| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百四十二話 小谷城からその四

「では小谷城を攻め落とせば」
「他の城も造作なく」
「降らぬならよい、既に小谷城までの道は手に入れたし本陣も置いた」
 何時でも本格的に攻められるというのだ。
「さて、朝倉の軍勢がどう出るかじゃな」
「今のところですが」
 今度は明智が言って来た。
「越前に向かい続けています」
「左様か」
「しかしです」
 ここで言って来たのは滝川だった。
「先程それがしの手の者より知らせがありましたが」
「宗滴殿がじゃな」
「一乗谷を出られました」
 そうしてきたというのだ。
「そして軍勢と合流する様です」
「そうか、遂にな」
「おそらく合流しましたら」
 その時はだというのだ。
「来るかと」
「そうであろうな、ではじゃ」
 ここまで聞いてだ、信長はまた言った。
「勘十郎は間も無くじゃな」
「はい、明日にも」
「三郎五郎様と共に」
「ならよい、まだ宗滴殿の合流は先じゃ」
 だからだというのだ。
「あの御仁が来る前に二人が来るならな」
「それでよいですな」
「それからですか」
「ここに勘十郎達が連れて来る二万の兵とじゃ」
 そしてだった。
「竹千代にも残ってもらす、それで小谷城を囲み猿夜叉を動けなくしたうえでじゃ」
「朝倉家と雌雄を決しますか」
「残りの兵で」
「十一万あるがじゃ」
 兵の数は圧倒している、だがだった。
「それでもな」
「宗滴殿だからですな」
「それだけの兵がいても」
「犬も狼が率いれば狼になる」
 この例えを出した。
「狼の群に向かうからにはな」
「十一万の兵でもですな」
「安心することは出来ませぬか」
「その通りじゃ、よいか」
「はい」
「それでは」
「明日勘十郎と三郎五郎が来てじゃ」
 信行と信広、信長の名代も務められる二人が来てからだった、今は。
「宗滴殿が率いられる朝倉の軍勢が来たならな」
「そこで、ですな」
「いよいよ」
「その時は常に気を張っておれ」
 信長の家臣達への言葉が強いものになった。
「わかったな」
「はい、その時は」
「まさに常に」
「相手は天下の名将じゃ」
 朝倉家はおろか天下にその名を知られた将だというのだ。
「死ぬ気で向かうぞ」
「そして宗滴殿を破り」
「そのうえで越前に」
 家臣達も信長のこの考えはよくわかった、織田家と朝倉家の戦もここで終わらせる時が迫っていた。それでだった。
 彼等は小谷城を囲みながら次の日を迎えた、信行と信広が二万の兵を率いて都から着陣した。
 二人はすぐに信長の前に出て頭を下げた、信長は本陣においてその弟達に言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