悪霊と付き合って3年が経ったので結婚を考えてます
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序章
悪霊と付き合って3年が経ったので結婚を考えてます*序章
【悪霊】悪霊とは、祟りや呪いによってわざわい(病気、不運など)の原因となると考えられているものである。(ウィキペディア参照)
東京のとあるアパート。
その一室である、六畳一間のワンルームにはおどろおどろしい音と煙草の煙が宙を行き交っていた。
「心霊特集」
そのテレビ番組は夏を彩る風物詩と取る事も出来るだろう。しかし、幽霊なんてものは概ね人間が作り上げた“やらせ”に過ぎない。怖いと思いながらも“そんなものいるわけがない”と心のどこかでは考えているものだ。
「うっわー……。怖っ……。なんでホラー番組って夜にやるかなぁ……、嫌がらせとしか思えないわ。拓海もそう思わない?」
「彼女」は手で顔を隠しながらも、その目はチラチラとテレビの様子を窺っている。怖いもの見たさ、というものだろうか。
指の間から覗く、虚ろで大きな瞳はテレビの光が反射して鈍色の光を放っている。
「こんなのやらせだって。本物の幽霊なんてそんな大したものじゃないさ。せいぜい、夜中に枕元に立って”怖くて一人じゃ寝れないから一緒に寝ていいー?“とか聞いてくるくらいだろ。」
俺の言葉に「彼女」は仏頂面になり、俺の背中をポカポカと叩いてくる。
その動作に合わせるように、「彼女」のボサボサの長い黒髪が揺れた。
俺が“すまんすまん”と表面上の謝りを入れようとした時―――
ぐぅー……
いつもの聞きなれた音が部屋に鳴り響いた。俺の腹の音じゃない。だとするなら―――
「えへへ……。怖いもの見てたらお腹すいてきちゃった……」
どんな原理だ、それは。
俺は半ば呆れながら、すうっと煙を吐きだし、手に持った火種をどこか投げやりに消していく。
「わかった、わかった。インスタントのラーメンでもいいか?」
待ってましたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべ、うん!、と元気よく返事をする「彼女」。
とりあえず台所に行こう……。
そう思い俺は重たい腰を上げると台所へと向かった。
―――ばたん。
俺は強く締めたつもりなどなかったが、木造の扉はよく音が響くのか、大きな音を立てた。
部屋を出てすぐそこがうちの台所だ。オール電化の綺麗な作り、そして、小さいながらもオーブンが付いていることが俺のお気に入りである。ここに立つと少し胸が躍る。
音楽をやってなければ料理人を目指してもよかったな、などと独り言を呟きながら、俺は戸棚にしまったラーメンの袋へと手を伸ばす。
「ねーねー!月見にしようよ!月見ラーメン!!」
そこにはドアから顔だけのぞかせながら話しかけてくる「彼女」がいた。
―――言葉そのまま、「顔だけ」だ。
残りの体はドアを突き抜け、さっきまでテレビを見ていた部屋に置き去りにされている。
俺はそれを見て少しギョッとしたが、いつものことだと割り切って「彼女」に話しかける。
「生首みたいで気持ち悪い。来るならきちんと全身で来なさい……」
「彼女」は照れつつも、真っ赤なワンピースをはためかせ、ドアをすり抜け台所へと出てくる。
そして「彼女」が出てきたその途端、音を立てて震え始める食器たち。こんな日常にも慣れたものである。
「頼むからまたそれで食器割るのだけはやめてくれよ……?」
そんな俺の発言に「彼女」の青白くきめ細かい頬はさながらお餅のように膨れ上がった。
「しょーがないじゃない! これは生理現象なんだから!」
そんな生理現象、何十年生きてたって起こるものじゃないよ……。
そう、つい口から零れそうになり、はぁ……、とため息をついて、その言葉は散り散りになる。
そう、「生きていれば」そんな生理現状なんて起こるわけはない。
幽霊。しかも、「彼女」はその中でも性質の悪い悪霊ってやつらしい。
……しっかりと消せていなかったのだろうか。灰皿から立ち昇る白い煙は「彼女」よりもどこか幽霊らしさを持っていた。
後書き
はじめまして。ぽんすと申します。
ものを書くのは初めてです。
頭にふと浮かんだものを書きなぐりたくて登録させていただきました。
基本、サクサク読めて、とっつきやすいライトノベル形式で書いていきたいと考えています。
感想、ご指摘お待ちしています。
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