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新機動戦記ガンダムW -星間戦争記-

作者:ax
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LAST WAR-ax

 
前書き
ついに迎えました最終話!!
自分的にはいい感じですねw
相変わらず読みにくい文章ですが、どうぞ最後までお付き合いくださいw 

 
リラとニコラが第01防衛ラインでマゼラスを食い止め、それを突破したマゼラスをカゲロウのHAROが破壊していく。
数で圧倒され、カゲロウは70%の戦力を消費していた。
「オレ達は負けるわけにはいかねぇんだ!!」
「第3の道を切り開く!!」
デュオとトロワが想いをグリップに込めて戦場を駆け抜ける。


防衛ラインでの戦闘が苦しくなっている中、ガンダムたちの戦闘も苦しくなっていっていた。
破壊しても破壊しても、大量のマゼラスは数を減らさない。
ガンダム達とカゲロウの有人機2機との脅威の連携で数の差を補っている。

その先。
人為的にマゼラスが集結していないポイントがあった。
そこには、純白の戦士、トールギスゼロが待ち構える。
その装備は、射撃装備を破棄してあり、右手にはヒートランス、右手にはエクスキャリバーを持った、決戦仕様の装備だった。
トールギスゼロに向かって直進していくガンダムエピオンXとカゲロウジェット。
「行くぞ、愚か者」
ヒイロがそう告げると、右手のヒートランスを突き出す。
エピオンXはそれを上昇しながら回避し、1回転して双剣のデネブ形態のブレイムを素早く振り下ろす。
「はあぁぁああぁあぁッ!!」
「この動き…!」
ヒイロの目は、金色に濁り、輝いていた。
「援護を!」
「分かっている」
サユイラの声に答え、ほぼ同時にカゲロウジェットの火器が火を噴く。ミサイルを全弾発射し、ガトリングを回す。
その、1機が放ったとは思えない弾幕を急速降下で回避したトールギスゼロがジェットに突っ込む。
2対1の戦闘が複雑に展開され、遠目から見れば軌跡しか見えないほどに高速な戦闘であった。

「9対1なら!!」
フアラがサユイラ達の援護を提案する。
「連中は簡単にそうはさせてくれないらしい、今の約2.3倍の戦力を有する大部隊がこちらに集結している」
「あの2人なら大丈夫よ」
カゲロウの2人が言った。
マゼラスは手を緩めることなく攻撃してくる。
「地球侵略の前にオレ達を潰すつもりか…どうする」
五神が問う。
「オレとエルヴが頭を抑える、左右から切り込め」
トリントンが提案する。
「僕とフアラが壁になります、デュアルとライトニングは僕と右へ、それ以外はフアラと左へ!」
クアトロが3:2:3の3部隊編成で戦略を指示する。
そして、早速動いたのは、デュアルのデスサイズヘヴンだった。
「そうと決まれば死神らしく、斬って斬って斬りまくる!!」
「行けっ!フィン・ネオ・プラネイトディフェンサー!!」
閃光陽炎(ライトニングカゲロウ)、行ってくる」
デュアル、クアトロ、ライトニングが右側へ突っ込む。
「はぁああぁぁああぁああ!!!」
「粒子残量レッドライン、これが最後のインパクトだ」
陽炎戦車(カゲロウチャリオット)、目標を狙い撃つ!!」
五神、フアラ、チャリオットが左側へ突っ込む。
「ガンダムは勝たなければならない」
「私達で切り開くのよ!」
トリントン、エルヴが正面のマゼラスを破壊していく。

