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犬と猪

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第二章

 飲んで飲んで飲み続けました、犬はそうしながら言うのでした。
「いや、幾らでも飲めるね」
 すっかり酔っています、そうしての言葉でした。
 そして犬は猪を待っていました、そして。
 ふとです、ある声を聞いたのでした。
「犬君、犬君」
「んっ、何かな」
「いや、起きてくれるかな」
「ああ、その声は」
「僕だよ」
 犬が目を開けるとです、そこにです。
 猪がいました、犬はその彼を見て言いました。
「交代の時間だね」
「そうだよ、お疲れさん」
「まあここにいればいいからね」
 犬は酔いを感じながら猪に応えます。
「別にね」
「そうだね、けれどね」
「けれど?」
「犬君は今回ずっとここにいたからね」
「一年だね」
「いや、十三年だよ」
 ここでこう言ってきた猪でした。
「十三年もいたよ、犬君は」
「十三年って?」
「そうだよ、君ずっとここで酔い潰れていたんだよ」
「十三年っていうと」
 犬はそのお話を聞いて考えました、すると考えている傍から。 
 頭が痛くなりました、その痛みはといいますと。
「うっ、この痛さは」
「二日酔い、いや十三年酔いだね」
「十二年間酔い潰れていたんだ、僕って」
「僕最初に犬君に声をかけたけれど」
 それでもだというのです、十二年前に。
「起きなくてね」
「それでずっとここでなんだ」
「うん、寝かせておいたんだ」
「それがずっとだったんだよ」
「僕の次の鼠君もその後の牛君もね」
 干支をです、延々と巡ってもなのです。
「ずっと君のことを置いておいたんだよ」
「そうだったんだ、成程ね」
「それでね」
「今だね」
「そう、今だよ」
 今この時がだというのです。 
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