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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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会談

 
前書き
マザーズロザリオ編、はっじまっるよー。どうも、蕾姫です

前にも言ったかもしれませんが、燐は基本的に現実側で手腕を振るう(物理的にも)ことになります
ゲーム内の様子は原作通りアスナが主役ですね
まあ、ユウキの目的が足跡を遺す……から仲間の夢を支えるに変化していますが
あと、主な変化ですが、絶剣の噂が流れていません
前章(キャリバー編)において、アスナと知り合ったことが原因ですね

どちらも、おそらくこの小説に出てこない裏設定なので、ここに載せておきます

では、開幕といきましょう 

 
冬の日のとある休日、俺はとある喫茶店でコーヒーを飲みながらパソコンを叩いていた

「……ガードが固いな」

「ちょっと待っててくださいね、にぃ」

やってることはハッキングである
とは言え、俺自身のハッキングの腕はそこそこしかないので目標のファイヤーウォールを破るには技術が足りない
故にユイに援助を頼んで今に至る

「突破しました! 調べ物はなるべく早くしてくださいね」

「ああ、助かった」

ユイに礼を言いつつパソコンに表示されている文面に目を走らせる
しばらくの間、辺りに沈黙の帳が降りた

「っ……にぃ、これ以上は無理です!」

「わかった、離脱する」

即座にインターネットから離脱する
まあ、なんとか札は集まったか

「ふぅ……」

「にぃ、お疲れ様でした」

「ユイ、サポートありがとう」

パソコンから目を離し、背もたれに体重をかけて天井を見上げる
慣れているとはいえ、あそこまで集中力を高めると精神的にくるものがある
それが犯罪ともなれば尚更である

「……待ち合わせの時間は午後四時頃だったか?」

「はい、合ってます」

今の時刻は午後三時半を少し回ったところ
残り時間は約三十分

コーヒーを追加で頼みつつ、ユイとたわいもない世間話で時間を潰していると、ようやく待ち人が姿を現した

「いやぁ、まさか燐君の方からお茶に誘ってもらえるとは思わなかったよ」

「呼んだ理由はわかってるんだろ?」

俺がそう言うと待ち人、菊岡誠次郎は人を食ったような笑みを引っ込め、珍しく真剣な表情を浮かべた

「もちろん……でも、不可能だと思うよ? 彼女については一通り調べているならわかると思うけど」

「後天性免疫不全症候群、その末期か」

「今だ治療法が確率されていない病気。末期じゃなければまだ打つ手は残ってると思うけど、日和見まで行ったら……ね」

進行を止める方法はあるが、治療法は未だに確率されていない
つまりユウキはもう手遅れとも言える
そう肉体は

「ライトキューブ」

「……どこでその名前を」

目の前にあるパソコンを指で指すと理解したのか菊岡は苦笑いを浮かべた

「対策はしてあったんだが……自己意識のある電子信号は想定外だったよ。本当に……うちに欲しいなぁ」

「故、茅場博士に言ってくれ」

「苦笑いしか出ないね。さてと、僕としてはこのまま楽しく世間話をしていたいんだけど……そうはいかないよね」

菊岡は店員に紅茶とケーキを頼むとこちらに向き直った

「単刀直入に聞こう。ライトキューブへの意識の移入は可能か否か」

「わからない、とそう答えておこうかな。ライトキューブへの意識のコピーは試したことがあるが移入となると試したことはない」

「コピーの方の結果は?」

コーヒーを一口飲んで唇を湿らせると菊岡の顔をぼんやりと見る

「全敗だね。僕も含め、数人の同僚も試したんだけど、自身がコピーであるということを自覚することができず、あっさりと自我を崩壊させていったよ」

「……だから移入の結果はわからないと言ったのか」

「ああ、その通り」

コピーは現実側と非現実側にわかれてしまうため、必ず非現実側の方は偽物であるということになってしまう
詳しい理念は不明だが、偽物と自覚すると消滅してしまうらしい

「まるで、ドッペルゲンガー現象みたいだな」

「そう、まさにそれだよ! ただ、ドッペルゲンガー現象よりも質が悪く、自分と同じ存在がいると思い込んだ時点で死んでしまうけどね」

世界には自分と同じ顔の存在が三人はいるという。オカルトの類いは興味がないが、実際にこのコピー人格の自我消失現象を聞くとあながち嘘ではない気がして来る

「移入した場合の人格の安定化。それに成功する確率は?」

「……三割あれば良いほうだと思うよ? やったことのない試みだから経験からいって、ね」

生存確率ゼロからみればたいした進歩だが、俺は分の悪い賭けは好きではない

「背に腹は変えられない……か……」

「それに、これは政府主導のプロジェクト。個人に対して使用されるなんてありえない」

「何事にも裏口というものが存在するだろう」

「……はぁ、わかった。他ならぬ君の頼みだ。引き受けるよ」

これで第一関門はクリアか

「すまん、恩に着る」

「いやぁ、初めて燐君から礼を言われたんだ。感動も一入、といったところかな。そういえば、本人に許可はとらなくてもいいのかい?」

「全て任せるって言われたからな」

