ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百十九話:乙女の秘密
「じゃあ、いくよ?はい、キレイキレイー」
ぽわわわわーん。
「……ガウウ?」
『……これで、キレイになったの?』
「うん!もう大丈夫だよ!」
「ガウウ……ガウ!」
『えっと……あ、ほんと!もう、大丈夫みたい!』
「うん、だから!おいで、モモ!」
「フニャー!!ゴロゴロゴロ……!!」
『わーい!!ドーラちゃーん!!』
十年の野生生活で染み付いた自分のにおいを気にする乙女なモモのためにキレイキレイをかけて、清潔にしたところで。
やっと、モモが私に跳び付いてきてくれました!
「わーい!モモだー!モフモフだー!フカフカだー!」
「フニャー!ゴロゴロゴロ……!!」
『ドーラちゃんだ、ドーラちゃんだ!ほんとに、ドーラちゃんだ!!』
散々にじゃれついてくるモモを、私も散々に撫で回します。
うん、十年経ってもモフモフのフカフカです!
子供時代よりも毛並みの柔らかさはやや落ちますが、ボリュームが増して、触り心地は抜群です!
添い寝したら、すごく気持ち良さそう!!
モモのモフモフを十分に堪能して落ち着いたところで、ヘンリーが声をかけてきます。
「ドーラ。その子が、あの時のベビーパンサーか?」
ヘンリーは当然知ってるわけですが、話を進めやすいように聞いてくれてるようですね!
ありがたいことです!
「うん!みんなにも紹介するね!この子は、モモ!十年前にアルカパで助けてから、ヘンリーと一緒に拐われるまで一緒にいた、私の大事な家族なんだけど。その時にこの子だけ置き去りにされて離れ離れになってて、十年ぶりにまた会えたんだ!」
「なんと、そのような事情が。そう言えば拙者が十年前にドーラ様にお会いした折りに、モモ殿のお姿もお見かけしたような。なれば、ドーラ様のお仲間としては大先輩に当たりますな。拙者ドーラ様の一の臣下、ピエールにござる。愛スライムのスラ風号共々、宜しくお願い致し申す」
「ガウウ!ガルル?」
『ピエールさんに、スラ風号くんだね!ピエールさんは、ドーラちゃんの、臣下?なの?』
「私は、仲間だと思ってるんだけど。ピエールがそうしたいみたいだから、そういうことみたい」
「左様。ドーラ様のご家族とあらば、拙者からすれば主筋に当たります。なんなりと、お申し付けくだされ」
「ガウウ……ガウ!」
『うーん……あたしも普通に仲間でいいんだけど、わかった!よろしくね!』
「はっ」
「相変わらず堅苦しーな、ピエールは!女の子にそんなんじゃ、ダメダメ!おいら、コドラン!ドーラちゃんの家族だけあって、モモちゃんもかわいーね!よろしくな、モモちゃん!」
「ガウウ!ガルル!」
『あはは、コドランくん、面白いね!うん、よろしくね!』
ん?
……モモは軽く流したが、これは?
「……コドラン?……まさか、とは思うけど」
「あれ?いやいや、そんなんじゃないって。モモちゃんはかわいーけど、おいらとじゃ種族が違いすぎるし。ドラゴンとキラーパンサーとか、無いから。普通に」
「ガウウ!ガルル!」
『そーだよ、ドーラちゃん!無人島に二人きりでも何も無いくらい無いから、絶対大丈夫だって!』
「だよなー、モモちゃん!」
「ガウウ!」
『ねー、コドランくん!』
「あ、そうなの?ならいいんだ、ごめんね、コドラン」
「いーって、いーって!ドーラちゃんの妹みたいなもんなんだよね?なら仕方ないって!」
無人島に二人きりって。
やけに具体的な例が出てきたが、問題無いならまあいいや。
「ピキー!」
『モモ!スラリン!よろしく!』
「ガウウ!ガウ!」
『スラリンくんだね!うん、よろしくね!』
みじか!
スラリンだから仕方ないが、あまりにも短すぎる!
……なんか、追加してみるか。
「スラリンは、モンスター使いとして私が初めて仲間にした子なの。サンタローズの洞窟にいたんだよ」
「ガウウ!ガウ?」
『そうなんだ!そっか、ドーラちゃんはモンスター使いなんだよね!あ、だから、あたしの言葉もわかるようになったの?』
「うん、そうなん……だ……?」
あれ?
なんですか、この知ってました的な。
……気のせいかな?
