lineage もうひとつの物語
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パーティー結成
デーモン
アレン達がホワイトナイツを結成した頃、ナターシャ達はまだハイネで足止めを食らっていた。
「ナイルはまだ戻りませんか?」
ハスランがナターシャに問うが首を振られてしまう。
今はレジスタンスのアジトでナイルの帰りを待っている。
ナイルはフィオナを伴い象牙の塔へ過去の文献を調べるために出払っておりここには三人しかいない。
ゲラドの依頼で各地に出現した凶悪なモンスター達の調査手伝いに向かっているため時間がかかるのだろう。
そらでも優に半月は待ち惚けの状態だ。
会話石で状況の連絡が毎日あったのだがここ三日間は音沙汰がない。
忙しいのだと思いこちらから連絡するのは遠慮していたが今夜はこちらからやってみる手筈になっている。
レジスタンスはナターシャがいるだけで激しい頑張りを見せているので悪いことばかりではないが。
張り切りすぎて事故でも起きないか心配しているナターシャである。
「殿下!お食事をお持ちしました!」
ドアの外で大声で叫ぶ若い男はテンションが上がりすぎているのだろう、咳き込んでいる。
ドアを開けたハスランは男から受け取ろうとするも頑なにテーブルまで運ぶと言って聞かない。
男にとってハスラン、キャスタも天上人として認識されているようだ。
「ありがとうございます。どうぞお入りになってください」
困った顔をしたハスランを助けるようにナターシャがお礼を言いテーブルへと招き入れる。
男は高揚し勢いよく入室するとテーブルに向かって歩く。
が、カーペットが捲れた部分に足を引っ掛けこけた。
勢いがあっただけに盛大にこけた。
その料理は宙を舞いナターシャの頭から足の先まで濡らす結果になってしまった。
「ナターシャ様!お怪我はありませんか!」
ハスランは顔色を変え駆け寄りキャスタは剣を抜いて男の首に据える。
ナターシャは自分の体を見てそして倒れた男を見て腹を抱え声を上げて笑った。
余程可笑しかったのか目には涙を浮かべ笑う。
その騒動に幹部が駆けつけ
「な、なんということを。大変申し訳ありません。」
リーダーであるダンガスを筆頭に全員土下座である。
笑いが収まらないナターシャだが
「だ、大丈夫ですよ、はははは、あー、おかしい」
衣服を着替えに入った別部屋からまだ笑い声が聞こえてきていた。
「ハスラン殿、こやつの処分はいかようにすればよろしいか」
ダンガスは真剣に向き合うがハスランは
「新しい食事と湯浴の準備でいいと思いますよ」
ここの掃除と、と付け加えまだ土下座の体勢から動かない男を立たせる。
「張り切るのは構いませんが注意してくれるようお願いします。」
そう言ってレジスタンスのメンバーを全員部屋から追い出した。
ハスランとキャスタも笑いを堪えていたようで気配が消えてから二人して笑い転げていた。
レジスタンスのメンバーは男の無事に安堵した。
あれから料理を持っていったダンガスはナターシャから逆に男に怪我がないか心配され狼狽してしまった。
普段からナターシャは自分より他人を気遣う傾向にあるのがよくわかる。
末端のメンバーにも気兼ねなく優しく接し苦労を労ってくれている。
メンバーからは聖母の再来ではないかと噂が流れナターシャは更に神格化していく。
今回の失態はラウヘル相手なら間違いなく処分され今頃は肉の塊となっていただろう。
そこまで酷くは無くとも何らかの処分があると思っていたダンガスはナターシャの懐の深さに感動していた。
「あの方が天下を取ればきっと良い国になる」
ふと呟いた言葉だったが周りのメンバーに聞こえたのだろう。
全員が頷き決意を新たにするのだった。
そして夜、夕食が終わり部屋に戻るとハスランはナイルに連絡しようとするが
『ハスラン、聞こえるか』
ナイルからだ。
会話石を通じて言葉が直接脳裏に浮かび上がる。
『ああ聞こえているぞ』
ハスランは意志を込め返答する。
少し頭痛がする。
ハスランはこれが苦手だ。
『まずいことになっていた、詳細は便箋を送る』
『わかった、また連絡する』
そして程無くして便箋が受け取り用の袋に入った音がする。
それを手に取りナターシャの部屋をおとずれたハスランは便箋を取りだしナターシャへ渡す。
目を通したナターシャはハスラン、キャスタに便箋を読むよう促し真剣な表情で
「次元の歪みにいたデーモンの封印が解かれたようです」
ハスランとキャスタは改めてナターシャへ向き直り姿勢を正す。
「象牙の塔のウィザード達の手によりフロアーごと閉じ込めたようですが次元の歪みは閉じられていないようです」
「次から次へと・・・」
これはハスランが呟いた言葉だが残り二人も同じ心境であった。
ハスランに速報をゲラドへ出すよう指示をしキャスタへは一緒にくるよう指示をする。
ナターシャはキャスタを伴いダンガスの部屋を訪れ象牙の塔の現状を語った。
「まさか、そのようなことになっているとは」
「オーレンのレジスタンスと連絡を取って戴けませんか?」
ダンガスは即答しその場で連絡をとろうと会話石を取り出す。
「オーレン周辺に異常がないか訊ねればよいのでしょうか?」
「ええ。お願いします。あと何か少しでも異変があれば各地のレジスタンスに連絡するようお伝えください」
「そのように」
そして意識を集中したダンガスは眉間にシワを寄せ会話する。
しばらくすると終わったようで口を開いた
「まだ異変はないようです。警戒するよう伝えました」
オーレンのリーダーはナターシャからの勅命と知り張り切っているようだった。
「ご負担をおかけして申し訳ありません。ありがとうごさいました」
頭を下げるナターシャにダンガスは驚き言葉もでない。
ナターシャはにこりと微笑むと部屋を出ていった。
こりゃ若いやつらが張り切る訳だ
男には辛い容姿をなさってるなぁ
とダンガスは思いながら他のレジスタンスへ連絡していった。
その連絡が一通り終わると引き出しを開け一枚の紙を取り出す。
「このことを報告するにはまだ早いか」
それはイフリートが発見された同日に火山でケレニスが目撃されたという報告書であった。
ダンガスはケレニスがこの事態を引き起こした張本人ではないかと睨んでいるが証拠が少ない。
オーレンで目撃者がいないか探る必要がある。
人員を送り込む手配をするためダンガスは鍵をかけ部屋を後にした。
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