しかもよい笑顔で
なぜ、あそこまで手放しで俺を信頼できるのか……
シノンといいユウキといい、こんな俺のどこがいいんだか

「へぇ、なかなか豪胆な子だね。なら問題ないかな」

「ああ。俺はその信頼に応えなければいけない。信頼を受ける際の義務だと思っているからな」

「……だからモテるんだよ……」

菊岡がなにやらつぶやいているが聞かなかったことにする
一息つくと少し冷めてきたコーヒーを一口飲む

「それより細部を詰めようか」

「……うん、そうだね、それがいい」

ブツブツ呟いていた菊岡さんも同調し、ようやくユウキを救うための計画を練りはじめた

「とりあえず、ユウキはどのような位置付けになるんだ?」

「建前上はテストプレイヤー、という形になるだろうね。もっとも、これは軍事機密だしテストプレイヤーになると外部との接触は制限される」

最低でも監視がつくことになるだろう
外国からのスパイに狙われかねないという懸念もある
普通ならば

「だが、ユウキには関係ない」

「その通り。彼女は良くも悪くも重病人。こう言っては悪いけど死を待つだけの存在。でもこの計画においてはプラスに働く」

もっとも、そうでなければこんな計画は持ち上がらなかったのだが

現実に存在しない人物を捕らえるなど、不可能である。最近、VR技術も向上してきてはいるものの、それでもネット上に住む人物を捕まえるなど、不可能に近い

「成功したとして、ユウキのその後の立場は?」

「僕の直属の部下ってところかな。今回露呈した弱点の補整に協力してもらおうと思ってるよ。もちろん、拘束時間は極めて少ないし、多少なりとも給料は出す」

「まあ、それが妥当か」

「家としては……君のパソコンでよかったかい?」

「ああ、問題ない」

ほとんど相槌を打つだけになったが、菊岡の言に俺を嵌めようと考えるような邪気は感じられない
こんなのでも政府高官。俺の考える条件をうまくおさえている

「じゃあ、細かいことが決まったらまたメールするね」

「了解だ。忙しいところすまなかった」

「……本当に今日どうしたんだい?やけに素直じゃないか」

急に振り返ったと思ったら真顔で凄い失礼なことを言ってきた

「お前は俺をなんだと思ってるんだ……。確かに俺はお前をあまり好きではないが、ユウキを救うために尽力してくれるのも事実だ。己の感情を優先して礼をしないという程、俺は恥知らずじゃない」

「それは残念。燐君がようやく振り向いてくれたと思ったんだけどなぁ」

「それを男が言っても気持ち悪いだけだ。それと、俺は今のお前を信用するなど未来永劫あるわけがない。腹に一物どころかいくつ抱えているかわからないやつを信用しろという方が無理だろう」

「相変わらず、釣れないなぁ……。でもまあ、そういうことにしておくよ(・・・)」

じゃあ、また。その言葉を残して菊岡は去って行った

……あの口ぶりだと、俺が菊岡を信用しない理由について気づいていたな?

やはり、食えないやつだ

菊岡が去って数分後、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干すと俺は店を出た

途端に冷たい風が肌を刺すが、今は逆にありがたい
冷えた頭で夕焼けの空を見上げる

「さて、帰るか」

白い息とともに声は虚空に散っていった 
 

 
後書き
マザーズロザリオ編、第一話でした。やはり出てきた菊岡ェ……
ライトキューブとアシリゼーション編を先取りです
解釈はこの小説でのオリジナルですので、矛盾があっても知りません
コピーと移入の違いにおいても御同様。ツッコミをくれた方。是非LINEに来て議論をかわしましょう
ディベートって楽しいですよね
……いつもディベートした後、相手に疲れたとか言われるのはなぜだろう?

まあ、そんなことはさておき、生についてちょっと自論を

マザーズロザリオ編において生死という要素が深く関わってきますね
マザロザ編のヒロイン、紺野木綿季は後天性免疫不全症候群、略称HIV、エイズという病を患っていて、病状も最終ステージ……つまり末期です
免疫力が落ちる病気で、原作でもユウキはクリーンルーム、無菌室という特殊な部屋に居ました
ここで質問します。もし、メディキュボイトがなかったならば、つまり、なにもできない、することができない状態だったならば
それって生きてるって言えるんでしょうか?

生物学上では生きてます。心臓は動き、脳は活動し、血は巡っている
ですが、その状態を本当に'生きている'と言っていいんでしょうか?

私の意見を言わせてもらうと、それは生きてはいません
自分の意思で動くことができる。それが私の持論です
私はユウキを生かすと言いました。しかし、身体は手遅れ。どう足掻こうともおそらく覆せる可能性は天文学的数字の奇跡が起きない限り不可能でしょう
だったらどうするか。私の出した結論は精神のネット移転。お誂え向きにアシリゼーション編でライトキューブなるものがあったので利用させてもらいました
私の持論から、この状態は生きていると思っています。もちろん、反論異論あるでしょう。そんな方々、LINEにいらっしゃっい←
思う存分意見を戦わせましょう

長くなりましたが、以上です
では、次回もよろしくお願いしますね 
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