IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年
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第11話
前書き
え~と、まず更新遅れてすいませんでした。
今回の更新は水曜の分も一緒にしようと思っています。なので次回の更新は次の土日になると思います。
では、内容について。
今回はいつもより3000文字くらい多いです。というか、最長です。これからこの長さの話を書くか分からないので最長になるかと。
では、どうぞ。
アリーナ内は騒然としていた。ラウラのISが変形したことによって、状況が一切分からない物を相手にするという教師の底知れぬ恐怖感。観客席の生徒は突然シャッターを閉められ、非常灯に変わったせいで暗くなり、しかもアリーナから出るのが難しい。そのせいで閉じ込められ、ストレスにより混乱する生徒もいた。
だが、そんな中、一夏だけはラウラに対して怒りを抱いていた。ラウラのISが粘土のようにグニャグニャと変形し、変わった姿は、第一回モンドグロッソ出場時の千冬のIS『暮桜』そのものだったのだ。その姿は千冬だけの物だ。お前がしていい姿ではないと。
だが、それと同時に疑問を抱いた。何故だか分からないが、ラウラが助けを求めているように見えるのだ。『助けてくれ……ここは寒くて寂しくて……悲しい……助けてくれ……』と。確証はないが、それがラウラの心の声だと言う自信があった。それさえ分かれば、一夏はラウラを助けるだけだ。一夏が一歩前に出る。
「一夏!?何してるの!危ないよ!」
そういったのはシャルルだった。だが、一夏はシャルルに言った。
「あいつは助けを求めてる。だから、あいつ……ラウラを助けてくるだけだよ」
そう言う一夏の表情は自信に満ちていた。俺なら出来ると。俺しかできないと。それが分かると、シャルルは何も言わない。いや、言えなくなった。
「……分かったよ。でも、約束だよ。絶対、助けて戻ってきてね」
「分かった」
一夏はISを展開して、ラウラの前に行った。周りの教師は何事かと思ったが、状況が状況だけに手が出せない。
「ラウラ……お前は何のために戦ってるんだ?」
一夏は問いかける。だが、何も返答はない。
「ラウラ……お前は凄いな。尊敬するよ。ただ、千冬姉だけを追い求めて、それだけ強くなれるなんて」
「……ケテ」
何か微かだが声が聞こえた。
「タスケテ……」
「……ああ、分かったよ。今助けてやる」
一夏は雪片をコールして、ラウラと対峙する。すると、ラウラも構える。先に仕掛けたのは、ラウラだった。剣を振り下ろし、一夏を狙う。一夏はそれをスッと横に移動し、剣を切り上げた。ラウラの周りに付いているゼリー状のものだけを切る。すると、中からラウラが出てくる。それを一夏は抱き止める。
遠くから、シャルルはその様子をみて安心していた。
……良かった。二人共問題なさそう。……けど、俊吾が来なかったな。こういう時はいち早く駆けつけそうな気がするのに……。何かあったのかな。
そう思い、俊吾を心配するシャルル。だが、その後ろに影が迫っていることに気付かなかった。
◇ ◆ ◇ ◆
同時刻、俊吾は配置の西の森に着いていた。森の様子を目で見るが、特に問題はなさそうである。だが、何があるか分からないので、体を緊張させる。
『俊吾くん、聞こえる?』
ISのコアネットワークを繋いで、楯無が話しかけてきた。
「はい、聞こえます」
『もう森についてると思うけど、有力な筋から連絡があって敵の総数が分かったから教えるわ。そっちの西の森にISが2機、こっちが3機で総数ISは5機。歩兵もいるとは思うけどこっちはわからないから気をつけて』
「了解です。楯無さん、気をつけて」
『私は大丈夫よ。俊吾くんこそ、気をつけてね?』
「分かりました。じゃあ、通信終了します」
『分かったわ。何かあったら、通信してね』
そう言って、楯無は通信を切った。
「さて、早く決めないと面倒になりそうだな……」
現在時刻は、四時を回り夕暮れになっている。今は五月の中旬で日がかなり伸びてきているのだが、まだ日は短い。早く敵を排除しなければ、暗闇での戦いになる。だが、ハイパーセンサーがあるので問題はないだろう。それでも、できる限り暗闇になる前には倒したい。そう思い、俊吾はISを展開して森に突っ込んだ。
「……敵がいない?」
そんなことはないはずなのだが、敵が見つからない。ハイパーセンサーを駆使しているのにだ。その時
―――バン!
銃声がした。そして、シールドエネルギーを確認すると、減少している。今の銃声は俊吾に向けられたもの言うわけだ。俊吾は瞬時に周りを索敵する。すると、さっきは気づかなかったが、西方面五十メートル先の木の影にリヴァイブが見えた。俊吾はスナイパーライフルをコール。リヴァイブに向けて五発放つ。弾は全弾命中し、木の影からリヴァイブが飛び出してくる。
そこをサブマシンガンに切り替えて、攻撃を継続。相手も攻撃してくるが、木を盾にして俊吾は防ぐ。銃声が止み、サブマシンガンをリロードする。そこで、一つ気付いた。
……あと一人はどこだ?
