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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百十八話:魔物の棲み処

 
前書き
 モフモフ好きのみなさん、大変お待たせしました。 

 
 カボチ村を出て、西に向かうことしばし。

「お、洞窟じゃん!ホントにあったんだー!」
「左様にござるな。他に怪しい場所が無かった以上、ここから調べてみるべきでござろうな」
「ピキー!」

 私とヘンリーはあると知っていた洞窟を、無事に発見して。

「そうだね!それじゃ、行ってみよう!」

 逸る気持ちを表に出さないように抑えつつ、いよいよ洞窟に侵入します。


 宝箱やその辺に落ちてた小さなメダルを回収しつつ、先に進み。
 初めての人食い箱の存在を忘れたままインパスも使わずに普通に開けて、私が襲われかけるもやっぱりヘンリーに庇われて、すかさず仲間たちが殲滅して。

「ごめん、ヘンリー。インパスがあるのに、うっかりしてた。大丈夫?怪我しなかった?」
「大丈夫だ。盾で受けた。忘れてたのは俺もだし、気にするな」
「拙者も失念しておりました。(かたじけ)ない、ヘンリー殿」
「いや、すぐに倒してくれて助かった」
「ごめんね、みんなも。次からは、ちゃんと調べてから開けるね」
「いーよ、そんなの!ドーラちゃんが怪我しなくて、よかったよな!」
「ピキー!」
「魔法でお調べ頂くのはそれで良いとして。次からは、念のため拙者が開けましょう」
「え、いや。調べるんだから、そこまで」
「またうっかり失念せぬとも限りませぬ。他の者が開けると思われればドーラ様もお忘れになりにくくなりましょうし、万一お忘れになろうともそれはそれで問題ありませぬ」
「……」

 確かに、自分で開けると思ったらそのままうっかりとか、またやりそうだ。私なら。
 あと忘れるんじゃなくても、たぶん大丈夫だから今回はいっか、という方向のうっかりとか。

「……ピエール。それなら俺が」
「ヘンリー殿にはドーラ様の御身(おんみ)を最優先に、お守り頂きたい」
「……わかった。すまん」
「なんの。ドーラ様の安全を最優先に考えた結果にござりますれば」
「……」

 まだ私のほうがヘンリーより確実に強いかどうかは最近微妙になってきたが、それでもその程度なんだから私だけそんなに守る必要は無いと思うんだが。
 そんなこと言っても結局守ってくれるんだろうし、忘れなければいいだけの話だし。

「ごめんね、二人とも。それじゃ、次からはよろしく。でも、ちゃんと調べるから!忘れてたら、開ける前に言ってね!」
「は。失念しておらねば」
「……ヘンリー」
「覚えてたらな」
「……」

 私が開けるんでなければ、二人ともそこまで気にしなさそうだ。
 次からは私が、本当にちゃんと気を付けよう。


 なんてこともありつつ、更に先に進み。

「あれ?人がいる」
「そうだな。いるな」

 そうだ、そう言えば人がいたんだ。
 こんな辺境の洞窟にわざわざ潜って、ここには恐ろしい化け物がいるから気を付けろとか、教えてくれるだけの人が。
 意味がわからないが、普通に考えたら武者修業してる冒険者とかだろうか。

 ゲーム通りにちゃんとモモがいるとも限らないし、折角だから聞いてみるか。

 と、私が声をかけようとしたところで、またそれを遮るように。

「おい。ちょっと」
「うわっ!!」

 ヘンリーに声をかけられた戦士らしき男性が驚いて足を踏み外し、床の穴から階下に落ちていきました。

 ああ、そう言えばそうだった。
 最初に一人で依頼を受けた成り行きでカールさんの対応は私が普通にしてたから忘れてたが、そう言えばお年頃の男性相手にはそういう妨害が入るんだった、通常は。
 そう言えば、これはそういうイベントだった。
 色々と、そう言えばだった。

「……落ちちゃったね」
「……そうだな」
「……追いかけようか。飛び降りるけど、いいよね」
「そうだな。相手は気を失ってるみたいだし、それで大丈夫だろ。高さもそれほどでも無いし」

 大丈夫って何が……ああ。
 もう対策済みだから、気を失ってなくても別に大丈夫なんですけど。

「あ、でも。馬車が」

 私たちはいいけど、さすがに馬のパトリシアと馬車は、飛び降りて平気ということは無いのでは。

「大丈夫だ。それも、取説に書いてあった」
「え、そうなの。ならいいか」

 旅の扉の移動に着いてくる機能があるくらいだから、それくらい対策してあってもおかしくないか。
 別の洞窟で本当に飛び降りざるを得ない時もあるし、それなら良かった。

「よし、行くぞ」
「あ」

 止める間も無く、ヘンリーが先に飛び降りて行きました。
 まあいいけど、別に。

「ドーラ様。拙者は殿(しんがり)を務めますゆえ、どうぞお先に」
「わかった」

 ヘンリーに続いて、馬車を引き連れて飛び降りて。


「……船で、なんか作ってたの。それか」
「うん!女性としてはね!わかってていつまでもそのままっていうのも、どうかと思うんだ!」

 ……やっぱり見てたのか!

