Element Magic Trinity
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15分
「俺達もギルドの為に、力になろう」
中央に立つ青年は凛としたテノールボイスを響かせた。
その姿を見たギルドメンバーは一気に歓声を上げる。
「クロス達が帰って来たぞーーーー!」
「いよっしゃぁぁぁぁぁっ!」
「ナイスタイミング!」
先ほどまでファントムに勝てなかったと悔やんでいたメンバーも、次こそ勝つと奮起していたメンバーも一気にいつもの活気を取り戻す。
「おかえり、クロス!」
「シュトラスキーか、ただいま。2か月ぶりだな」
ルーがたたたっと群青色の髪と瞳の青年『クロス』に駆け寄る。
「随分丁度いいタイミングで帰って来たな」
「依頼途中にミラジェーンから連絡を貰ってな。とりあえず依頼を終わらせ、馬車をジャックしてマグノリアまで戻ってきた。だいたいの状況は把握している」
さらっと「馬車をジャックして」と言い放つ。
そしてクロスはルーシィに歩み寄った。
「初めまして。俺はクロス、よろしく頼むぞ」
「あ、はい・・・よろしくお願いします」
「君がルーシィ・ハートフィリアか?ファントムの狙いの」
その場にいた全員が『空気読め』と思った。
今ルーシィはその事を気にしているというのに、クロスはド直球でその事を聞く。
クロスはルーシィをじろじろ見つめると、口を開いた。
「・・・がめつそうな女だな」
「んなっ!?」
ルーシィの中で『クロス=失礼な奴』と決まったのは言うまでもない。
「ちょ、ちょっとアンタ!初対面で失礼な事言いすぎじゃない!?」
当然の事をルーシィがツッコむと、クロスはクスクスと笑い始めた。
突然笑い始めた為、ルーシィは戸惑う。
「気は緩んだか?」
「え?・・・あ」
「何やら、無駄に気を張っている様に見えたからな。失礼な事を連発した事は詫びよう。すまなかった」
どうやら、彼は彼なりにルーシィの緊張を解そうとしていたらしい。
・・・まぁ、あの方法以外でよかった気もするが。
「後ろにいるのはチームメイトだ。お前ら、自己紹介しろ」
クロスにそう言われ、4人はそれぞれ自己紹介を始める。
「ライアーだ、よろしくな」
「サルディアです。よろしくね、ルーシィちゃん」
黒髪の男性『ライアー』とピンクツインテールの少女『サルディア』はルーシィと握手をかわす。
「ヒルダ」
藤紫色の髪の女性『ヒルダ』は短く自己紹介を済ませる。
「俺はスヴァル。『ヴァ』って発音めんどくて皆『スバル』って呼んでるからそう呼んでくれ。よろしくなっ!」
黒髪まじりの銀髪の男性『スヴァル』はにこやかにルーシィの握手した手をぶんぶんと振った。
「スバル、腕が抜けるだろ」とクロスが止めなかったら、ずっと手を離さなかっただろう。
と、そこにこんな状況で昼寝していたティアが目を覚ます。
「・・・あら、クロス。帰ってたの?」
「ただいま。今さっき帰って来たところだ、『姉さん』」
「えっ!?ね、姉さん!?」
驚愕の言葉にルーシィが目を見開く。
「2人って、姉弟なの!?てかティア、弟いたの!?」
「正確には『双子』だ」
「あぁ・・・紹介していなかったわね。コイツは『クロス=T=カトレーン』。私の双子の弟」
確かに隣に並ぶとそっくりだ。
群青色の髪はともかく、猫のようなアーモンド形に近い目、すっと通った鼻筋も薄い唇もそっくり。背の高さまで同じだ。
「む?スカーレットはどうした?姿が見えんが・・・」
「エルザならシャワー浴びてるぞ」
きょろきょろと辺りを見回すライアーにアルカが答えた。
ここはギルドのシャワールーム。
そこでエルザはシャワーを浴びていた。
(マスター不在・・・ラクサス・・・ミストガンも。ケガ人も多い・・・これ以上戦争を続けるのは不可能か・・・)
そんなエルザの脳裏にあの時のマスターの言葉が蘇る。
『ジョゼはおそらく最上階。ワシが息の根を止めてくる』
ガンッ、と後悔するようにシャワールームの壁を殴り付ける。
(あの時・・・私がついていれば・・・情けない!私のせいだ!)
