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第三章
「かなりね」
「そうだよね、それじゃあね」
「色々食べて飲んでだね」
「常に健康である、いやもうそれこそ精力をむき出しにする位でないと」
間宮はこうまで言った。
「駄目だろうね」
「終わるなんて論外にしないと」
「だからやってみたらどうだい?」
元気が出るものを手当たり次第に食べて飲めばどうかというのだ。
「そうしたら違うかも知れないよ」
「かも知れないんだ」
「確実とは言えないね」
残念ながらそれはというのだ、それはどうしてかというと。
「僕達の年齢になるとね」
「そうだね、五十五を過ぎるとね」
もういい加減、というのだ。
「そうなるよね」
「それは僕もわかるよ、僕にしても」
相談に乗ってアドバイスをする間宮自身にしてもだというのだ、焼き鳥と葱をタレで焼いたものを口の中に入れながら言うのだ。
「もうね」
「終わったのかい?君も」
「いや、終わってはいないけれど」
だがそれでもだというのだ。
「もう滅多にね」
「そうなんだ」
「女房とも月一回だよ」
「それ位なんだ」
「それで一回したらね」
それでまた来月までだというのだ。
「十代の頃の様にはいかないよ」
「そうだよね、もうね」
「十代の頃は一日に何度でもだったのに」
その頃は底なしだと思えた、元気過ぎて仕方ない位だった。しかし今はどうかというのだ。
「けれどね」
「そうだよね」
「だからね、僕にしてもね」
「大蒜を食べるんだね」
「イタリアとかスペインの料理もいいかな」
間宮は今は焼き鳥を食べているがそうした料理のことも話した。
「大蒜にチーズだからね」
「どっちもかなり使うからね」
「トマトとオリーブも好きだしね」
「僕も好きだよ、それじゃあね」
「食べてみたらいいよ」
「実は彼女は料理も上手なんだ」
新島は微笑んでこのことも話した。
「そうなんだよね」
「じゃあイタリア料理も食べられるね」
「うん、パスタとかいいよね」
「かなりいいよ、じゃあ南野さんにも頼んでね」
「まだ一緒には住んでいないけれどあの娘の部屋に行くことは多いからね」
そこでご馳走になろうというのだ、そうしたことを話してだった。
新島は実際に彼女の部屋に行って料理を作ってもらって食べた、食材は彼が買って作ってもらった。そうして精のつくものを食べたが。
それでもだった、彼はというと。
一向にだった、それでまた間宮に話した。
この日も居酒屋で飲みながら話す、やはり一緒に食べているのは焼き鳥だ。
その中の大蒜をまとめて串に刺して焼いたものを食べつつだ、彼はカウンターの自分の席の隣に座っている間宮に言ったのである。
「全然だよ」
「復活しないか」
「幾ら食べてもね、健康にはなってることは自覚してるけれど」
「そちらはなんだ」
「全然だよ」
復活しないというのだ。
「微動だにしないよ」
「ううん、そうか」
「やっぱり無理かな、僕達の歳だと」
「富十郎さんは今の僕達よりも十歳も上で子供を作ったけれどね」
歌舞伎役者の中村富十郎のことである。
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