やはり俺達の青春ラブコメは間違っている。
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第四章
女教師曰く、彼は叶わない理想を抱くロマンチストである。
前書き
書ききったー!
ってなんか文字数少ない気も……。
馬鹿か。いや、言うまでもなく、かつ間違えようもなく、この人は救い用のないバカだ。
この僕のどこが夢想家だと言うのだろう。全くもって阿呆らしい。
――もしや、本気で言ってないよな?もし、大真面目に言ったんだとしたら、恐らく、いや恐ろしくなく、この人――平塚教諭はバカであり、無能であり、阿呆であり、間抜けか、それこそ幻想家と言うものだ。……で、なければ真に達観した、人間と言うのも似合わない真人間ということになるだろう。
本当に、畏れ多い人である。……なんか心とかも読むし、もう怖い!怖すぎる!未婚という誤魔化しの効かない致命傷がなければこの場を逃げ出しているところであった。――てか、マジで心を読んでくるのホント何なんだよ。……先生は妖怪か何かなの?
「なにか私に失礼なことを考えてはいないだろうな?」
「…………いえ」
超睨んでる。
だから《結婚》関連の話題に敏感すぎるでしょ?何なの?人間って過敏になると他人の心まで読めちゃうの?……あれ?それは分かる!俺もクラスの女子のブラウス凝視してると、何だか薄らぼんやりブラウスの向こうに淡い青色が見えるもの!……って、それはただの自己暗示っていうね。分かってるよ……言わせんな。
でもアレって本当に、本当に間違いなく俺の勝手な思い込みなのかな?それともブロッケン現象か何かの一種なんかな?未だに俺はあの現象に納得できずにいる。
――これは是非とも脳科学的に証明するべきだと思いました。……現象には必ず理由がある。
俺が《ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ♪ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ♪……パラァー♪》と少し前にあったドラマのBGMを口ずさんでいると、平塚先生は白々しい目をして、僕を見据える。所謂一つのジト目って奴だ。
どうでもいいですが所謂、所謂っていうと個人的に太宰が思い出されますな……。所謂多いんだよ!みたいな。まあ、小学生でマトモな文学が理解できるとは思えないけれどもね。
こうして、嫌な記憶というのはいつまでも残るのだね。所謂所謂って毎回《しょかつ》って読んでた事とか、無い?そいですね、ないですね。分かってるよ俺だけだって。……恥の多い生涯を送ってきました。
――ただ、いっさいは過ぎていきます。いっさいは、過ぎていきます。
さっさと過ぎてくれよ俺のいっさい……。知ってる?人間の精神というのは本当に何もないと狂っちゃうんだぜ?……つまり俺がブラウスを凝視するのは生活に刺激を与え、精神を安定させる為……つまりは人間として生きるための生存本能なのですね?分かります。
生活っていうか《性的活動、略して生活》に刺激を与えているような……とかいうツッコミは止めていただこう。何だか俺が変態みたいに見えちゃうしね。
「いっさいは過ぎていきます……か。私も太宰ほど生きてはいないが、太宰が言いたい事と君の言ってる事は少し違う気がするな。……と言うか、その小説に明確な《メッセージ》を求めている時点で、それは限りなくズレているのかも知れないがね。その点、君はロマンチストだ。あらゆる行為に、価値を見出だしたがる」
小説にしろ何にしろ、《伝えたいもの》が《言葉》や《文字》だとは限らない。《色》かも知れないし《形》かも知れない。もしかしたら実に《概念》的な曖昧な存在なのかも知れない。かといって何かが在るとも限らない。……と、平塚先生は付け足した。実に……国語教師らしからぬ発言である。
その《なにか》が無くて堪るものか。そんなのでは、みんなみんな僕と同じではないか。
じゃあ、努力していた自分とは何なのだろう。意味などない?価値などない?
ふざけないでくれ。なら悲しんだ自分も、酷く不格好で滑稽なのか?
意味がないなら書かなければ良いのに。
価値がないなら書かなければ良いのに。
生きる意味がないなら、死ねば良いのに。死ねれば良いのに。死ねないのはどうしてだろう。少なくとも、それが小説を書く理由であってほしくない。……これが、惰性なのか。
つーか流れるかの如きナチュラリズムで心読んでんじゃねえよ。スルーしかけた手前びっくりしたじゃねえか。
「まあ、ただの雑談だよ。気にしなくていい」
「どうしてくれるんですか。めちゃくちゃ気になりましたよ」
「ただ我々が未熟なのか何故なのか。人の心を理解するのは、非常に難しい。だから本の内容だって、物語としか取れない人間も大勢いる。メッセージ性など取って付けただけだと思ってしまう人間もいるさ。……ふん。そう言う点では、君はリアリストなのかも知れないね」
平塚先生は俺に構わずベラベラと続けた。それよりこの人、こんな饒舌な人だったかしら。――と、まで考え、そんなことを言えるほど自分は他人を知らないのだと気づいた。
「えーと、結局どっちなんですかね?」
俺はリアリストなの?それともロマンチストなの?