戦闘が激化する戦場の向こうで繰り広げられる、トールギスゼロとエピオンX、カゲロウジェットの戦闘も激化していた。
トールギスゼロのヒートランスによる突きとエクスキャリバーによる斬りでほとんど隙はなく、爆発的な機動力でカゲロウジェットの弾幕をすり抜けていく。
「くっ…コイツ……」
ジェットが呟く。
「ZEROでない者に私は倒せんよ」
ヒイロの冷たい声が通信機からコックピットに響く。
ヒートランスが猛威を奮う中、カゲロウジェットがヒートカッターを展開して突っ込む。
「無駄な、抗うか…!」
ヒートランスがカゲロウジェット目掛けて突き出される。その威力は今までの連撃とは比べ物にならないほどの速さと強さだった。
ヒートランスがカゲロウジェットの推進装置を貫く。
「うぅっ……!」
悶絶。
「次で終わりだ」
カゲロウジェットのメインモニターが砕け、赤く発光したヒートランスがジェットの腹部に突き刺さった。
血が辺りに飛び散り、コックピット内を赤く染めていく。ヒートランスに付着した血は一瞬で水分が飛び、赤黒い塊になる。
「…付け入る隙が無かった……!」
サユイラは一瞬の出来事に対応できずにただブレイムを構えていた。
「うぅ…殺す…殺す…殺…殺す…ろす……す……」
弱くなっていく声がヒイロとサユイラの耳に届く。
「家族の…ためにも…!」
口から血が吹き出る。
「死んで行った仲間のためにも…!!」
目には、殺意だけでは形容できないほどの感情に満ちていた。
「私もろとも、貴様を殺す!!!」
最期の力を振り絞って、グリップの赤いケースを開けてスイッチを押した。
すると、カゲロウジェットの機体が強烈な光を放つ。
(これでいいんだ…これで……)
ジェットは涙を流しそう心に語りかけた。
カゲロウジェットの閃光はトールギスゼロを巻き込み、爆風へと変わった。その光は美しく、気高く、淡い青色をしていた。
「くッ…」
サユイラは思わず目を背ける。
次にサユイラ前を向いたときには、爆風は薄くなり、辺りが見えるようになっていた。
その目の前の光景は、そんなものを見ていられないほどに衝撃的だった。
爆風を背に、何も無かったかのように存在するそれは、まるで造りたてのように綺麗であった。
「無傷だと!?ヒイロは本物の化物を造りだしてくれたなッ!!」
トールギスゼロは、無傷であった。いや、それ以上といってもいいほどに美しかった。
「見事…しかし私を傷つけるまでには至らなかったな」
ヒイロの余裕のある声は、今までの事が何も無かったかのように冷たかった。
「化物め…」
「貴様だって、化物だろうに!!」
ヒイロは、ヒートランスをパージし、エクスキャリバーを構えた。
「騎士道精神(スピリット・オブ・キャバルリ)か、面白い!!」
ブレイムを合体させ、1本の大剣、ベガ形態のブレイムを正面に構える。
互いの機体から放出されるナノ・ディフェンサーが共鳴して周囲に幻想的な光の幕を発生させる。
それはまるで、世界から隔離された神界の決闘場のようだった。
「行くぞエピオン!!」
エピオンXとトールギスゼロが同時に動いた。
まるで、互いに次の動作が分かっているかのように。
「トールギスの全てを使わずとも、私は負けない!」
連撃が拮抗し、機体各部がヒートアップしていく。
「クッ!」
サユイラはグリップを手前に引き、一度後退する。
途端、サユイラの脳裏に1人の少女の顔が横切った。力強く黒い瞳に艶のある黒い髪の中国系の少女。
その人物はサユイラの記憶になかった。
「これは…」
サユイラに身に覚えのない、他人の記憶が流れてくる。
哪吒(なたく)…?…妹蘭(めいらん)……?」
それは、エピオンに、否、エピオンパイに宿っていた妹蘭の記憶。シェンロン、アルトロン、エピオンパイと何十年もの間宿り続け、老師・張の、張・五飛(ウーフェイ)の側にい続けていた魂。
その記憶がサユイラの意識を刺激する。
サユイラの瞳が序々に赤く変色する。
「目覚めろ!!ガンダムッ!!!」
エピオンXとサユイラの意識が融合しはじめる。
正確に言えば、ウィンクラフトの意思が覚醒し、ZEROシステム自体に干渉していく。
『ZERO unlimited』
メインモニターがホワイトアウトし、無数の文字が書き連ねられていく。
Turn
Re
Answer
Neo
System
|
AKATUKI
Mode
無意味に近い英単語の羅列が表示され、エピオンXが再起動する。
ナノ・ディフェンサーが装甲に高濃度で付着し、黄金に輝く。
その輝きは、火星では見たことがないほどに美しく、まるで地球の海から上る暁のようだった。

