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ソードアート・オンライン  ~生きる少年~

作者:一騎
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第一章   護れなかった少年
  第十五話  第一層ボス戦  後編

 
前書き
うう......。

ISとロープレワールドが思いつかない......。 

 
うあああああああ、という悲鳴がボス部屋の中を満たす。レイドメンバーのほぼ全員が、自分の武器を縋るように握りしめ、両目を見開いている。

......だが、誰も動こうとはしない。みんな、リーダーが先に死ぬ、というアクシデントに対応できていないのだ。

僕もだけど。

逃げるか戦うか。

逃げるにしても背中を見せて敗走なんて斬ってくれ、と言わんばかりのことだ。数人の被害が確実に出る。

体を前に向け、防御しながら後退しても、相手のスキルは未知に近い。

おそらく、この場で刀スキルの対策方を知っているのは僕とキリトだけ。

......と、なるとやることは決まってる。

逃げるにしろ戦うにしろ、時間を稼ぐ!

これはキリトと僕にしか出来ないことだ。

そしてキリトと僕、どっちがこの後も役に立つか、なんて聞かれたら答えは決まっている。キリトだ。

なら僕はここで死ぬ覚悟で時間を稼ぐ!!

リベルテ・ブレイドを握りしめ、みんなの隙間を通り抜けて、ボスの眼前に出る。

と、同時にコボルトロードの硬直が解ける。

そして野太刀を赤いライトエフェクトが包み込み、床すれすれを這う。

ソードスキル《浮舟》だ。

意外と威力はない技だけど、スキルコンボの開始になる。

......なら!

こっちに向かって切り上げられる野太刀に曲刀基本スキルである《リーパー》を当てる。

ビリビリと手に伝わる感覚。

間違いない。普通に押されてる。

が、どうにかこらえきる。

受けることには成功したが、4m近くノックバックし、さらにHPが二割近く削られている。

......まぁ、無理した上に紙装甲だからなぁ......。しょうが無いか。

と、今度はまた赤いライトエフェクトが灯り、左腰の方に持って行く。

ヤバっ!

瞬間的に判断して急いで体を沈ませる。

そして更にこっちも反撃のスキルを発動。

下方向から上に切り上げる曲刀切り上げスキル《アッパースラッシュ》。

と同時にコボルトロードが構えた野太刀が視覚不可能な早さで切り払われる。刀直線遠距離技、《辻風》。居合い系の技なので、見てからでは対処は間に合わない。

が、もともと対処済み!!

横に切り払われる野太刀の側面にアッパースラッシュが当たり、上方行に打ち上げることに成功する。そしてその隙にバックステップで少し下がる。

と、そこをキリトとフードを外したアスナさん、そしてみんなと同じく混乱していたネオンがやってくる。

「ディアベルさんは何て?」

「......倒せ、だとさ」

「了解」

これで目的は決まった。

ついでにアスナさんとネオンに視線を向けるが、両方ともすでにやる気満々のようだ。

......さて、じゃあ、行きますかね!

「キリト、壁役お願い!」

「任せろっ!」

「アスナさんとネオンは僕と一緒に攻撃を!」

了解(したわ)!!」

と、その瞬間に、もう一度辻風をやるつもりか、コボルトロードが左腰に剣を持って行く。


それに対してキリトが、片手用直剣基本スキルである《スラント》を発動させる。

見たところ、僕も数回やった、自分の体を動かすことで威力などをブーストするあの技術も使っている。

そして、キリトのスラントと、コボルトロードの辻風が衝突する。

そして互いを相殺し、互いに少しノックバックする。

が、その間に

「セァッ!!」

コボルトロードの左脇腹に《リーパー》をあてる。勿論ブースト付きで。

そして、正面からアスナさんが《リニアー》を当てている。

見えないがおそらく反対側の右脇腹にもネオンが攻撃を与えているのだろう。

ついでとばかりに一、二度通常攻撃を加え、バックステップで距離をとる。

そしてHP確認、するが......全然減っておりませんなぁ......一割でも減ってればよッしゃ!ってなるんだけど、その半分くらいより少し少なめかな?

......う~んちょっと面倒かな?

