オタクなハッカーの日常
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出会い方は、いつも凸然!?
前書き
背後にあるパソコンに釘付けの多田が取った行動とは――――
『ピーンポーン』
軽快な呼び出し音が、良いタイミングで鳴り響く。
「おっ、ちょうど来たやんけ」
頼んだものは、定番のマルゲリータと、ピリッと辛いが、それが病み付きになるハバネロピザである。
毎日こうやって宅配の生活だが、飽きたことは一度もない。
食べ物に興味がない&見た目を裏切らず料理が苦手のダブルパンチが効いている。
スキップで、お腹の脂肪がアクロバティックな動きをするが、もう慣れた。
待望の食料に期待を膨らませながら、扉を開けると――
「らっしゃいませーッ!」
いや、いらっしゃいしたのはこっちだから!
近所迷惑だから、そんな寿司屋みたいな挨拶やめて!
いきなりの爆弾挨拶に、思わずツッコンでしまった。
相手も気付いたのか、軽く咳ばらいをすると――
「こんちわ~、ピザハッ、、、、」
今度はムスッとした、いかにも面倒臭いですよ、みたいな挨拶だった。
年齢的には、まだ高校生だろうか。
「えっと、マルゲリータ一つとハバネロピザ一つで3120円やったっけ?」
そんな宅配員の挨拶はもう聞き飽きていたため、最後まで言い切る前にこちらから、その後言うであろう言葉を代弁してやった。
「、、、」
ん?
様子が変や。
どないしたんやろ?
最後まで言い切りたかったんやろか?
意外にも、真面目な一面あるやつやったか。
そりゃ、悪いことしてもーたな。
少し心配になって、宅配員の顔を見上げるが、悲しそうな顔というよりは、むしろ子供が新しいおもちゃを見つけた時のような、楽しそうな、目をキラキラさせて、、、はっ、まさか!
わいは、慌てて配達員の目線の先にある物を追うた。
「あ、、、」
案の定、背後にあるパソコンのディスプレイ見られたぁぁぁぁぁぁ!!
「、、、」
なぁ、こいつ、警察呼ぼなんて考えとらんやろなぁ?
警察沙汰は、ゴメンやでぇー!?
早うなんとかせんと!
「え~っとぉ~、、これはそのぉ~」
必死に弁解しようと努力するが―――
「、、、」
アカンッ!
まだ、何を考えてりか不明な顔で、覗き込んでいる!
いや、しかし並大抵の一般人が見ても、きっと何をしてるかすらわからないだろう。
だから大じょ―――
「スッゲーッ!!みつほ銀行の個人データ、書き変えてるよっ!しかも使ってるクラックのソースって、アメリカのダニエル・ジャクソンが独自に開発したアルゴリズムが組み込まれてね!?これなら逆探知されても、日本全国からランダムに選ばれたパソコンに対象が変更されるッ、これぞ完璧なク・ラ・ッ・キ・ン・グ☆燃えてキターッ!!!ハアハア」
全ッ然、大丈夫やなかったーッ!!
しかも目がイってたし。
何でわかんねんッ!?
こいつ、何者や?
いや、大体の予想はつくねんけど。
少なくとも普通やないな、、いろんな意味で。
そんなことを考えていると――
「あれっ!?おらへんっ!!」
いつの間にか、視界から配達員の姿が消えていた。
「どこ行きやがった、、、」
嫌な予感を感じながら、後ろを振り返ると――奴がいた。
ディスプレイに向かって何かしている。
時々、クックッ、と含み笑いをしているのが、危険な証拠だ。
「ちょっ、おまッ!何してんねんっ!?」
慌てて駆け寄り止めにかかる。
止めようと、奴の片手を強引に掴んでキーボードから離すが、今度は片手だけで打ち始める始末だ。
「ハア、、、ハア、、ちょっと服を脱がすだけだからねー、、ハアハア、、、さあ、俺の前に全てをさらけ出すがいいぃぃぃぃぃぃ!!」
あっ、こういうやつ、秋葉原で見かけたことあるなぁ。
確かあの時は、『職質お断り』と印刷されたTシャツを着た、小太りで帽子にリュック、首には一眼レフという見るからに危なそうな男性が、道行く女の子達にそんなことを言ってて、通りすがった警察官に職務質問されてたっけ?
