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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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四霊王オウリューオー・第10話

 
前書き
今回は前半シャイン、後半フェイトメイン。
うっかり忘れかけていたリリなの重要イベント(?)の回。 

 
ぱらら、とページをめくるような軽快な音。もうすっかり聞き慣れた応龍コンピューターのモニタが表示される音だ。自分のサイコドライバーとしての念動力を応龍皇の真五行器とリンクさせ、脳の処理速度と記憶探査能力を高める。
真五行器は永久機関であると同時に念を増幅させる機能も存在する。本格的な仙人ならば五行器を通さず術と掛け合わせて様々な力を発揮できるのだが、生憎シャインの仙術はその手の方向には向いていない。

「鑑純夏・・・9歳。記憶探査・・・終了。Muv-Luvの登場人物。幼馴染との人間関係、特徴・・・一致。不審点無し。フォルダBに移動」

「天領イッキ・・・9歳。記憶探査終了。メダロットの登場人物でありいくつかのシリーズの主人公。フレンドリロボット・・・通称メダロットを保有。特徴・・・一致。原作世界観と微妙な不一致を確認。フォルダCへ移動」

「江野めだか・・・10歳。記憶探査・・・終了。めだかの学校の登場人物。田中有魚の存在を確認・・・特徴一致。不審点なしフォルダBに移動」

「織斑一夏・・・10歳。記憶探査・・・失敗。次元力によるデータサルベージ成功。インフィニット・ストラトスの登場人物。6歳の時に両親が蒸発、以後姉と二人暮らし。ISを開発した篠ノ之束の失踪、特徴一致。ISの状況に原作といくつかの食い違いを発見。フォルダDに移動」

溜息を吐きそうになるほど面倒な確認作業だが、やらない訳にもいかない。何せ劇物A君はこの中に紛れている可能性が高いのだから。
そう、俺は早速あの司書に頼まれた劇物君探しをしている。

まず、俺は「チート能力を持っているがそれを自覚していない」「自分の身の回りにおかしなことが起こりすぎていることには気付いている」の二つの情報に注目し、この町の普通ではない場所、家、人間を洗い出した。すると出てくる出てくる、ちょっとびっくりするレベルでわんさかと出て来たのだ。
ゲンナリしながらそれをチェックしていた俺はふとあることに気付く。それは、おかしな人間に限って言えば、ほぼ9~10歳の子供とその家族親族に限定されていたことだ。つまりこの町の小学3,4年生に「おかしなこと」が集中しているという事だ。あの転生者の可能性ありと判断した2人も同じ年頃だったことを考えると、どうにも作為的な、法則的なものの存在を禁じ得ない。

木を隠すなら森の中ともいうし、その年頃以外の「おかしな」人は数がかなり少ないし司書から訊いた話とも微妙に一致しない。故に俺はこの町の9~10歳の子供の中にこそ例の劇物Aが混じっているものと仮定して作業を行っている。

で、その年代の子・・・チルドレンと呼称するか。チルドレンを見ていてすぐに気付いた事は、彼らの顔や名前の多くに覚えがあるということだった。漫画か、ゲームか、小説か、アニメか、そういう作品の登場人物に異常なまでに一致するのだ。キャラが濃すぎるのでもはや目立つと目立たないの境が分からないレベル。矢張りこの世界には何かおかしな法則が働いているのだろう。


しかし俺の記憶も全能ではない。何となく見覚え、聞き覚えがあっても全てを正確には思い出せないし、見覚えのない奴も大勢いた。このチルドレン内で原作の存在する連中を除けば限りなく劇物Aに近づけると思うのだが、その除外作業をどうするかで行き詰ったのだ。

そこで次元力の登場だ。無限力と組み合わせてこれをコントロールし、平行世界(パラレルワールド)の俺と知識を直結させる。人間は記憶を思い出せなくなることはあっても脳自体が破損しない限り完全に忘却することは無いらしいので、その辺は無限力で脳内から直接取り出す。応龍皇曰くあまり次元力に手を出し過ぎると「大羅天」と呼ばれる存在に怒られるらしいので許される範囲でだが。


