SecretBeast(シークレットビースト)
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本編 第一部
三章 「真心の隣に友情はあったりする」
第十四話「授業風景 『語り部』」
国語の授業になって、豊村は、今度は、細川 百合の凄さを目にする。
「えーこれは、これは誰か読める奴いるかー」
「はい・・・・・・」小さな声が静かな教室に凛と鳴った。
「じゃあ、呼んでくれ」
「これは、平家物語ですね。ちゃんと全文が載ってるなんて、感激です。それも原文とは。では読みますね」
そのときだけ細川さんは、まるで演劇をしているように叙情的だった。
そうだ、あの名文で始まる平家物語。彼女は原文では、内容が伝わらないと翻訳して現代語訳で朗々と語り始めた。
「祇園精舎の鐘の色、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」
細川さんは、あの名文はそのままにここから現代語訳で始める。
そして物語は始まる。先生は途中で止めようかと思ったがこれだけの朗読はめったに聴けないとあえてとめない。
「栄耀栄華におごるものも、それを長く維持できるものではない。ただ春の夜にみる夢のようである。勢い盛んなものも、ついには滅びてというのは、まさに、風の前にある塵のようである」
とつづく。平家物語のあの哀しい物語が始まったのだ。
清盛の子供時代から、清盛の英傑らしい物語がつむがれるそれは、またなにかのSF超大作のように新しい。が、しかしその清盛も病床に倒れてしまう。大将をうしなって、周りを見渡せば馬鹿ばかりの親族たち。親族は源氏に追い落とされてしだいに負け続け、そして散り散りに。
まさに冒頭の文が物語るがごとくであった。だけど、勘違いしてはならない。清盛も、将軍の仲の将軍。平家一族も、誇り高い名門の一族。しかし、天なのだ、天だけがこの一族
に味方しなかったのだ。そして天とは時代の流れで、源氏に味方したのだ。しかしその立役者の義経も兄である頼朝に平泉でだまし討ちにあい。死んでいく。天下は誰かが統治せねばなるまい。しかしそれは、人を鬼にかえる諸行なのだ。
そして細川はその凛とした声で最後の結びを言い終えた。
「そんな中、六代御前は三位の禅師として、高雄の奥で仏道修行に専念しておりましたが、鎌倉殿は、「平惟盛の子で、また文覚の弟子である。たとえ頭を剃ったといえども、心の中まで剃ったわけでもなかろう」と、召し取って亡き者にするため、
朝廷に奏聞するよう公家に話がありました。そして、安判官資兼に召し取らせ関東へ下らせました。やがて駿河の国の住人、岡部権守泰綱が申し付けられ、相模の国、田越河のほとりにて、ついに斬られたのでした。
十二歳より三十余歳まで命を保ったことは、みな長谷観音の御利生と言われています。三位の禅師(六代御前)が斬られたことによって、平家の子孫はここに絶えてしまいました」
クラス中から賞賛の声が起こる。物語は読み手で如何様にも変るものである。そして細川はプロも顔負けの朗読をしてみせたのである。
国語が終わって、細川さんに、みんなが注目する。
「いやあ、すごい朗読だった。細川さんは、か細い声なのによく通る抑揚のある声でもあるんだな」伊佐が感動したように、熱くなっている。
「わたし、小さい頃から、発音が悪くて。あまり、人と楽しく話せなかったの。そしたらお母さんが、詩集を買ってきて私に朗読してみたら、ってすすめてくれたの。その時には、本が唯一私の、友達だったから喜んでしたわ。そしたら、わたしの頭の中の文章のイメージと私の声がシンクロするようになって。気づいたら、朗読ができるようになってたの」
「そっか、百合ちゃんは、ものすごい量の本を読むものね」
「うん。豊村さん、なにか分からないことがあったらわたしに聞いて。大抵のことは、答えてあげられるわ」
「伊佐さん、百合ちゃんは、こう見えて、IQ200もある超天才児なんですよ」
「ふーん、そうか、わたしも博学で通してるほうだが、体を鍛えることとか他にもいろいろやってたから、細川さんのほうが物知りかもしれないな」
「大丈夫、分かってるから。豊村さん、IQ200を軽く超えてるんでしょ。仕草とか、話し方で分かるの。だからそんなに、言葉に困ったような顔しないで」
「ええ!伊佐さんも、なんですか?」
「あ、ああ。実はな」
「私、豊村さんはなにかとても重たいものをしょってるんだと思うの。だから、困ったことがあったら、わたしたち、全力で手助けするわ。絶対に一人で抱え込んではダメ」