 しかし、残念だったな!
 アルカパで材料を買って、船で作業を終えて!
 スパッツというか、ショートパンツに近いような物を縫い上げて、既に対策済みです!
 そんな都合のいいものは服屋に売ってなかったので、手縫いで仕上げるのに時間がかかったけれども!
 動きやすいようにピッタリとした作りにしたから、至近距離でまじまじと見られるとやっぱり恥ずかしい状態ではあるけれども!
 こういうチラリズム的な事故の防止には、十分です!

「……なんだよ、それ。色気が無いにも程があるだろ」
「そんな色気は要りません!ていうか、見えるってわかってるなら先に行かせるのが紳士ってもんじゃないの?なに、普通に文句言ってるの!?」
「……そこは、ほら。男のロマンっていうか、仕方ないだろ。事故なら」
「そんなのもう事故じゃないし!とにかく、見せないから!!」
「……ちっ」
「だから、舌打ちしない!!」

 などという言い合いをしているうちに、仲間たちも飛び降りてきて。


 揃ったところで、気を失っていた戦士さんに声をかけます。
 私じゃなくて、ヘンリーが。

「おい。大丈夫か?」
「……う?う、うわっ!!」

 声をかけられて、意識を取り戻すと同時にまた驚いて飛び退く戦士さん。

 ちょっと怯えすぎじゃないですかね?
 一人でこんなところにわざわざ来るくらいなんだから、もうちょっと度胸が据わってても良さそうなものだが。

「……おい。本当に、大丈夫か?」

 ヘンリーも、呆れたように改めて声をかけ直しています。

 その呆れに気付いているのかどうなのか、戦士さんがはっと我に返って咳払いをし、落ち着いた様子を取り繕って答えます。

「う、うむ!問題無いとも!この洞窟には恐ろしい虎の化け物がいると言うのでな、気が昂って、つい過剰に反応してしまったまでよ!オレほどの戦士ともなれば、集中すれば感覚が鋭敏になりすぎてしまってな!全く、困ったものだよ!」

 要するに、化け物の気配に怯えてビクビクしてましたってことか。
 物は言い様と言っても、上手く誤魔化せてもいないが。
 そんなことはどうでもいいが。

「虎の化け物?どこで、そんな話を聞いたんだ?」

 そう、そこですよ。
 モモがいるらしいのはいいとして、近くの村の人たちはどこにいるか知らなかったのに。
 なんでこんな、旅の戦士さんが知ってるの?

「そこは、勿論。オレほどの戦士ともなれば、同じ旅の戦士との情報交換で、その程度のことはな!同じく武者修業をする者たちの中では、有名な話だ!気配は感じるし一瞬であれば姿も見かけるのに、襲ってくるでも無く、正体もはっきりしないと。オレほどの戦士であれば、戦えば倒すこともできようが、まあ戦えないのであればな!倒せずとも、致し方ないな!全く残念なことだ!」

 要するに、万一にも戦う羽目にはならなそうだから、恐ろしい化け物が出る洞窟に行ってきたという箔付けを狙って来たと。

 この戦士さんのことはどうでもいいとして、そんなに有名な話になってるのか。
 他に人はいなかったし、腕試しとして積極的に倒そうという話では無いみたいで良かったけど。
 この戦士さんが戻ったら、また大袈裟に話を吹聴するんだろうし。
 妙なことになる前に、迎えに来られて良かった!

「そうか。驚かせて悪かったな、それじゃ俺たちはこれで」
「な、何?もう、行くのか!?袖触れ合ったのも何かの縁だ、ここは一つ、同行して力添えをしても、構わないが?」

 え、何めんどくさいこと言い出してるの?
 一人で来たんだから、そのまま一人で帰りなよ。
 やだよ、こんな人連れてくの。

「俺たちは、その化け物を探して来たんだが。確実に見付けて、退治するなりなんなりしない限り戻らないが、それでも?」
「な、何!?……いや、オレほどの戦士であれば、いざ戦いとなれば、確実に力にはなれようが。オレほどの戦士ともなれば、そうそう暇というわけにもいかなくてな。そろそろ、戻らねばならない頃合いだ。全く残念だが、ここで別れるとしよう!」
「そうか。じゃあな」

 ヘンリーが上手く話を持っていってくれて、向こうからお断り頂きました。


 急ぐという割にビクビクとしてその場から動こうとしない虚飾戦士さんを一人残し、再びモモを探して洞窟を進みます。

 飛び降りてきた上階に戻り、別の道からまた階下に降りて。


「……ここだな」
「……そうだね」
「ふむ。強い何者かの気配を感じますな」
「いよいよってヤツだね!」
「ピキー!」

 いかにも何かが潜んでいそうな穴蔵を発見して。
 邪悪な感じはしませんが、ピエールが言うように、何か強い気配を感じます。

 ゲームでもこんな感じの場所だったし、まず間違いないでしょうね!
 モモが、いますね!