サユイラとエピオンXの覚醒をピースミリオンⅡで観ていた老師・張の目には、少年のような輝きと、優しげな雰囲気があった。
「振り返るのだ、再び答えは出る、平和のための『次なるシステム』を完成させよう………」
「昔の事でも思い出したか?」
老師・張の小さな呟きにドクトルTが反応する。
「妹蘭が死んだ合戦の直前、地球の向こう側から上ってくる太陽を見たときに聞いた言葉だ…」
「五飛…君にも宇宙の心は見方しているんだよ」
「俺にもやっと分かった気がする、カトルの言う、宇宙の心がな」
「誰にでも心はある、それが感じたものを宇宙の心と解釈したのなら、その全てがそれに値する、俺たちはそれを理解したということだ、トロワ」
3人の呼び名が昔のものに戻っていた。
その顔は晴れやかで輝かしかった。
「これで勝てるかもしれないね…」
絶望的な戦況に僅かな希望を見出した。

「そうか…貴様も覚醒したか!!」
ヒイロがエピオンXの覚醒を目の当たりにし、喜びの混じった声をあげる。
「エピオン…私に勝利を見せてくれ!!」
エピオンXがこれまでより数倍の速度で間合いを詰める。
トールギスゼロがエピオンXのブレイムを弾き、エピオンXはそのまま斬り抜ける。そしてすぐさま体勢を立て直し、再びぶつかり合う。
「ヒイロ、今すぐ作戦を中止しろ!」
サユイラが接触回線で通信を入れる。
「貴様には分かるまい、捨てられた失敗作の気持ちは!!」
エピオンXが弾き飛ばされ、それを追って距離を詰めるトールギスゼロ。
「あぁ分からん、個人的な考えで星を壊す意味が!!」
「愚かな人類を裁くためだ!!!」
「人を裁くなど、神を気取るつもりか!」
「いいや、神そのものだよ」
幾たびものぶつかり合いを繰り替えすが、互いに傷ひとつ付かない。
完全に互角の戦いだった。
「貴様はそうやって、永遠に人を見下す事しかしない!!」
「当然!!弱者は強者にひれ伏すのだ!!」
ヒイロの力強い発言に、サユイラは静かに反論する。
「強者など何処にもいない、人類全てが弱者なのだ、私も貴様も弱者なのだ!」
「私はまだ、自分を人類だとも弱者だとも認めていない!!」
「何故分からない!!私たちも、人類の心を持っているのだと!!!」
「心など、造られた存在には宿らん!!」
「否、断じて否!」
「私と貴様では、考えの根本が違うようだな」
「ならば私は、貴様を正してみせる!!!」
黄金のエピオンXと純白のトールギスゼロの軌跡が、宇宙を優雅に舞う。
まるで、終わりなき舞踏(ワルツ)のように。

多勢に無勢な激戦を地球防衛最終ラインでモニターしているピースミリオンⅡの第1艦橋に新たなMS反応を知らせる警告音が響いた。
「新手!?」
W教授が戦場の官制をしているドレッドに駆け寄った。
「近隣の資源衛星から出てきたと推測されます!」
「識別は?」
W教授の冷静な質問を受け、すぐさまモニターに目をやり、コンソールパネルを操作する。
そして、表示された文字列を見、報告する。
「旧OZです!!」
AC195年に、地球圏を実質的に支配していた軍事組織「OZ」。
大昔に解体されたはずの組織の識別信号を送信している機体数は、たったの1機。
「コンタクトを図る」
ドクトルTが、一方的にロックされた通信回線のハッキングを開始する。
何重にもしかれた厳重なロックを、容易に解除していく。
「慎重にな…ヤツかもしれない、場合によっては敵になる」
老師・張の頭には思いつく人物がいるらしい。
そして、ドクトルTもW教授も、同じ人物を思い浮かべていた。
  『ヒイロ・ユイ』
現在サユイラと交戦中のヒイロとは別のヒイロ・ユイ。
そのヒイロ・ユイも、真のヒイロ・ユイではないが、裏の歴史では伝説的な存在である。
老人たちのかつての戦友だった。
「敵だったら殺す、それだけだ」
ハッキングを数秒で完了し、回線をつなぐ。