と、その時、ズゥゥンッと地鳴りが響く。
「!」
その音はギルドにも届いていた。
「な、何だ!?」
「こっちに近づいて来てる・・・」
そう言っている間にも、ズゥゥン、ズゥゥン、と地鳴りは響き続ける。
「外だーーーーーーーーーーーー!」
慌ててやってきたアルザックの言葉に、全員がギルドの外に飛び出した。
ギルドメンバーは外に出るなり言葉を失い、目を疑った。
「な、何だ、あれは・・・」
「ギルドが歩いて・・・」
「ファントム・・・か!?」
そう。
先ほどまでナツとルーがいた幽鬼の支配者本部が、6本の機械の足でギルド裏の湖を歩いてきたのだ。
「想定外だ・・・」
「こんな方法で攻めてくるなんて・・・」
「ど、どうすんだよ!?」
その光景にヒルダ、サルディア、スバルが呟く。
ファントムのギルドは大きい波を立て、湖の上に立った。
「魔導集束砲『ジュピター』用意」
幽鬼の支配者の一室で、ジョゼは呟いた。
「消せ」
突然、ファントムのギルドから1つの砲台が現れ、エネルギーを集めていく。
「ギルドが歩いてきた!」
「てか・・・アレ!」
「魔導集束砲だ!」
「ギルドを吹っ飛ばすつもりなのか!」
今更の事に驚くルー、スバル、ライアー、アルカが驚いている間にも、エネルギーは集まっていく。
「っ・・・仕方ないわね!」
すると突然、ティアが皆を押し退けファントムのギルドに向かって走り出した。
そして相手を睨みつける。
「ティア!」
「何するつもりだ、お前!」
ルーとアルカが叫び問いかけると、ティアは躊躇いなく叫んだ。
「ジュピターを防ぐに決まってるでしょ!」
その言葉に全員が驚愕した。
「な、何言ってるんだ姉さん!姉さんの魔法は攻撃重視で、防御は苦手ジャンルだろ!普通の魔法防ぐのもやっとなのに、ジュピターを防ぐなんて無茶だ!」
「それくらい自分が1番よく解ってるわ!だから・・・」
クロスが叫び、ティアは指を鳴らす。
背後にジュピターの砲台の穴と同じくらいの大きさの魔法陣が展開した。
「大海怒号で消滅させる!」
また全員が驚愕した。
「バカを言うな!確かにお前の魔法は攻撃する事を得意としているが、あくまで対人用!威力の差は火を見るよりも明らかだろ!」
「そうだとしても、意地でも防いでみせる!」
ライアーの制止も振り切り、ティアは魔法陣を徐々に大きくさせる。
大きくなる度に心地よい鐘の音が響き、最終的にはギルドと同じくらいか少し小さい魔法陣が展開した。
「全力全開手加減無用!」
魔法陣が大きな鐘の音を鳴らす。
そしてそれとほぼ同時に・・・ジュピターが発射された。
「大海ゥゥウ・・・怒号ゥゥウァァアッ!」
魔法陣から凄まじい勢いの水が発射され、激突する。
「ウラァァァァァァァアアアアアアッ!」
いつもの口調とは思えないほど荒々しい声で叫び、更に魔力を込める。
魔法陣から「もう最大威力です」とでも言うように、鐘の音が連続で鳴り響く。
ティアの魔法を、思いを、叫びを打ち砕くように・・・水はジュピターに飲み込まれた。
「!そんな事が・・・!」
最大級の魔法がいとも簡単に呑み込まれた事に、さすがのティアも驚きを隠せない。
「「「「ティア!」」」」
「ティアちゃん!」
「姉さん!」
ナツとルーとアルカとライアー、サルディア、クロスの叫びが響く。
「下がれティア!」
「っエルザ!?アンタ、一体何を・・・!?」
すると、エルザがバスタオル1枚の姿から鎧に換装する。
「ギルドも仲間もやらせん!」
そう叫んだエルザは、重厚な鎧を身に纏っていた。
「金剛の鎧だと!?」
「スカーレット!まさか受け止めるつもりか!?」
「いくら超防御力を誇るその鎧でも無茶だよ!」
ヒルダ、クロス、ルーが叫ぶ。
が、エルザはその場を退かない。
「ふせろォオ!」
「エルザ!」
「ナツ!ここはエルザを信じるしかねぇんだ!」
「うぁ・・・」
エルザに駆け寄ろうとしたナツをグレイが止め、ルーシィが呟く。
そしてついに、ジュピターが直撃した。
ナツが叫び、グレイが押さえつけ、ルーとルーシィが頭を抱えて自分の身を守り、エルフマンとアルカがミラを守り、他のメンバーも自分の身を守る。
「ぐああああっ!」
「きゃあああっ!」
大海怒号によって多少威力が落ちているとはいえ、その威力は半端なモノではない。