「ガウウ?」
『ドーラちゃん?』
「あ、ごめん、なんでもない。最後に、ヘンリーだけど」
「ガウ?ガウウ?ガルル!」
『ヘンリーさん?あの人やっぱり、ヘンリーさんなの?ヘンリーさん、あの時は助けてくれてありがとう!』
うん、そうなんですよね。
私を庇って無理してゲマに向かって行ったモモが殺されそうになったところを、ヘンリーがメラで攻撃を上手く逸らしてくれたお蔭で、モモが助かってるんですよね。
ちゃんと覚えててお礼も言えるとは、やはりモモは賢い良い子だ。
……ちょっと、賢すぎる気もするが。
「……なんて、言ってるんだ?」
「あ。えっと。ヘンリーに、助けてくれてありがとうって」
「……いや。俺のほうこそ、助けに来てもらって、ありがとうな」
「ガウウ!」
『いいの!だって、そうしないといけなかったんだもんね!だって未来のドーラちゃんが』
「も!!モモ!?ちょっと、ちょっと待って!!」
「……ガウウ!ガウ!」
『……あ!ごめんね、ドーラちゃん!ヘンリーさんだからいいかと思ったけど、みんなもいるもんね!』
……そうだ、こんなに賢いモモが、アルカパから遺跡までの全ての現場に居合わせて、話を聞いていたわけだから!
未来の私のことも、私とヘンリーの事情も!
全部、知ってるわけですよね!!
……でも、キラーパンサーの身で全てを理解して納得するとか、ちょっと賢いにも程がありませんかね!?
「……モモ。ちょっと、あっちで。二人で……いや、ヘンリーも一緒に、お話ししようか」
「ガウウ!ガウ!ガルル!」
『うん、そうだね!あたしは知ってるけど、二人は知らないもんね!あたしも、ちゃんとお話ししないとね!』
ああ……ちょっと、モモちゃん……!!
「ドーラ様。宜しければ、拙者らが席を外しましょう」
「……うん、よろしく。スラリンとコドランも、いいかな……」
「ピキー!」
「もちろん!悪い魔物は適当に倒しとくから、ゆっくりお話ししててよ!」
「うん……ありがとね……」
というわけで、モモの潜んでいた穴蔵に、私とモモとヘンリーの三人が残されて。
「……えっと、モモ。……どういう、ことかな?」
「ガウウ!ガウ!ガルル!」
『うん!あたしも、一緒なんだ!ドーラちゃんと、ヘンリーさんと!』
「えっと。一緒っていうのは、……どういう?」
「……おい、ドーラ?なんて、言ってるんだ?」
「ごめん、ヘンリー。もうちょっと、もうちょっと待って」
「ガウウ。ガウ?」
『えっと。ドラゴンクエストって言ったら、わかる?』
「……わかりました」
「おい、ドーラ」
「……うん。あのね……」
十年ぶりに再会した大事な家族。
何も知らずに一緒に過ごしていた当時ベビーパンサー、現在キラーパンサーのモモは、転生者でした。
「……そうなのか」
「……そうなんだって」
「……人間なんだよな?元は、当然」
「……そうなんだって」
「……女の子、か?」
「……女子高生だったって」
「…………そうか…………」
「ガウウ!ガウガウ!ガウ、ガルルルル!」
『あ、でも!大丈夫だから!生まれてからしばらく、前世の記憶とか無かったし!すっかり、もうキラーパンサーだから!ヘンリーさん見てもカッコいいとは思うけど、恋愛対象とかそういうの無理だし!だからって普通のキラーパンサーだと知能が違いすぎて、それも無理なんだけど!とにかく、大丈夫だから!』
…………なんてこと!
つまり、モモの恋愛対象は、この世に存在しない可能性が極めて高いと!?
