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黄砂に吹かれて ~Another version~

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第三章

 味はする、けれどだった。
「感じないのよ」
「そうみたいだね」
「不思議ね、こんな感じになるなんて」
「いや、人間生きていればね」
「こうしたこともあるのね」
「人生は地球と同じでね」
「地球と?」
「平野があれば山があって海があって」
 そしてだった。
「砂、砂漠もあるんだよ」
「そして今の私は」
「砂漠なんだね」
 まさにそれだというのだ。
「それになるんだよ」
「砂漠ね、私は」
「そうだよ、砂漠だよ」
 まさにそれだというのだ。
「そう見えるよ」
「そうだと思うわ」
 バーテンダーの言葉は否定しなかった、今は。
 それでだ、空虚なままの声で言った。
「どうしてもね」
「訳は聞かないよ」
 どうしてそうなったかはというのだ。
「けれどそうした時はね」
「どうすればいいか、ね」
「そうした時は飲むんだよ」
「飲めばいいのね」
「これは仕事じゃないよ、そこに入ったらそこを進むしかないんだ」
 砂漠、そこに入ってもだというのだ。
「ただね」
「じゃあ今の私は」
「飲めばいいよ」
 これが彼の言葉だった。
「自分が思うままにね」
「そうすればいいのね」
「砂漠に入ったら歩いてね」
 そしてだというのだ。
「出るしかないから」
「出られるかしら」
 私は感情の入っていない微笑みで言った。
「ここから」
「何時かはね」
「何時かは、なのね」
「終わりのないことはないからさ」
 月並みな言葉だ、けれどその通りなのは私にもわかる。
「だからね」
「私もなのね」
「そう、出られるよ」
 それは絶対にだというのだ。
「安心していいよ」
「だといいわね」
 私は彼の言葉を信じなかった、終わりのないものはないことはわかっていても今はその言葉を信じられなかった。
 それで乾いた、砂漠の風の様な声で彼に返した。
「そうなれば」
「なるよ、絶対に」
 彼はその私に笑顔で言う。
「安心していいから」
「砂漠を歩いていればいいのね」
「今はね」
「そうすれば何時か出られて」
「また新しい場所に出られるよ」
「正直寂しいわ」
 今の私の偽らざる本音だった、本当に寂しい。
「何処にいてもね」
「一人だね」
「どんな人に会っても」
 彼よりも優しい人に、格好いい人に。そしてそっくりな人に出会えても。 
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