正直、――どうでもいいが。
言いたいことは言うほどない。早く、終わりにしたい。早く、結末を寄越せ。早く終わりをくれ。僕を納得させてくれ。
幸せでもなくていい。不幸であっても無くてもいい。限りない幸福でも、果てしない不幸でも、僕は拒絶しない。ですから神様……僕に、終わりをください。
エンディング、は、何処ですか?
いつ終わりますか?何も考えてたくありません?僕は死にますか?僕の隣に誰かいますか?……仮定は要らない。結論をくれ。――過程は要らない。結末をくれ。
死になど興味もない。堕落などエゴだ。……一心不乱の、終わりを寄越せ。
堕落なんてカッコつけた言葉には飽き飽きだぜ。
「リアリストとは違うかもな、君の場合。君は執着しないことに拘って、生きることに価値を求めていながら、その実は余りにも清々しい、価値の無い《終着》を欲している。プラスを求めているのに、マイナスに救いを求めたがる。不幸でも真っ当な理由を求めるくせに、理由の無い《安楽》を望んでいる。……実に矮小な矛盾だ」
「知りもしない癖になぜ分かる。あなたは何を達観しているつもりなんですか、バカらしい。説得力云々ではない。理解し難く、聞く価値もない台詞をぬけぬけと吐き出す。そもそも、他人にわかってもらいたくなどない。それ以前に僕の心中を他人が言い当てたところで、そこには過程がない。意味がない。価値を感じない。……故に何も変わりません。意味もなく消えたいです」
僕は言った。
心中とか、自分とか、感情とか、人とか、関係とか、概念とか、全てが鬱陶しい。哲学ってなにさ?
五月蝿い。騒ぐな。僕は何も考えたくない。思考を止めろ。僕には何もない。故に僕が想う《節》はない。
「先生。僕は、何も、思考、考えたくありません。早く僕を助けてください。普通に生きられなかったので、殺してください。いえ、殺されるのは癪なので、僕を終わらせてください」
「死ぬのが嫌だから無条件に終わらせろ、だなんて子供の考え方だよ桐山。人生はゲームではない。生きるのにも、もちろん死ぬことにも、痛みが伴う。痛みのない、逃げ道はないよ。言うまでもなく、それは死に方には関係なく、ね……」
平塚先生は表情を一転し、優しげに諭してきた。
僕はただ俯く。真っ白い眼球には、燦々と白い床が乱反射していた。目が、見ることを拒み始めていた。
――《無囲色》。僕がそう名付けたソレは、目や耳、触覚や味覚、その他様々な感覚器官が、情報を得る必要を失いつつある生活の中で活動を鈍化させることにより、《景色を見ること》《音を聞くこと》などの情報を取得する行動に支障をきたした状態のことを言う。その状態になると周囲の色は無色に近づいていき、音は遠退いていく。そして段階を積み、終いには《感覚》を手放す。その気にならなければ意識を手放すこともできるだろう。
きっと、できてしまうことだろう。
「ならせめて放っておいてくれませんか?痛いんです。誰かに、誰かに今の自分を押し付けるのは……」
「優しいね、君は。そんな君を放ってはおけないよ。まだ諦めてはいけない。――それと、由比ヶ浜の件だが、話は聞いている」
本人から……かな?
知らないな。聞きたくないな。面倒だ。――早く、帰らなければ。
「君はきっと罪悪感を抱いたことだろうな。何せ、純粋な少女に向かい、《騙されていてくれ》なんて馬鹿げたことを、その相手の気遣いでもって、成り立たせたのだから。……さぞかし良心が痛むだろう。いや君に良心はもう無いのか」
なに勝手に見放してんだ。……痛いって言ってるだろ。……本当に僕の言葉は届かないんですか?
いや、それ、も、痛い……フリなのかな?真似?迷い?世迷い言?僕のこころは痛んではいないのかい?
……てゆーか《こころ》ってなあに?
