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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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短編 あるお盆の物語 ⑦

さて、第二部隊のところである。

「ふむ・・・分かった。すぐに向かおう。」

慈吾朗は、光也から一輝が受け取ったものと同様の連絡を受け、そう返した。

「さて・・・この辺りにも顕現しているが、どうするか・・・」
「『犬神使い』、何の連絡だ?このあたりの妖怪はあらかた消しさったが。」

慈吾朗が悩んでいると、豊がそう声をかけてきた。
もう既に辺りの妖怪は消し去ったため、取り込みもとき、口調も元に戻っている。

「いや、ちょっと色々あってのう。前はおるか?」
「『化け狐』なら、じきに来ると思うが・・・」
「正確には、今すぐに、ですわね。」

前は、豊の背後に現れた。

「急に後ろに立つな、『化け狐』!というか、ついさっきまでかなり遠くにいなかったか!?」
「驚かせるのが目的ですから、お断りします。それに、元から近くにいましたよ。で?慈吾朗は何のようですか?」

前はそう、慈吾朗に問いかけた。

「まあ、かなり真剣なことなんじゃ。どうにも、三体ほど霊獣が顕現したらしい。」
「ありえん。」

豊は、一瞬で慈吾朗の発言を否定した。

「顕現すること自体珍しい霊獣が、そんなに同時に顕現するはずがないだろう。一体どれだけの確立になると思っている。」
「いや、むしろ確立がある以上、可能性があると考えたほうがよい。そこに盆の要素も加われば、十分に考えられることだのう。」
「そんな議論はどうでもいいです。一体、どこに何が顕現したのです?私達はどの霊獣を担当するのです?」

前はそういって話を区切り、慈吾朗に問いかける。

「そうじゃのう・・・場所はここじゃが、正体をあっさり教えては何の意味もない・・・では、クイズにでもしようかのう?ヒントは、今ここで起こっている現象じゃ。」
「ふざけるな。さっさと話せ。『犬神使い』も共に戦うのだろう?」
「いや、わしは別のものの対処じゃ。」
「他の霊獣のところに?」
「いや、神の所に。」

瞬間、二人は絶句した。

「では、わしは行く。頑張るんじゃぞ。・・・ベル!」
「ウォォォォォオオオオオオオオオン!!!」

慈吾朗はそんな二人に見向きもせず、ベルに一吼えさせ、そのまま間をおかずにベルに乗ってその場を去った。

「・・・まあ、変に考えるのは止めましょう。それより、今ここに顕現している霊獣が何なのか、それを考えるべきです。」
「たしか、今起こっている現象と言っていたな・・・」

豊はそう言いながら、周りを眺める。
すると、妖怪が現れたので、豊は白澤図を向けて蒐集しようと黒い触手を伸ばすが、

「ん?手ごたえがない・・・な。」
「の割には、こちらに向かって攻撃が来ていますが。」

そして、二人が避けようと離れたその少し横に、その攻撃は当たった。

「見えていた軌道と実際の軌道がずれていますね。」
「まあ、この程度の攻撃であれば問題はないが、さすがに数が来るとつらいものがあるな。」
「ですね・・・念のため、管狐を放っておきましょう。」

前は八体の管狐を放ち、辺りにいる妖怪の殲滅と、自分達に向かってくる攻撃の撃退を命じた。

「すまんな。」
「構いませんよ。それに、あなたの奥義では自らの手で操る必要がありますし、今回はむきません。」

二人は現在、協力する体制をとっている。
さすがに二人は席組み。自分達では協力せずに霊獣に勝てないと自覚しているのだ。

「その代わり、あなたには霊獣の正体を探ってもらいます。知識はあなたのほうが勝っているでしょうし。」
「任された。」

二人はそういって、冷静に自分の役目を執行する。
今のところは死の危険があったわけではないので、特に慌てる必要はないと考えているのだ。

「まず、ここで起こっている現象だが・・・恐らく、蜃気楼だろう。」

蜃気楼。
下層大気の著しい温度差によって空気の密度に差が生じ、それによって発生する光の異常屈折現象。
それによって像の位置が前後左右にずれたり、倒立したり、実在しない像が現れたりする。

豊が前の位置を正確に認識できなかったのも、これが原因だ。

「なるほど・・・それで実際の像と見えている像がずれたのですね。」
「だろうな。となると・・・狙う位置はいくらかずれたところ。」

豊が試しに、目に見えている位置から少しずれたところに触手を放つと、今度は成功して白澤図に蒐集される。

「成功だな。これでザコどもの攻撃を受けずにすむ。」
「助かりますね。それが分からずに大物が出ていたら、対処ができなかったかもしれません。」

そう言いながら、二人の視界に顕現した大物の妖怪を殺す。
それさえ分かってしまえば、妖怪の中で大物、程度は片手間で倒せる。
まあ、ぬらりひょんのような例外はいるが。

「この現象自体、こんな場所で起こることではない。となると、『犬神使い』が言っていた現象とは、このことで良いだろう。」
「であれば、この現象に伴って顕現するか、この現象を引き起こす霊獣、ということですね?」
「ああ。そこまで絞ることができれば、もう答えは出たようなものだ。」

豊はそういって、軽くため息をつく。

「確かに霊獣だが、格は低いほうだな・・・それでも、十分に厄介だが。」
「そうですか。で、その霊獣の名は?」
大蛤(おおはまぐり)の霊獣、シンだ。」
「ああ・・・なら、私に良い手がありますよ?」
「なら、頼んだ。」
「分かりました。管狐!渦巻きなさい!」

前の指示に従い、八匹の管狐が渦を巻き、片っ端から、妖気の宿ったもの、現象を吹き飛ばしていく。
結果、その場にいた妖怪と蜃気楼が吹き飛ばされ、二人の陰陽師と、一つの巨大な(はまぐり)が残った。

「さて、あとはこれを破壊すれば終わりか・・・霊獣にしては、かなりあっけなかったな。」
「ですね。まあ、あの蜃気楼が厄介なだけの霊獣ですから、あれに対処できる私がいた時点でこうなることは決まりきっていました。」
「それについては、感謝しよう。・・・さて、さっさと殺すとしよう。」

豊と前の二人はシンに近づき、攻撃を食らわそうとするが・・・

『我も霊獣の一角・・・ここで終わってなるものか・・・!』
「な・・・!?」
「何故、貴様がそれを・・・!?」

それを当てる前に、蛤から巨大な光が空に上がり・・・立派な角を持つ、龍が現れた。
 
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