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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第六十二話 少ない望み

 
前書き
即興で書いたハロウィンが閑話で存在しています。それも合わせると二話連続投稿なので注意してください。 

 
「では、そちらは交渉の席に着く気はないと?」

正面に映る映像を前にデュランダル議長は悠然とした様子で相手に対し、お互いの平和の為に会談を開かないのかと確認を取る。

『当たり前だろう。そのような計画をいきなり発言した所でこちらがただで受け入れると思っているのか!』

(だから君は小物なのだよ、ある意味ブルーノ・アズラエル以上のね――――ジョゼフ・コープランド)

寧ろ会談を受け入れないというのはこちらにとって有利な条件だ。既に部隊の準備は整い、世論は味方となり、そして多くの手札を持つこの状況。一方で向こうの切れるカードはそれこそ今申し出を断っているこの会談か、或いはアルザッヘルの連合部隊位しかない。しかも、それらの中身をこちらは透けて見える状態だ。
既にデュランダルの思惑通りに事は進んでいる。この政策を推し進め、賛同者を大勢集めるために世論を味方に付けた。有史以来、世界を創りかえてきたのはその多くが中層階級の人間である。貴族制が崩壊したのも社会主義が生まれたのも奴隷制が解放されたのも多少の余裕を持った階層の人間によるものだ。
故にデュランダルはそういった民衆の力というものを理解している。だからこそ、そういった階層の人間をロゴスを討つという名目によって味方につけ、恩を売り、そうそう裏切らない立場へと変化させた。

「それは非常に残念なことだ。我々は平和の為に共に手を取るべきだと私は思っているのだがね」

『何を白々しい――――貴様のそのふざけた野望で世界が本気で救われるとでも思っているのか』

良くも悪くも逸脱していない上に保守的な人間であるジョゼフはデュランダルの考えに賛同することなどほぼありえない。

「では、連合は我々ザフトに対して戦争を継続すると、そういう意見で相違ないかね?」

『ああ、その通りだ。悪いがデスティニープランとやらを実行しようというのならプラント内だけでやってくれたまえ!』

そう言って、ジョゼフは通信を一方的に切断し、デュランダルとの会話を終える。その様子を黙って見ていたクラウにデュランダルは語り掛ける。

「さて、待たせてすまなかったと言うべきかね――――首尾はどうなっている?」

「まあ一応は全部完了したんじゃないでしょうか?それにしても、ここまで準備する必要があるのですかね?」

資料を手元に用意して作業の報告書を纏めた彼、クラウ・ハーケンはデュランダル議長に命令された仕事をこなし、彼に報告に来ていた。
機体データ、部隊の編制や配置、戦略兵器の現時点での様子、敵の動き――――様々なデータが用意されている。無論、これらが総てクラウの手によって用意されたわけではない。寧ろクラウが関わっているといえるのは機体データ位のものだろう。あくまでも彼は報告役を指名されただけの話である。

「機体の準備に関してはこちらの仕事なんで終わらせていますけど、本当にアレでよろしいので?」

口籠った様子で何か言いたげな様子を見せるクラウだが、デュランダルはその不敵な笑みを絶やさぬまま答える。

「ああ、あの機体で構わんよ。随分と大きいことは確かだがあれが適性サイズなのだろう?」

「まあ、そうでしょうね……ですが――――」

「私が構わんと言っているのだ。不都合があろうとも使いこなしてみせるよ。切り札は多い方が良いのだからね」

第三者が様子を見ていたなら所々で引っ掛かりを覚える様な会話が行われている。議長の為に用意された機体はクラウが開発を主導していたはずだ。にも拘らずその製作者本人が疑問を口にする。技術者とパイロットという彼らにしては不適当な会話だ。

「それにしても、人とは本当に愚かだね」

突然話題を変えてきたデュランダルに対してクラウは溜息を吐く。

「そんなことを、俺に言って意味有るんですか?」

「いいや、だが人類はようやく革新に導かれるときが来た。そうは思わないか?」

愚痴を零すかのように話すクラウに議長はただ笑みを崩さないまま話を続ける。彼らの状況が変化するまで、その会話が途切れることはなかった。







「なんでこうなっちゃうのかなァ、全くッ!?」

ネオは放送されたデスティニープランというのを前に頭を悩ませていた。

「確かに随分と笑えない話だな。遺伝子が人生を決定させるなんてよ……でも、まあ俺らにゃあ関係ねえ話じゃね?」

「そうだぜ、結局あいつ等コーディネーターが勝手に言ってるだけなんだからさー、無視でいいだろ?」

ダナやアウルはそんな計画はどうでもいいんじゃないかと口にするが実際そう単純な話ではない。戦況がこれで激化するならば彼らファントムペインもその立場を回復させることが出来るかもしれない。だが、それは勝てばの話だ。
このデスティニープランが発言される前の時点では彼らが生き残る方法はおそらく模索されていたであろう和平への道の中の過程で行われるであろう一戦、或いは二戦に介入し、自分たちの立場を確保する、或いは戦犯となり逃げ延びるの二択しかなく、また生き残れる可能性も低かった。

