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lineage もうひとつの物語

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旅立
  新たなる出逢い

ウッドベック
ここは砂漠に向かう冒険者が必ず立ち寄る街でありウィンダウッド城の城下町として有名な所である。

中央広場は旅人で溢れ特に掲示板の回りには人だかりができている。
どの街でも掲示板というものは存在しているもののここまで人だかりができることはほとんどない。

ここでは砂漠を横断する商人達が掲示板を使い護衛を増強するために募集し腕に覚えのある者が仕事を探して集まってくるのだ。

到着したばかりのアレンは中央広場の人混みを抜け宿をとろうと掲示板裏を通過していたときだった。

「そこの大剣使いの戦士さん?」

肩を叩かれ振り返ると恰幅のよい人の良さそうな商人風の男だった。

「何か用ですか?」

もちろんのことアレンはここの掲示板に書かれている内容など知らない。
シルバーナイトタウンと同じく冒険パーティーの勧誘が書かれているのだろうと思っていた。

「すみません。もう買い物は済ませてまして」

「あ、いや、そういうことではないんだ」

と商人風の男は慌てている。

「でばどのような?」

アレンには思い当たることはない。

「あんた砂漠を一人で越えてきたのだろう?」

「ええまあ、そうですが」

商人はうんうんと頷き

「私の護衛として雇われないかい?場所はグルーディオまで、報酬は5000アデナでどうだい?」

グルーディオ方面といえば砂漠と比べれば楽にあたる。それで5000アデナといえば破格の報酬だ。一月間宿をとれる額になる。アレンは護衛の相場のことなど知らないが。

「引き受けて差し上げたいのですが色々と聞きたいことが」

「もちろんそうだろう。あっちでお茶でも飲みながらどうだい?」

商人の後ろに続き茶店に入る。
質素で落ち着いた雰囲気のある店内にテーブルが四つとカウンターに五人ほどかけられる席があるくらいの小さなお店。
客は二組ほどおり一番手前のテーブル席へ案内され向かい合って座る。
イヴァンと名乗った商人は二人分の飲み物を注文し向き直る

「さて、聞きたいことは?」

「まず、なぜ私が一人で砂漠を渡ったと?」

イヴァンはたしかに言った。一人でいるからといってそうとは限らないからだ。

「尤もな質問だ。砂漠でリザードマンと戦うあんたを見た。といえばどうだ?」

にこやかに答えるイヴァンの表情からは真偽のほどは窺えない。

「私も砂漠を渡ってシルバーナイトタウンから来たのだがね。シルバーナイトタウンであんたがゲラド殿と一緒にいたところを見たんだよ。そして砂漠でもこの街でも見た。ゲラド殿の知り合いだ、信用もできる。これであんたの聞きたいことはなくなったんじゃないかい?」

一気に話終え飲み物を口に含んでアレンに答えを促す

「ええほとんどお聞きしました。では最後にひとつ。砂漠越えのときの護衛は?グルーディオ方面に砂漠越え以上の護衛は必要ないように思われますが。」

「まさしくその通り。しかし残念ながら戦士二人が見かけ倒しでね。全く役に立たなかったのだよ。他に二人女性の護衛を雇っているがそちらが目当てだったようで解雇したのだ」

なるほど。
他に雇っている以上騙しの可能性は低いようだ。

「わかりました、引き受けましょう」

「そうか!よかった。掲示板だとまたハズレを引きそうで怖くてね」

これは前金だと2500アデナをアレンに渡す。
宿の鍵もつでに渡し告げる

「出発は明後日の朝。呼びにいくから明後日の朝には部屋にいてくれ。それまではこの部屋を使って自由にしてくれてかまわん。」

お礼を言い受けとるアレン。
支払いを済ませ外に出ると

「そうだ他の護衛二人に紹介しておこう」

着いておいでとイヴァンとアレンは宿へ歩き出した。


宿の食堂へ入っていくイヴァンに着いていくと冒険者風の女性二人が談笑していた。
この二人がそうなのだろう。

「イヴァンさんおかえりなさい」

先に気付き声をかけてきたのはエルフ。
若干自分より年上だろうか20台前半の整った顔立ちでかなりの美人だ。

次に声をかけてきたのはウィザードだろう。
自分と同じくらいの年齢でローブを身に纏っていて可愛らしい部類に入るだろう。

「今度のは大丈夫でしょうね」

「君たちも砂漠で見ただろう?一人で越えてた戦士さんだよ。」

ああそういえば
と二人は頷き二人は自己紹介にはいる。

「私はエレナ。見ての通りエルフよ。弓を主体としているわ」

「アーニャ。ウィザードよ。」

頷きアレンも自己紹介にはいる

「アレンといいます。ナイトです。宜しくお願いします。」

お互い固い握手を交わすとイヴァンに同席を勧められそこに座る。
イヴァンは用事を済ませてくると言い昼食を三人分注文し料金を支払ったあと宿を出ていった。

昼食はというとアーニャが前の戦士二人組の愚痴を言いアレンは苦笑しながら相槌を打ちエレナは静かにアレンを観察するという風景だった。
食後のコーヒータイムを満喫しているとエレナがふと口にした。

