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lineage もうひとつの物語

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動乱
  離脱と加入

アレンは小部屋にいた。
狭く机と椅子がひとつだけある殺風景な部屋だ。
尋問するときに使うのかもしれない。
そこで手紙を開ける。

中身は平凡な挨拶から始まりナターシャ達の動きが綴られている。

アレンは夢中になって読み笑みをこぼす。

「そうか。ナターシャも頑張ってるんだ」

そして二枚目に目を通す。
そこには各地での状況が書かれている。
ここ最近で世界が大きく変わってしまったようだ。
今、アデン王国は大混乱にある。

先日エルフの森でエレナがドラゴンと戦っているし何が起こるかわからない。

そして何か異変があればゲラドへ知らせてほしいとのことだ。
当然だろう。
まだ全てを把握しきっていないだろうし範囲が広すぎる。
普段は無人地帯も多くあるのだ。
そういった場所へ赴くのは冒険者の役目でありアレンもその一人に入っている。

その他に連絡用にとマジックアイテムである便箋が入っておりゲラドへ直接届くようになっている。
この便箋は受取人が発行し発送者へと手渡す仕組みになっている。
そして発行者が内容を書き終え所定の呪文を唱えると瞬時に受取人へ届く。
過去では発送者が自由に受取人を指定し送ることができたが悪戯目的に使用できてしまうため受取人が発行することになったのだ。
もちろん象牙の塔で作られており製法は門外不出だ。

アレンは丁寧に折り畳み封筒に戻すと懐へしまいこんだ。
そして外で待機しているであろう従者へ声をかけお礼を述べる。
アーニャとエレナは先に宿へ戻ったようでイスマイルへ挨拶をしそこを後にした。

思った以上に時間が過ぎてしまったらしく辺りは暗く建物から零れる光と夕飯の香りが人々の生活を伝えてくる。
閑散とした中央通りを歩き掲示板へ向かった。
そこに書かれていたのは昨日と同じくデスナイトの出現を報せるものだ。
いつかはこの手でとは思うが果たしてできるだろうか。
ゲラドの手紙にあったが上級者パーティーを一瞬で殲滅した強さ。
しばらくそのまま思いを馳せ踵を返したときだ

「そこの戦士さま」

突然声をかけられ構えるアレン。
そこにいたのは初老の男性で戦闘の意志は感じられない。

「貴方さまにお願いがあります」

「なんでしょう」

アレンは警戒を崩すことなく聞き返す。

「オークを退治していただきたい」

オーク、先日アレンが相手にしていた者たちのことだ。
この男性が話すには少しでも数を減らしてほしいとのこと。
ケントの民が移住しオークとの小競り合いが絶えない場所、火田村。
オークが火田村の畑がある場所に砦を築き徹底抗戦に出たようだ。
そこに行って依頼を受けてもらえれば退治した数によって報償金が出るらしい。
行ってみてもいいかもしれない。
アーニャ達に相談してからでないと承諾はできないが。

「わかりました。連れに相談してみましょう。」

「ありがとうございます。現地にライラという者がいますので詳しい説明はそちらで聞いて下さい」

そして男性と別れたアレンは宿への道を歩く。
そしてアーニャ達はどこまで自分と行動するのだろうと考えた。
旅の準備で買い物をしていたからまだ目的を達成していないのだろう。
アーニャ達にとって恐らく火田村には用事がないはずだ。
ここで別れることになるかもしれないと思いふと寂しくなるのであった。

翌朝、日課である早朝の鍛練を終え部屋に戻ると二人が部屋の前で待っていた。

「やぁおはよう。今日は早いね」

爽やかに挨拶をするもアーニャは黙ったままだ。
何故か少し顔が赤い。
部屋へ入るよう促しテーブルを三人で囲う。
エレナはアーニャの背中をつつきながら言葉を発するよう促すが俯いてしまい微動だにしない。
エレナは溜め息をこぼし

「アーニャが貴方の子を宿したみたいよ」

アレンに衝撃が走る!
アーニャは驚きすぎて固まってしまう!
アレンは初だがどうやったら子供ができるかぐらいはわかる。
行為の覚えが全く無い。
自分は夢遊病でも患っているのだろうか。
エレナの顔は真剣そのものだ。
意識していないところで襲いかかってしまったのか。
しかし自分は男だ。
責任はとらなくてはいけない。

嗚呼ナターシャ。
護る対象が変わってしまったことを許してほしい

エレナは固まったまま放心しているアーニャと頭を抱えてうんうん唸っているアレンの様子を楽しんだ後に

「冗談よ。そんなことあるわけないじゃない。それとも二人には思い当たる節でもあるの?」

アレンとアーニャは首が取れるのではないかと思われるぐらい否定をし落ち着きを取り戻すのに必死だった。

落ち着いたアレンにエレナはお願いする

「私達二人を貴方のパーティーとして迎えてほしいの」

アレンにとって願ってもないことだが疑問が浮かぶ。
レジスタンスのほうは?
聞こうとしたとき先にエレナが話しだす

「レジスタンスは辞めたの。正式にね。」

「それにね貴方は殿下の元に馳せ参じるのでしょう?だったらここにいても貴方についていっても結果は変わらないわ」

先を越されたアレンは他にも思うところはあるが口に出すことはせず突っ込むことはしなかった。

「願ってもない申し出です。よろしくお願いします」

アレンは右手を差し出し握手を求める。
アーニャが先程とは売って変わって嬉しそうに握手をした。
そしてエレナも手を重ねここに一つの新しいパーティーが誕生した。

「アーニャよかったわね。また一緒に旅できるわよ」

アーニャは再度俯いて固まってしまった。 
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