その旧OZのMSのコックピットにノイズ交じりではあるが、ハッキリとドクトルTの声が届いた。
「こちらアダムス、応答しろ」
コックピットにいたのは、15~6の少年。深緑のタンクトップに淡い青のジーンズを履いた、戦場に出るにはあまりにも軽装な少年。
少年は、感情のかけらもない冷たい声で応答した。
「こちらはヒイロ・ユイ」
瞑っていた目を開き、モニターの先の敵を見る。
彼が敵として捕らえているのは。
「攻撃目標は、ブラックファングだ」
MSを操作し、ビームサーベルを抜く。

「ヒイロ!!」
W教授が思わず声をあげる。
「やはりお前が黙っているわけはなかったな」
ドクトルTが少し明るい声で言う。
「頼んだぞ、ヒイロ」
老師・張が期待と共につげる。

「任務―開始」
ヒイロがグリップを押し込むと、全身に強力なGがかかる。
手元のスピードメーターは通常のリーオーの3倍以上の数値を示している。
計測不能のスピードを出すその機体は、旧OZのリーオーをベースに、トラゴスのライトアーム、トーラスのレフトアームにカスタムしてあり、更に特筆すべき、その圧倒的な機動を可能にしているのは、エアリーズのものを2連装に改造し、さらに出力増強を施したバックパックで、ジェネレーター出力は4000kwと、ウイングガンダムゼロをも超越した数値を叩き出していた。
カラーリングは、白を基調とした清楚な印象で、関節部は青に塗装されていた。

その、ガンダム同様に戦場に似合わない色の機体を、ガンダムキラーは確認した。
今まで主にMSの指揮に回っていた3機が、集結する。
「旧OZのリーオー…」
ジョニー・アンが実物を見るのは初めてのその機体の名を呟く。
「旧OZの機体のパーツを寄せ集めてある」
フィニチア・ロウは機体の特徴を分析する。
「ガンダムじゃねぇが、敵であることに変わりはねぇ」
デイノ・バートンがグリップを握る手に力を入れる。
「行くぜ!!ガンダムキラーァ!!!」
「作戦はフィニチアに一任する」
「了解した、コメットフォーメーションだ…!」
ベテルギウスとプロキオンが、特徴的な格闘武装で相手の動きを封じ、その後ろからシリウスが豊富な射撃武装で逃げ場の無い弾幕を張り、確実にしとめる。ハイリスクハイリターンではあるが、この3人の団結力と信頼度は、そのリスクを超えていた。
「システム開放、レベルフリー」
ヒイロが手元のパネルを操作し、コードを入力していく。
「人命尊重及びパイロット保護の思考を破棄、敵機破壊を最優先」
リーオーのカメラアイが強く発光する。
「アンリミテッドシステム起動」
システム起動直後に、ベテルギウスのナックルがリーオーを捉える。
が、それは手応えなく振り切る。
「速い…!!」
デイノが必死にリーオーを探す。
しかし、その機動力は機体の追尾システムを遥かに上回っていた。
「どけ!!弾幕を張る!!」
シリウスの火器が火を噴く。
「コイツゥ!!!」
プロキオンは一瞬捉えた機影に目掛け、踵を振り下ろす。
どの攻撃も、リーオーに当たることはなかった。
ガンダムキラーの連携は、デュオ・トロワ戦とは比べられないほどに完璧であった。しかし、ヒイロの駆るリーオー単機に、圧倒的に押されていた。
「作戦変更だ!ウィンタートライアングルフォーメーション!!」
前線2:援護1のコメットフォーメーションを崩し、それぞれが均等な位置関係になるようなフォーメーションをとる。
これは、各機の実力を最大限に活かした戦いが可能なフォーメーションで、どの方向から来ても、単機で対処し、他の2機がその距離から援護する、汎用性の高い戦略である。
それでも、ヒイロの実力には届かない。
「悪いが相手にならないな」
余裕な宣言が、3人に届く。
その声が、3人の聞いた最後の音だった。
刹那の出来事。正三角形の中央を一筋の白い閃光が走り、3機は爆発した。
ガンダムキラーの爆風は、マゼラスやミルキーウェイとは違う輝きを放っていた。装甲に使用されているネオ・チタニウム合金が、ガンダムキラーの特異な燃料成分に反応して生じる光と考えられる。