「驚いた。細川さんには隠し事ができないな。分かった。困ったことになったら力を借りるぞ」
「そうですわ。このグループの中で一番の知略に長けたこの高町 天光も手助けしますわよ」
「へえー、高町さんもなにかものすごい能力でもあるの?」
「えっ、わたしは・・・・・・。も、もちろんですことよ!これでも女流棋士としては少しは名が通ってますの」
「女流棋士?って、将棋のプロのこと?」
「え、ええ。これでも竜王戦で王座をとるくらいの腕前でしてよ」
高町 天光は、伊佐に女王と呼ばせるくらいあって顔は迫力のある美人だが、背が中学生くらいしかない。よく見下ろされるのが大嫌いで常に背を伸ばしているような姿勢をしているので自然と姿勢がよくスタイルがよい。だが、胸や尻などはまだまだ、子供っぽい。
高飛車な性格だが、打たれ弱いところがあり、泣き上戸である。
しかし、彼女の知略は本物で、兵法にも通じている超お金持ちの家の出で、執事が百人いて、これを僕として、危険が迫ると、百人の執事が彼女の軍略で一騎当千の軍団に変るのだ。
この女子グループのなかでいちばん、破天荒な人物かもしれない。
「竜王戦で王座?なんか、この女子のグループは凄い奴ばかりじゃないか、ちなみにどんな戦法を使うんだ?」
「どんな戦法?わたしは概存の戦法などは使いませんわ。一戦一戦、まったく新しい戦法を作りますので名前もどうつけたらよいか、まあ世に言う高町流と呼ばれるのがそうでしょうけどこれはわたしが次々に生み出した手を総称してそう呼ぶだけですので。一概には言えないですわ」
「高町 天光、段位六段。女流棋士初の竜王戦に参加、これを全勝する。囲碁においてもその類まれなる才能は生かされ。本因坊の生まれ変わりとも言われる。幼少時。兵法というものに興味を持ち。独自に研究。本人は武術経験は皆無だが、軍隊を指揮させれば、かの諸葛孔明をも凌ぐとされる、しかし、この平和な日本で戦争の指揮など出来るはずもなく、警備会社の職員の育成や警察組織の組織強化、自衛隊の特別補佐官などの役職に高校生としては異例の抜擢をされる」
「おお、細川さん。なんか電子コンピューターみたいだ」
「細川様、あまり人の経歴を読み上げないでくださいな。わたくしは、能力は他人に見せない主義ですの。最初から己の力をひけらかすのは愚の骨頂ですのよ」
「でも、すごいな、みんな、尊敬するよ」
「豊村様!いいですか?わたくしの眼力ではあなたはなにか人に言えない事情がおありなんでしょう。でも、わたくしたちは、けっしてあなたのお荷物にはなりませんから、かまわないで心の内を話してくださいませ。細川様、あなたのお調べになったことちょっと豊村様にお伝えしてはいかが?」
「豊村さん、私たち、あなたがなにを背負っているのか大体検討がついてるの。ドラゴントライアングルというのはご存知?バミューダのトライアングルのように、舟や飛行機が消えてしまう海域なんですが、あまり、科学的には、立証はされてないのでたしかなことはいえないけど、ドラゴンという名のとおり「竜神」が住む海域とされているのです。日本近海にあって。このまえ、少しテレビでも報道されましたわ。それによると、その近海に巨大な門が出現して、それをなにか巨大な生物が守護しているらしいのです、そしてこのことをなぜかバチカンが盛大に取り上げているのです」
「ああ、私たちが山に言っているうちにそんなことになってたのか、天光さん、友ちゃん、細川さん、明日香、わたしの体には、バハムートと呼ばれる伝説の聖獣が宿っているんだ。
門が現れたということは、リヴァイアサンが、守護してきたものがこの世に現れてしまったということだ。教会がどんな反応をしてくるか。門の方はリヴァイアサンが守っているから迂闊に手は出せまい。かといってこのまま何もしなければ、事態は重くなるだろう。たぶん、なにものかがこちらへ使者として来ているはずだ。でものは相談なんだがいいかな?」
「ええ、私たち覚悟は出来てます」
「今日は夏休みの一回しかない登校日、いつもどおり平常でやろう」
「へ?」一同は、すべりこけそうになる。
「これは賢治とも話したんだが。こういうときこそ。日々の生活をおくることで、平常心を保っておこうと決めていたんだ。さいわい、賢治は、あの関西弁さんと話している時もこちらの状態をきっちり、把握している。そして今日出来たばかりの友達が力になるといってくれている。わたしがなにをあわてる必要があるというのだ」
「あはは、もう伊佐さんは、ほんとマイペースですね、あきれました」
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