「無視を決め込めるほど俺たちの立場は良くはないんだよな……」

実際、立場を回復させると言う面では戦闘は規模が大きい、または回数が多いほどいい。だが、その結果で自分たちの与した側、つまり連合が勝たなくてはならないのだ。そして先程までなら、負けない戦争だったのが、今度は勝たなくてはならない戦争へと変化したのだ。
その差は大きい。彼らの立場を確保するだけなら提唱される前の方が都合が良かった。だが、今は立場を回復させることが出来る可能性が生まれたと同時に崖に追い込まれたと言ってもいい。つまり、ローリスクローリターンからハイリスクハイリータンに変わったという事だ。
正直言って、これまでザフトと戦ってきたネオには今の連合が勝てるとは思えない。士気が低い、部隊の内部分裂、戦略兵器の壊滅、そもそもの戦力の激減――――数え上げればきりがないほどに今の連合は疲弊している。おそらく、その気になれば意識的な反連合側(オーブやスカンジナビア、南アメリカ圏などの勢力)が叛旗を翻すだけで今の連合を瓦解させることも不可能ではないはずだ。尤も、彼らにとって利益は少ないだろうからそんなことはそうそう起こらないだろうが。
結局、早い話がデスティニープランが提唱される前なら連合が勝とうが負けようが彼らにとっては影響は小さいものだったが、今となっては連合に勝ってもらわなくてはならないという事だ。

「どっちにしてもふざけるなって話だ!?」

ネオの中で焦りが募りだす。立場の関係上、というかパイロットたちの精神的な問題からザフトに付くのは確実に不可能だ。そして、今の連合の状態でザフトに勝つというのも絶望的。かといって戦犯としてファントムペイン単体で逃げ延びるのも難しい。だが、悩み続けても仕方がない。ネオは頭を抱える様な事態であったも生き延びるために策を考える。

「よーし、決めたぞ!どのみち腹括って賭けに出なきゃならんのだ。移動先はL2――――コロニーレーザーだ。移動される前に奪い取るしかないでしょ」

「艦一隻でコロニーレーザーが奪取できるとでも?」

副官のイアン・リーは無茶ではないかと発言する。当然、ネオもそんなことは理解しているのだろう。しかし、これ以外で自分たちの今できることなど限られている。

「じゃあ、連合の艦隊に直接合流して援護するかい?それともそのまま逃げる?どれ選んでも俺達が生き残れる可能性は殆どないさ。だったらこの艦――――というか俺達の部隊が出来る最高のパフォーマンスで攻撃を仕掛けるしかないさ」

ミラージュコロイド、ステルス機、高機動可変機、ドラグーン、インコム――――ガーティ・ルーに乗っているファントムペインの部隊は隠密性、奇襲性に優れた機体ばかりだ。そしてパイロットもそれらを熟知したエース或いはベテランばかり。となればやはり単独での奇襲、そしてコロニーレーザーの奪還からの砲撃による強襲しかないとネオは作戦を立てる。
勿論、リスクは大きい。保険を掛けたいタイプの人間であるネオとてこんな作戦を実行したくはないが、既に負け戦同然の中で勝とうというならこのぐらいの無茶は突破しなくてはならない。

「賛成だ、我々に残された戦力を考慮すれば一撃で敵に打撃を与えなくてはならない。そして、コロニーレーザーは拠点として存在している以上、補給物資も存在している」

「まあ、勝手気ままに敵を殺せるっていうなら構わねえぜ」

エミリオも作戦に同意を示し、ダナの方も作戦は否定しない。アウルも敵を倒せると言うなら別段問題ないとばかりに賛同していた。

「まあ、きついことに変わりはないが、作戦を開始するぞ!」

生き残るために彼らはファントムペインとして最後の戦いに挑む事となる。







「デスティニープラン?」

ジュール隊はコロニーレーザーでの戦闘を終了させたのち、部隊の再編を命じられゴンドワナの代わりとなる指揮官として行動していたのだが、デュランダル議長がデスティニープランを提唱していたのをディアッカと共に見て驚く。

「イザーク、お前知っていたか?」

「いや……」

ここ最近は忙しく本国との連絡を取っていなかったことで情報が渡されなかったのだろうかと思いつつも、それにしても急なタイミングだと彼らは思う。未だに総司令官の命令に従わなかった一部の連合部隊の残存戦力によって僅かながらもゲリラ的な攻撃を仕掛けられている。
無論、すぐさま鎮圧されるものの、こう頻度が多くては他の仕事に手が回らなくなってしまいそうだ。とはいえ宇宙でゲリラ戦を仕掛けるのはかなり難しい。回数も規模もそこまでのものではなく、部隊の再編成自体は問題なく進んでいた。