サユイラが、特異な光を放つ爆発を、特異な光を放つベールで囲まれた空間で確認した直後、トールギスゼロの動きが一瞬鈍くなった。
その隙を狙い、ブレイムを振り下ろし、左肩の盾を斬り落とす。
(くっ……何故だ…何故上手く動かぬ…!)
ヒイロ(サユイラと交戦中のヒイロ・ユイ)は手足に違和感を覚える。
(私の意識端末が…削られている!?)
その違和感の原因に気づき、表情を歪める。
サユイラの覚醒により、ゼロシステムへの干渉が可能になり、ゼロシステムであるヒイロ・ユイの意識端末に直接干渉していたのだ。
「なるほど…私の意識に干渉しているのか……面白いッ!!!」
ウィンクラフトの覚醒はゼロシステムへの干渉を可能にするが、既に独特の進化を遂げているヒイロの意識への無線干渉は難しかった。
サユイラは接触回線で干渉しているため、できるだけ接触できる機会を増やしたかった。
「貴様の負けだ!ヒイロ!!」
エピオンXが斬り込む。
「強者は必ず勝者となる!!」
トールギスゼロのエクスキャリバーがエピオンXのブレイムを受け止める。
そのまま、エピオンXは殴りかかり、トールギスゼロはそれを受け止める。
高濃度のナノ・ディフェンサーの共鳴で、接触部分が強く発光する。
「仮に貴様が強者だとしても、強者全てが強者ではない!!」
サユイラの強い言葉と共に、ヒイロの意識へ干渉する。
「…ぐッ」
ヒイロはエピオンXから離れようとするが、エピオンXの拳を受け止めた手が掴まれて逃げられない。
「貴様のようなくだらん理想論を振りかざすゴミ共がいるから!!星々は汚れていくのだ!!」
「もう少しそのゴミ共が創る未来を信じてみろ!」
「信じていたさ!その結果、私はこの行動に出た!!」
互いのナノ・ディフェンサーの濃度が上がっていく。
「だが人間の可能性は見えたはずだ!!」
「あぁ、しかし、新しい時代を作るのは人間ではない!!」
互いが互いの力に弾き飛ばされる。
すぐさま両機は体勢を立て直す。
エピオンXは、背中から散布するナノ・ディフェンサーの量を最大にし、ブレイムを正面に突き出す構えをとった。
「どこまでいい加減で身勝手なのだ!貴様は!!」
それに答えるように、トールギスゼロもエピオンXと同じ構えをとった。
「少なくとも、人間よりかはまともだよ!!!」
2機は同時に動き出す。
その2つの軌跡はオーロラのように美しく、戦いの跡ということを忘れさせるような光を放ちながらぶつかっていく。
その一瞬の接触で、ヒイロの意識とサユイラの意識が干渉しあう。
が、先に朽ちたのはヒイロの方だった。
ヒイロの中で何かが砕けた。
「ぐあああぁぁあぁあああぁぁあぁぁぁ!!!!!!」
目の色が抜け、ヒイロの身体、生態端末が停止した。
しかし、意識端末は辛うじて生きているようだ。
(生態端末ダウン…戦闘継続不能……仕方あるまい、アレを使うか)
ヒイロの意識が回線を通じて、BF基地のデータに流れ込む。
(この私が躊躇した事をやらせるとはな…ウィンクラフト!!!)