楯無の話によると、ISは2機いるはずだ。だが、今応戦しているのは1機だけ。ということは、もう1機がどこかに隠れているというのことなのか。それとも、楯無の情報に不備があったのか。……今は考えても分からない。
「……いいや、とりあえず、あの1機を落とそう」
俊吾は今相手している1機に集中することにした。リヴァイブは先程と同じ位置におり、狙うのには格好の場所である。俊吾はダガーナイフをコールし、リヴァイブが隠れている木の隣の木にナイフを投げた。すると、リヴァイブは驚いて、木の影から出てくる。そこを俊吾は、サブマシンガンで攻撃する。相手はさらに焦り、体勢を崩す。そこを狙い、俊吾はグレネードランチャーをコールし弾を撃ち込む。
ここで1機を落とせると思ったとき、後頭部から強い衝撃を受ける。あまりに強い衝撃で意識が飛んだが、ISが無理矢理意識を戻す。何が起こったか分からなかったが、考えるよりも先に体が後ろにグレネードランチャーを撃つ。爆風に巻き込まれるが、その煙のお陰で状況を理解でき、瞬時に後ろに飛ぶ。だが、後ろにはりヴァイブがいることを思い出し、左に飛ぶ。距離を置いて、今の状況を完全に理解する。
「……ああくそ!やっぱり2機いたのか!!!」
さっきの後頭部への衝撃はもう1機のリヴァイブからの攻撃だったのだ。攻撃は棒状の様な物を持っているようなので、それで攻撃されたのだろう。そして、2機出てきたことによって、こちらは圧倒的不利に陥る。
くそ、まだ意識がはっきりしない。どんだけ思いっきり殴ったんだよ。というか、これじゃリヴァイブの弱点が消えるな……。全く、こっちは一度に二機相手にしたことないのによ……。
俊吾の言っているリヴァイブの弱点とは『火力不足』である。実弾兵器は火力では第三世代に劣るのだ。ましてや、こう言った隠密行動では尚更だ。だが、それは1対1における状態だけである。2対1になると、今度はこちらが圧倒的に不利になる。火力不足、手数の差、そしてこの地形。俊吾はアリーナでしかISを操縦したことがない。今までは戦えたが、今後はどうなるか分からない。
敵を確認すると、何か話しているようだった。俊吾は焦り出す。周り一体が暗くなっているのである。見通しが悪くなってきている。そして、もう一つ気付いた。
ハイパーセンサーが機能していない
先程、後ろからの攻撃に気付かなったのはそのためである。おそらく、楯無が言っていたジャミング効果の一つだろう。ハイパーセンサーが使えないのはかなり不利になる。そして、さっきは気づかなかったが、相手のISは何かゴーグルの様な物をつけている。おそらく、ハイパーセンサーに変わる何かの効果を持っているのだろう。このジャミング下でも使える特殊加工されているのも確かだ。
俊吾は今の状況を整理した。
・ハイパーセンサーが使えない状況に陥り、自分の目と勘だけが頼りになる。
・既に暗くなり、あと十数分で日が落ち、ほとんど何も見えなくなる。
・2対1で、火力が不足していて、相手の装備が未知数。だがそれは、相手も同じはず。
・相手はこちらが戦闘慣れしていないから、先程まで油断していただろうが、それも無くなり手加減が消える。
・シールドエネルギーが残り500弱。
……こっちが不利な状況しかねえじゃん。でも、だからといって、ここで逃げ出すわけには行かない。ここで逃げたらシャルルが危険な目に会う。それだけは阻止しないと。最低限、こいつら2機だけは落とす。それ以降は別に動けなくなっても構わない。
俊吾は心の中で覚悟を決めた。そして、相手と対峙する。相手も話が終わり、タイミングを伺っているようだった。俊吾はさきにサブマシンガンで攻撃を仕掛け、相手に飛び込んでいった。
だが、この時俊吾は忘れていた。俊吾たちの使っているISは競技用としてシールドエネルギーを抑えられていることに。
◇ ◆ ◇ ◆
場所は変わって、IS学園北側の森。楯無はISを3機相手にしていた。だが、そこには苦戦の文字はなかった。楯無も俊吾と同じようにハイパーセンサーを封じられていた。だがそれは、ハンデにもならなかった。
楯無が操る『ミステリアス・レイディ』はナノマシンを埋め込んだ水を操り攻撃する。その水の動きは変幻自在で、敵を翻弄する。敵が水に翻弄されている間に、楯無自身が操る、蛇腹剣(ラスティー・ネイル)を使い敵を攻撃する。これが楯無の攻撃パターンである。敵も水を無視して攻撃してきたり、水をどうにかしようなど色々な方法でどうにかしようとするが、水は文字通り変幻自在なので意味をなさない。
この水は攻撃にも防御にも索敵にも使える。敵が逃げようとしても意味がなく、相手のリヴァイブは楯無の手の上で踊らされている。だが、数が3機いるので、時間が掛かった。