こいつも、早く逮捕されないかなぁ、、。
って、今はそんなこと考えてる場合じゃなかった!
「人のパソコンをやましい女みたいに扱うなっっ!!」
「君にはそう見えないのかい?まだまだだね」
何、ドヤ顔で、『うまいだろ?』みたいなしてんねん!!
そのネタ古いし、イラッと来るわ!
というより、むしろそういうふうに見えたら最後やろ、、、
だめだこいつ、早くなんとかしないと。
ディスプレイに、ソースファイルを展開させたり、プロパティーを見たりしだしてるぅッ!?
とにかく早くやめさせないと!!
「いいねいいねえーッ、サイコーだよぉー!!」
「やめれ!!」
「ええじゃないか」
「下手な大阪弁使うなっ!」
というか、その台詞、日本史で聞いたことあるぞ?
今はこんなんだが、学生時代はノートだけは真面目にとる、文系男子だったのだ。
って今はそんな豆知識を紹介してる場合じゃ――
「おおー、ここはこうなってるのかぁ」
「人の話完全スルーッ!?」
何やら、プログラムを解読して、しきりに、『おお!』とか『あなたはすごい!』とか叫んでいる。
ってか今、幼女って言った!?
「もうそろそろ、、、」
「え?なんか言ったー?」
こいつ今すぐ追い出したいわー、、
こいつは夢中になると、礼儀をわきまえることができないらしい。
そんな配達員にイライラしていると
「あっ、ヤベッ、時間過ぎちゃった」
「今頃っ!?」
やっと我を取り戻した配達員は、本来の仕事を思い出したようだ。
少し遅すぎる気はするが。
「8120円になります」
「盛り過ぎやろ!!」
どうやったら、ピザの宅配で8000円越えんねん!?
ソロパーティーでもする気か?
盛るなら、もっとばれんようにやれや!
「あっ、じゃあ3120円でいいよ~」
いいよ、って何ッ!?
いつから、宅配の料金は配達員が決めれるようになったん!?
って、そんな不正してて、よう金取れるなぁ!
「はーやーくーしーてーよー」
ムカッつくわぁ!
怒りを抑えつつ代金を渡し、ピザを乱暴に受け取る。
「じゃあこのパソコンに俺のメアド登録しといたから、また今度会おうよ?」
「なんでお前になんか!!」
こんな、どこの馬の骨かわからんやつにメールなんてやれませんッ!!
「そうやって今まで女を振ってきたのねっ!?」
「アホかっ!!?」
俺の古傷に塩を塗り込むようなことを――
「あっ、そんな地味だと告白すらされたことないか」
「余計なお世話や!!」
そういうお前はあるんか!?
「じゃあまた」
「話し聞けやっ!?」
もうだめだ。
しばらく引きこもり生活を続けてきたせいか、こんなハイテンポは疲れ過ぎる。
「あっ、ついでに俺は多田 昌史。よろしく。」
配達員は玄関でそう名乗った。
「俺は、、、って教えるかっ!!!」
「いや、これに書いてあるし、山崎さん」
「うっ」
それは領収書だった。
多田と名乗る男はそのまま扉から颯爽とスキップで出ていき、華麗にバイクに飛び乗ろうとするが、足を引っ掛けて失敗し、そのまま何もなかったかのように走り去って行ってしまった。
「何やったねん、、」
しばらく玄関で呆然としていたが、ふと――
「ピザ冷めてもうてるやんけ」
俺は、すっかり冷たくなったピザをつまみ上げながら、これは悪夢だと自分に言い聞かせた。
「ふうー、、、今日は良いカモ、、じゃなくて人に出会えたなぁ~」
家に帰った俺の顔が、思わずにニヤける。
「今度の休日にでも、また凸るか、、、」
俺は帰りに買ったCPUファンを、パソコンに取り付け始めるのだった。
後書き
一気に文字数が増えましたね(笑)
次回もこれくらい、、、いきたいな~。
でも、いくかな~、、、
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