IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年
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第12話
前書き
え~、まず謝罪を。
更新が大幅に遅れて申し訳ありませんでした!
ここ二週間、テストやら入試やら色々ありまして執筆が疎かになりまして、更新できませんでした。
これからはいつものペースで出来るはずです。最悪、一週間に一話は更新します。
あと、今回、久しぶりな割に話短いです。すいません。
では、どうぞ。
「うわあああああああああああ!!!」
突如、部屋の中で叫び声が聞こえた。何事かと俊吾は目を覚ますと、ここ二週間お馴染みの光景が広がっていた。
「ラ、ラウラ!だから何でここに来てるんだ!!!」
「なに、嫁を起こすのは夫の勤めだろう」
「だから何で俺が嫁なんだよ!!!」
「…………はぁ」
学年別トーナメントが終わって早二週間。シャルロットが女とバレてしまったので、俊吾は必然的に一夏と相部屋になる。それ自体に問題はない。問題はないのだ。だが、問題があった。
何か知らんが一夏はラウラを落としたらしい。それで、ラウラが毎朝のように部屋に入ってきて一夏の叫び声で目が覚めるのだ。全くもって迷惑でしかない。
「俊吾からも何か言ってやってくれよ!」
おい、何でここで俺に振るんだ。
「まぁ…………ボーデヴィッヒさんが満足してるならそれでいいんじゃないかな」
途中でボーデヴィッヒさんから強い視線を感じ、本来言おうとしていたこととは反対のことを言った。だって仕方ないよね。あの人、軍隊持込みの体術使うんだもの。仕方ないよね。
「ふふん、俊吾もこう言っているのだ。問題ないだろう」
どこかラウラは得意げに言う。
ボーデヴィッヒさんは俺のことを俊吾と呼ぶ。最初からそんな風に言われてるから別に何とも思わない。というか、何も文句が言えない。
「それと俊吾。私のことはラウラと呼べと言っているだろう」
そして、こういう風に名前で呼ぶように言ってくる。
「分かったよ、ラウラさん…………じゃ、俺は部屋出るから」
俊吾は上着を羽織って部屋を出る。出るときに一夏から何か言われた気がするが、気にしない。あれほど面倒なことに巻き込まれに行くほど、俊吾に余裕はない。
「はぁ…………まだ早いけど、朝飯食いに行くか……」
部屋から出たものの、何もやることがないので朝食を食べに食堂に向かった。
というか、あの目覚ましは正直言っていらない……。一夏が起きるよりも先に起きて散歩でもしようかな……。
◇ ◆ ◇ ◆
「ふぁああああ…………」
「俊吾、寝不足なの?」
食堂に行ったとき偶然会ったシャルロットと朝食を食べ、そのまま一緒に学校に行く約束をして今一緒に登校している。
「まぁ、寝不足っちゃ寝不足なのかな……」
「?どう言う意味?」
その質問に答えようとすると、後ろから声が聞こえた。
「箒、朝のは誤解だって。ラウラとは何もないんだよ。だからその木刀しまってくれ。シャレにならないから」
後ろから一夏、箒、セシリア、ラウラが歩いてきていた。鈴は用事があるから今日は早めに学校に向かったらしい。
「あはは…………何となく分かっちゃったな」
「察しがよくて助かるよ……」
今の一夏のセリフを聞いただけで分かるとか……。マジで助かるわ。
「僕からもラウラには言ってるんだけどね……」
「まぁ、仕方ないよ。あれは」
「あはははは……」
どこか困ったように笑うシャルロット。俊吾の一言で分かってしまうからそんな笑いになるのだろう。
もういっそ早起きして、ジョギングでもいしようかな。この学校結構広いし、一周するだけでもいい運動になるだろ、うん。
自分の安眠のためにそう決意する俊吾だった。
その後、何事もなく教室についた俊吾。自分の席に座ってゆっくりしていると、教室内が少し浮き足立っている。どうしたんだろうと思い、近づいてきたシャルロットに聞くことにした。
「なぁ、シャル。何かみんな浮き足立ってるけど何かあるのか?」
この感じは学年別トーナメントの時と一緒な気がする。何であそこまでみんなやる気になっていたのか分からないけど。
「え、俊吾。知らないの?」
「知らないって何が?」
知らないのと言われても知らないものは知らない。
「俊吾のことだから行事とかは把握してると思ったんだけどな……」
行事…………?はて、何かあったっけ?