「ヒイロ・ユイの消失を確認!」
ドレッドがガンダム9機、カゲロウ有人機2機に通信を入れる。
「BFの全MSが停止しました、これは…」
「恐らく、僕たちが有人機だと思っていたMSは、実は新型のMD(モビルドール)だったってことだね」
モビルドール。無人でMSの操縦、戦闘が可能なシステム。戦争を機械で行うという、ゲームのような行動を嫌う科学者や指導者、軍の人間まで様々な人々の反対により、その運用は火星ではほとんどなくなっていた。
ドレッドが気づかないのもおかしくない。
「MD…つまり、BFは大規模な革命組織ではなく、数人が操る機械軍団だったということですか!?」
「まぁ、そう言ってもいいだろう」
ドクトルTが答えるが、その声は浮かない。
しかしそれは、W教授も老師・張も同じだった。
「やはり何かある」
老師・張が厳しい目で、現宙域に展開している回線の一覧を覗く。
異変を知らせる警告音が鳴り響いたのはその直後だった。
「L-4宙域07基地に高エネルギー体の起動を確認!!」
L-4コロニー群宙域は今回の戦場からさほど遠くない場所ではあったが、移動には少なくとも30分はかかる距離にあった。
「07基地だと!?まさか!?」
五神の頭にはひとつの恐ろしい兵器の名が浮かんでいた。
「あぁそうだろう…『カヲス』だ」
老師・張が確信した声で告げる。
自律型超級破壊爆弾カヲス。その質量はピースミリオン級宇宙戦艦に匹敵し、もし地球に落ちた場合、巻き上げられた塵が太陽光を遮り、数十年間の冬が訪れる。さらに、動力炉兼起爆炉の爆破は地球の地核にまで影響を及ぼし、星を内側から腐らせる。地球は消滅し、太陽系のバランスが崩れ、最悪の場合、太陽系全体が滅びてしまう。
「これで何もかも終わりかよ」
デュアルが不安定な呼吸の中精一杯の声を出す。
「宇宙は…味方してくれなかったんだね」
クアトロの目には涙が溜まっていた。
「まさしく、道化だな」
トリントンは冷たく、しかし何処か自分の無力さを嘆くように呟く。
「倒すべき相手を倒しても、何も変わらないというのか…!」
五神が時代の方向性を憎むように、力を込めて声にぶつける。
「俺たちの…負けだ…」
フアラは声色一つ変えず、しかし、無感情というより、絶望といった感じの声で操縦桿を手前に引いて、ウイングオメガを沈黙させる。
サユイラは指先一つ動かさずに、ただモニターを見つめていた。
その目には、希望が見えていた。
「勝手に諦めてんじゃねェよ!!!」
突如、静かになった回線にデュアルの怒鳴り声が響いた。
「最後まで戦いぬけ!そして勝つんだ!!」
トロワが珍しく声を荒げる。
「勝利を創造しろ、ウィンクラフト!!」
ピースミリオンⅡに帰艦したミシェルが、ゆっくりと話す。
「『ターンモード暁』ダウン」
サユイラのボイスコントロールでエピオンXが元の青と白に戻る。
「サユイラ…?」
唐突に作業を始めたサユイラにエルヴは疑問を込めて名前を呼ぶ。
「ピースミリオンⅡより『エピオン・ド・パック』を射出」
ピースミリオンⅡの格納庫の回線がエピオンXから、否、サユイラから一方的にコントロールされ、積んであった試作段階の戦闘機のようなものがエピオンXに向かって射出された。
「エピオンXをウイング装備に換装」
エピオンXの翼がバックパックごと剥がれ、射出された戦闘機『エピオン・ド・ウイング』が変形し、エピオンXの背中にドッキングする。
「ナノ・ディフェンサー最大濃度」
ブレイムのナノ・ディフェンサー濃度が上昇し、黄金に輝く。
「いくぞ、ウイングガンダムエピオン!!!」
ウイングエピオンの背中から、黄金の粒子と共に青白い光が噴出す。
サユイラはバーニアのリミッターを外し、操縦桿を全力で押し込んだ。
全身に想像を絶するGがかかり、内臓が圧迫される。
「うおおおぉぉ!!!!!」
「兄さん、いくらなんでも無理だ!!」
フアラが呼びかける。
「無理は承知!しかし、この行動しか人類存亡への道は無い!!!」
「そういうことじゃない!」
サユイラは予想外の返答に一瞬驚くが、すぐに冷静になる。
「俺たちは1人じゃない!!」
フアラの目は笑っていた。
高速で飛行するウイングエピオンの腕を、リラとニコラが掴む。
「俺たちで守るんだ!」
「人類の帰る場所を!」
デュオとトロワが息を合わせてウイングエピオンを放り投げる。
ウイングエピオンが加速する。
デスサイズヘヴンのクロークビットとサンドストームのフィン・ネオ・プラネイトディフェンサーが展開する。
「何もしないで地獄に行くくらいなら、最後まで抗ってやるぜ!!」
「みんなでやれば、ガンダムに不可能はない!!」
デュアルとクアトロによる最大防備で、MSの残骸だらけの宇宙を突っ切っていく。
ソウリュウは右足、グラビトンアームズは左足を、それぞれウイングエピオンの足の裏に合わせ、一気に押し出す。
「諦めていたら俺たちが造られた意味が無い!」
「最後まで望みを捨てない!!」
五神とトリントンの声と共に、ウイングエピオンはさらに加速する。
「明日を信じるんだ!!」
ウイングオメガのツインバスターライフルが残りのエネルギーを全て吐き出し、ウイングエピオンに展開されたクロークビットにぶつける。
加速には十分すぎるエネルギーだった。
「サユイラ!!」
「エルヴ!!」
サユイラとエルヴが互いを呼び合う。
「サユイラ、好きだ!だから…死なないで!!!」
エルヴの想いは、ウイングフェニックスの粒子ブースターと共にウイングエピオンに届き、紅い翼になる。
ウイングエピオンは、物理上ありえないスピードに達していた。
通常の生命体では、そのGに押しつぶされてしまうが、不思議とサユイラは耐えていた。
そのスピードで大気圏に突入する。
そして、そのまま並行移動し、カヲスと地球の間に回りこむ。
機体各部の装甲が悲鳴をあげ、コックピットには異常を知らせる警告音が騒いでいた。
それに見向きもせず、サユイラはグリップを押し込み、カヲスにブレイムを突き刺す。
「私は………」
カヲスの自動防衛システムが抗戦してくるが、フィン・ネオ・プラネイトディフェンサーが全て弾き返す。
「私は………」
カヲスの大気圏突入用シールドが砕け、高熱で燃え尽きる。
「私は………!」
シールドを突破し、幾多もの装甲を貫いていく。
「私は死なない!!!」
ついに動力炉を貫き、カヲスは大爆発を起こす。
その閃光は禍々しく宇宙を包む。