最後の1機を落とした頃には、五時半を回っていた。
「以外に時間が掛かったわね……俊吾くんは大丈夫かしら…………」
そう思い、俊吾のいる西の森に向かおうとする。と、その時、俊吾のいるはずの森で、どこかで見たことのあるISが近づいていることに気づいた。
「まさか……あのISは…………!」
楯無は大急ぎで西の森に向かった。だが、IS学園は広く最低でも五分は掛かるだろう。
◇ ◆ ◇ ◆
「社長、3機が落とされました。現在、劣勢になっています」
場所は変わって、デュノア社本社の社長室。秘書の女性がそう言うと、カルロスは苦虫を潰したような顔になった。
「…………くそ!何故あんなカギどもにやられているんだ!!!」
そう怒鳴って、机を拳で叩きつける。秘書はその音に驚きビクッとする。そして、カルロスは何かを考えるようにして、言った。
「……おい、あいつはどうしている?」
「今回の作戦に着いて行きましたが……。ですが、連れて行かせたのは社長の命令では?」
「そうだったな……。まぁいい。あいつを出せ」
「ですが良いんですか?今回の作戦に出さないのは問題があるからでは……」
「何を言ってるんだ、君は?」
「……え?」
カルロスは狂気的な笑みを浮かべながら言った。
「問題なんて何も起こらない。何故なら、何も起きていないからだ。分かるかね?」
「は、はい」
その言葉の意味……それは事実の隠蔽である。言い換えれば金と権力で揉み消す。そう言う表現なのだろう。
「…………どんな手を使ってでもシャルル……シャルロットを連れてこい。いたぶってやるものいい。殺すのもいい。ああ、シャルロットはあいつによく似ているから犯してやるのも良いな……」
そう言いながら笑うカルロスは、完全に悪党、又はそれ以上の何かであった。
◇ ◆ ◇ ◆
「くっそ!どうして倒せない!!!」
戦闘を開始して、はや四十分。周りはほぼ暗闇に支配されつつある。そんな状況に陥ってもなお、俊吾は攻撃を当て続ける。恐るべき対応力である。だが、未だ1機も落とせていない。
「普通なら、もうとっくに倒せてるはずなのに……。ん、普通なら…………?ああくそ、そういうことか…………!」
この時、俊吾は思い出した。ISの使用目的を。
開発初期、ISは本来宇宙空間での使用を目的とされたが、今は完全に競技用として使われている。だが、裏では軍用にも転移されていて、シールドエネルギーに使用用途によって差があるのだ。競技用は700。軍用は2000以上。ISのシールドエネルギーの上限はその国のISの開発度合いによって変わる。
このリヴァイブ2機は別に競技用でもなんでもない。まして、今回の襲撃の元手がデュノア社だ。シールドエネルギーの上限を操作することなど朝飯前だ。そして、デュノア社のシールドエネルギーの上限は2500。俊吾の3倍以上である。不利な状況が不利をさらに呼ぶという悪循環が出来ていた。
「もうそろそろ、こっちも体力的に辛いな……。こんな時、一夏みたいにワンオフ・アビリティがあればいいんだけどな……」
本来、ワンオフ・アビリティは第二形態で発動するが、たまに一夏のように第一形態でも発動するときがある。だが、ワンオフ・アビリティは発動は絶対ではない。こんな不確定要素に頼るわけには行かない。
「腹くくってラストアタックと行きますかね……」
このまま持久戦に持ち込まれたら完全にこちらの勝機はなくなる。シールドエネルギーも残り300を切った。ならば、特攻覚悟のラストアタックを仕掛けた方がマシだ。
俊吾は銃の残弾を確認する。全て銃が半分、又はそれ以下である。残弾的にも余裕は一切ない。相手のシールドエネルギーが残り少しと考え、俊吾はスナイパーライフルをコールする。スナイパーライフルの残弾は10。大切に使わなければ、直ぐに終わってしまう。
俊吾はスコープを覗く。このスコープはナイトビジョンモードがあって、暗くてもある程度見えるようになっている。スコープ越しに、相手の場所を確認する。二時方面と十一時方面に1機ずつ。挟み撃ちにでもしようとしているのだろう。俊吾は場所を頭に叩き込んで、ダガーナイフをコール。これは残り2本である。
一本ずつ、リヴァイブに投げる。近くの木に投げて、こちらが相手の場所を把握していると言うアピールをする。すると、リヴァイブは動きを止める。まずは二時方面を片付ける。そう決めスナイパーライフルで、3発撃ち込む。取り敢えず全段命中し、相手の攻撃が止まる。そこを狙い、瞬間加速を使って、その場所に特攻する。途中に、近接ブレードを右手に、サブマシンガンを左手にコールして、まず近接ブレードで連撃を決める。
相手も負けじと近接ブレードで対応してくる。その瞬間、少し距離を置いて、サブマシンガンの弾を全弾撃ち込む。
ここで決める!