エルザだけではなく、一瞬の事で冷静になれなかったティアにもその衝撃が及ぶ。
バキバキバキ・・・と音を立てて金剛の鎧が砕け始め・・・2人の身体は吹き飛んだ。
ボロボロになった2人が倒れるが、ギルドは何とか守られる。
「すげぇ・・・アレを止めちまった・・・」
「た、助かった・・・さすがだぜ・・・」
「け、けどよォ・・・」
そう。
ギルドは無事なものの、今現在のメンバーで1番戦力になるであろうエルザとティアは傷だらけで起きることも出来ないような状態なのだ。
「エルザーーーー!」
「ティアーーーー!」
「姉さん!」
「エルザちゃん!」
「しっかりしろ!」
そんな2人にナツ、ルー、クロス、サルディア、グレイが駆け寄る。
「ルー!」
「うん!」
アルカの指示でルーは両手に魔力を集中させる。
「悠久なる空よ・・・癒しの風を運べ・・・大空治癒!」
ルーの両手から淡い光が零れ、2人を包んでいく。
・・・が、途中でその光が消えた。
「ルー!?」
「ダメだ・・・僕の力じゃ応急処置がようやく出来る程度・・・」
「くそっ!」
「姉さん・・・体を水に変え忘れたのか・・・?」
「一瞬の事だったからな。ティアも思考が追いつかなかったのだろう・・・」
クロスが悔しそうに顔を歪める。
『マカロフ・・・そしてエルザとティアも戦闘不能』
すると、ファントムのギルドからジョゼの声が聞こえた。
どうやら拡声器を使っているらしい。
『もう貴様等に凱歌はあがらねぇ。ルーシィ・ハートフィリアを渡せ、今すぐだ』
そう言われて『はいどうぞ』と差し出す訳が無い。
口々にメンバーは叫ぶ。
「ふざけんな!」
「仲間を敵に差し出すギルドがどこにある!」
「ルーシィは仲間なんだ!」
「そーだそーだ!」
「帰れ!」
「ルーシィは渡さねぇ!」
『渡せ』
ジョゼは尚も言い続ける。
ギルドメンバー達の言葉を聞いて、ルーシィは頭を抱えた。
「あたし・・・」
この事態を引き起こしたのは自分だ。
その罪悪感から、自ら敵に下ろうかと考えた、その時・・・。
「仲間を売るくらいなら、死んだ方がマシだっ!」
「アンタ達みたいな愚者にルーシィを渡して助かったって、私は全く嬉しくないわ!」
「ルーシィは絶対に渡さないっ!大切な大切な・・・僕達の仲間なんだ!」
「俺達の答えは何があっても変わらねぇっ!お前等をぶっ潰してやる!」
上からエルザ、ティア、ルー、ナツが声を張り上げる。
それに呼応するようにギルドメンバーが雄叫びを上げた。
ルーシィの目から涙があふれる。
『ほう・・・ならば更に特大のジュピターをくらわせてやる!装填までの15分!恐怖の中で足掻け!』
その言葉に逆上したジョゼが叫ぶ。
またジュピターを撃つ、という言葉にギルドメンバーは騒然とする。
「何!?」
「ジュピター・・・」
「また・・・撃つのか・・・!?」
騒然とするメンバー。
それと同時に・・・。
「くっ・・・」
「エルザ!」
エルザが気を失った。
「くそっ・・・!」
「スカーレットでさえ1発防ぐのがやっとだというのに・・・!」
ライアーが呟き、ふとティアに視線を向ける。
「ティア・・・」
「何よ」
「お前、大丈夫なのか?」
そう。
ティアは立っていた。
腕や足、頬などに怪我を負ってはいるが、いつも通り立っている。
「ギリギリ、ってところね・・・さっき魔力を使いすぎたし、ダメージもあるけど・・・まだ戦う力はあるわ」
「そうか・・・無茶はするなよ」
「当然」
ティアはいつもの鋭い目でファントムをギルドを見つめる。
・・・と、そこからゾロゾロと大量に黒い兵が姿を現す。
「な・・・兵が出やがった!」
「バカな!ジュピターを撃つんじゃねぇのかよ」
「容赦ねぇ・・・」
驚愕するメンバー。
と、そこにジョゼの声が響く。
『地獄を見ろ、妖精の尻尾。貴様等に残された選択肢は2つだけだ。我が兵に殺されるか、ジュピターで死ぬかだ』
「なっ!?仲間ごとジュピターで殺す気なのか!?」
「ハッタリだよっ!撃つはずない!」
ジョゼの言葉にヒルダは驚愕し、サルディアがハッタリだと主張する。
が、そんな彼女の横にいたスバルが否定した。
「いあ、撃つな。あれはジョゼの魔法『幽兵』。人間じゃねぇんだ」
「うむ・・・つまり相手は命無き兵士。失っても創り出せるという事か・・・」
「ジュピターを何とかしないとね・・・」
