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久遠の神話

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第五十八話 大刀その六

「それでなのです」
「願いそうして」
「気が遠くなる程その呪いに捉われています」
「そうなのですか」
「何とかして差し上げたいのですが」
 聡美はやや上の方にも視線をやった。
「ですが」
「差し上げたいとは」
 大石は聡美のその言葉に気付いて問うた。
「どういう意味でしょうか」
「あっ、何でもありません」
 その言葉は打ち消された。
「お気になさらずに」
「そうですか」
「はい、では私もこれで」
「お送りしましょうか」
「いえ、お気遣いなく」
 それはいいというのだった。
「私一人で大丈夫ですから」
「だからですか」
「はい。お気遣いなく」
 微笑みすら向けて大石に告げる。
「帰れますので」
「では」
「またお会いしましょう」
 聡美は大石に頭を垂れて別れの挨拶をした。
「貴方は是非貴方の願いを適えて下さい」
「そうさせてもらいます。ただ」
「ただとは」
「私もですね」
 自分のことを見詰めなおし自嘲も含めた言葉になっていた。
「呪いに捉われているのは」
「願いにですか」
「この戦いを終わらせたい、無益な殺し合いを止めたい」
 その願いをここで言うのだった。
「それもまたです」
「呪いですか」
「願いですから」
 だからだというのだ。
「それもまたです」
「そうなのですか」
「呪いのままに戦うのでしょうか」
 大石は自分に問うた。
「そうなるのでしょうか」
「そうかも知れないですね」
 聡美は俯き悲しい顔になって述べた。
「剣士の戦いは」
「因果なものですね。それでなのですが」
「それでとは」
「私は一つ気になっていることがあります」
 ここで言う大石だった。
「私達は何故剣を持っているのか」
「そのことですか」
「はい、そうです」
 このことを言う、ここで。
「それは何故かですが」
「そのことですが」
 ここでだった、聡美はというと。
 大石には見せなかったがそこに隠してそして言ったのである。
「私もです」
「よく知らないですか」
「調べているところです」
 やはり言わない、隠していることは。
「ですがまだ」
「よくわからないですか」
「そうです、お待ち下さい」
「八条大学には大英図書館すら凌駕している図書館があります」
 このことでも知られている、世界最大級の図書館なのだ。 
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