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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第115話

「・・・き・・・・すけ・・・・・」

誰かの声が聞こえ、麻生は意識が戻る。
と言っても、まだ眼を閉じているので何も映らない。

「恭介!・・・起きろよ、恭介!!」

と、聞き慣れた声が自分の名前を呼んでいる事にようやく気がつく。
麻生はゆっくりと目蓋を開ける。

「うるさいな、大声を出さなくても聞こえている。」

最初に視界に入ってきたのは、星が少しだけ見える夜空と、上条の顔だった。
上半身だけ起き上がり、周りを見渡す。
麻生が今いるのは、建宮達が魔術で作った上下艦の中だ。
すぐ側では、五和が何やらおしぼりなどを集めて、術式を組んでいた。
上条と五和は麻生が起き上がるのを見て、安堵の表情を浮かべた。

「そう言えば、どうして俺は此処にいるんだ?」

「お前さん、あの化け物を引き付けて、大技を出して倒したまでは良かったよな。
 でも、その後我らが幾ら待ってもお前さんが戻ってこないから、探しに出た。
 すると、海のど真ん中で光に包まれたお前さんが浮いているのを発見して、船の中には運んだよな。
 一向に目を覚まさないから、二人ともすごく心配していたんだ。
 五和なんか、治癒魔術まで用意しだすしな。」

「た、建宮さん!!」

「そうか、俺が思っていたより心配かけたみたいだな。」

「あ・・え、えっと・・・気にしないでください。
 本当に目が覚めてよかったです。」

少し顔を赤くしながら五和は答える。
ふと、麻生は自分の身体が元に戻っている事に気がついた。
あの時では、まともに身体を動かす事ができなかったくらい、重症だった。

「五和、お前が身体を治してくれたのか?」

「?・・いいえ、私達が船に運んだ時には身体はどこも異常はありませんでしたよ。」

その言葉を聞いて、考える。
おそらく、こんな事ができるのは一人だけだった。
真っ暗な世界で出会ったあの女。
何となくだが、麻生はあの女なら自分の怪我を治す事など簡単な事なのだと分かった。

(あの女は遠くない未来にもう一度出会うと言っていた。
 今度こそ、あいつが何者なのか聞いてやる。)

そう心に決めて、麻生はゆっくりと立ち上がる。
手足を確認してどこも異常がないか一応、確かめる。

「よし、それじゃあキオッジアに帰るとするか。」

建宮はそう言うと、上下艦は移動を開始する。
麻生はいつも通り、近くの壁に背中を預ける。

「そう言えば、アニェーゼ達はどこに行った?」

上下艦の中には、天草式のメンバーに上条、インデックス、オルソラしかない。
麻生の疑問にオルソラが答える。

「アニェーゼさん達は他の上下艦にいるでございますよ。
 シスターさん達の数を考えれば、上下艦一つだけでは入りきりませんでございますよ。」

考えれば、シスターの数は全部で二五〇人いる。
この上下艦は多くても、八〇人くらいが限界だろう。
それに、アニェーゼ達はアニェーゼ達で色々話がたくさんある筈だ。
それを他人である、天草式や上条らが聞く訳にはいかない。
麻生はその答えを聞いて納得すると、今度は建宮が聞いてくる。

「そう言えば、何でお前さんは海の上で浮かんでいたんだ?
 お前さんの能力なら、戻って来れた筈だろ?」

その事については上条とインデックスも気になっていたのか、麻生に視線を向ける。
二人だけではなく、天草式のメンバーやオルソラも気になっているみたいだ。
説明をしないわけにはいかないな、と思いため息を吐いて、答える。

「俺の能力は確かに強力だが、一日三〇分しか扱えない。
 それを超えると俺はその日、一切の能力の発動ができない。」

それを聞いて、その場にいた全員が驚いた顔をする。
彼らは麻生の能力はどこも短所のない完璧な能力だと思っていたのだ。
その考えを読み取ったのか、麻生はもう一度ため息を吐いて言う、

「この世に、完璧な術式はない。
 必ず、どこかに欠点や短所と言ったのが必ず存在する。」

それだけ言うと、これ以上答える気はないのか、口を閉ざす。
かなり沖の方まで移動したのか、キオッジアに到着するのに少し時間がかかった。
麻生達が乗っていた上下艦の他にもう一回り大きな上下艦があった。
そこから、アニェーゼを含めたシスター達が出てきた。
アニェーゼが麻生の姿を確認すると、こっちにやってくる。