スバルの説明にライアーとカナが呟くと、ナツが口を開いた。
「俺がぶっ壊してくる!」
「ナツ」
「15分だろ?やってやる」
その言葉に、カナはこくっと頷いた。
「ハッピー!」
「あいさー!」
「エルフマン!俺達も乗り込むぞ!」
「おっしゃーっ!」
「ルー!行くぞ!」
「うん!」
「なら私もっ・・・!」
ティアが5人の後を追おうとするが、それをクロスが止める。
「クロス」
「姉さんはこっちで守りに徹しよう。その傷で戦うなんて無茶だし、これ以上俺を心配させないでくれ」
「・・・仕方ないわね、解ったわ」
不服そうにティアが頷く。
乗り込んでいくナツ達を見送りながら、クロスは溜息まじりに呟いた。
「・・・仕方ない。ドラグニル達に美味しい所はあげるか・・・だが」
キラッと群青色の目が光る。
右手を開くと、そこから黒く銀色の装飾が施された剣が現れ、クロスはそれを掴む。
その切っ先を、向かってくる幽兵達に向けた。
「俺達は全力で家を守り抜く!行くぞお前達!」
「あぁ!」
「うん!」
「おうよ!」
「はい!」
クロスの言葉に、ライアー、サルディア、スバル、ヒルダも戦闘態勢をに入る。
「ロキ!私達も守りを固めるよ!」
「あぁ」
それに並び立つようにカナとロキも戦闘態勢を取る。
「・・・」
一方、ルーシィはその様子を不安げに見ていた。
そんなルーシィの腕をミラが掴み、引っ張る。
「ルーシィ!こっちに来て!隠れ家があるの!戦いが終わるまでそこにいましょ!」
「でも・・・あたしも皆と戦わなきゃ!あたしのせいでこんな事になってるんだ!」
しかし、ルーシィはそれを振り解く。
「違うわよルーシィ。誰もそんな事思ってないの。やられた仲間の為、ギルドの為、そしてあなたを守る為・・・この戦いには、皆誇りを持ってるのよ」
ミラの言葉にルーシィは俯く。
「だから言う事を聞いてね」
「わっ・・・あ・・・」
するとミラは眠りの魔法をルーシィにかける。
それを直でくらったルーシィはすぐに眠ってしまった。
「リーダス!ルーシィを『隠れ家』へ!」
「ウィ!」
リーダスはすぐさま自分の魔法、絵画魔法を駆使し、腹に馬車を描く。
そしてそれを実体化させた。
「お願いね」
「ウィ!」
ミラに言われたリーダスはルーシィを抱え、隠れ家へ向かっていった。
(私は・・・今の私には戦う力はないけど・・・仲間は必ず守ってみせる!)
その意志を胸に、ミラは変身魔法でルーシィに変身した。
「くはー!びくともしねぇ!」
「やっぱり内部から壊さなきゃダメじゃないかな」
一方、ナツはジュピターを破壊しようとしていたが、外側からでは全く壊れない。
拳で殴っているが、ヒビ1つ入らないのだ。
「おし!行くぞ!」
「中は狭いんだね」
その為、ジュピターの砲台の中に入っていく。
「うがががががっ!・・・ぬおっ!」
カンカンカン・・・と音を立てて四つん這いで歩いていく。
すると、巨大なラクリマが置いてある部屋に辿り着いた。
「な、何だコリャ!」
「魔力を集めるラクリマみたいだね・・・」
「こんな大きいラクリマ初めて見た!」
「魔導集束砲は弾丸の代わりに圧縮した魔力を放出する兵器なんだ」
「よくわかんねーけど、ここを壊せばいいんだな」
ナツとハッピーが砲台から部屋に出る。
「そうは・・・させない・・・」
「!見張り!?」
「どうでもいいさ!邪魔な奴は消すだけだ!」
と、その部屋に1人の男がいた。
随分ゆっくりとした喋り方をする。
「させないよ・・・」
「時間がねぇんだ!退いてろや!」
ナツが叫び、右拳に炎を纏い、殴りかかる。
が、違和感を感じたようにビクッとした。
「ぐぼっ!」
突如、ナツの炎を纏った拳がナツの右頬を殴った。
「ナツ!何やってんの!」
「いや・・・体が勝手に・・・!」
ガッと床に落ち、ズズズズ・・・と床を滑り、ザッと着地を決める。
「邪魔は・・・君の方だ・・・」
そこにいたのは、幽鬼の支配者エレメント4の1人、『大火の兎兎丸』だった。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
クロス達5人のキャラ説はこのファントム編が終わったら載せます。
感想・批評、お待ちしてます。
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