その後の数十秒がとても長く感じられた。
カヲスの爆破によってレーダーが完全に使用不可になり、状況を確認する手段はモニターでの映像だけだった。
通信もとれず、各々のコックピットは静まり返っていた。
漆黒の宇宙で、孤独と不安を抱くには十分すぎる条件だった。
いまだにサユイラ駆るウイングエピオンの姿は見えない。
全員が爆発の光を見つめていた。
その時、青く輝く地球を背後に、こちらに飛んでくる鳥の影が見えた。
「来た!!」
エルヴが確信と喜びで声をあげる。
その鳥、ウイングエピオンのバード形態は、各部に痛々しい損傷があり、いつ爆発してもおかしくないような状態だった。
しかし、それでもウイングエピオンは崇高で可憐で勇ましかった。

MC0037年。
混沌の7年間は幕を閉じ、再び平和が戻ってきた。
ブラックファングの支配によって解体されたプリベンターも再結成され、地球圏の反乱分子のMSはプリベンターの情報上では全て破壊された。
もちろん、ウィンクラフトのガンダムや、ニコラ、リラ、そしてカゲロウの兵器も。
ドクトルT、W教授、デュオ・マックスウェル、トロワ・フォボス、ヒイロ・ユイは行方をくらまし、生き残ったカゲロウの2人はプリベンターと共に歴史を裏から支えることにした。
ウィンクラフト兄弟は、地球・火星各地へと散り、歴史から姿を消した。
しかし、自らを兵器であると認識していた彼らがこのあと行き続けているかは、彼ら以外誰にも分からない。
否、エルヴは、サユイラの側にい続けたであろう。
彼らはきっと、どこかで生きている。
兵器としてではなく人間として、各々の幸せを掴んでいるはずだ。

そして世界は、何も無かったかのように、新しい年を迎えていく。
 
 

 
後書き
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます
ほぼ自己満足で書いていますが、感想や指摘をいただき感謝しています
次回作はどんなになるかは未定ですが、また自己満足になるかとw
では、また会う日までノシww 
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