戦国異伝
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第百四十三話 一乗谷攻めその十三
「よいな」
「はい、わかっております」
「それで浅井久政を」
「浅井久政は捨て石よ」
彼はそれに過ぎないというのだ。
「肝心なことはわかっておろうな」
「浅井家を滅ぼすことですな」
「浅井長政を」
「そうじゃ」
まさにその通りだというのだ。
「あ奴を織田信長に滅ぼさせることじゃ」
「その為浅井久政に髑髏の術をかけ操り」
「織田家に反旗を翻させたのですから」
「だからですな」
「あそこで織田信長を討てればそれでよかった」
老人の声は浅井家を動かした最初の目的についても言及した。
「それでな、しかしじゃ」
「浅い家が滅んでもですな」
「それでもいいですな」
「うむ、構わぬ」
全くだというのだ。
「それでな」
「紺色の家を滅ぼすこともですな」
「それもよいですな」
「色は我等の敵じゃ」
まさにそれ自体が、というのだ。
「闇にとってはな」
「既に織田家には三つの色がありますな」
ここで一人の声が言って来た。
「そうですな」
「そうじゃ、まずは青じゃ」
織田家の青、この色が最初に挙げられた。
「そしてじゃ」
「紫ですな、長宗我部の」
「そして徳川の黄ですな」
「その三つじゃ」
この三色が、というのだ。
「既に揃っておる」
「他の色も加われば」
「余計に厄介ですな」
「そうじゃ、厄介になる」
だからだというのだ。
「今のうちに手を打つ為にな」
「浅井家を滅ぼさせますか」
「他ならぬ織田信長に」
「確かに浅井長政は操れぬ」
彼はそれだけ強いというのだ、老人の声も彼についてはこう述べる。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「浅井久政は」
「あ奴は父の言葉には逆らえぬ」
それは、というのだ。
「ならば父を操ればよい」
「ですな、まさに」
「攻め方は幾らでもありますな」
「浅井家を滅ぼさせた後はじゃ」
それでは終わらないというのだ、打つべき手はまだあるというのだ。
「武田や上杉は勝手に動く」
「特に武田は、ですな」
「あの家は」
「赤は火じゃ」
五行思想においてはそうなる、赤はまさに火であり燃える色だ。武田家はその赤の家であるからこそというのだ。
「燃える、だからな」
「天下に向けて動きますな」
「必ず」
「織田家とぶつかる、それで共倒れになればよい」
それもまた彼等の願いだというのだ。
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