「他のシスターを助けて下さってありがとうございます。」

そう言って、頭を下げる。
それを聞いて、特に表情を変える事無く麻生は言う。

「別に気にするな。
 あの魔物に人間が餌にされるのが黙って見ていられなかっただけだ。」

「それでも助けてもらった事に変わりねえです。
 ありがとうございます。」

もう一度頭を下げる。

「それでお前さん達はこれからどうするよな?
 完全にローマ正教に裏切った事になる。
 そんな大部隊で移動するには目立つし、どうするつもりだ?」

「それに関しては船で全員と話し合い、既に決めました。
 貴方達、イギリス清教が良ければ、私達を傘下に入れてくれねえでしょうか?」

「本当でございますか!」

その言葉を聞いて、一番喜んだのはオルソラだった。
建宮も驚いてはいるが、すぐに納得した表情を浮かべる。

「まぁ、あの嬢ちゃんなら、お前さんらを受け入れるだろうよな。
 こっちから連絡入れておく。
 返事はすぐに帰ってくると思うが。」

術式を組んで建宮はイギリス清教に連絡を入れる。
オルソラはテンションが上がっているのか、アニェーゼ達に近づき色々準備を始める。

「傘下に入る事は、私と同じ寮でございますよね、きっと!
 そうなると、生活用品から揃えないとでございますね!」

オルソラは他のシスターや天草式のメンバーを巻き込みつつある。
そんな状態を麻生は二歩、三歩、離れた位置で見守っていた。
そこに、インデックスが近づいてくる。
その顔をは何やら言いたそうな顔をしている。

「どうした、俺に何か用か?」

「きょうすけが放ったあの一撃。
 あれって、天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)だよね。
 メソポタミア神話の創世叙事詩(エヌマ・エリシュ)に出てくる、古代メソポタミアで天地を切り裂き、世界を創造した話に出てくる、天と地を分けた一撃。」

「さすがは禁書目録。
 一目見ただけで、分かるとはな。」

「答えて、どうしてきょうすけがあれを使えるの?
 あれは天と地を分けた一撃はいわば、星が起こした現象にすぎない。
 それを人の手で再現するなんてできない。
 なのに、どうしてきょうすけはあれを・・・・」

「そんなの簡単だ。
 俺は星と繋がっている。
 不本意だがな。」

麻生の言葉をインデックスは何を言っているのか分からなかった。
その言葉を頭の中で噛み砕く。
まだ、信じられないのかもう一度、麻生に聞く。

「どう・・いうこと・・・」

「俺は幼少の頃、突然星と繋がったんだ。
 そのおかげであらゆる事を知ったし、超能力も魔術も扱う事ができる。
 さすがに天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)を発動させるには、大きな負荷がかかるが、まぁできなくはない。
 だが、アレは世界にも大きな影響を与えるし、周りの被害も甚大だ。
 おそらく、これが最後かもしれないな。」

麻生は夜空に視線を向ける。
遠い空では次元が歪んでいた。
乖離剣(エア)が繰り出す天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)は空間を切断する。
風の断層は擬似的な時空断層までも生み出す。
あの時、上条達がこの一撃を見て恐怖したのは、遺伝子がその恐怖が刻まれているからだ。
創世叙事詩(エヌマ・エリシュ)の通り、この乖離剣(エア)が生み出すものはあらゆる生命が存在しなった頃の原初の地球であり、あらゆる「死の国」の原典であるそれは、生命の記憶の原初の光景である。
その光景はまさに地獄。
麻生や操祈が見た、一面が煉獄に燃え盛っていたのはまさにその光景だ。

「この事は他言無用だぞ。
 あまり知られたくないからな。」

質問はもう受け付けないのか、インデックスがどれだけ聞いても返事は返ってこなかった。
建宮は最大主教(アークビショップ)に連絡した所、快く了承したようだ。
オルソラを含めたシスター達は、必要な荷物を纏め、イギリス清教の女子の魔術師が暮らしている寮に向かう事になった。
天草式は彼女らの荷物を運ぶために、ついて行くことになった。
麻生は用意してもらった部屋に戻り、寝る事にする。
そして、上条達は・・・

「あれ、俺達はどこで一晩過ごせばいいんだ?」

その疑問に誰も答えてくれる人はいなかった。
その時、麻生に土下座してまで部屋に泊めてもらうのをお願いするのは確定した。 
 

 
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