「え~とね、再来週に臨海学校があるんだ。だからみんな楽しみなんだろうね」
「臨海学校…………あぁ、そんなのあったな」
「そんなのって…………何だか俊吾って変なとこ抜けてるよね」
クスッと笑いながらシャルロットはそう言う。どこかバツの悪そうな顔をした。
「その様子だと俊吾、水着とかもどうするか決めてないよね?」
「まぁ、用意してないな。けど、別に泳がないから別にいいかな」
「え~、折角海行くのに泳がないのは勿体無いよ」
どうせみんな泳ぐだろうし、俺は避難しようかな。みんなって女しかいないし。まぁ、ギリギリ一夏がいるけど、あれは除外だ。どうせ、一夏ヒロインズと一緒にいるだろうし。つか、女子しかいないビーチほど恐ろしいものはないだろ。最近、寒気はしないけど、やっぱり苦手意識はあるし。
「じゃあ、俊吾。今週の週末、買い物に付き合ってよ」
「買い物?……別にいいけど」
「じゃあ、土曜日の午前の授業終わったら校門で待ち合わせね」
シャルロットがそう言うと、千冬が教室に入ってきた。みんな、席について一日が始まった。
◇ ◆ ◇ ◆
「全く…………俊吾さんには驚かされますね」
ふと、セシリアがそう漏らした。今は練習を既に終わり、みんなで寮に向かっている。一体どういう意味なんだ?と思っていると
「あ~、それは確かにね」
「ホントにね、こいつは」
「ふむ、それは私も思っていた」
専用機組が皆同じことを言った。一夏と箒は俊吾と一緒で『?』を出していた。
「俊吾って自分を卑下にするけど、正直それが悔しくなったりするよね」
「そうね。ここ二週間くらいはそれが多くなったし」
「そうなのか?私は二週間しかやっていないが、何度も目を疑ったものだ」
「その二週間が驚きが多かったですわ。まぁ、最初から驚くことも多かったですが……」
皆、好き勝手なことを言い合っていた。そして、その皆の言葉を聞いて『ああ、確かに』みたいな顔になって会話に参加していた。だが、みんな結構ボロクソに言っているが共通しているのは褒めていることだ。褒めた後に自分の不満を言ったりなど中々酷いことを言ってたりする。本人のいる前で言うか、普通?と俊吾は思っていた。
…………正直、みんなには悪いけど、みんなの動きは遅いし楽に反応できるんだよな。上限超えラファールとアルメルと戦ってからそう思うようになった。動きが全然違う。アルメルは正直動きについていくのがやっとだし、ラファールだってハイパーセンサーが使えないってのを抜きにしても中々の手練だった。それと比べてしまうと、どうしても何とも……。簡単に攻撃はよけられるし、驚かされることもない。と言うか、よくあの人たちに勝てたよな、俺……。
ここ二週間の俊吾の戦績は27戦25勝2敗と代表候補生に対し、素晴らしい成績を残していたりする。ちなみに、2敗した理由はどちらも今の部屋に移動したせいでの寝不足が原因だったりする。おそらく、体調が万全なら一年の代表候補生に負けることはないだろう。ほぼ死と隣り合わせの戦いの中を体験して進化した俊吾。だれもその戦いを知らず、誰にも知られることもなく消えていくその戦い。それを俊吾は思い出し、心にしまった。
「なぁ、俊吾」
「ん?どうした、一夏」
「みんなと話してたんだけど、何か特訓でもしてたんじゃないのかって話してたんだけど、どうなんだ?」
いつの間にか、みんなからの視線が集まっていた。俊吾の技術の進歩が気になるのだろう。
「まぁ、特訓はしたな。秘密の特訓をな」
「どんなのやったんだ?」
「どんなのって……言ったら秘密の特訓にならないだろう?」
「そんなこと言わないで教えてくれよ~」
「駄目だ。みんなに追いつかれたら特訓した意味ないだろ?」
その言葉にみんな少し笑った。俊吾も一緒になって笑った。
これでいいんだ。何だかこう言う普通の何気ない会話とかが物凄く心地よく感じる。
◇ ◆ ◇ ◆
「ん~…………どうするかな……」
俊吾は部屋で一つ考えていた。一夏はいつものメンツで夕食後話をしているようだ。今回悩んでいるのは、ISの設定である。オート設定を引き継ぐか、完全マニュアル操作にしてしまうかだ。オート設定は操作を補助してくれる機能で、銃の反動設定や高速移動時の体勢維持などをしてくれる。マニュアルになるとそれが無くなり、完全に自分で操縦することになる。
何故、このようにマニュアルが設定されているかというと、オート設定では銃の反動なら必ず銃を撃った後にそのアクションが入るので少し移動が遅れたりする。その少しが結構命取りだったりする。
