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犬と猪

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第三章

「交代の時間だよ」
「じゃあ僕は自分の役をずっと酔い潰れたままこなしていたんだ」
「そうなるね」
「全く、酷いことをしたよ」
 犬は右の前足を頭にやってそのうえで首を振りながら言いました。
「そんなことをしたら」
「いや、僕達も飲んだから」
 ここで猪はこう犬にこのこともお話しました。
「お酒をね」
「そういえばなくなってるね」
 犬が樽の中を覗きますとそこにはもう何もありません、本当に皆飲まれています。
 それを見てです、犬は言いました。
「皆で飲んだんだ」
「うん、そうだよ」
「成程ね、わかったよ」
「いいお酒だったよ」
 猪は満足している顔でした、お酒が本当に美味しかったというのです。
「とてもね」
「うん、僕も美味しいからついつい飲んだからね」
 それでだと話す犬でした、十二年の間酔い潰れるまでに。
「凄い美味しさね」
「そうだったね、まあとにかくね」
「うん、じゃあね」
「そう、交代だよ」
 猪はまた犬にこのことをお話しました。
「お疲れさん」
「じゃあ僕は今からは」
「自由だよ」
 次のお仕事までだというのです。
「好きにしてね」
「そう、じゃあまた飲もうかな」
 犬は猪に自由と言われて前足を組んで述べました。
「次にここに来るまでの間は」
「酔い潰れてここに来ない様にはならないでね」
 このことは注意する猪でした。
「頼むよ」
「うん、それは気をつけるよ」
「そういうことでね」
「それじゃあまたね。けれどそれにしても」
 十二年酔いで痛む頭を項垂れさせてです、犬は言うのでした。
「こんなに酔い潰れるなんてね」
「不覚だった?」
「まさにね」
 それだと言う犬でした。
「本当に駄目だね、僕は」
「まあそういうこともあるよ」
「あるかな」
「気にしない気にしない」
 猪は犬に優しい声をかけるのでした。
「生きていればそうしたこともあるさ」
「そうかな」
「お酒に酔い潰れることもね」
「そうかもね、けれどね」
「それでもだね」
「これからは飲んでも酔い潰れることはしないから」
 自分への戒めとして言う犬でした。
「絶対にね」
「そのことは注意するんだ」
「これからはね、そうするよ」
 こう言って実際に自分への戒めとするのでした。
 犬は反省しながら干支の場所から自分の場所に戻りました、そしてこの時からお酒に酔い潰れない様 にお酒を極端に飲まなくなりました。


犬と猪   完


                  2013・8・28 
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