戦国異伝
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第百四十二話 小谷城からその六
「そうした色も含めて」
「そうじゃ、色のある家々はな」
そうした家はどの家もだというのだ。
「天下に必要ではないかと思うのじゃ」
「それでは武田や上杉もですか」
丹羽はあえてこの両家の名前を出した。
「お言葉ですが殿が天下を治められるには」
「両家とはな」
「はい、一戦どころか」
「どちらが屈するまではな」
「争うやも知れませぬ」
織田家にとって最大の驚異はこの両家になっていた、この両家をどうするかが織田家の今の課題なのだ。
それでだ、丹羽も今言うのだ。
「天下がかかっております故」
「上杉家は野心はないですが」
山内が丹羽に言う。
「あの家は」
「それはそうじゃがな」
「それでもですか」
「上杉家は大喜を重んじる」
大義、それが問題だというのだ。
「幕府への大義じゃからな」
「織田家がその大義を脅かしているとみなせばです」
「来る」
攻めてだ、そうしてくるというのだ。
「その場合はな」
「武田信玄はそれがしもわかっているつもりです」
山内は丹羽の話を聞いてこう述べた。
「しかし上杉謙信もですか」
「そうじゃ、義によってな」
「そうなればちと厄介ですな」
山内はどちらかというと利に五月蝿い男だ、それでこう言うのだった。
「義で動く御仁が一番手強いです」
「そう言うのじゃな」
「はい、五郎左殿もそう思いませんか」
「わしもそう思う」
実際にそうだとだ、丹羽も山内に返す。
「義は酒と同じじゃ」
「酔いますな」
「うむ、義という言葉には有無を言わせず動いてしまうからのう」
人によるがだ、そうなりやすいというのだ。
「だからな」
「上杉謙信は厄介ですな」
「しかもじゃ」
「上杉謙信の強さはまさに鬼神です」
軍神とも呼ばれる、謙信の戦での強さは最早どうにもならないものがある、それで山内も彼を厄介極まるというのだ。
「相手にするだけでも」
「相手に出来るのはな」
「四人ですな」
黒田がここで言って来た。
「それが出来るのは」
「ではその四人は」
山内はすぐにその黒田に問うた。
「一体」
「はい、まずは武田信玄殿にです」
その謙信と常に川中島で争っている彼だった、最初は。
「それに北条氏康殿です」
「あの御仁ですな」
「はい、あの方は戦を避けておられますが」
これは謙信のあまりもの強さを避けているのだ。下手に戦っても勝てないからだ。負けないにしてもである。
「それでもです」
「いざとなればですか」
「あの御仁も只者ではありませぬ」
北条氏康にしてもだ、その強さは確かなものだ。伊達に八千の兵で八万の大軍を破った訳ではないのだ。
「ですから」
「氏康殿もですな」
「そして毛利元就殿もです」
安芸の彼もだというのだ。
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