――それは感じないもの。
思い出ってなあに?――それは暗い部屋のこと。
友達ってなあに?――思ってたもの。そして違っていたもの。思い込んでいたもの。
友情ってなあに?――それは、手に入らなかったもの。
意味も何もない自問自答は終わらない。
人ってなあに?――……。
愛ってなあに?――……。
親ってなあに?――……。
嬉しいって、なに?……。
悲しい、ってなに?……。
俺って何方?
僕って何者?
《桐山 霧夜?……知らないな》――知らないね。そうだね。勝手に上がって、ゴメンね。
もう、来ないよ。少なくとも、あなた達の意識の目の前には……。
《お父さん》――。
《お母さん》――。
帰れとか、気持ち悪いとか、寄るなとか、気違いとか、誰だとか、何だとか。そんなこと言わないでよ。
どうして思い出せないの?なんでそんな困った顔をするの?ヤメテヨ……。ソンナ顔。
ボクは、ボクハ――アナタタチノコトヲズットタイセツニオモッテイタヨ……?
ワスレタ?許さねえぞ。全員、全員、……全員、――ああ、もうどうだっていいや。
ぶん殴らなくていいや。絞め殺さなくていいや。踏みつけなくてもいいや。軽蔑しなくていいや。
何もしなくていいや。僕の知らないところでどうとでもなってくれたまえ。
《人間》
《愛》
《感情》……について。
回答を準備してみた。
……それらはね。俺がね、僕がね、この桐山霧夜って名前の名前がね、なり損ねた、もの。
得られなかったもの。感じ損ねたもの。どれもこれも欲しかったけど、無理なもの。
やはり手が届かないもの。
昔はもっと近くにあったような気がするけれど、もう遅い。
手遅れだし手の施しようもないだろう。嗚呼、今日も落ちぶれる。堕ちていく、深く、深く……。
今の生き方に飽きていて、今の生活に死んでいる。
けれども他の生き方は認められなくて、認めるもなくも意味などなくて。不幸も悲しくなくて。それ以前に生活が平坦で。平坦も平坦で。幸せは過去で、実はそれは偽物で。呆気に取られる間もなく府抜けて。しかし、それは仕方なく。僕はダメで、ダメもなくて、善悪が分からなくなって、人を忘れて、命に冷めて、死にたくなれなくて、考えられなくて、死ぬだけ無駄で、僕の前にはマイナスはやはり無価値で、プラスは無意味だ。
けれどもそれは言わば《概念》のお話、現実は違うと思いました。
だから、奉仕部に入部させられても《とりあえず》人との関わり合いを大切にして生活しようと思いました。
嘘で話題を広め、虚偽で人を楽しませ、なあなあに言いくるめ、何処かに自我があるフリをしました。
でも、何処か冷めていました。
いつまでもそうなのでした。僕はずっと夢を見続けるべきだったのです。
意味もなく笑っているべきだったのです。
――僕が本心を口に出すと録なことが起こらなかった。
精一杯道化を演じましょうか。
「罪悪など僕は犯してはいませんよ。僕は本当は誠実なんです。皆が忘れただけで、全ては知らないだけで……しかし僕は決して高尚ではありません。聖者なんかには程遠い。何者にもなれるようになった代わりに何者にもなりたくない。素晴らしくあるべきものがどうしてか僕の前では哀しいだけで――素晴らしくありたいのに誰にも興味を抱けない。人間に関心を得られない」
「更正はできない?」
――ええ。希望を一瞬でも抱いた僕が愚かでした。と、だけ述べた。
「しかし、君は一人では生きられない」
「ならば三日間飲まず食わずで野垂れ死にます。それでも三日間は生きられますから」
「君は本当に愚かだな。まったく愚か者の鑑だ。……鏡を見てこい。お前の目は、何にも見ちゃいない。ただ勝手に失望し、逃げているだけだ」
別に逃げてないだろ。生きるっつてんだ。死んでも、平坦なだけで、なにも変わらないだけでね。
つまりは現状維持だ。考えても見ろ。
中途半端に優しくされて、甘やかされて、それでもって《こんな不便な人間》として扱われるより、《こんな不便》として扱われない方がいいだろ。
ただの不幸を味わうことになる。リスクはいらない。だから結果はなくていい。
――不安が募る。誰かを不幸に巻き込むことになりそうだ。
意識などさっさと手放したいと思います。
「素晴らしくありたいのに厄介者は他人を不幸にするだけだ。幸せにだってできないし、他人の幸せに価値はない。僕だけがくたくたに疲れて、自分を捨てそうになるだけです」