「ぷはー!もう無理、休憩っ!」

後ろに用意してあった休憩用ソファに身を投げ出し目の疲れををほぐすように目元を手で覆う。流石に脳を酷使しすぎたので今日はここまでにしておかねばならない。チェックできたのは全候補1052人中200人弱。出来るだけ早く終わらせたいのだが見落としがあっては元も子もないのでこれ以上のペースは望めない。・・・全く以て困ったものだ。

「世界観にこそあちこちずれのあるものの、キャラの年齢と年齢別のイベントは一致か・・・面倒にも程があるこの作業にも得えられるものがあったと考えるべきか?ふあぁ・・・」

この1052人と言う果てしなく半端な人数のどこかに俺や転生者疑惑2名と同じく原作を持たない奴がいる。そのはずである。しかしもしもこの予想が見当違いだったら・・・完全なる無駄手間である。他にいい案も無いので可能性の高い方法に頼らざるを得ないのだが。



 = = =



第97管理外世界、地球。魔法文化無し。
魔法文化無しというのはミッドの様な魔法文化ありの世界からはドが付くほどの田舎、若しくは文明の遅れた世界と取られることが多い。だが実際に回ってみると案外一般市民の文化レベルはそこまでミッドと大差ない。

というか、極論を言えば魔法など日常生活では自衛以外に何の役にも立たない。空を飛んだり魔法をぶっ放すのは当然ながら街中では禁止されているし、魔法とは言っても実際には魔力素と言うエネルギーを術式で固めて物理的な運動エネルギーとして利用しているに過ぎない。言い方は悪いが技術系統としては戦闘行為重視で原始的。幻影や回復魔法はそれの発展系であり、転送魔法や使い魔技術は例外の部類に入る。
少し話が逸れたが、つまり日常生活を送る上では魔法など大した存在価値がない。ミッドチルダの魔導師は魔法至上主義などと謳ってはいるが、その魔法技術は魔法を使えない人々にとっては大した価値が無い事を、この星は証明している。

そんなことを考えてしまう自分は捻くれ者だろうか?と自問しながらフェイトは町を歩き回っていた。足元には犬の姿に変身したアルフも付いている。

今、彼女は海鳴市に足を運んでいる。理由はプレシアが「地球に別荘を建てて暮らすのもいいかも」などと言っているのを耳にしたことが切っ掛けだった。ジュエルシード集めで何日か滞在した海鳴市だが、プレシアの御機嫌を取ることで頭がいっぱいだった彼女は町を全然見ていなかったことに気付いたのだ。
考えてみればそれは無理らしからぬことかもしれないが、もしプレシアの言葉が現実になるならば自分はこの町に暮らすかもしれないと考えたフェイトは町の探索に乗り出した。・・・リニスとプレシアからお小遣いを握らされて。プレシアはともかくリニスも意外とこういう所で親馬鹿である。


「あっちが商店街で・・・えっと、こっちを真っ直ぐ行ったら学校かぁ・・・」

不慣れな道だが、それでもこの町に滞在する準備をした時点で地図は頭に叩き込んである。のだが、やはり実際に回るとなると体が付いてこないもので―――

どんっ

「きゃっ」
「あうっ」

よそ見しながら歩いたせいで曲がり角の人影に気付かず、正面衝突してしまった。フェイトは辛うじて転倒を免れたが、ぶつかった相手はそうもいかなかったようで尻もちをついていた。慌ててその人・・・栗色の髪を束ねたツインテールの女の子に駆け寄る。

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「・・・あ、うん。ごめんね、大丈夫だよ」

差しのべた手をそっと握り立ち上がる女の子。その手の感触を受けた時、フェイトは微かな違和感を感じた。

(・・・この感触は、手肉刺(てまめ)?)