「次、来るぞ!!」

「OK!!」

キリトの言葉に答えて考えを止める。

別に一割の半分しか減ってなかろうと、二十回攻撃すればいいだけの話だ!

それにキリトだって絶対にイケる!

勝たなきゃならないだ!!

―☆―☆―☆―

「ハッ!!」

少しノックバックして隙だらけになったボスの右脇腹に向かって、曲刀単発スキル《キャッセ・フラッペ》を放つ。

これで、繰り返して15回目。

......大体ボスの最後の一本が1/2になったところ。

キャッセ・フラッペの硬直時間が終わり、バックステップで後ろに下がる。

と、コボルトロードの野太刀が赤いライトエフェクトを纏う。そのまま野太刀が上段に移動していく。

それに合わせキリトもスキルを発動させる。

......あれは垂直切りの《バーチカル》かな?

そしていつでも飛び出せるよう、多少前のめりのような感じで待機。

と、その瞬間、

「しまっ!!」

コボルトロードの野太刀が一気に半円を描いて動き、真下に回った。

あれは《幻月》か!

そしてキリトは急いでキャンセルしようと、右手の剣を引き戻そうとしている。

が、一瞬ガクンッ、となり、そしてキリトの動きが止まる。

「キリト!!」

助けに行こうとするが、前のめりになっていたため、すぐには動けず、数瞬のラグが発生してしまう。

そしてそのラグの間に、キリトが真正面から喰らい、吹き飛ばされる。

幸い、浮舟のようには行かなく、低空を少し滑空しただけだったため、スキルコンボは発生しない。

すぐにキリトの方に駆け寄る。

「キリト、大丈夫!?」

HPを見ると、一撃で三割以上削られている。

「ああ、どうにかな......」

そして、目の前でキリトがポーションを取り出し、飲む。

......にしてもなんでこの世界はF〇みたいに速攻回復的な感じじゃ無く、だんだん回復していくのか。

結構疑問である。

まぁ、結構上の層に行けばそういうアイテムはあるけどかなり高値なんだよね。

と、その瞬間、コボルトロードに突っ込んでいくアスナさんが眼に入る。

そしてコボルトロードはすでに硬直時間を終え、野太刀が赤いライトエフェクトを纏い始める。

これは......ディアベルさんを殺した《緋扇》......!

すぐに声を上げようとするが、次の瞬間、

「ぬ......おぉぉ!!」

という太い雄叫びにかき消される。

そしてアスナさんの頭上をかすめるように、巨大な武器が緑色の光芒を引きながら打ち込まれる。

確か両手斧系ソードスキル《ワールウィンド》。
そして野太刀と両手斧がぶつかり、コボルトロードが大きくノックバックするが、両手斧の持ち主は1mで踏みとどまる。

割って入ったのは......

「エギルさん!!」

斧巨人(今命名)ことエギルさんだった。

「あんたがPOT飲み終えるまでオレ達が支える。ダメージディーラーにいつまでも壁役やられたんじゃ立場が無いからな」

「すまん。頼む」

というキリトの返事に満足したのか一度頷き、こっちを見る。

「それと、ソラは存分に働け!!」

恐らく、キリトの代わりにダメージディーラーをやれ、と言うことだろう。

ニヤッ、と笑いながら、口を開く。

「了解!!」

―☆―☆―☆―

キリトが指示し、エギルさん達がその指示に従って攻撃を防ぐ。

そして生まれた隙に僕とアスナさん、ネオンで、前、右、左側の腹にソードスキルをたたき込む。

真後ろ以外を全て取り囲んでいるため、もし、誰かがミスして真後ろにでも回ってしまったら、コボルトロードがすぐにでも旋車を使ってくるようなギリギリの作戦。

そんな戦闘が五分ほど続き、ようやくボスのHPゲージが三割を下回り、遂に赤く染まった。

心の中でよっしゃ、と叫んでいたが、その瞬間、一瞬気が緩んだのか、壁役の一人が足を縺れさせる。よろめき、立ち止まったのは、最悪なことに、ボスの真後ろだった。

「早く動け!!」

キリトが叫ぶが、コンマ一秒間に合わなかった。

コボルトロードが《取り囲まれ状態》を感知し、一際獰猛に吼えた。

グッ、と巨体が沈み全身のバネを使って高くジャンプ。

全方位攻撃《旋車》......。

させない!!