「……ドーラ。準備、いいか?」

 他の仲間たちに聞こえないように、ヘンリーが囁いてきます。

「うん。大丈夫」

 ここでの準備と言えば、ビアンカちゃんのリボンですね!
 十年離れていたモモに私を思い出してもらうための、思い出の品です!
 一時的にスラリンの頭頂部に結んでいたこともありましたが、貝殻帽子を被せる時に外して、その後は私が持ってました!
 当然今日は、いつでも取り出せるように手元に準備済みです!

 ゲームならうっかり忘れてもやり直せるとは言え、現実ではそうもいきませんからね!
 こんなところで、うっかり失敗してる場合ではありませんよ!!

「じゃあ、行くか」
「うん。行こう」
「ドーラ様。拙者が先に参ります」
「うん。でも、いいって言うまで攻撃はしないでね。まずは様子を見るから」
「御意」

 事情を知ってる身としては先頭切って突入して、さっさと話を進めたいところですが。
 そうもいかないので釘を刺した上でピエールに先に行ってもらい、不自然にならないようにヘンリーにも先に進んでもらって、スラリンとコドランを後ろに従えて、いよいよ穴蔵に侵入します。


 中に入ると。

 暗がりの中で何者かが身を起こし、こちらの様子を窺っているようです。

 警戒しながら黙って近付くピエール、続く私たち。
 同じく警戒を高めたように、こちらの様子を窺い続ける何者か。

「ガウウ……グルル……」

 威嚇するような唸り声が聞こえます。

「……ドーラ様」
「待って。まだ、ダメ」

 ピエールが、抑えた声で私に伺いを立てて。

「ガウウ……?」
『え?ドーラちゃん?』

 あれ?

「今、誰か何か言った?」
「……唸り声しか聞こえなかったが」
「ん?おいらも、今、なんか」
「ピキー?」
「……ドーラ様。これは、一体」

 戸惑った様子のピエールが、また私を呼んで。

「……フニャー!ゴロゴロゴロ……!」
『……ドーラちゃん!やっぱり、ドーラちゃんだー!』

 歓喜に満ちた意思の声が響いてきて、暗がりからキラーパンサーが姿を現し、私に躍りかかってきます。

「ドーラ!」

 ヘンリーが、咄嗟に私を庇うように立ちはだかりますが。

「フニャー!ミュ、ミュー……」
『あ、ごめんなさい!急にこんなの、びっくりするよね!ほんと、ごめんなさい……』

 シュンと項垂れて、巨体を丸めるように縮こまるキラーパンサー。

「……おい、ドーラ」
「……うん、大丈夫。なんかわかんないけど、大丈夫だから。ちょっと、下がってて。みんなも」
「……わかった」
「御意」
「りょーかい」
「ピキー!」

 なぜだか手順がすっ飛ばされてるが、あれがモモであることは間違いなさそうなので。

 項垂れて少し後退っていたキラーパンサー、というかモモに、仲間たちの前に進み出て歩み寄ります。

「ミュー……」
『ドーラちゃん……あたしのこと、わかんない……?もう、忘れちゃった……?』
「ううん、わかるよ、モモ」
「……フニャー?」
『……え?ドーラちゃん?……あたしの、言ってること』
「うん。わかるよ。わかるようになったの」
「……フニャー……?」
『……ドーラちゃん。あたしのこと、わかる?ちゃんと、覚えててくれた?』
「わかるよ。覚えてたから、だから。迎えに来たの」
「……フニャー!ゴロゴロゴロ……!!」
『……ドーラちゃん!嬉しい!信じてたけど、来てくれるって、信じてたけど!でも、怖かったから、寂しかったから!ドーラちゃんに会えて、嬉しい!!』
「うん、ごめんね、遅くなって。私も嬉しいよ。また、モモに会えて」
「フニャー!!ゴロゴロゴロ……!!」
『うわーん、ドーラちゃーん!!』

 感極まったように叫んで、再び飛びかかってこようとするモモを、受け止めようと身構えたところで。

「フギャー!」
『あ!ま、待って!あたし、くさいかも!』
「え?」

 はっとした様子で踏み留まったモモが、慌てたように自分のにおいを確認し始めます。

「ガウウ……ガウ……」
『み、水浴びはね?毎日じゃなくても、ちゃんとしてたんだよ?でも、自分じゃちゃんと洗えないし、石鹸も無いし!ドーラちゃんに洗ってもらってた時みたいには』
「いいのに、そんなの。モモのにおいなんだから、嬉しいだけなのに」
「ガウウ!グルル!」
『え、そんなの!ちょっと嬉しいけど、でもやっぱり恥ずかしいから!』

 え、やだモモってば、乙女!
 私は気にしないけど、そういうことなら無理強いもできまいね!

 モモの乙女心に配慮して、十年ぶりのモフモフを堪能するのは、キレイキレイしてからにしますか! 
 

 
後書き
 まだ、モフれませんでした。
 本当にすみません。 
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