俊吾はサブマシンガンを投げ捨て、近接ブレードをもう一本コールする。そして、二刀流で連撃を決める。途中、蹴りも加え、反撃を許さない。すると、相手のISが動かなくなった。
1機倒した!そう思ったのも束の間、左方向から何か影が近づいてくる。もう1機のリヴァイブである。俊吾は瞬時に、近接ブレードで防御する。だが、それは見えない相手への申し訳程度の防御で、その防御を潜り抜け相手は棒状の何かで腹を思い切り叩く。
「っぐ!」
あまりの衝撃に意識が一瞬飛びかけるが、ISが無理に意識を引き戻す。そこで俊吾も反撃を仕掛け、相手に蹴りを食らわせる。すると、相手は一度距離をとった。一瞬、安心したがそうもしてられない。シールドエネルギーが100を切ったのだ。まずい、と思いながらもそこで一つ思い出す。この状況を打破できるかもしれないことを。
俊吾は倒れているリヴァイブに近づき、操縦者が付けているゴーグルを奪った。それ越しに周りを見ると、赤外線ゴーグルで敵の場所がはっきりと分かった。先程の暗闇とは雲泥の差である。俊吾はスナイパーライフルをコール。今のマガジンに入っている二発を、リヴァイブに撃ち込む。全弾命中し、相手は木に隠れる。
その間に俊吾はライフルのリロードを行う。残弾5発。最後のマガジンである。ライフルをしまい、俊吾はショットガンをコール。残弾7で、これも最後のマガジンである。一発を相手の方向に撃つ。それでは出てこないので瞬間加速で一気に近づき、相手の前に出る。その行動は予想外だったのか、相手は驚いて一瞬動きが止まる。そこにショットガンの全弾を叩き込む。銃弾の雨を食らわせ、一回バックステップをする。
そして、グレネードランチャーをコール。残弾3発。それを全て叩き込む。これで終わったかと思われたが、まだ相手は動いている。サブマシンガンを二丁コール。残弾30ずつで計60。それを全て撃ち込む。だが、まだ動く。相手も反撃をしてきて、こちらのシールドエネルギーが削られる。50を切り、万事休すかと思われたが、俊吾はハンドガンをコール。残弾1。これで決まらなければ、他の武器をコールする暇はない。
その一発に全てを掛け、それを放つ。弾は命中し、相手も動かなくなった。
「…………終わった。やっと、終わった…………」
残りシールドエネルギー28。サブマシンガン、スナイパーライフル、ショットガン、グレネードランチャー、ハンドガン、ダガーナイフを使い切っての勝利である。この後、動かれても困るので俊吾は楯無に貰った麻酔銃、M9を二人に撃つ。これで最低二時間は起きない。二人を運んで、IS学園に預けようと思い森を抜けようとする。すると、後ろから音がする。何だと思い、そこを見ると雑誌で何度も見たISがあった。
「なっ!…………そのIS……あんたはまさか…………!」
「こんにちは、男のISパイロットの大海俊吾くん。いえ、この時間だとこんばんわになるのかしら?」
「何で…………ここに」
そこにいた人物。それはフランス国家代表『アルメル・ベルラン』であった。そしてそのIS『ラファールリヴァイヴカスタム』を纏ってそこにいた。
アルメル・ベルランは第二回モンドグロッソでベスト4に入る程の実力者。操縦技術も然ることながら、恐るべきは武器の切り替えの速さだ。シャルルのラピッド・スイッチと言う武器早替えがあるが、その比ではない。武器の切り替えの速さは0、01秒を下回る。その速さを武器に拡張領域、後付武装ともに通常のリヴァイブの5割増である。
ラファールリヴァイブカスタムは、青を主調としたデザインで、基本スペックはリヴァイブと一緒だ。だが、少しアルメルに合わせてピーキーな代物となっている。一般の操縦者が乗れば、操縦がままならぬくらいピーキーである。このISの青は操縦者であるアルメルのイメージと非常にマッチしていて、とても似合っている。その姿を最初に見たとき、俊吾は見惚れ、そして憧れた。俊吾がリヴァイブを好きになった瞬間である。
俊吾は何故ここに?と思ったが、一つ思い出す。アルメルはデュノア社と契約を結んでいるのである。カルロスの命令でここに来たのかもしれない。非常に厄介だ、と思いながらどうするか考えているとアルメルの足元に見慣れた顔があった。
「シャルル!!」
俊吾の声に反応しないことを見ると、気絶しているのか、又は眠らされているのか。それは分からないが、これで確信した。アルメルは敵だと。俊吾は戦闘態勢に入る。だが、俊吾は文字通り満身創痍である。実体ダメージはほとんどないが、シールドエネルギーが雀の涙しかない。
「あら、私と戦うの?私は別にいいけど、あなたはそれで大丈夫なの?さっきまであの二人を相手にしてたのに。シールドエネルギーもほとんどないんじゃないの?」
「っ!」
全てを見通されている。だが、そんなことは俊吾も百も承知だ。自分が完全な状態であっても勝てるわけはないだろう。
