ソードアート・オンライン ~生きる少年~
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第一章 護れなかった少年
第十六話 ビーター
前書き
やっと......一層終了......。
こっからオリジナル展開だぜ!!
二層? やりません。
......やった......のかな?
ボスが目の前から四散して数十秒後に思う。
まさか新たに加えられたものとしてボスが生き返ったり......とかはないよね......。
「ソラ~~!!」
そしてネオン近くに寄ってくる。
「お疲れ様!!」
満面の笑みで言う。
その言葉でようやく、ボスを倒した、という実感が現れ、やってきた疲労感で地面にへたり込んでしまう。
そしてさらに目の前に現れる新たなメッセージ。
獲得経験値、分配されたコル、そして獲得アイテム。
そして隣からアスナさんの「お疲れ様」という声が聞こえる。
まぁ、キリトへ何だけど。
同じものを見たその場の全員が、ようやく顔に表情を取り戻した。
僕もいつまでもへたり込んでいるわけにもいかず、獲得アイテムを見ながら立ち上がる......と、その瞬間、β時代でも見たことのないアイテムが目の前のメッセージから発見される。
何だこれ......?≪道化師の仮面≫?
気になったのでタップして説明欄を読む。
えーっと......仮面の表面の柄は装備するたびに変わる、っていうのと、どんな関係の相手でも、自分のアイコンが表示されなくなる......などと、あんまり使えなさそうな効果がたくさんある。
ま、いいか。
お祭り騒ぎ状態の中、そう思いながら、一回伸びをする。とそんななか、床から立ち上がってゆっくり近づいてくる大きな人影が目に入った。
エギルさんだ。
「......見事な指揮だったぞ。そしてソラもC隊の救助は助かった。そして二人とも見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はあんたらのものだ」
そして口を閉じるとニッと深い笑みを浮かべ、キリトの方に右拳を突き出して、僕の方には左拳を......ゲンコツに使ってきた。
「何で殴るの!?」
と言ってもかなり軽くだったからダメージは無かった。
「うるさい。どっかに行く前に一声かけてけ。心配しただろうが」
少しの怒気が感じられたが、それ以上に優しい声音だった。
まるでちっちゃい子に言い聞かすように。
って、僕はちっちゃい子じゃないやい!!......身長はちょっと小さいけど......。
まぁ、ともかくそんなことを言われたら謝らないわけには行かないわけで。
「ごめんなさい」
と一言謝る。
そしてエギルさんが口を開いた瞬間......。
「何でだよ!!」
そんな声が僕らの背後で弾けた。
ほとんど泣き叫んだような声に、広間の歓声が静まる。
エギルさんから視線を外し、振り向いた僕の視線に入ったのは、軽鎧姿のシミター男だった。
確かあの人は......
「何でディアベルさんを見殺しにしたんだ!!」
......やっぱり......あの人はディアベルさんと同じC隊の人だ。視線を移すと、彼の背後にも残り四人が顔をクシャクシャにして立っていた。中には本当に泣いてる人もいた。
「見殺し......?」
隣にいたキリトが呟く。
「そうだろ!! だって......だってアンタラはボスの使う技を知ってたじゃないか!!アンタラが最初からあの情報を伝えてれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」
そんな叫びに、残りのレイドメンバーたちがざわめく。「そういえばそうだよな......」「何で......?攻略本にも書いてなかったのに......」
などという声が生まれ、徐々に広がって行く。
その疑問に答えたのは、予想通りキバオウさん--ではなかった。
彼は離れたところで、何かに耐えるように口を引き結んだまま立ち尽くしている。
しかし、代わりに彼の指揮するE隊の一人が走り出し、僕らの近くにやってくると、右手の人差し指を突き付け、叫ぶ。
「オレ......オレ知ってる!!こいつら、βテスターだ!!だからボスの攻撃パターンとか、うまいクエとか狩場とか全部知ってて隠してるんだ!!」
その言葉を聞いても、シミター使いたちC隊メンバーの顔に驚きはなかった。きっと、僕らが初見のはずのカタナスキルを見切った時点で確信していたのだろう。
代わりにシミター使いの両目が憎しみの色を増し、再度何かを叫ぼうとした。
それを遮ったのはエギルさんと一緒に最後まで壁役を務めたメイス使いだった。
律儀に右手を上げ、冷静な声言う。
「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはβ時代の情報だ、って書いてあったろ?