基本的にこのマニュアル操作に移行するかしないかは本人の自由で、国家代表の人でもオートを使っている人もいる。人口的には半々と言ったところだ。だが、マニュアルはオートでは出来ないアクロバットな操作ができたりする。だが、あまり初心者にはお勧めできないのも事実だ。だから俊吾は迷っている。
こういう思考になったのは、やはりアルメルとの戦闘によるもので、アルメルの軌道は完全にマニュアルによるもので、マニュアルにすればあの軌道が出来るんじゃないのか、と思ってしまい迷っている。
「はぁ…………何つーか、こんなんで迷ってる自分が情けない……」
確かに触発されるのはいいことだとは思う。けど、自分が初心者ということを忘れてマニュアル操作にしようと揺れるのは違う。自分にあった状態で練習をしなければ意味がないし、効率も悪くなる。それが分かっていても、あの軌道に憧れてしまう。はぁ……どうすっかな…………。
「誰かに相談…………って言っても、誰にしようか……」
取り敢えず、一夏は除外。箒さんもそこまでISに詳しいというわけでもないので除外。残るは代表候補生組。出来れば遠距離を主体とする人に相談したいから、鈴さんは除外。鈴さんは龍砲があるけど、結局のところ鈴さんはパワーファイターなんだよな。簪はどちらかというと、現代兵器というかミサイル系統が専門なので除外。残るはセシリアさんかシャル。戦い方が似ているシャルの方が良いのかな。そうと決まれば、電話してみるか……。
携帯を取り出して、電話を掛けようとするとドアがノックされた。
「どうぞ」
俊吾がそう言うと、入ってきたのは楯無だった。
「あれ、楯無さんじゃないですか。どうしたんですか?ノックして入ってくるなんて」
「失礼ね、私だってノックくらいするわよ」
「まぁ、そんなことはどうでもいいですけど、用事があるんじゃないんですか?」
「そんなことって…………まぁ、良いわ。今日の要件は別に面倒なことじゃないから楽にしてていいわよ」
楯無はそう言いながら、俊吾と同じベットに腰掛けた。俊吾は椅子に移動する。楯無は何か言いたそうな顔をしたが、諦めたのか話し始めた。
「再来週、臨海学校あるでしょ?あれ、私も行くことになったの」
「え?でも、あれ一年の行事なんじゃ……」
「臨海学校って名ばかりで、ISの新パッケージとか装備の試運転が主目的なのよ。それで私にも新しい装備が来るんだけど、それが早く結果が欲しいみたいでね。それに、海ってのが好条件だから一緒に行っちゃおうかなって申請出したらOKが出たってわけ」
「……大変ですね、色々と」
「この学校の生徒会長の宿命なのよ、これって」
どこか疲れたように楯無は言った。
「そういえば、俺にも新しい装備とか来るんですかね」
「多分、来ると思うわよ」
う~ん、どんな装備が来るんだろ……。新しい銃?新パッケージ?それともアタッチメントとかそういう系統?いっそ、新しいプログラムとか?……いや~、どれが来ても楽しそうだ。今から楽しみだな。
「そういえば、楯無さんの新装備ってどんなのですか?」
「それは機密だから言えないわ。私、ロシアの国家代表だしね」
俊吾は心の中で『ロシアの国家代表だったのか』と思った。アルメルと張り合い、尚且つ知り合いだったみたいなので、国家代表だろうは思ってはいたが、ロシアは予想外だった。
「あと、私は試験運用の時は別行動だから、よろしくね」
一体、何がよろしくなんだろうか……。変な詮索はしないでおこう。
「話ってそれだけですか?それだけなら、別に部屋に来なくても良かったんじゃないんですかね」
「用事はもう一個あるわよ。俊吾君、土曜日って空いてる?」
「土曜日ですか……土曜日は用事入ってますね」
シャルの買い物に付き合う予定が入っていた。楯無さんには悪いけど、先約を優先させてもらおう。
「用事ってシャルロットちゃんと買い物に行くんでしょ?」
「…………」
『何故それを……』という感想よりも『知ってるなら何で質問しやがった!!!』という方が大きかった。
「それで、私も一緒に買い物に行っていい?」
「……いや、それは俺じゃなくてシャルに聞いて下さいよ」
「あら、いつの間にシャル、なんて呼ぶようになったの?」
「学年別トーナメントの次の日ですよ……。ちょっと待っててください。シャルに電話するので」
「あ、あと簪ちゃんもいいかしら?」
「別にいいですけど……良いんですか?」
「うん…………そろそろ時期だと思うし」
「……了解です」
多分、一番の目的が簪と仲直りするためなんだろうな……。まぁ、その為の舞台作りくらいはしますか。それくらいしか出来ないし。
俊吾はシャルロットに電話をかける。
「あ、シャル。ちょっといいか?……土曜日なんだけど、あと二人人数増えても大丈夫か?…………誰って、楯無さんと簪だけど……あ、簪は4組の生徒で日本の代表候補生なんだけど……え、そういうことは聞いてない?……じゃあ、どういう…………あ、問題ないか?……うん、分かった。ありがとうな、シャル。……うん、おやすみ」