「ここで見逃してくれればそれで終わりよ。私はこの娘を社長のもとに連れて行けばそれでいいの」
「何で…………何であんたほどの人が、あんな人間に協力するんだ!」
俊吾は心からの疑問を言った。
俊吾は憧れていたのだ。アルメルと言う人間を。気高く、それでいて優雅、時には野性的で聡明なアルメルを。そんなアルメルが何故、あんな人間に協力するんだ、と疑問が出てくる。
「私はね……あの人に助けられたのよ。何にも無い私にこの子を与えてくれた」
アルメルはリヴァイブを撫でながら言った。
「私に存在意義を与えてくれたあの人に私は感謝してるの」
「……そんなの、利用するだけかもしれないじゃないか!」
「そうね……。私もそんなことは分かってるわ。それでも私はあの人に忠誠を捧げると決めた。だから」
アルメルはライフルをコールする。
「邪魔するなら、私はあなたを倒さなければならない。それがIS初心者のあなたでも」
圧倒的存在感。その体から出る闘志はとても恐ろしく、そして美しかった。
「……俺もシャルルを連れて行かせるわけにはいかない。シャルルには人並みの幸せを掴んでもらいたいんだ」
俊吾も近接ブレードを2本コールする。
「そう……私はさっきの二人みたいに甘くはないわよ?だけど、安心して。私のISのシールドエネルギーはちゃんと競技仕様だから。何だったら、私のシールドエネルギーを分けて同じ数値にする?」
その事を公言するということは、余程の余裕があるのだろう。
「別にそんなことしてもらわなくても構わない。こちらもまだまだ余裕だ」
俊吾は虚勢を張る。それが虚勢だというのは誰の目から見ても明らかで。
「そう……あと、安心して。ハイパーセンサーは使えるから」
気づかなかったが、ハイパーセンサーが機能していた。
「さて、準備は終わったことだし、そろそろ行かせてもらおうかし……ら!」
アルメルは瞬間加速を使って、俊吾に接近する。
速い!!!
どんな状況にも対応できるようにしていた。だが、アルメルの瞬間加速は予想していたものよりも上だった。
俊吾は何とか横に避けるが、アルメルの追撃は続く。俊吾の避けた方向にライフルを撃つ。俊吾はそれを避けるが、避けた先に弾を撃たれる。それも何度か避ける。が
……!弾が変わった…………!?
撃たれている途中で弾の種類が変わったのだ。ライフルからショットガンに。銃の撃つ間隔は一切変わっていない。ライフルをギリギリ避けていた俊吾だったが、広範囲のショットガンは避けきれない。そう思い、シールドを即座にコール。弾を防いだ。だが、アルメルの追撃は止まない。
シールドを使ったことで、俊吾の視界は狭くなっていた。シールドを退かすと、アルメルの姿を確認できない。
「こっちよ」
上から声がしたかと思うと、スラッグ弾が腕を掠める。俊吾は即座にその場から離脱する。
「良く避けたわね。今の攻撃は私の必勝パターンなんだけど。よけられたのはいつ以来かしら……」
アルメルはそう言っているが、俊吾にとってはただの奇跡でしかない。たまたま、体を少し動かしたお陰で先程の上からの攻撃をよけられたのだ。そして、俊吾のシールドエネルギーは9になっていた。
俊吾は内心焦っていた。攻撃をするどころではない。避けるだけで手一杯なのだ。何も出来ない。実力差を見せつけられ、俊吾はこの場をどうするか迷っていた。特攻覚悟で攻撃を仕掛けるか、シャルルを強引に連れ出し、森を抜けきるか。
特攻するにもどうしようもない。俊吾は後者を選ぶ。シャルルの場所を確認すると、先程の一連の動きで旬後の後ろに姿はあった。俊吾はタイミングを測り、逃げる準備をする。シールドエネルギーも9しかないので瞬間加速は使えない。森の木々を上手く利用して、森を最速で抜ける。そう考える。
「あら、何かしようとしてるのね。良いわよ、来なさい」
アルメルは何もかもお見通しのようだ。だが、自分への攻撃と思っているらしく少しだけ油断させることができそうだ。俊吾は右手に近接ブレードをコール。そして、アルメルに投げつけた。
「そんなんじゃ当たらないわよ」
俊吾はアルメルが近接ブレードに気を取られている隙にシャルルを抱える。そして、一目散に逃げ出す。木々を上手く使いながら、逃げる。だが
「……そうするのはわかってたわ」
すぐ真上から声が聞こえた。続いて、背中への強い衝撃。俊吾は地面に倒れる。
「少し話しただけでわかるわ。あなたは頭が良いから絶対にこうするだろうって」
完全にお見通しだったようだ。踊らせれていた。相手の方が何枚も上手だったらしい。俊吾は抵抗しようとするが、シールドエネルギーは尽き、ISは動かない。
「それにしても驚いたわ。あの二人を倒せると思っていなかったから。シールドエネルギー上限3000まで行っての初めての試験だったけどね」