「このタイミングで発表って事は……これも政治ってやつなのかね?」

「だと思いたいがな――――」

デスティニープランに対し、イザークもディアッカも思う所があるのだろう。味方にも教えず、急にこんなことを言い出したのだ。おそらく後ろめたいこともあるのではないか?そんな思いを抱きつつも、二人はかつての二年前の大戦を思い出す。

「そういや、二年前の時も色々あったよな?」

「何だ、いきなり?」

ディアッカはそのことを口にして実際あの時はどうだったのかという事を思い出すかのように言う。

「フン、確かに貴様はあの時はアークエンジェルの一員だったな」

イザークとディアッカ。かつて同期であり戦友であったものの、お互いにどんな巡りあわせか敵同士として再会した。しかしながら、最終的には共に協力――――というより共闘することで連合の最新鋭MSを倒したのだ。

「結局、俺達は何のためにこの軍服を着て、何を守ろうとするかだよな――――」

アークエンジェルが今もテロリストとして追われていることは知っている。ディアッカとしては複雑な気持ちではあるが、自分たちの方が間違っているなどとも思えない。

「ともかく、このプランとやらの詳細が分かっていない以上、俺達が闇雲に賛同も否定するわけにはいかんだろう。求められているのは適切な状況判断と、自分で見極める力だ」

「アークエンジェルの奴等と出会ってもそうしろって?」

「そんなことまでは知らん!第一俺はあの艦のメンバーなんぞ、アスランとラクス・クライン以外は知らんのだぞ!貴様が勝手に決めておれ!」

アスランも現在はミネルバに所属している以上、イザークが実質的に知っている艦のメンバーなど居ない。ディアッカも確かに聞く相手を間違えているなと思い、頭を掻く。

「どちらにせよ、次の指示があるまで俺達はこのコロニーレーザーとやらを奪われないようにしなくてはならん」

「こんなもん、とっとと解体しちまった方が良いと思うんだけどねぇ?」

連合が投降した後、コロニーレーザーの性能を知った彼らはこの兵器の危険性を重々理解していた。本体の移動が可能であり、エネルギーのサイクルもかなり早い。ミラーの放熱の関係上そこまで連射は出来ないにせよ、いざとなれば崩壊覚悟で二連射できる。
少し移動して射角の調整さえしてしまえばどのプラントも狙えると言っても過言ではないだろう。それほどの驚異的な兵器でありながら、相手の総司令官は投降してくれた。もし自分たちがその投降に応じずに敵が自滅覚悟でコロニーレーザーを放っていたなら最後、自分たちジュール隊もおそらくはゴンドワナの後を追うことになっていただろう。

「おそらく、アルザッヘルから敵部隊が来るだろうな」

「まあ、連合側としちゃ見過ごせないだろうしな、このプラン」

「連合というよりも上層部の人間が、だな。プラントでも提唱したのがデュランダル議長でなければ受け入れられまい」

建設的な事を考えるべきだと思い、二人はデスティニープランについて話すことにする。実際、連合の上層部はこれを受け入れられないとすぐさま部隊を用意しており、イザーク達の予想はあっていた。

「しかし、敵がどう動くかが問題だ。プラントを直接狙うか、あるいはこちらのコロニーレーザーか?」

「実際、コロニーレーザーの方に来る可能性もあるから戦力の再編を頼んでるんだろうし。案外、ミネルバとラー・カイラムが動けばアルザッヘルも落とせるかもしれないけどさ」

ベルリンの大型兵器の破壊、ヘブンズベースでの活躍、ダイダロス基地の奇襲制圧――――確かにこれらの戦果を見ればアルザッヘルを落としたと聞いても驚かないだろう。だが、イザークとしてはそのディアッカの落としてくれたら楽という様な考え方は気に入らない。

「ディアッカ、いつから貴様はそのような軟弱な考えを持つようになった!」

「いや、冗談だって……でも、お前だってそうなったとしても納得するだろ?」

「どうだかな?当てにするのと戦力として見るのとでは違うぞ。何せ戦力を分散していたダイダロスと集中させるであろうアルザッヘルでは状況が違う。いくらアイツがいて戦力が充実してたとしても難しいことに変わりはあるまい」

そんな事を話し合いながら彼らは部隊の再編を進めていった。
 
 

 
後書き
本当はハロウィンネタの話はこの後書きに書くつもりだったんですけど文字数が多くなってしまったので閑話として載せました。 
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