八条学園怪異譚
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第四十四話 学園の魔女その十
「頑張ってますからね」
「ですよね、あの人も」
「もうベテランなのに」
「ああした方がいてくれるからです」
「阪神は頑張れるんですよね」
「中継ぎ抑えもしっかりしてるから」
阪神は伝統的に投手陣がしっかりしている、その中でも中継ぎ抑えの充実は暗黒時代でも健在だったのだ。
「阪神は何とかやっていけますね」
「これで打線がいつも強いと」
実は阪神は打線が強い時期は少な。チームの代名詞となっているダイナマイト打線は滅多に出て来ない。
「いつも優勝出来るのに」
「残念ですよね」
「はい、私いつも阪神が勝つ様にお祈りしてるんですけれど」
「私もよ」
茉莉也もだった、阪神の勝利を祈願しているというのだ。
「けれどよく」
「負けるのよね」
「負ける姿も絵になりますけれど」
「お祈りしてもあまり効果がないのよね」
それが阪神だ、このチームに絶対はない。勝てそうで勝てず意外なところで勝つ、そうしたチームなのだ。
「ただ。巨人が負ける様にお願いはしていないです」
「そういうことはお祈りしないのよ」
「人を呪えば、ですね」
「だからですね」
「巨人が負けるのではなく相手チームが勝つことをお祈りするんですよ」
「そうすればいいのよ」
結果として同じであるがそうしているというのだ、何はともあれ日本最大の癌である巨人は常に無様に敗れるべきなのだ。
「お祈り一つにしても」
「そういうことを考えないと駄目なのよ」
そうだというのだ、祈り方もあるというのだ。
そうした話をしつつだ、七生子は二人にこのことも話した。
「それでなんですけれど」
「はい、泉ですね」
「泉の候補地ですよね」
「この校舎の中にもあります」
芸術学部の校舎の中にも、というのだ。
「実は開かずの間がありまして」
「ええと、講堂ですか?」
「それとも倉庫ですか?」
「ある教授の研究室だったお部屋です」
そちらだというのだ、大学の先生は個別の研究室を持っている、そこに蔵書なり論文なりを保管しているのだ。
「そこがです」
「開かずの間になっていて」
「若しかしたらそこがですか」
「今から行かれますか?」
こう二人に提案するのだった。
「そうされますか?」
「はい、それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
二人は七生子の提案に頷いて答えた。
「じゃあ今から」
「そこに案内してくれますか?」
「わかりました、それでは」
「私も行っていいですよね」
茉莉也は七生子を見上げて彼女に尋ねた、茉莉也は七生子と比べて身長差が二十センチ程度開いておりそれで見上げる形になっているのだ。
「そうして」555
「はい、是非共」
七生子はその茉莉也に礼儀正しい口調と笑顔で答えた。
「ご一緒にいらして下さい」
「有り難うございます、それじゃあ」
「あれっ、小林先輩って」
「さっきからお話聞いてるとね」
ここで二人は七生子のあることに気付いた、そのことはというと。
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