アルメルはそう言いながらシャルルを抱える。俊吾はISの効力がなくなってきて、意識が朦朧としている。
「ああ、そういえば。あなたのISは第三世代だったわね。あなたも一緒に連れていけば問題も解決するかもしれないわね」
アルメルはそう言って、俊吾に触ろうとする。すると、目の前に水が現れる。咄嗟にアルメルはその場から立ち退く。
「この水は……」
「久しぶりね、アルメル」
その場に現れたのは楯無であった。
「あら、楯無。久しぶりね。いつぶりかしら?」
「半年ぶりね。あなたには会いたかったけど……こんな形では会いたくなかったわ」
「奇遇ね。私もよ」
話をしながら二人は、相手の様子を伺う。手の内を探っているのだ。
「俊吾くん、良くやったわね。もう休んでいいわよ」
俊吾は朦朧とする意識の中でその言葉を聞き、そして意識を手放した。
◇ ◆ ◇ ◆
「さて……アルメル、その娘を放してもらえる?」
「それはできない相談ね」
「じゃあ、やることは決まってるわね」
「そうね……」
二人は体を緊張させる。先に攻撃を仕掛けたのは、楯無だった。
水をアルメルの周りで霧状にさせる。そして、一気に熱を上げ、相手のシールドエネルギーを知らぬ間に削る。だが、アルメルは即座にその場から離脱。離脱しながらも銃で応戦。その弾丸を楯無は水のカーテンで防ぐ。銃の攻撃が効かないと分かると、アルメルは近接ブレードをコール。楯無に突っ込む。
楯無もそれに応戦するために、蛇腹剣(ラスティー・ネイル)をコール。つばぜり合いの状態になる。
「腕は鈍ってないようね、楯無」
「それはこっちのセリフよ、アルメル。あなた、最近表舞台に立ってないじゃない。こういうことばっかりやってたんじゃないの?」
「…………」
沈黙は肯定という意味なのだろう。アルメルは楯無を突き放し、切りかかる。その攻撃は変則的であるが、なめらかで鮮やか。初めて見るものを翻弄、魅了する。だが、楯無はその攻撃を冷静に対処していく。どの攻撃も、楯無には届かない。
「でも、あなたは腕落ちたんじゃない?」
「っ!」
楯無の一言にアルメルは目に見えて怒っているようだった。動きが直線的になり、大振りになる。楯無はその攻撃をそっと受け流す。すると、アルメルは体勢を崩しその場に倒れこむ。その間、楯無はランスに水を纒い、高周波振動させる。
蒼流旋。この武器は、水を纏いながら攻撃しランスの攻撃だけでなく、水の振動でも相手にダメージを与えるという武器だ。
それを構えながら楯無は言った。
「アルメル……今からでも遅くないでしょ?こんなことはやめて」
「私には……後がないのよ。もう、私の存在意義はこれだけなのよ…………」
「…………」
アルメルの言葉を聞いた楯無は何も言わなかった。その気持ちが手に取るように分かってしまうから。アルメルの言葉の真意は分からないが、アルメルから戦意は見られなかった。
「……アルメル、そこに寝てる二人を連れて帰りなさい」
「……え?」
「今回のことは別な方向で責任を取ってもらうわ。だから、絶対に表に戻ってきなさい」
「…………ありがとう。絶対に戻ってみせるから」
アルメルはそう言って、リヴァイブの操縦者を抱え消えていった。
「さて……そろそろ頃合かしら」
楯無はそう言いながら、その場から消えていった。
◇ ◆ ◇ ◆
「全機落とされただと!?」
「はい」
デュノア社社長室でその報告を受けたカルロスは物凄い形相になった。
「役立たづが!!!!今回のことにどれだけ金をつぎ込んだと思っている!!!!!」
机を思いっきり叩く。
「はぁ……はぁ…………。全機投入しろ。IS学園を焼き払え」
「それは出来かねます、社長」
「何だと…………。貴様誰に口を聞いていると思ってるんだ!」
「ただの人間に話しかけてるつもりですが、何か?」
「貴様………………!!!」
「それにあなたはもう終わりです」
秘書がそう言うと、十数人の武装した人間が部屋に入ってきた。
「な、なんだ貴様らは!!!」
「カルロス・デュノア。貴様に逮捕状が出ている」
「なっ!!!」
「一緒に来てもらおうか」
何人かの警官がカルロスを押さえつけ、連行した。
「き、貴様ら、俺を誰だと思ってるんだ!!!あのカルロスだ!!!!デュノアのカルロスだぞ!!!!分かっているのか!!!!!!!!」
そう言いながら、社長室からカルロスは出ていった。
「ご協力ありがとうございました」
一人の警官が秘書に敬礼をする。
「いえいえ、私は仕事で行ったまでです」
警官はもう一度、秘書に敬礼をして部屋を出ていった。秘書は、無線機を操り、誰かに連絡を取り始めた。
「全て終わりました、お嬢様。はい……はい……全て手筈通りに……。え、お嬢様はやめろ、と。分かりました。では、また後日、楯無様」
◇ ◆ ◇ ◆
「ん…………ここは……」
俊吾は目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。