シャルロットとの電話を終えた俊吾は簪に電話をかける。数コールで簪は電話に出た。
「あ、簪、こんな時間に悪いな……ああ、土曜日の予定を聞きたくてな……空いてるなら、一緒に買い物に行かないか?……ああいや、二人ってわけじゃなくて、俺と同じクラスのシャルロットと一緒なんだけど……そうそう、一夏とタッグ組んでた……大丈夫そうか?……分かった、土曜日の授業が終わったら校門に集合な……じゃあ、また明日。うん、おやすみ」
電話を終え、ふぅ、と息を吐くと楯無が怪訝な目で俊吾を見ていた。
「……どうしたんですか?俺の顔に何か付いてますか?」
「べっつに~。ただ、俊吾君も罪作りな男だなって話」
「どう言う意味ですか、一体……」
「分からないならそれでいいわよ、別に」
「?」
どこか不機嫌になった楯無に、疑問を持っていると、丁度自分も相談事があることを思い出した。
「あ、楯無さん。ちょっと、俺の相談に乗ってくれませんか?」
「……つ~ん」
口でそう言うあたり、あまり怒ってはいないんだろうけど、如何せん怒っている理由が分からない。謝ったほうがいいんだろうか……。まぁ、いっか。このセリフでもダメならシャルに相談しよう。
「楯無さんにしか頼めないんですよ。お願いします」
俊吾がそう言うと、楯無は機嫌が戻ったようだった。
「……まぁ。俊吾君からの相談なんて珍しいから聞いてあげるわよ」
「ありがとうございます。え~と、相談事って言うのはISの事でして……」
そう言うと少しガッカリしたような素振りを見せる楯無。構うのも面倒だから俊吾は続ける。
「俺、今マニュアル操作に移行しようと思ってるんですけど、楯無さんの意見をくれませんか?」
「……それは今の俊吾君にマニュアル操作が早いか遅いかってことを言えばいいの?」
俊吾は頷く。楯無は俊吾の相談に真剣になってくれているようで、考えていた。
「正直、私はまだ早いかなとは思う」
やっぱりか、と思い少し気落ちする。
「けど、俊吾君の成長には目を見張るものがあるし、やってもいいんじゃないかしら」
「……え?」
「この前、私は俊吾君が勝てないと思ったって言ったの覚えてる?俊吾君が倒したって聞いて、この子は凄く成長するんじゃないかって思ったの。俊吾君はマニュアル操作の方が向いてると思うし、やってもいい……ううん、やったほうがいいと思うわ」
「…………」
「けど、決めるのは俊吾君だから私はこれ以上何も言わないわ。じゃあ、私はそろそろ部屋に戻るわ」
楯無はそう言って、ベットから立ち上がり入口に向かっていった。俊吾は見送るためにそれに付いていく。
「楯無さん……ありがとうございました」
俊吾は楯無が部屋から出たとき、そう言った。それを聞き、楯無は振り返る。
「お陰で色々と決心がつきました」
「そう……じゃあ、おやすみ」
「お休みなさい」
楯無が部屋から出ていったあと、俊吾の顔は強い決意が目に宿っていた。
やっぱり心のどこかで慢心に似た甘えがあったんだろうな……。けど、楯無さんに言われてそれに気づけた。…………正直、不安しかないし壁に何度も当たるだろうけど、俺は上を目指したい。それにどれだけの障害があろうと、俺は……上に行きたい。
◇ ◆ ◇ ◆
「ふふふ~ん♪」
女性がコンソールを操作している。操作する指はとても早く、何をしているのか常人にはわからないだろう。いや、常人でなくとも分からない。今何をしているのか分かるのは世界に一人しかいない。
「ん~、大体これでいいかな~。むっふふ~、喜んでくれるかな~」
女性の前には紅のISが鎮座している。それはどこの国にも登録されていないISのコアが使われている。
「あ、そうだ。忘れるところだった」
カタカタとキーボードを操作してディスプレイに何かが映し出された。そこにはある男が映し出されている。
「大海、俊吾…………私の期待通りなら面白いな~。まぁ、面白くなかったら消しちゃっていいよね」
後書き
え~、何か久々すぎてクダクダになりました。すいません。
そういえば、ISの二期が始まりましたね。
リアルタイム視聴して楯無さんが動くのをニヤニヤしながら見てます。早く簪出ないかなぁ。
と言うか、二期の一話に合わせて更新したかったんですがテスト前だったもので……。
誤字脱字などありましたらお知らせください。
次の更新はいつも通り、水曜日になるかと思われます。
では、次の更新で会いましょう。
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