八条学園怪異譚
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十二話 百物語その十
「コンデンスミルクだったとかバターだったとかね」
「その辺りはですか」
「色々なんですね」
「そうなの、色々なの」
だから断言は出来ないというのだ。
「本当のところチーズだったかどうかはね」
「断言出来ないんですか」
「そうなんですね」
「みたいね、まあこの蘇はね」
とりあえず今二人の前に出ているその蘇の話になる。
「チーズだから」
「ですか、それじゃあ」
「ワインともですね」
「合うわよ、ただ小さいから」
その蘇は本当に小さかかった、数センチ四方しかない。他のチーズ達と比べるとその大きさが全く違っている。
「気をつけてね」
「はい、三人で分けて」
「そうしでですね」
「ここで四等分したらね」
どうなるかというのだった、そうすれば。
「わかるわよね」
「はい、三人ですから」
「そうしたら」
「そう、一片余るから」
だから駄目だというのだ。
「ここは縦と横に切るんじゃなくてね」
「縦か横にですね」
「綺麗にですね」
二人もこのことはすぐに理解した。
「それで、ですね」
「三人で食べるんですね」
「そうしましょう、じゃあいいわね」
茉莉也は二人に応えながら早速ナイフを出してきた。肉をフォークと一緒に使って切るそのナイフである。
それを出してだ、こう二人に言った。
「今から切るわよ」
「じゃあ御願いします」
「それで」
二人も応える、そうしてだった。
蘇は茉莉也によって縦に綺麗に三分された、そしてだった。
三人はそれぞれその蘇を口の中に入れた。そのうえでまずは愛実が言った。
「こんな味なんですね」
「どう?」
「本当にチーズですね」
つまり乳製品だというのだ。
「それですね」
「美味しいと思う?」
「まあ、ただ」
「ただ、よね」
「これで七百円はやっぱり」
高い、これが愛実の感想だった。
「もっと安くなってくれたら」
「いいっていうのね」
これが愛実の蘇を食べてみての感想だった。
「私としては」
「ううん、やっぱりそう言うのね」
「私もです」
聖花もここで茉莉也に言う、食べてから。
「もっと安かったら」
「あんたもなのね」
「これで七百円は高いです」
「作り方に何かあるんですか?」
愛実は高い理由をそこに求めて茉莉也に問うた。
「それでなんですか?」
「普通のチーズがどうして安いか」
このこともだ、茉莉也は話した。
「一杯作るからね」
「これなんか特にそうですよね」
聖花はプロセスチーズをかじりながら言った。
ページ上へ戻る