この感触には覚えがある。魔法の練習の際、デバイスであるバルディッシュの握り方が悪かったせいで丁度こんな肉刺ができた時期があるのだ。彼女は恐らく何かしらのスポーツでもやっているのだろうとフェイトは推測した。考え事をしているうちに彼女は立ち上がり、スカートの砂ほこりを手で払う。

「ごめんなさい、私まだこの町になれてなくて・・・」
「そんなに謝らなくてもいいよ!私もちょっとボーっとしてたし、ね?」
「う、うん。分かった」

何気に同年代の子供と話した経験がシャインしかないフェイトは緊張から言葉の選び方が分からなくなる。どんな言葉使いでどんな事を言えばいいのか頭に浮かんでこず、言葉が尻すぼみになってしまった。そんなフェイトの態度を見て、何やらひとりで得心した少女はにこやかな笑みでフェイトに話しかけてきた。

「そっか、まだ名前を言ってなかったよね!私の名前はなのは、高町なのは!」
「・・・?」

それは普通の人間ならばすぐに自己紹介と言う行為であると容易に理解できるが、生憎そう言ったことと縁遠いフェイトは未だになのはの言葉の意味を測りかねていた。どうやら彼女ことなのははこちらが名前を知らないから困っているのだと勘違いしたらしいことをアルフは悟ったが、あえてフェイトには何も言わなかった。直ぐにフェイトに助け舟を寄越しては彼女の成長に繋がらない。

会話が続かない事になのはもちょっと困った顔をしたが、思いついたようにこんな事を言い出した。

「私は名前を名乗ったから、今度は貴方の名前を教えてくれない?」
「・・・ふ、フェイト。フェイト・・・テスタロッサ」
「フェイトちゃんだね?」
「うん・・・」

少し俯きながらも何か話そうとなのはに向かい合うフェイト。そんなもどかしくも初々しい彼女にすっと掌を差し出したなのは。それはシェイクハンド、つまり握手の為の手。フェイトは今度はその行動が何か理解できたというふうにああ、と口を開いた。

「お金?」
「・・・へ?」
「町でぶつかった人から慰謝料を取るって、この国の文化に・・・」
「いやそんな文化ないよ!?あるとしてもごく一部の悪い人たちだよ!?」

ぶんぶん手を振り回して必死に間違ったNIPPONを是正しようと慌てるなのはを見たフェイトは、その慌て振りと可愛らしさに思わず笑ってしまった。笑われて恨めし気な視線をフェイトに送るなのはだったが、その顔をふっと和らげる。

「やっと笑ってくれたね」
「え?あ、その・・・」
「ねぇ、フェイトちゃん。良かったら、私と友達になってくれないかな?」
「―――え?」
「さっき『この町になれてない』って言ってたよね。だからお友達になればこの町のこと色々教えてあげたりできると思ったんだけど・・・やっぱり駄目かな?今日会ったばかりだし・・・」
「う、ううん!なる!友達!なろう?」

会話の流れも何も分かっていないフェイトだが、友達のいない彼女にとってなのはの提案は衝撃的だった。ぶつかって転ばせてしまった相手にやさしい言葉をかけてくれた彼女を拒絶することなどフェイトには出来ないし、面白い彼女の事をもっと知りたいとさえ思っている。でも―――

「友達って、どうやってなればいいの?」

「そんなの簡単だよ!―――名前を呼べばいいんだよ」

「えっと・・・なのは」
「フェイトちゃん」
「なのは!」
「フェイトちゃん!」
「なのは!!」
「フェイトちゃん!!」
「なのはー!!」
「フェイトちゃーん!!」

・・・どうにも何かを勘違いしているフェイトとその勘違いをノリで受け入れているなのはの名前合戦は、収拾がつかないと判断したアルフの鶴の一声ならぬお犬様の一吠えで終結を迎えた。

これがフェイトにとっての友達第一号であり、なのはの魔法使い友達第一号。二人の出会いが紡ぎだす物語の結末は、まだ誰も知らない。
 
 

 
後書き
今更ながら、自分は書くより読む側の方が好きな人間です。
実際普段は執筆より読む時間の方が圧倒的に多いし。
だから皆さん、上手じゃなくても何番煎じでもいいから小説書いてみませんか?

という無責任なメッセージを読む専の人に送り出してみる。だって、せっかく小説サイトの会員なんだから1つくらい変な二次創作・オリジナル小説に挑戦してみるのも(いき)でしょ? 
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