「俺の部屋……なのか?」
体を起こそうとすると、体に激痛が走った。
「うがっ…………いてぇ……何で、ってそうか。そいや、さっきまで戦ってたのか……」
俊吾はさっきまで起きていたことを思い出す。俊吾の記憶が正しければ、リヴァイブ2機を落とし、アルメルと戦っていた途中でシールドエネルギーが切れて、楯無に助けられた、というのが正しいはずだと思う。
「あのあとどうなったんだろ…………覚えてねえや」
シャルルがどうなったんだろう、と思っていると部屋の入口から音がした。そして、入ってきたのは楯無だった。
「俊吾くん、起きたのね」
「楯無さん…………」
「ああ、心配しなくていいわよ。シャルルちゃんは、意識を取り戻して、ちゃんと部屋にいるから」
それを聞いて俊吾は安堵した。自分はちゃんとシャルルを守れたと、そう思った。楯無は俊吾が寝ているベットに腰掛ける。
「シャルルちゃんね、アルメルに気絶させられただけだったから、体にも異常はないわ」
「アルメル……さんはどうなったんですか?」
「国に戻ったわよ。今度からはちゃんとした場所で会えると思うわよ」
「それってどういう……」
「まぁ、それは明日のニュースを見れば分かると思うわ」
良く分からないが、明日になれば分かるということなのだろう。俊吾は気にしないことにした。
「それよりも、俊吾くん。良くやったわね。お姉さん驚いちゃった」
「えっと……何がですか?」
「今回の騒動のことよ。俊吾くんの相手したりヴァイブってシールドエネルギー上限が3000行ってたのよ?」
「3000?でも、フランスって2500が上限じゃ……」
「今回が試験運転だったみたい。あの正直、そんなの相手して勝てるなんて思ってなかったもの」
「ははは……まぁ、そうですよね」
「私が途中から助けに入って終わらせるって思ってたから、驚いてるわ。2機とも倒してるんだもん」
本当にギリギリで倒せたのも奇跡に近いんだろう。自分でもそう思う。
「まぁ、ただでは済まなかったけど」
「俺、何かありました?」
「脳震盪に肋骨一本の骨折、あと切り傷多数ね」
「骨折してたんですか!?」
「まぁ、軽いものだから直ぐに治るわよ」
俺こんな場所にいて良いのか……?病院にいるべきじゃ……。
「…………そんなにボロボロになるまで戦わなくても良かったのよ?」
楯無は悲しそうに微笑みながらそう言った。
「俺は……シャルルが守れればそれでよかったんですよ。あそこで逃げ出して次の日、シャルルの姿がなくなってたら俺は後悔しました。だから、絶対にあのリヴァイブ2機は落とそうって思ったんです」
「そう…………でも、次からは気をつけてね?自分の体がないとどうしようもないんだから」
「………はい」
「もう今日は休みなさい。疲れたでしょう?」
楯無は俊吾の額に手をおいた。その手は程よく冷たく、気持ちいい。段々と眠気が支配していく。
「お休みなさい、俊吾くん」
その声を最後に、俊吾の意識は深く落ちていった。
◇ ◆ ◇ ◆
次の日、俊吾は二つのことに驚いていた。
まず一つ、カルロス・デュノアが社長を解任、逮捕されたということだった。カルロスは脱税や麻薬密売の肩代わり、事実の隠蔽など色々とやっていたようだ。それがバレなかったのは、金と圧力のお陰らしい。だが、今回は決定的な証拠があり言い逃れができなかったと言う。今回のIS学園襲撃についてはニュースでは報じられなかった。社長がいなくなったデュノア社はそのまま消えていくかと思われたが、社員一同の倒産させたくないという意思により、存続することになった。しばらくは大変な時期が続くであろう。
これが楯無の言っていたシャルルの安全が保証されたということなのだろう。だが、カルロスは何故今回のことを隠蔽できなかったのか。それが俊吾の中で疑問として残る。何か、圧倒的力に屈服したか、はたまた警察も痺れを切らせ逮捕に至ったか。事実は闇の中に消えていくのだろう。
そして、二つ目。それは今、目の前で展開している。
「シャルロット・デュノアです。みなさん、よろしくお願いします」
「え?デュアノア君はデュノアさんだったってこと?」
「同室の織斑君は知ってたの?」
「そういえば、昨日男子の大浴場開放日だよ」
「え?ってことは織斑君は一緒に…………」
おい待て、大浴場開放日ってなんだ。俺は聞いてないぞ!くそ、風呂は入れる機会を逃した!!!って、どちらにせよ昨日は入れなかったか……。畜生、風呂入りたかった……。と言うか、シャルルの区切りをつけるというのはこういうことだったのか……。
ちなみに、俊吾は傍から見れば何ともないが、制服の下は包帯だらけである。昨日のことは、ほぼ無かったことになりつつある。シャルルが意識を失っていたというのは、貧血で倒れたということになっているらしい。