彼が本当に元テスターならむしろ知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」
「そ......それは......」
押し黙ったE隊メンバーの代わりにシミター使いが憎悪溢れる一言を口にした。
「あの攻略本がウソだったんだ。アルゴって言う情報屋がウソを売りつけたんだ。あいつだって元テスター何だから、ただでさえ本当のことなんか教えるわけなかったんだ」
ダメだ。この流れは......
密かに思う。
僕に敵意が向くというのはまだイイ。
でも関係のないテスター達や、信用第一のアルゴさんに敵意が向くかもしれないこの状況はよくない。
そう思いながら、どうにかする方法はないか、と頭の中で模索する。
と、一つだけ方法が思いつく。
......これしかないかな......。
と、その瞬間、背後にいた、エギルさんとアスナさん、そしてネオンが同時に口を開いた。
「おい、お前......」「あなたね......」「ねえ、君......」
しかし、僕とが両手の微妙な動きで制する、と同時にキリトも横で全く同じことをやっていた。
一瞬目が合い、互いに少し苦笑。
そして......
「「元βテスターだって??俺(僕)をあんな素人連中と同じにしないでもらいたいな(ね)」」
「な、なんだと......?」
そしてキリトが口を開く。
「いいか、よく思い出せよ。SAOのCBTはとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。受かった千人のうち、その中に本物のMMOゲーマーが何人いたと思う。ほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたらの方がまだマシさ」
侮蔑極まるキリトの言葉に、43人のプレイヤー達が一斉に黙り込む。
「でも僕らは違う」
吐き捨てるように、僕がキリトの続きを言う。
「僕らはβテスト中に、他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知ってたのはずっと上の層でカタナスキルを使うMobと散々戦ってたからだ。他にも色々知ってるよ?アルゴさんなんか目じゃないくらいに」
最後の方はニヤリとしながら言う。
......小学生の頃演劇やってて良かった......。
「......何だよ、それ......」
最初に僕らを元テスターと指弾したE隊の男が掠れ声で言った。
「そんなの......βテスターどころじゃねえじゃんか......もうチートだろ! チーターだろそんなの!!」
周囲から、そうだ、チーターだ、βのチーターだ、という声が幾つも湧き上がる。
それらはやがて混じり、『ビーター』という響きになって僕の耳に届いた。
「『ビーター』か。いい呼び名だな。それ」
キリトがニヤリと笑いながら言う。
そして後に僕が続く。
「そうだ、僕らはビーターだ。これからは元テスター如きとは一緒にしないでね」
ハッと鼻で笑いながら告げる。
そうだ。これでいいんだ。
僕は一人には慣れてるし、虐げられるのも慣れっこだ。
キリトを巻き込んじゃったのは少し心残りだけど。
そして僕はみんなから視線を外し、メニューウィンドウを開き、装備フィギュアに指を走らせた。
そしてついさっきボスからドロップした、『道化師の仮面』を顔に装備する。
どうやらちゃんと目と鼻と口は空いているようだ。
「二層の転移門は俺が有効化しといてやる。この上の出口から主街区までは少し歩くから、ついてくるなら初見のMobに殺される覚悟しとけよ」
「それでは、あなた方が殺されてなければまたの機会に」
そういいながら、優雅に礼をして、キリトについて行く。
仮面から見える視界から、ネオンとエギルさんがジッと見つめてきた。
二人とも何もかもわかってる、というような目をしていたのが唯一の救い。
そして大股で歩を進め、キリトのあとを追うように、第二層に続く扉の中に入って行った。
これで、元テスターはビーターとただの元テスターに分けられる。
これでいいんだ。これで。
そう思い込みながら、螺旋階段を上がって行った。
後書き
とりあえずここまで名前直しが済みました。
もしここがまだカズキだよというところを見つけたら言ってください。
そしてここからさき、それと他の作品は二日後になります
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