ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
九十三話:鬼ごっこで捕まえて
「こらー、待てー」
「わーい、逃げろー!」
「にげろー!」
「ピキー!」
修道院の、前庭にて。
私が鬼で、コドランと幼女とスラリンと一緒に。
鬼ごっこしてます。
ピエールは、
「か弱い女性の身を寄せ合う地で、無償で寝床と食事をご提供頂くとは!申し訳もござらぬ、せめて力仕事でも!」
とか言って、シスターさんたちのお手伝いに行ってしまいました。
そんなこと言われると遊ぶのも気が引ける、とか思ったら、むしろ遊んであげるように修道院のみなさんからお願いされてしまい、現在に至ります。
マリアさんはマリアさんで、報告やらなんやらしてるようです。
残るヘンリーはというと。
「コドラン、捕まえたー」
「えへへー、捕まったー!」
私に捕まって、嬉しそうに擦り寄ってくるコドラン。
当然、鎧は着てません。
スラリンも可愛いけど、何気にクールだからなあ。
こうやって、思いっきり甘えてくれるのもいいなあ。
うん、やっぱコドランも、可愛い!
と、笑顔でコドランを抱き締めていると。
「……おい。わざと捕まってんじゃねえ」
「な、なんだよー!変な言いがかりは、やめろよー!」
ヘンリーに、取り上げられました。
コドランの首根っこを捕まえて、つまみ上げてます。
さっきからずっと、こんな感じです。
幼女が、コドランを指差して笑ってます。
「あははー!コドランくん、またつかまったー!」
「ピキー!」
「さっきからお前かドーラしか鬼になってねえだろ」
「ちゃ、ちゃんと他も追っかけてるだろ!お嬢ちゃん捕まえたら、泣いちゃうだろ!手加減だよ、手加減!」
「あははー!コドランくん、おこられてるー!」
「ピキー!」
「ならスラリンでもいいだろ」
「い、いいだろ、別にー!ドーラちゃんだってー!」
「あははー!いいわけだー!」
「ピキー!」
幼女もスラリンも笑ってるし、これはこれでまあいいんですけど。
これだけであんまり、引っ張り過ぎるのも。
「ちょっと、ヘンリー。もういいでしょ。私とコドランばっかりって言うなら、次はヘンリーが鬼やってよ」
「……俺が、か」
「そーだそーだ!文句ばっか言うなら、ヘンリーもやれよ!」
「……」
無言でコドランを離すヘンリー。
「じゃ、いいね?次は、ヘンリーが鬼ね!」
「……わかった」
ヘンリーの了承を受けて、早速逃げ出す子供と小動物たち。
「わーい!おにいちゃんが、おにだー!」
「やーい!捕まえてみろー!」
「ピキー!」
よし、私も逃げるか。
「うふふー、捕まえてごらんなさいー」
別に対ヘンリー特殊仕様ではありません。
私もずっと、こんな感じです。
私が適当に逃げ出したのに合わせて、ヘンリーも適当に小動物その他を追いかけ始めます。
なんだかんだで付き合いがいいというか、面倒見がいいというか。
そんな感じでしばらくは、適度に幼女その他を追い詰めては取り逃がし、場を盛り上げてくれていたわけですが。
「……うふふふふー!捕まえて、ごらんなさい!……できるもんならな!」
「……」
いつの間にか私だけ、本気で追いかけられてるんですが。
適当に捕まってしまえばいいものを、あまりに本気度が高いので。
私もついつい、本気で逃げてしまい。
「あははははー!おうじさま、がんばってー!」
ちょっと疲れて休んでた幼女が、大喜びしてます。
確認ですが、この場合の王子様とは私のことです。
ヘンリーの身分は、知らせてません。
私だってそんなもの、名乗って無いが。
「え?ヘンリー、なに本気になってんの?なにやってんの?」
「ピキー!」
コドランが呆れ、スラリンが応援してくれてます。
ありがとう、スラリン!
私、頑張るよ!
全速力で逃げ回る私を、これも全速力で追い回すヘンリー。
速さで言えばまだまだ私のほうが速いですが、なにしろ範囲が限定されてるので!
いつまで経っても逃げ切ることにはならないというか、もしかしてヘンリーのスタミナが切れるか私が捕まるまで続くの、これ?
