八条学園怪異譚
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第四十四話 学園の魔女その十一
「後輩にも敬語でね」
「凄く礼儀正しいよね」
「何ていうかレディーよね」
「こんな礼儀正しい人滅多にいないわよ」
「だって先輩は華道の家元の娘さんよ」
茉莉也は二人にこのことから話した。
「お母さん茶道と書道、日舞の先生でもあられるから」
「それでその全部が免許皆伝だからですか」
「礼儀作法もなんですね」
「日本での道は武でも文でもね」
こうした意味で剣道も書道も同じだというのだ。
「礼儀作法、心の鍛錬が大事だからね」
「じゃあ生徒の竹刀を蹴ったり受身知らない生徒に床で背負投する先生は?」
こうした教師が実際に存在して尚且つ大手を振って歩け社会的に尊敬されているのが日本の教育界だ、腐敗ここに極まれりである。
そうした教師は何なのか、茉莉也はその小さめの目を怒らせて愛実に答えた。
「それその武道辞めた方がいいから」
「そうですか、やっぱり」
「っていうかそれ全然心の鍛錬出来てないでしょ」
「竹刀って剣道じゃ命ですよね」
「普通にそんなの蹴飛ばしたら駄目でしょ」
茉莉也は剣道では素人だ、しかしその彼女でもわかることだった。
「無茶苦茶じゃない」
「あっ、そういう人には絶対に近寄ったらいけないと」
七生子も不機嫌さを出した顔で話す。
「母に言われています」
「そうですよね、やっぱり」
「そういう先生の近くには」
「幾ら口で綺麗なことを言って素晴らしいことをしていても」
それでもだとだ、七生子は愛実だけでなく聖花にも話す。
「その教える人が駄目ならその人には近寄るな」
「じゃあどうしてもそれがしたい場合は」
「どうすればいいんですか?剣道でも何でも」
「他の場所に行くといいんです」
つまり他の先生の下で教わればいいというのだ。
「道を教える資格のない人には近寄るなと言われました」
「そういう奴っていますよね」
茉莉也は七生子に目を怒らせたまま言った。
「絶対に」
「そうですね、どの世界にも」
「私もそういう奴見ますから」
「そうです、そうした人には絶対に近寄らない」
「それが大事ですよね」
「はい、本当に」
こう七生子に答える茉莉也だった、そうした話をして。
そのうえで四人でその芸術学部の校舎の開かずの間に向かう、そこは校舎の三階にあった。
その扉の前に来てだ、茉莉也はこう言った。
「ううん、特に」
「特に?」
「特にっていいますと」
「感じないっていうかね」
こう二人に言ったのである。
「特に誰もいないみたいよ、今は」
「妖怪の人達とかはですか」
「いないんですね」
「みたいね、いや」
「いや?」
「いやっていいますと」
「今誰か来たみたいよ」
扉の前でその向こうの気配を確かめながらの言葉である。
「ええと、この気配は」
「じゃあ開けてみます?」
「今から」
「鍵誰か持ってる?」
扉を開けるには鍵が必要だ、これはどの扉でもである。
「多分かかってると思うけれど」
「いえ、そんなのとても」
「今来たばかりですから」
「そうよね、この扉の鍵って」
「じゃあ私が貰って来ましょうか」
七生子がここで三人に提案してきた。
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