ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
九十二話:試練を越えて
見えない床の真ん中に空いた穴に落ちたマリアさんを落下中に辛うじて捕まえて、仲間の叫びを聞き流しながらマリアさんを抱え直して着地の体勢に入って。
「……!!」
結構な負荷が足と腕にかかりましたが、なんとかマリアさんを横抱きにした状態で、下の階に着地することに成功しました。
マリアさんが、取り乱して叫びます。
「……ドーラさん!!大丈夫ですか!?申し訳ありません、私が不注意だったばかりに」
「いいんです。マリアさんのお蔭で、先に進める目処が立ったのですから。私なら大丈夫ですから、気にしないで」
マリアさんを降ろしながら、微笑んで言いますが。
……足を捻った。
無理な体勢で庇って着地したから、腕も結構痛い。
心配させずに治したいが、どうしたものか。
とか考えてると、ヘンリーにピエール、コドランにスラリンが次々と飛び降りてきました。
「ドーラ!!大丈夫か!?」
「ドーラ様!!なんという、無茶をなさるのか!!」
「ドーラちゃんもマリアちゃんも、大丈夫かー!?」
「ピキー!!」
コドランとスラリンはちゃんとマリアさんも気遣ってくれたが、ヘンリーとピエールは。
ちょっと、考えろ。
「大丈夫。コドラン、マリアさんを頼んでいい?慰めてあげて」
「りょーかい!まかせて!」
「スラリンも、二人についててあげて」
「ピキー!」
お気遣いのできる二匹にマリアさんを任せて、少し三人から離れようと歩き出すと。
「おい。平気そうに歩くなよ。痛むんだろ」
ヘンリーに抱き上げられました。
「……あんまり、大きい声で言わないでよ。平気だから。歩けるし」
「ウソ吐くな。平気なわけ無いだろ、あれが」
うん、まあ、バレるよね。
壊れ物を扱うようにしてくれたからそれほど痛まなかったけど、抱き上げられた時にちょっと顔顰めちゃったしね。
「拙者がついておりながら、ドーラ様にあのような無茶をさせてしまうとは……。面目次第もありませぬ……」
こっちに着いてきたピエールが、落ち込んでますが。
「ピエールは悪くないよ。気付くのが遅れたのも勝手に動いたのも、私が悪い」
本当は知ってたわけだからね、私は。
あんなことをうっかり忘れて、マリアさんを先に行かせてしまうとは。
先に気付いてれば、多少不自然でも自分で先に行ったのに。
マリアさんにもピエールにも負い目を感じさせてしまって、本当に申し訳ない。
「……くそっ。先に気付いてれば……」
ヘンリーも、同じことを考えてるようです。
「本当に大丈夫だから。少しは痛いけど、すぐ治せるし。ヘンリーも、あんまり気にしないで」
「……」
ある程度離れたところで、無言のままヘンリーが私をそっと床に降ろし、私が動こうとする前に袖を捲り上げたり靴を脱がせたりして患部の確認を始めます。
「ちょ、ヘンリー。自分でできるって」
「動くと痛むだろ。いいから、じっとしてろ」
そこまで大袈裟にする話じゃないと思うんだけど。多少は痛いが、動けるし。
更に、患部を触って確認されます。
「あの、ちょっと」
「痛いか?」
「痛いは痛いけど、そうじゃなくて」
「骨は大丈夫みたいだな。ピエール、頼む」
「承知した。ドーラ様、失礼」
「や、だから自分で」
ヘンリーに念入りに確認され、ピエールに回復されて。
「治ったか。……もう、痛まないか?」
「痛くないから!そんな、また触って確認とかしなくても!」
「そうか。良かった」
「自分で履くから!いいって、やらなくて!治ったんだから!」
「……ヘンリー殿。……少々、度が過ぎるのでは?」
やたらベタベタしてくるヘンリーをピエールが窘めて止めてくれ、やっと服を整えたところで。
「ドーラ。……頼むから、あんな無茶はしないでくれ。俺も、もっと気を付けるから。それでも必要なら、俺がやるから」
また、抱き締められました。
って、今、窘められたところじゃないのか!
いいんですか、ピエールさん!?
「……」
ひとまず、見逃す構えのようです。
あれですか、無茶をした罰とか、そんな感じですか。私に対する。羞恥プレイ的な。
仕方がないので保護者の介入は諦めて、普通に応対します。
「……必要が無ければ、しないよ。必要でも、ヘンリーが代わりなんかしなくていいんだよ。私も、できるだけは気を付けるから。大丈夫」
マリアさんだって、放っておいても死ぬほどのことは無かったかもしれないけど。
それでも、放っておけば私よりも酷い怪我をしただろうから。
約束通りに私たちが守るのは当たり前だし、それを私たちの誰かが、私が、やっただけなんだから。
さっきの状況で対処できたのが私だけだったという、それだけの話なんだから。
私だって命に別状があるような話でも無かったんだから、そんなに気にしなくてもいいのに。
「……わかった」
わかって頂けましたか。
なら、離して
「お前に言っても、仕方無かったな。言うんじゃなく、やらないと」
「……ヘンリー?」
なんだか、不穏な空気が。
「よし、わかった。行くか」
「…………うん、行こうか」
どんな理解がなされたのか気になるが、理解したくない気持ちのほうが強いです。
……大丈夫!あと少しのことなんだから、何がどうでも!!
話が済んだところでピエールの視線の圧力が強まってヘンリーが渋々私を離し、マリアさんたちのところに戻ります。
コドランが上手くフォローしてくれたのか、マリアさんの様子もだいぶ落ち着いて、表情も明るいです。
「あ、ドーラさん!もう、よろしいんですね?本当に申し訳ありませんでした、ヘンリーさんとピエールさんにも」
「いや。俺たちの、配慮が足りなかった。何があるかわからないのに、マリアさんを先に行かせるべきじゃ無かった」
「左様。マリア殿の進言を受け、拙者らが対処すべきであったところ。思い至らず、危険に晒してしまい申し訳ござらぬ」
「な?大丈夫だったろ、マリアちゃん!ヘンリーは役得もあったしな!」
「ええ。ありがとうございます、コドランさん」
微笑み合う、マリアさんとコドラン。
うーん、コドランもなかなか出来る子ですね!
スラリンも喋れたら良かったのかもしれないが実際無理だし、ヘンリーとピエールは私を優先しすぎるし!
成り行きで連れてきたが、なかなか得難い仲間を得たかもしれない。
お気遣いが女性限定ではありそうだが。
「それじゃ、行きましょうか。穴が空いてるのはわかったし、次こそ気を付けて、鏡を手に入れましょう!」
階段を登って最上階に戻り、見えない床を進もうとしたら全力で止められて、ヘンリーが一人で進んでラーの鏡を回収し、リレミトで塔から脱出します。
まだ日は高いし、幼女との約束が無ければこのまま城に戻っても、時間的にはなんとかなりそうなところですが。
二つもダンジョン攻略して少々疲れたし、王兄妃にはならなそうなマリアさんに将来の啓蒙活動への布石として、せめて王様への繋ぎを付けといてあげたいし。
疲れたマリアさんを引っ張り回すのも良くないので、一旦修道院に戻る予定にしておいたのは、丁度良かったかもしれない。
ということで、幼女との約束を果たすためと休息を取るために、迷い無く修道院に向かいます。
コドランとの約束もあるし、少しの間だけ、難しい話は忘れて!
童心に帰って、思いっきり遊ぶとしますか!
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