「ちょ……ヘンリー!いつまで、やる気!?」
「……捕まえる、までだろ!鬼ごっこ、なんだから!」
「こんなの、鬼ごっこじゃ、ないし!」
言いながらも妥協せず、逃げる私に追うヘンリー。
と、ある程度パターン化されてきたルートをまた駆け抜けようとした私に、急に方向転換したヘンリーがタックルをかけてきます。
しまった、罠か!!
完全に通れるつもりだったので避ける動作に入る間も無く、敢えなくタックルを受けて倒れる私。
ホントなんだコレ。
鬼ごっこなのか、これは。
「……くっ……負けた……!!」
柔らかい草の上に仰向けに倒れた状態で、天を仰ぐ私。
悔しいが、完全にヤツの術中に嵌まってしまった。
捕まったことだし、これは負けを認めざるを得まい。
「……あー、疲れた。……ヘンリー、なんなのこれ。なにが、したかったの……」
「……」
私にタックルした状態のまま、無言で同じように倒れ伏すヘンリー。
……ていうか腰に抱き付かれて、押し倒されたような状態になってるんですが。
腹の上に、ヘンリーの顔が乗ってるし。
遮るものがあって、見下ろしても見えないが。
「……あの。この体勢は、問題が」
「……逃げるから。捕まえた、だけだ」
「そりゃ、逃げるよ。鬼ごっこだし、あれだけ追いかけられたら。それより、離して」
「嫌だ」
この体勢で、人前で甘えられても困るんですけど。
倒れたまま動かない私たちに、幼女その他が近寄ってきます。
「おうじさまー?おにいちゃんー?どうしたのー?」
「おい、ヘンリー!ドーラちゃんの上で寝るなよ!ピエールに言うぞ!」
「ピキー?」
不思議そうな幼女に既に仲間関係を把握してるコドラン、心配してくれるスラリン。
「大丈夫だよ、スラリン。ありがとう。ヘンリー、もう起きようよ。暗くなってきたし、もう戻ろう」
「そうだぞー。起きろよー。離れろよー」
「もうすぐ、ごはんだよー。いかないと、おかあさんにおこられるんだよー」
「ピキー」
小動物その他の促しに、渋々起き上がるヘンリー。
もはや、どっちが子供かわからない。
重さと拘束から解放されて、私も起き上がったところで。
「ドーラ様、皆も。食事の用意が整ってござります。参りましょう」
ピエールが、呼びに現れました。
危ないところだった。
見られたら、また余計な揉め事が起こるところだった。
コドランが言うかもしれないが、後で告げ口とかしそうな感じでも無いし。
言いたくて言うなら、それはそれで。
口止めしてまで隠すようなことでも無いだろう。
ということで、汚れたままというのもなんなので全員にキレイキレイしてからみんなで食堂に向かい、仲良く夕食を取って。
よく遊んで疲れきった幼女は夕食が終わるとその場でうとうとし始めたので、ベッドに運んであげて。
修道院の客室で、休む準備に入ります。
コドランもスラリンも、疲れてすぐに眠ってしまいました。
お風呂は無いけど寝間着に着替えはするので、ヘンリーとピエールには一旦部屋から出てもらって、着替えを済ませて。
「私も出てたほうがいい?」
「いいよ、別に。見たけりゃ見ても」
「……後ろ向いてるから」
全裸になるというわけでも無いし、別に見ても問題無いような気もするが。
そんな言い方をされると、痴女みたいじゃないか、私が。
ヘンリーの着替えも終わって振り返ると、ヘンリーがまた何か言いたげにこちらを見てました。
「……なに?」
「……いや。別に」
「そう」
ピエールもいるしなあ。
なにかあっても、言いにくいかもなあ。
明日一日で上手く事が運べば、今夜が最後の夜になるわけだけど。
「明日。頑張ろうね。……もう、寝るね?」
「……ああ。おやすみ、ドーラ」
「おやすみ、ヘンリー。ピエールも、おやすみ」
「は。おやすみなさいませ、ドーラ様」
改まって話なんかしたら、妙なボロを出すかもしれないし。
言いたいことが無いかは、昨日のうちに聞いといたし!
ルートの回避にさえ成功すれば、別にまた会えるんだから!
今夜は、こんなもんでいいだろう!
とにかく、明日!
ヘンリーの幸せのために私が出来ることを、頑張ろう!
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