すみれ姫
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第四章
公園は領地の湖の辺に作らせた、そこが最適だったからだ。
その公園がある程度出来たところで花を植えることになった、ここでフランツは自ら公園に赴きどの花が植えるべきかを考えた。
公園に既に植えられている木々の緑と湖の澄んだ青、その二つを観た。
それから足元の緑の絨毯を観てだ、彼は言った。
「菫だ」
「菫ですか」
「そうだ、この公園は菫を多く植える」
花達の中でもだというのだ。
「そうするぞ」
「無論他の花達もですね」
「当然だ、この公園も四季の花を植える」
春夏秋冬どの季節のものもだというのだ。
しかしだ、その中で特にだというのである。
「だがその中心は菫だ」
「わかりました」
周りの者達はフランツの言葉に頷いた、そうしてであった。
公園には多くの花達と共に菫が多く植えられた、公園は紫の小さいが綺麗な花達に覆われ飾られた。その公園を観て領地の民達は楽しんだ。
フランツもそれを観て満足した。完成した公園と民達を。
そしてここでだ、彼は気付いたのだった。
「これだ」
「これだ?」
「これだとは」
「これこそが最高の贈り物だ」
まさにそれになるとだ、彼は公園の中で気付いたのだ。
そしてだ、執事に問うたのだった。
「王女はまだだな」
「はい、まだです」
執事も問いの意味を察してだ、すぐにこう答えた。
「ではですね」
「リサ王女をこの公園にご招待する」
「そしてここで、ですね」
「あの方に申し上げる」
決心している顔での言葉だった。
「そうするとしよう」
「それでは」
こうしてだった、フランツはリサをこの公園に招くことにした。こうしてだった。
リサは実際に公園に来た。それでだった。
咲き誇る紫の菫達、その周りを飾る草木の緑と傍に見える湖と小川の青、何よりもそうしたものを観て楽しむ民達を観て笑顔になった。そのうえで周りの者達に言うのだった。
「この公演は非常に」
「よい場所ですね」
「素晴らしい公園ですね」
「はい」
そうだとだ、リサは笑顔で答えた。
「これだけ素晴らしい公演は他にはありません」
「そうですね、本当に」
「これだけの場所は」
「美しいものや場所は一人ではなく」
誰もが楽しまねばならない、リサがいつも考えていることだ。
「皆で楽しまなくてはなりません」
「この公園を作られたのはこの場の領主様です」
「シュタインベルク侯爵です」
周りの者の一人が彼の名を出した。
「その方です。そしてその侯爵殿からです」
「私にお話があるとのことですね」
「そうです」
こうリサに答える。
「どうされますか」
「それでは」
菫達を観ながらだ、リサは応えた。
「その方が望んでおられるなら」
「それならですね」
「はい、そうします」
リサは菫に何かを感じた、その何かは具体的にはわからなかったが。
だがそれでも会うと決めてだ、周りの者達に言ったのである。
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