「なら簡単じゃなか。他人を幸せにして、そこに価値を感じるように更正はする。それでいいだろ?」
壁が多すぎるだろ……。
もういいよ。飽きたし。満足したってば。
夢物語は結局紙の上でしか語られていない。
「桐山。まずはまともな人間関係を築きたまえ!そこからサイア……新しい自分をだな、探さないか?」
「比企谷のやつが聞いたら怒りそうですね」
つーか絶対サ○ア人って言い掛けたろ。新しい自分=サイア人ってどんなニュータイプの発想だよ。
……でも年齢からして僕は平塚先生の発想はオールドタイプだと思いました。
「それじゃあ桐山。雪ノ下には礼でもして行けよ?」
「……はい?」
なんでだよ。ついさっき髪型ガールッシュ(ボーイッシュの反義語が分からなかった。実際は何て言うの?ガーリスト?)にされて道化演じるの辛かったんですが。滅茶苦茶喋りまくった気がします。
で、なんでお礼なんかしなくちゃいけないの?こっちはお礼って言うか謝罪求めれられるレベル。きっと裁判とか勝てる。
「雪ノ下は以外にも君の更正に積極的でな、詳しくは分からないが、なにか思う節でもあるのかもしれん。……実は君と由比ヶ浜との間で起こったことを教えてくれたのは、他でもない雪ノ下雪乃なんだ」
だから礼を言えと?何故に?
別に僕が困ったわけではない。
余計なお世話である。
「めんどくさい」
「……。もう吹っ切れて、黙って行きたまえ。部員を待たせるのか?」
平塚先生は煙草をグリッと灰皿へ押し付けると、言ったのだった。僕も何だか急に視界が明るくなったように思えて、少し拍子抜けした。時に人は悩みを膨張しだす。まったく悪い癖だと思う。
それにしても急に邪険に扱いやがって、俺がロマンなんたらだって話は何処へ行った。
そうして頭を冷やして冷静になってみると、先生の言葉がその冴えた頭に響いた。
『君はなにも見てきて来なかったんじゃないか?』
違う。違う。チガウ。
何時もならこうして狂人らしく否定するところだが、今日は肯定から入ってみた。
その通りだ。僕は何にも見ちゃいない。
誰を騙すでもなく嘘を吐いているのかも知れない。
本当のことは僕のグシャグシャな頭のなかで滅茶苦茶に捻曲げられていて、複雑と化しているのかも知れない。だから僕の饒舌な説明文と自分の心境はただの誤魔化しだ。嘘だ。
言葉には出せないほど出来事が多くて難解で、面倒になってしまっている。
だから、追求しない。嘘を吐いてれば物語が進み出す。しかし、根本を忘れて……。
――どうしてこうなった?
価値のないものを切り離していっただけなのに。
《価値のあるものを得たかった》ただそれだけなのに。
結局なんの結論も出ないまま、僕は職員室のドアを開けた。
僕の思考回路の分類すらできなかった。
冴え渡ったと勘違いした僕の沸騰した脳味噌に、刹那、言葉が届いた気がした。
『君はもっと他人に図々しくありたまえ』
何かが聞こえた気がした。
……やはり気のせいだった。
× × ×
部室に戻ると皆がうろたえていた。
どうやら面識のない得体の知れぬ者が小説の原稿を持ち去ったらしい。まごうことなき冤罪だった。ってかやっぱり酷すぎるな。精神崩壊待ったなし(笑)。
俺が原稿用紙を差し出すと、彼らは『あっ……』と、何やら察したような顔をしてこちらを見た。
なにそのちょっとおかしい人を見る目……。いや止めろよ。
……と、俺が突っ込む間もなく、それから皆急いで帰るのだった。
そりゃあそうだ。皆は親がいて、自分の帰りを心配されているのだろうから。
俺は心配もなにも何もないのだから当然だ。当然のことなのだから、それで良いはずなのに、どうしてこんなにやるせないのだろう。……それはやる気がないだけのことか。
佇む僕がこんなに広い教室に独りぼっち。
……と言うわけではなかった。
雪ノ下雪乃は帰りの支度の最中だった。
いつも元気ハツラツとしていながら少し天然っ気もあり、たまにしつこい知りたがりな一面も持つ基本的に世間知らずのお嬢様で僕のことを昔から好きで好きでLOVEで堪らない可愛らしい彼女のことだ。どうせまた何時もと同じく依頼人にお悩みをしつこく聞き込んでしまったのだろう。はあ……こんなにかわいい彼女だけど――まったく、やれやれだぜ。人の気持ちも少しは考えろっての!(怒。
