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第四章

「酷かったんだよ、けれどな」
「それでもだったのね」
「ああ、よかったな」
 味はともかくとしてだとだ、アルバークさんは温かい目で話す。
「本当にな」
「思い出よね」
「いい思い出だな」
「あの、何か」
 夫婦のやり取りを聞いてだ、優樹はその二人に問うた。
「お二人共凄く楽しそうですね」
「当たり前だろ、娘に好きな人が出来たんだぞ」
「それだけ成長したっていうことだしね」
「それにだ、娘のはじめてのお菓子作りを見られるんだ」
「しかもそのお菓子を食べられるから」
 楽しみでない筈がないというのだ。
「だからあんたもな」
「楽しんでね」
「わかりました、ただ」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「不安でもありますけれど」
 首を傾げさせつつだ、優樹はこう二人に返した。
「僕は」
「そうか、あんたは不安か」
「はじめての料理だっていうから」
「ええ、まあ」
 その通りだとだ、返す優樹だった。
「そのことは」
「どんな壮絶なものが出て来るか、だな」
「それでよね」
「素直に言いますと」
 その通りだとだ、優樹は顔にも出して言う。
「少し」
「そうだろうな」
「私達もだしね」 
 それは夫婦も同じだった、しかしそれでもだった。
 二人はそのキャロルの両親だ、それで言うのである。
「しかしそれ以上に楽しみだからな」
「今わくわくしてるわよ」
「そうですか」
 優樹もこの辺りは理解した、そしてだった。
 うきうきとしている二人を見ながら今は待つのだった、そしてその時がはじまった。
 キャロルが来た、既にエプロンをいつものシャツとジーンズの上に着けている。それを見てまた言う両親だった。
「中々似合ってるじゃないか」
「可愛いわよ」
「有り難う、それじゃあね」
「ああ、今からだな」
「アップルパイとアップルティー作るのね」
「これを見てね」
 言いながら一枚の紙を出してきた、そこにはだった。
「レシピ見てね」
「ああ、その通りにすればな」
「極端におかしなことにはならないからね」
 流石にレシピ通りに作っておかしなことにはならないというのだ。
「だから頑張るんだぞ」
「いいわね」
「うん、今から作ってみるわね」
 そうすると言ってだ、そしてだった。
 キャロルはキッチンに入りそのレシピ通りに一からアップルパイとアップルティーを作りだした。それこそ林檎の皮を剥くことからだ。
 そしてその林檎の皮の剥き方だが、これがまた。
「たどたどしいですね」
「いやいや、思ったよりいいよ」
「結構ね」
 こう返す二人だった。
「何しろこれまで包丁を握ったこともあまりなかったからな」
「それを考えたらな」
「怪我しないといいですけれど」
 切実な声で言う優樹だった、見ていて皿に不安になっているんどあ。
「手とか」
「そうだな、おいキャロル」
 アルバークさんがここでキッチンで林檎の皮を剥いているキャロルに声をかけた。 
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