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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-3 Third Story~Originally , meeting of those who that you meet does not come ture~
  number-27 conduct of their own

 
前書き



自分の行い。



この場合は、神龍雅。


 

 


「リンディさんっ! 燐夜は、燐夜はどうなりましたか!?」


慌てて管制室に駆け込んできたのは、先ほどまでレヴィと一戦交えていたが、相手が退却してきたので戻ってきたフェイトだった。
抱えられていたはやては、フェイトが管制室に行く前に医務室にいるスタッフに任せてきたようだった。非殺傷設定になっているとはいえ、全力の魔力が込められた砲撃であったから幾分かダメージがあるかもしれない。フェイトの判断は、正しかった。


しかし、今のフェイトにはそんなことを考えている余裕はなかった。
はやてを医務室に運んでいる最中にすれ違ったアースラスタッフから、フェイトにとって衝撃的なことを聞いたのだ。


――――三桜燐夜が撃墜された……


フェイトの中では燐夜は、絶対的なエースなのだ。一度も負けることがない。期待をされた成果を必ず仕上げてくる。そう云う存在であるのだ。その燐夜が落ちた。
今すぐにでも、はやてを放り投げてでも駆けつけたいが、はやては大切な友達である。それに両足の不自由から、必死にリハビリして最近になって歩けるようになったのも知っている。歩くためのリハビリの時に応援だってしたのだから。適当にしてはいけない。


焦りという心情も交じってはやてを医療スタッフに押し付ける形で預けたフェイトは、急いで管制室に向かったということだ。
そして、フェイトが管制室に声を上げて駆け込んできたとき、真っ先に目に入ったものは。
悔しさを滲ませて俯いているクロノと、様々な気持ちが入り混じってどうしたらよいのか分からないでいるが、必死に冷静さを取り戻そうとしているリンディ。
モニターには、何もない海といまだ飛んでいるなのはがモニタリングされていた。


「リンディさん、燐夜はどうなったんですか……? 撃墜されたって本当なんですか……?」


フェイトは、急いで走ってきたからなのか、それとも聞きたくはないけど、聞かなければならないことを頑張って声にしているのか分からないが、震えている。
振るえていて、力なく、か細いけどしっかりとリンディには聞こえた。


リンディは、フェイトが後の方に言った撃墜という言葉に反応した。……反応してしまった。
指揮官たるもの、動揺してはいけないのだ。その不安が、現場の人にもうつってしまうからである。だが、リンディはそれを守れなかった。


「本当なんですね……それで、誰が救出に向かったんですか?」
「……龍雅君よ」


フェイトの問いかけに渋々といった感じで答えたリンディ。フェイトの質問に答えるとフェイトがどのような反応をするか分からなかったが、燐夜の撃墜が知られてしまった以上、もう隠す意味なんてないのかもしれない。


リンディの答えを聞いたフェイトは、その場に座り込んだ。
龍雅に任せるのは不安ではある。不安なのだが、唐突にどうしようもない不安に駆られた。
燐夜がそのまま見つからずに死んでしまったらどうしようとか。
自分で助けに行きたいという気持ちもある。けれども、不安の闇に押し潰されそうで、このまま逃げてしまいたい。


すっかり竦んでしまって自分の足で立ち上がることのできないフェイトは、モニターを見続ける。
燐夜の救出に向かった龍雅にすべてを託すしかないのだ。
不本意ではあるが、今はそんなことを言っている場合ではない。両手を合わせて、祈りながらモニターから目を逸らすことなく見る。


      ◯


「見つからないな……」


そう呟いたのは、燐夜救出を自ら志願した龍雅である。
絶対に見つけてやると意気込んだはいいが、やはり何の目印もない海の上からでは見つかる筈もなかった。海の中にでも潜ろうと考え始めていた。
索敵魔法(サーチ)で生体反応を探してはいるのだが、海の深くにいるのか生体反応が出るわけもなく。龍雅が諦めて他のところへ行こうとした時だった。


轟音とともに海が水しぶきを上げて爆ぜたのは。


あまりの音と偶然その近くにいたためもろに弾けた水が当たってウォーターカッターのように皮膚を切り裂いていく。
しかし、それらはすべて浅いものであるので本格的なダメージになることはなかった。


水がすべて海に戻り、爆ぜた場所へ向かうとそこには力なく腕を下げ、俯いている燐夜がいた。
海の中から自力で這い上がってきたのかと思いきや、意識はなく、またすぐにでも落ち始めそうだった。
龍雅は、そんな燐夜を抱えるとすぐにアースラへ帰還する。


帰還する前にあたりを見回してみるが、何もいるわけもなく、どうして燐夜が海の中から出てきたのかは分からずじまいである。
燐夜にはまだ隠していることがたくさんある。しかし、それが何であるかは分からない。いずれ話してくれるのかもしれない。だが、龍雅とは何も接点がない。燐夜の隠し事は、龍雅が知ることはない。


龍雅が燐夜を抱えてアースラへ帰還した後、燐夜が出てきた海の上にはシュテルがいた。
殲滅服(ヒートスーツ)はボロボロで覆われていた肌が見えてしまっているが、気にすることはない。
そんなことよりもシュテルの中で渦巻いている想いがあった。


「何でしょう、この気持ちは」
「私はタカマチナノハを基にして作られたプログラム構築体ではありますが……」
「あの少年を見るとキュンとするこの気持ちは何でしょうか」