「一夏―――――――――――――――!!!!!」
そう言って、一組のドアを破壊しながら入ってきたのは鈴だ。そして、何故かISを装着済みである。
…………鈴さん、後で大変だろうな、ドアの弁償。
「あんたは何やってんのよーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
そう言いながら龍砲をぶっぱなす。ああ、一夏死んだなと思っていると、一夏の前にISを展開したラウラが現れる。そして、AICを使い龍砲を無効化する。
「ラ、ラウラか。助かったよ、ありがとう」
この時、俊吾は予感を感じていた。ラウラは何かすると。なので念のため、逃げる準備をしておく。
「気にするな。私とお前の仲だろう」
「え、それってどういう……」
一夏がそう言うと、ラウラは一夏の顔を自分に近づけキスをした。ほ~らやっぱり、と思いながら俊吾はその場に伏せる。そして、タイミングを図る。
「お、お前を嫁にする!これは決定事項だ!」
「あ、ああああああ、あんたいきなり何してんのよ!!!!」
鈴が怒っている。いや、照れているのか?そこらへんはいまいち分からないが面倒事になるのは確か。一夏は鈴から逃げるために窓に逃げる。その間に、俊吾は匍匐前進で廊下に逃げる。朝のSHRだが、こんな状況ではどうにもならないだろう。
教室から外に出ると教室内から恐ろしい音が聞こえてくる。
ドカーーーン!!!スパーーーン!!!ズドドドド!!!グシャ!!!
最後はとてつもなく恐ろしい音がしたが気にしない。一夏…………生きてたらまた会おうぜ。
俊吾は授業が始まるまでどこかに避難しておこうと思い、どうしようか迷っていると後ろから誰か走ってくる。もしかしたら一夏か!?と思い振り返るとシャルル―――もといシャルロットがいた。
「あれ、シャルルどうした?」
「何だか教室にいると巻き込まれそうだったから逃げてきたんだ」
「何だ、お前も一緒か」
「そうだね。それと、俊吾。僕の名前はシャルロットね?シャルルじゃないよ?」
「あ、悪い。無意識だった」
「まぁ、良いけどね。それよりも、俊吾、朝のニュース見た?」
朝のニュースと言うのはカルロスが逮捕されたということだろう。
「まぁな。とりあえず、お前の安全は確保されたって事だな」
「そうだけど……俊吾が関わってたりしない?今回のニュース」
「いや、流石に関わってるわけないだろ。逮捕に関わるのは無理だよ」
まぁ、間接的には関わってるんだろうな。言う必要はないけど。
「そうだよ、ね。何か変なこと言ってごめんね」
「別にいいよ。気にすんな」
時間を確認すると、授業開始五分前になっていた。
「っと、シャル……ロット。授業そろそろ始まるから戻ろうか」
一瞬、シャルルと言いそうになったので頑張って途中で方向修正した。
「何だかシャルロットって言いにくそうだね」
シャルロットは微笑みながら言った。
「まぁ、シャルルってずっと言ってたから言いにくいな」
「じゃあ、何かあだ名つけてよ」
「……何言ってんの?」
じゃあ、の使い方明らかにおかしいだろ。
「言いにくいなら言いやすいように呼んでって意味で言ったの」
頬を膨らませながらシャルロットは言った。
いや、あだ名って言われてもな……。う~ん、シャルルとシャルロットの共通部分のシャルでいいか。
「じゃあ、シャルってどうだ?俺は凄く言いやすいんだが」
短いし、なんて言ったら起こるんだろうな。だから言わない。
「シャル、か…………。うん!それで良いよ!」
何だか喜んでもらえたみたいだ。即席でなおかつ言いやすさ短さを考えての名前で。まぁ、俺が気にすることじゃないか。
「って、もう時間ねえ!」
話してたせいで授業一分前になってしまった。
「シャル!早く行くぞ!」
「あ、待ってよ!俊吾!」
その後、二人は何とか授業に間に合いましたとさ。
後書き
今回は新キャラが出てきました。
シャルの専用機がカスタムⅡなのでカスタムがあっていいよね!って思って書きました。
あと、カルロスはがシャルを連れ戻そうとした理由と最後のシャルの状態だけ書こうかと。
IS学園内で会った時に、女とバレハニートラップすら使わないシャルに苛立ち連れ戻そうとした、というのが理由です。使えないなら俺のストレス発散道具になれ、みたいな感じです。
最後のシャルは一夏にも俊吾にも惚れてません。だけど、俊吾が少し気になるかな、という感じです。これからどうなるかは俺自身分かりません。
今回は色々とツッコミどころは多いかと思われましが、疑問があったら感想にてお願いします。
あと、今回は長いので誤字脱字もあるかと思われます。あったら、感想にて報告をお願いします。
では、次回の更新でまた会いましょう。
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