「アレンさんはお仲間は?独り旅なのかしら?」

「今のところ独り旅ですね。いつかは合流したいと思っているパーティーはありますが今はまだ」

「そうなんだ。てっきり一人でいるから友達いないのかと思ったよ」

アーニャは結構失礼なことを考えていたらしい。

「ははは。まぁ身内いなくて天涯孤独。学友はいますが当たらずも遠からずですね。」

「あ、ごめんね。私デリカシーないから。」

アーニャはばつが悪そうにコーヒーを口に含む。

「いや、事実ですからいいですよ」

エレナは雰囲気をかえようと

「アレンさん、コーヒーお代わりいかかが?」

と返事を待たずにコップを持ちカウンターへ向かった。

コーヒーを入れ戻ってきたエレナから受け取ろうと手を伸ばすと

「え、それって・・・・」

アーニャが何かを見て驚いている

コーヒーを受け取りアーニャを見るとアレンの手元を凝視しているようだ。

「何か・・・・」

と、アレンは自分の手元に目を移し気が付いた。
紋章を見られたのだ。
ここまでマントを外すことなく隠してきたがすっかり忘れてしまっていた。
黙り混むアレンの手をアーニャは取って宿の部屋に連れ込んだ。
何があったのかエレナは驚くもすぐに落ち着き眼光鋭く部屋に入ってきた。
アレンは何も謂うことができず黙っていると

「もう一度見せて。」

アーニャは言いアレンのマントを取ろうとする。
アレンは観念し自分からマントを外し紋章を見せた。

「これってデューク王家の・・・・」

エレナは紋章をその細く整った指でなぞる。

「そう、あなたもレジスタンスだったのね」

所属はシルバーナイトタウンかしら?とエレナとアーニャは話ているが

「レジスタンスじゃない」

アレンはハッキリと言いはなつ。
もちろんレジスタンスの存在は知っている。

二人は呆気に取られるもののじゃあ何故?と紋章を付けている理由を尋ねてきた。

「これはゲラド殿から譲り受けたもの。紋章がはいってるのはそのためだ」

「そ、そうだったの。でもゲラド様からということは信頼できる人物ととってもよさそうね」

アーニャは安心するもエレナはまだ警戒しているようだ。

「アーニャ、まだ油断しないで。盗品の可能性もあるのよ」

弓を手に取り威嚇をするがアーニャに諫められる。

「エレナ忘れたの?イヴァンさんが言ってたじゃないの。砂漠で見た戦士はゲラド様と交流があるようだって」

そういえばそうだったわね と緊張を解きほぐし弓を壁に立て掛けるエレナ。

「ここまできたからには言うけれどイヴァンさんには内緒にしてほしいの」

アーニャのお願いに 勿論だ と頷くアレン。

「私達はケントのレジスタンス。何時でもテレポートできるよう各地を回って標をつけているのよ。」

祝福されたテレポートスクロールというものがある。
これは魔力を込めてある針を自分自身で地面に埋め込むことにより標とし、いつでもその場所にテレポートできるスクロールだ。
ただ大変高価なためアレンは持ったことすらない。

「そうですか。でも帰りはスクロールで帰れるのでは?」

「修行のためよ。来るべき時のためにね」

アーニャは手を出し再度握手を求めた。
エレナもそれに続き

「改めてよろしくねアレンさん。それを譲り受けた理由は聞かないことにするわ」

と笑みを浮かべていた。



女性二人から解放されたアレンは自身の無事を喜び訓練のため砂漠へと向かっていた。
女って怖い。

砂漠越えでリザードマンを相手にしてきたため格段にレベルアップしたアレンは現在ジャイアントアントソルジャーを相手にしていた。
ゲラドがアイアングローブを愛用していた理由は大剣は盾を装備できないため攻撃を受け流すということじゃないのか。
アイアン製品は非常に固く防御に特化している。
これを上手く使えば避ける動作が減るため攻撃のチャンスも多くなる。
アイアンを過信するわけにはいかないが習得できれば戦いの幅が広がることは間違いないだろう。
アレンはその夜は宿に戻らず明くる日も戦いに明け暮れ夜遅く戻っていった。

そして翌日の朝
夜明けと共に宿の裏で剣を振るい体調を整え出発へ備えていた。

「あんた朝早くからバカじゃないの?」

アーニャだ。
おはよう と爽やかに挨拶をしまた剣を振りだすアレン。
こりゃだめだ とアーニャは呆れ顔で去ろうとするも

「朝ご飯準備してあるから早くきなさいよ」

と振り返ると一心不乱に剣を振るアレンの姿。

「なんだ、結構カッコイイじゃないの」

アーニャは誰にも聞こえないよう呟き宿に戻っていった。

アレンが食堂に赴くと三人が揃って食事をとっていた。
食事をとり部屋に戻って荷物を持ちイヴァンへ鍵を返す。
イヴァンは宿帳に何かを記入しお金を払い

「さて、行こうか」

とだけ告げた。


馬車の荷台にアーニャ、エレナが乗り込みイヴァンが手綱をにぎる。
そしてアレンは馬車の前に立ち出発していった。 
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