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久遠の神話

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第五十七話 北の国からその六

「普通に繁盛してな」
「食べるのに困らないですよね」
「普通に」
「ああ、絶対にな」
 それも間違いない、中田は断言した。
「あれだけの腕だとな」
「それでもですか」
「お金持ちになりたいんですね、あの人は」
「願いは人それぞれだからな」
 中田は王のその願いを否定しなかった、二人には話していないが彼も金が欲しい、だからこそのことだった。
 それでここでこう言ったのである。
「否定は出来ないさ」
「お金持ちになりたいことも」
「決してですね」
「金に溺れるのならともかくな」
 王はそうかも知れないと思いながらの言葉だ。
「それでもな」
「否定は出来ないんですね」
「お金が欲しいことは」
「社会で生きる為に必要だからな」
 だからだというのだ。
「否定出来ないさ、絶対にな」
「そうですか」
「じゃあ聞くけれどな」
 普段と違い真顔で上城に言う。
「君はお金は嫌いか?」
「僕はですか」
「ああ、どうだよそれは」
「そう言われると」
 上城はその問いに考える顔になって少し俯いた、そのうえで答えた。
「あった方がいいです」
「生きる為にな、生きてもらう為にな」
「生きてもらう為?」
「あっ、何でもないさ」
 今の発言は問われたがすぐに打ち消す。
「それはな」
「そうですか。けれど」
「人間が社会で生きていく為にお金ってのは必要なんだよ」
 中田はシビアに現実を話す、どうしても否定出来ないことを。
「世捨て人になったら別だけれどな」
「世捨て人になればですか」
「そうしたらまた」
「ああ、そうなったら違うけれどな」
 だが社会で生きる為にはというのだ、中田はそのことを確実に話していく。
「どうしてもお金がないとな」
「そうなりますよね」
 上城もここで頷いた。
「格好いいことを言っても」
「欲があるなしは別さ」
 金に無欲である、それはまた別にだというのだ。
「必要なものなんだよ」
「王さんは否定出来ないですか」
「ああした願いもな」
「それでも百億ですか」
 上城は王が欲しい額、日本円にしてそれだけのものについても話した。
「それってやっぱり」
「滅茶苦茶な額だよな」
「ですよね」
「そう簡単に手に入るものじゃないさ」
 屋敷に車に店、そして一生過ごせるだけの額となるからにはだった。
「もうな」
「何ていいますか」
「ああ、百億って一口に言ってもな」
 途方もない額だった。 
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