「…………うう…………モモ…………!」
「……おい?……なんて?」
「……大丈夫!モモは、私が一生守るから!私が一生、養ってあげるから!!」
「ガウウ?ガウ!ガウ、ガウ!」
『え、ほんと?わーい、ドーラちゃんと一生一緒だー!』
「うん!!一緒だよ!!絶対、大事にするからね!!」
「フニャー!ゴロゴロゴロ……!」
『うん!あたしも大事にするからね、ドーラちゃん!』
「……おい。頼む、訳してくれ」
半分泣きそうになりながら、モモの恋愛事情についてヘンリーに説明して。
「……そうなのか……」
「……うん……そう、なんだって……」
「ガウウ!ガウ、ガウ!ガルル?」
『でも、びっくりしちゃったー!ゲームならいないはずのヘンリーさんが、いるんだもん!ドーラちゃん可愛いし、わかるけどね!家族と国よりもドーラちゃんを選んじゃうなんて、情熱的だね!ね、付き合ってるの?ヘンリーさんと』
「いや……そういうんじゃないよ」
「ガウウ?ガウ!ガウウー」
『え、そうなの?お似合いなのにー!付き合っちゃえばいいのにー』
「いや……モモ……」
「おい、何て」
「ガウ、ガウウー」
『そっかー、違うのかー。ヘンリーさん、かわいそうー』
「いや、モモ。そういうのはさ。後で、二人で話そうか。女同士で」
「ガウ!ガウウ、ガウ!」
『あ、そうだね!あたしはいいけど、ドーラちゃんは答えにくいよね!ヘンリーさんの前じゃ!』
「……言えない内容か?」
「……ヘンリーがいて、びっくりしたって。ゲームと違うから」
「……そうか」
恋バナだか女子トークだかをはじめてしまったモモを制止して、話を戻して。
「……モモは、知ってたんだよね?ここにいれば、私が迎えに来るって。だから、ここにいたの?」
「ガウウ!ガウ、ガルル、ガウウ」
『うん!ここまで来るのも、結構大変だったけどね!十年前も、ドーラちゃんとお話しできてたらよかったんだけど。できなかったし仕方ないから、ここに来てゲーム通りに畑を荒らさないと、迎えに来てもらえないと思ったから。畑の野菜、少しだけど勝手に食べちゃって。わざと見られるようにしてたからびっくりしたと思うし、村の人に悪いことしちゃった』
「それは……仕方ないよ。でも、ちゃんと謝りに行こうね、一緒に」
「ガウ……ミュー」
『うん……でも、大丈夫かな?だって、あの村って』
「うん……大丈夫じゃないかもしれないけど。でも、モモは私が守るから。大丈夫!」
「ミュー……ミュ、ミュー……」
『あたしは……あたしが悪いんだから、仕方ないけど。……あたしのせいで、ドーラちゃんがいじめられるのは……』
「モモは、悪くないよ。私にちゃんと会えるように、一人で頑張ってたんだよね?私は、モモに会いたかったから。モモが頑張っててくれて、嬉しかったから。だから、迷惑かけちゃった村の人には、私が謝る。すぐ出ていくんだから、冷たくされても私も大丈夫だから」
「ミュー……」
『ドーラちゃん……』
ここまで黙って私とモモのやり取りを聞いていたヘンリーが、口を開きます。
「……大丈夫だ、モモ。ドーラが何かされそうなら、俺がちゃんと守るから。あいつらを納得させるのは無理でも、絶対に手は出させない」
「ミュ……ミュー……」
『ヘンリーさん……でも……』
ヘンリーにモモの言葉がわかるわけは無いんですが、なんとなく会話が成り立ってる雰囲気です。
「こうなったら、言われて聞くようなヤツじゃないだろ。一生一緒にいるなら、そこは諦めろ」
「ミュ……ガウ……」
『うーん……それは、そうかも……』
え、ちょっと、モモちゃん?
そこ、納得しちゃうの?
そんな感じだったっけ、私?
十年前も。
「……ガウ!ガルルルル!!」
『……うん、そうだね!わかった、ヘンリーさん!あたしも、頑張ってドーラちゃんを守るね!!』
「そうだな、かなり怯えてたみたいだからな。モモが付いてれば、そう妙な真似もできないだろ」
「ガウ!ガウウ!」
『そうだね!よし、頑張る!』
モモが前向きになって気合いも入ったのはいいんですが。
言葉も通じないのに、通じ合い過ぎじゃないかね、君たち。
わかってると思うが、謝りに行くんだからね?
脅しに行くんじゃ、無いからね??
……ともかく、話はついたようなので。
「……えっと。なら、いいんだね?戻ろうか、カボチ村に」
「ああ。戻ろう」
「ガウ!……ガウウ!ガウ!」
『うん!……あ、その前に!ドーラちゃんに、これ!』
おっと、いかんいかん。
話が濃すぎて、大事な物を忘れるところだった。
身を翻して穴蔵の奥に戻り、モモが剣を咥えて戻ってきます。
「ガウウ!ガウ、ガウ!」
『はい、ドーラちゃん!ドーラちゃんのパパの剣、ちゃんと持ってきたよ!』
「……パパスの剣」
今よりもずっと小柄なベビーパンサーだった時に、こんなものを運んで来るのは、本当に大変だったろうに。
海を渡ってきたはずなのに、多少の汚れはあっても錆びてもいない。
使うには少し手入れが必要そうだけど、少し手入れをする程度で使えそうとも言える。
「……大事に運んできてくれたんだね。大変だったよね、ありがとう、モモ」
「ガウウ!ガウガウ!」
『うん!いつか、ドーラちゃんのパパに返してあげようね!』
「うん。そうだね」
いつか、パパンの手に返すまで。
それまでは私がちゃんと預かって、しばらくは使わせてもらおう。
「それじゃ、今度こそ。本当に、戻ろうか」
戻って、きちんとケジメを付けよう。
後書き
モモちゃんについての詳細は、外伝を参照ください。
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