高町なのはから蒐集された魔力から作られているシュテル。
信じられないことではあるが、その魔力になのはの想いが。なのはの燐夜に対する思慕の気持ちが籠っていたのか。


けれども、シュテルはその自分では良く分からない思いを心の奥にしまう。
激しく渦巻いているこの気持ち、またあの少年を前にすると暴走してしまいそうだ。


燐夜と戦ったこの位置まで飛んできた速度とは違い、今度は比較的ゆっくり飛び始めた。理解できないあの少年に対する思いを誤魔化すように頭を横に振りながら。


      ◯


燐夜を医務室に運んだ龍雅。任務を全うに果たし、褒められることがあっても、貶されるようなことはない。ちゃんと仕事をしている。
その龍雅が医務室の隅で所在なさげに佇んでいる。なぜなら――――


フェイトがベットに寝ている燐夜の手を握って座っているからだ。
フェイトは、龍雅がいるにも係わらず燐夜のことしか頭にない。そのせいで龍雅は、自分が何をしたかったのかを忘れてしまい、ただ突っ立っていることしかできなかったのだ。


燐夜が寝ているベットの隣のベットには目を覚ましたはやてがフェイトと同じように燐夜の身を案じていた。こちらはフェイトとは違い、龍雅の存在には気づいてはいたのだが、以前の行いが悪すぎてやはり拒否感があるようだ。
それでも、前とは違ってまともになったのは分かるのだが、第一印象が最悪過ぎたため改善の方向にはあるが、やはり悪い。


その場に立っているのがいたたまれなくて、思わず何も言わずに医務室から飛び出すようにして出てきた。


龍雅は、このなのはの世界に転生してきたとき自分が最強であるのを信じて疑わずに過ごしてきた。所謂最低系転生者というものだ。
この世界に来る前――――都合上前世とする――――は、いたって普通のどこにでもいそうなごく平凡な人だった。そんなやつが二次元に興味を持つのは、時間の問題だったのかもしれない。
最初に見たこの『魔法少女リリカルなのは』が一番強く印象に残り、その登場キャラクターの中でもフェイト・T・ハラオウン、今はまだフェイト・テスタロッサである。フェイトが好きなキャラだった。


神様とやらの人間よりも上位の存在の誤りによって死んでしまい、二次元の世界に転生させてもらうことを知ったとき、つかさずなのはの世界を上げた。
幸いにもその願いは叶えられて、自分に新しい力ももらった。


デバイスとまだ使ったことの無い、ソードアート・オンラインの二刀流のソードスキル。
その他にも神様が色々とつけてくれたらしい。おそらくその中にニコポ・ナデポが入っていたのだろう。この世界に来てからそれに当てはまるようなことがあったが、二次創作でもよく言われている様になのはの登場キャラの精神年齢は高い。例外として3歳の頃のなのはがあげられるが今は気にすることではない。


何とかしてフェイトと仲良くなりたいという思いが強すぎて、その思いが最低系転生者と同じような行動に結果としてつながったということなのだ。


やはり龍雅は、何とか直したもののそれまでの行いが大きいのだ。人の印象とは第一印象で8割がた決まるのだ。中身で選ぶという人もいるかもしれないが、最後はやはり外見である。
今までの自分の行いをやり直せるなら懺悔したっていい――――。


「――――龍雅っ」


自問自答の負の連鎖に陥っているとその中から引っ張り出す声が聞こえた。
振り返ってその声の主を見るとそこにはフェイトがいた。自分が一番好きなキャラであるフェイトがいた。
上ずりそうな声を何とか押し留めていつもを装って返す。


「……なんだよ」


いつも不機嫌そうにしているのは、それが一番楽だから。自分が一番押し殺せる唯一の方法だから。
その方法さえもフェイトは、切り崩そうとしてくる。勿論、フェイトは何もしていない。自分の心の持ちようで決まるのだが、どうにもフェイトに対しては弱くなってしまう。


じっと目を見つめられてここから逃げたくなる衝動を必死に殺して見つめ返しているとあることに気付いた。
フェイトの額に若干の汗がにじんでいたのだ。おそらく、龍雅を追いかけるためにここまで走ってきたのだろうが、一体何のために?
自分を否定しに来たのか? そう考えてしまうほどに今の龍雅は弱ってしまっている。


「――――ありがとう」


頭の中が真っ白になった。何も考えられずに、思考が停止してフェイトしか見えなくなった。
フェイトは何を言ったのか一瞬理解できなかった。そして、感謝されたことに気付くとなんのことなのか全くわからなくなった。


「燐夜を助けてくれてありがとう。――――それだけだから、じゃあね」


燐夜を救ってくれたことに対する感謝だった。別にあれは、ただ命令されたはずなのだが、よくよく考えれば自分から進んでいくと言っていた記憶があった。
感謝されてうれしくない筈がない。それも前世で最も好きだった人に感謝されたのだ。
自分の行いがようやく報われた。そう初めて実感した瞬間であった。


つうっと自分の頬を何か濡れたものが通って落ちていった。





 
 

 
後書き
ようやく投稿……!
最近、小説を書く時間が取れなくて、ただでさえ投稿が遅いのに……

頑張ります。
次は、なのはたちの日常と並行して書くので遅くなると思いますが、よろしくです! 
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