「なんだか気持ちの悪い文章を脳内で羅列してるかのような気持ちの悪い顔ね」
「この学校にはエスパーしかいねえのかよ」
ちょっとやれやれ系ラノベ主人公の真似ゴッコをしてただけでこれだよ。
まったくひでえ仕打ちだ。
……やれやれ。おかげでちょっとムラムラしてきたぜ。
「………ゆきのん」
「死ね」
ストレートだなあ……。
「実はね、ゆきのんに質問があるんだ」
「……無視なの?」
訝しげな目で俺を見つめるゆきのんに少したじろいでしまったが、少しばかり聞いて見たいことがあった。
「平塚先生に言われたんだ。お前はロマンチストのように《理想》を求めながら《リアリスト》のように冷めているってね。果たして俺はロマンチストなのかな?リアリストなのかな?どちらから選べというわけではないけれど、上手く形容する言葉ってなんだろうって思ってね」
適当に省略しつつ、俺はこんどは目を細める雪ノ下に問い掛けた。
なんかすっきりしないから、何でも良いのでとりあえず納得できる回答が欲しかったのだ。
昼の眩しい陽射しがカーテンに構わず、一直線に僕らの立っているこの世界を温かく焦がしていった。
頬に少し汗が滲み、僕が意識も保てなくなるほどの日光を浴びたところで、ようやく彼女は薄いピンク色の唇をゆっくり動かし、小さな口を開いた。
そして、フンッと、鼻で笑った―――。
「まるで童貞を拗らせた高校生のような思考ね。……笑えないわ」
「いや鼻で笑ったろうがよ……」
それも高らかに。
俺がしぶしぶそう指摘すると彼女はまた嘗め腐った顔で首をフリフリと可愛げに振り、僕を笑った。
「違うわ。これは軽蔑したのよ。鼻で笑うというのは嘲笑するという意味よ」
「もっと悪いじゃないかよ」
俺の言葉など完全無視。
彼女は「私が正しいわ」と言ってから胸のない体躯をくるりと翻し、颯爽と帰っていった。
一方で僕は笑っていた。
まさに笑うしかないと言った感じだ。
楽しくも無いのに笑いやがって、気持ち悪いんだよ。
だなんて昔の言葉も笑えてくる。
少なくとも僕は自分の不幸などには酔っていない。快楽原理に基づいていない。
そう断言できた。
それでも俺は笑っていた。
分からなかったけど、何だか面白かった。確かにこいつらも普通って感じじゃない。
なかなか味のある連中ではないだろうか。
もしこの世界が物語で、仮にライトノベルだったりしたらなかなかのキャラ風情ではないか。
何にもない手ぶらの自分じゃ付いていけるか不安でさえある。
また俺はにやっと笑った。
役不足かも知れないが、主役のつもりでこちらも演じさせていただこう。
嗚呼、僕なんで生きてんかな。
死んだって良いのに、やめたって良いのにやっぱり物好きなんだよ。
そうだな。生きる理由ね。……やっぱり素直に、
《笑ってたいよ》――。
僕の暗くて小さな部屋の隅。
そこに情けなく、寂しく侘しくポツンと立て掛けてある記念写真。
その景色が存在する世界に意味を感じ、価値を感じ、精一杯誠意一杯生きていた、
屈託のない笑顔でピースサインをする男の子。
――そんな彼の名前を思い出せそうな気がした。
そんな気がした可愛いゴムで髪を束ねた僕であった。
後書き
シリアル()が終わった……。(もしかしたら続くかも?)
矛盾?なにそれおいしいの?
って、いやたっぷりだよ!
でもまあこんな未熟さも情緒不安定なキャラと合ってて良いと思いませんか?←言い訳
ちなみに、平塚センセーの「黙って行きたまえ」は投げやりに見えて、
「もう黙って生きたまえ」というメッセージ付きです。
……なにこの自分のギャグの笑い所を細かに説明するような恥辱は!
しかし、「他人に少しくらい図々しく生きろ」ってのは案外その通りなんじゃないかと、思わんでも思わなくもない。少なくともオリ主に対しては的を射ているんじゃないですかね。
それと、最後の場面が切り替わったところは、前話の続きのつもりです。
《 》――。の、ところね。おいてけぼりにされたと感じた方はごめんなさい。
えー、それでは、よろしければ感想をください。是非ともお気軽に。
また、お気に入り登録人数が二人増えました。ありがとうございます。
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