんな奴が相手でも敵じゃない!!」

更に小宇宙が膨れ上がる。オレよりでかいぞ。だけど、退くわけにはいかない。

「うおおおおおおおっ!!」

オレも小宇宙を限界まで燃やし、赤龍帝の篭手で倍加する。そしてヴァーリに向かって突撃する。

「ふっ、遅いな赤龍帝」

「なっ!?」

目の前に居たヴァーリがいつの間にか背後に居た。こいつ、小宇宙を完璧には扱えてねえが、莫大な小宇宙を用いて強引に力を得てやがる。
繰り出された蹴りを赤龍帝の篭手で受け止めるが、そのまま耐えきれずに校舎に叩き付けられる。

「ぐぅ、大丈夫かドライグ」

『なんとかな。だが、今のは危なかった』

今の蹴りによって赤龍帝の篭手に罅が入っていた。力の差はここまであるのかよ。瓦礫を押しのけて立ち上がる。ヤバいな、腕も折れてやがる。小宇宙で補って無理矢理動かすしかないか。

「どうした赤龍帝。もっと俺を楽しませろ」

どうにかして廬山百竜覇を叩き込めれば少しは状況が変わるんだろうけどな。そんな隙はないのでそのまま同じ様に殴り掛かりにいく。先程よりも小宇宙を燃やし、ヴァーリよりも大きくする。

「楽しいな、赤龍帝。やはり戦っているときこそ生きていると実感出来る」

「うるせぇ!!生きてる実感なんて戦わなくたってあるんだよ。そんなに戦いたいなら双葉にでもケンカを売ってろ!!」

『BoostBoostBoost』

身体の限界を超えて小宇宙に倍化を施してヴァーリを殴りとばす。くそっ、限界が近づいて来た。

「大丈夫ですか!?」

「ギャスパーか」

ギャスパーが近づいて来たようだが、双葉の姿が見えない。だけど、これで何とかなるかもしれない。

「ギャスパー、頼みがある」

「何ですか?」

「ヴァーリを一瞬だけでも良い。何とか止めてくれ」

殴りとばしたヴァーリが再びこちらに駆け出して来るのが見えていたのでオレもヴァーリに向かって駆ける。再び光速での殴り合いが始まる。

「ああ、もうとっととくたばれよ。ペガサス流星拳!!」

限界を超えた小宇宙に身体が耐えきれなくなっているが、殺されるよりはマシだ。そして隙をつかれてまたもやヴァーリに殴りとばされる。今度はガードが一切間に合わず、肋骨が折れたのが分かる。オレもあいつみたいに禁手化出来れば。
何とか立ち上がった所でヴァーリの動きが止まる。

「急いで下さい!!そんなに持たない」

ギャスパーが止めてくれたようだ。

「オレの小宇宙よ、燃え上がれ!!」

残りの体力と気力を振り絞り、小宇宙を燃やす。

「廬山百竜覇!!」

オレの小宇宙が百頭の龍となってヴァーリを飲み込んでいく。そのままオレは倒れる。もう意識を保つ分しか体力が残っていない。アレで倒せてなかったら終わりだ。

「やはりおもしろいな、赤龍帝。俺も少し本気を出した方が良さそうだ」

廬山百竜覇の爆発の中から、ぼろぼろになったヴァーリが現れる。仕留めきれていなかったか。

「俺が君に勝ったら、君とその周りにあるもの全てを半分にしよう」

「……全てを半分?ちっ、まさか」

「そのまさかだ。赤龍帝が全ての物を倍加出来るなら、白龍皇は全てを半分に出来る。質量も体積も寿命や記憶さえも」

「させるかよ!!」

残っていない体力を気合いだけで支えて立ち上がる。だが、それだけしか出来そうにない。どれだけ小宇宙を燃やしても拳を握る位しか出来そうにない。どうすれば良い?
そんなオレの足下に赤龍帝の篭手に付いている宝玉に似た宝玉が転がって来た。よく見ればヴァーリの鎧についている宝玉だった。ゲームなんかじゃ宝玉は何か力が籠っていたりする。じゃあ、神器の宝玉も力が籠っているんじゃないのか?ならこの宝玉を赤龍帝の篭手に嵌めれば、あいつの力が使えるんじゃないのか?

「なあ、ドライグ。神器は人の思いで進化するんだよな」

『ああ、そうだが』

「一個だけあいつを超えられるかもしれない事を思いついた。だけど、失敗すればたぶん消滅する。ドライグ、お前もな」

『何をするか知らんがやりたいならやれ。どうせこのままでは嬲り殺しにされるだけだ』

「賭けてくれるのか?」

『ああ、見せてみろ。人間の身で悪魔を超えたお前の覚悟を、思いを!!』

「よっしゃあああ!!」

拾った宝玉を赤龍帝の篭手に付いている宝玉に叩き付け、両方を砕き、そこに小宇宙を収束させる。

「ぬっ、がああああああああああああああああああああ!!」

『がああああああああああ!!』

全身がバラバラになりそうだ。ドライグも苦痛の叫び声を上げている。だけど、オレの考えは正しかった。コカビエルと戦った時、木場は相反する聖と魔を小宇宙によって一つにした。倍化と半減を司るドライグとアルビオンの力をオレの小宇宙で一つに纏め上げる。だが、そこで誤算が現れた。融合の土台になっている篭手が耐えきれそうにない。このままだとどうなるかが分からない。
何か使える物は無いのか?痛みと焦りから小宇宙が揺れ、融合が解けかかる。
そんな中、莫大な小宇宙に反応する様に黄金の欠片が落ちているのに気が付いた。直感がそれを求める。3歩も歩けば届く位置にあるそれを歩くだけの力が残っていない。少しでも近づく為に地面に倒れ、歯を食いしばって少しずつ這ってでも黄金の欠片に近づいていく。ヴァーリもそれに気づいたのか魔力弾でオレごと黄金の欠片を吹き飛ばした。

「イッセー!!」

今まで後方に下がって防御障壁を張っていたレイナーレがオレの元までやって来て聖母の微笑で治療してくれる。だけど今はそれよりもあの欠片を手に入れなくては。

「イッセー!!」

そう思っていると部長があの欠片を拾ってこちらに走って来ていた。そこにヴァーリが先程よりも大きな魔力弾を撃って来ていた。頼む、間に合え!!
オレは部長に向かって左腕を伸ばす。そして魔力弾が目の前にまで迫っていた。

 
 

 
後書き
次回、いよいよ皆さんのお待ちかね登場。 
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