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久遠の神話

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第五十七話 北の国からその七

「そうそう手に入れられるものじゃないさ」
「僕達が怪物を倒して大体手に入るのが」
「多くて一千万、少なくて二百万程度だな」
「充分多いと思いますけれど」
「桁が違うさ」 
 百億、それと比べるとだった。
「千万でもな」
「霞みますよね」
「千万あったら」
 樹里も途方もないものを感じながら言う。
「何年も楽に暮らせますよね」
「まあ普通にな」
「それだけでも凄いのに」
 百億、それはというのだ。
「あの人物凄いですね」
「金が欲しい人ってのは生まれ育ちが関係するけれどな」
 それはある、だがだというのだ。
「価値観なんだよ」
「それなんですか」
「いいか悪いかはまた別なんだよ」
 そうした問題ではないというのだ。
「またな」
「そうですか」
「ああ、別だよ」
 また言う中田だった、今度は樹里に対して。
「そうしたものなんだよ」
「ですか」
「まあ。戦う相手だな」
「戦う相手?」
「ああ」
 こう樹里に話す。
「それだけれどな
「それでもですか」
「俺は誰も嫌いじゃないしな」
 無論上城もである。
「他の奴もな」
「剣士といっても」
 樹里は中田の話をここまで聞いて言った。
「本当に普通の人なんですね」
「戦うけれどな」
「それでもなんですね」
「普通さ、同じ人間だよ」
「そして人間だからですか」
「目的があって考えがあってな」
 そしてだというのだ。
「それで戦うんだよ」
「人間だから」
「人間ってのはややこしいよな、戦いたくないって思っててもな」
 それでもだとも話す。
「目的があれば。それがエゴでも」
「戦うんですか」
「俺だってだろ。目的があってな」
「上城君ともですね」
「そうだよ」
 樹里と話をしながら上城を見て話す。
「戦うんだよ」
「一緒にいてもやがては」
「俺も引けないからな」
 上城を見ながら達観し、それでいて自嘲する感じの複雑な笑みで述べる。
「目的の為にはな」
「上城君の目的は戦いを止めて終わらせることですけれど」
 樹里もこのことは知っている、上城がこのことについて長い間悩んでいたこともだ。そのことを知っているからこそ言うのだ。
「中田さんの目的は」
「俺か」
「はい、それは何ですか?」
「悪いがそれは言わないさ」
 中田はあっさりとした笑みになってこう返した。 
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