曲刀の切っ先を上空に向ける。

曲刀スキル《スパーダ・サルターレ》

威力はかなり低いが、上空の敵を攻撃出来る、僕が持つ唯一、旋車を止める可能性があるスキル。

「はぁぁぁぁああああ!!!」

ブーストして全力で足にたたき込む。

対してコボルトロードは少し体制を崩しかけたが、持ち直そうとしている。

クソッ、やっぱり威力が足りない!

「届......けぇぇぇぇぇぇえええ!!」

「キリト!!」

アレは......《ソニックリープ》か。

突進技で、レイジスパイクより射程は劣るけど、上空にも向けられるスキル。

それが腰の部分に当たり、

体制を崩しかけていたコボルトロードの体制が完全に崩れ、床にたたきつけられる。

「ぐるぅっ!」

叫び、立ち上がろうとするも、手足をばたつかせるだけ。

これは人型モンスター特有のバッドステータス《転倒》状態!!

「全員、一斉攻撃!!囲んでいい!!」

キリトの指示。

そして......

「お......おおおおお!!」

エギルさん達六人の壁部隊がこれまで壁に専念させられた鬱憤を晴らすが如く叫び、コボルトロードをぐるりと囲み、縦斬り系ソードスキルをどんどん発動する。

色とりどりのライトエフェクトに包まれた武器達がどんどんコボルトロードに振り下ろされ、視界上部に固定表示されたコボルトロードのHPがどんどん減っていく。

これは賭みたいな物だ。

もし、これで削りきれなかったら、今度こそ、旋車が全員を切り倒す。キリトのソニックリープも僕のスパーダ・サルターレも冷却中で使えない。

技後硬直から回復したエギルさん達が次のスキルの予備動作に入る。同時にコボルトロードはあがくのをやめ、立ち上がるべく状態を起こした。

「間に合わないか!」

キリトが押し殺した声で叫び、アスナさんと一緒に加わろうとしている。

なら......

「ネオン!」

たまたま近くにいたネオンを呼び、ボスの所に走る。

ネオンも察したのか、僕の後ろを走る。

と、六人の武器が同時に振り下ろされ、ボスの巨体をライトエフェクトの渦に飲み込む。

だが、その光が薄れるのを待たず、ボスが起き上がってしまう。そのHPゲージは残り5%。

エギルさん達はディレイを課せられて動けない。そんな中、コボルトロードが垂直ジャンプのモーションに入る。

「「行っっっっけぇええ!!」」

僕とキリトが同時に叫び、四人が同時に地を蹴る。エギルさん達の間をすり抜け、まずアスナさんの《リニアー》がボスの左脇腹を刺す。そして次にネオンが《シャルジュ》を右脇腹に。
わずかに遅れ、キリトの剣が青い光芒を纏いながらコボルトロードを斜めに切る。
さらにわずかに遅れて僕の剣が同じく青い光芒を纏って、上から切り裂き、手首を返して更に上へ切り裂く。そこで剣を引く。

そしてコボルトロードのHPゲージ残り1ドット。

コボルトロードがにやりと笑った気がした。それに対し、僕もニヤッと笑い返す。

「お.......おおおおおおおおお!!」

「ハァァアアアアアア!!」

全身全霊を欠けてためを終えた剣を突き出す。

曲刀三連撃スキル《トロワジエム》

いつかのリザードマンにやられた技だ。

突き出しと同時に、キリトの剣が斜めに切り上げられる。

片手剣二連撃スキル《バーチカル・アーク》。

コボルトロードの巨体が不意に力を失い、後方によろめく。

狼に似た顔を天井へと向け、細く高く吼える。

そしてその体に無数のヒビが入った。

両手が緩み、野太刀が床に転がる。

直後、第一層フロアボス《イルファング・ザ・コボルトロード》はその体をガラス片に変え、四散した。
 
 

 
後書き
はふぅ......。しばらくはSAOのみになりそうだなぁ......。

しかもかなり遅く。 
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